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赤外線セミナー

講演内容 (2015年実績)


【SC-1】コース
テラヘルツメタマテリアル:基礎と応用

11月17日(火) 9:30-12:30



開会あいさつ

福井大学 谷 正彦









テラヘルツメタマテリアルの基礎

信州大学 宮丸 文章


 メタマテリアルの基本的な考え方を紹介します。メタマテリアルは人工的な構造によって電磁波の制御を行うことを基本としています。よって構造のサイズによって対象とする電磁波の周波数(波長)をスケーリングできることが特徴です。
 そこで、本講演では電磁波の周波数領域には依存しない一般的なメタマテリアルの概念や基本的な考え方を紹介します。またメタマテリアル研究で有名な幾つかの興味深い現象(負屈折率、座標変換媒質(クローキング)など)を紹介します。

1.メタマテリアルの概要
 1.人工構造体とメタマテリアル
 2.有効誘電率と有効透磁率 (粗視化の粗視化)
 3.共鳴子の利用
2.負の屈折率
 1.負の誘電率
 2.負の透磁率
 3.座標変換媒質(クローキング)
 4.TE偏光におけるBrewster角
 5.まとめ

★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

電磁波伝搬を操るメタマテリアル:マイクロ波帯を中心に

京都大学 中西 俊博


 メタマテリアルとは、波長以下の構造体の集合で、電磁波伝搬を自在に制御することができる。メタマテリアルの特長は、自然界の通常の媒質では実現できない電磁波応答を実現できることに加えて、動作波長を構造のサイズを変えるだけで自由に選ぶことができることにある。この性質はスケーラビリティーと呼ばれ、メタマテリアルがマイクロ波帯から、テラヘルツ、そして光領域まで広く研究されている要因である。
 講演の前半では、通常の媒質ではできない、透磁率を制御するメタマテリアルを例に挙げ、TE波に対するブリュースタ現象や、負屈折、そして透明マントなどの実現について解説する。これらの例は、実現のしやすいマイクロ波領域でまず実証がされているが、その後のテラヘルツや光領域に研究が広がっている。 
 講演の後半では、原子系で研究されてきた電磁誘起透明化現象(EIT現象)をメタマテリアルで模擬する方法について解説する。電磁誘起透明化現象とは、本来吸収される光が、補助的な光の入射によって消失するという現象で、それに伴う電磁波の低群速度化と光パルスの凍結への応用から広く研究されている。この現象を、メタマテリアルで模擬することによって、波長によらない電磁波の伝搬速度制御が可能となる。講演では、マイクロ波領域で伝搬速度を制御する方法を紹介し、その応用として、電磁波をメタマテリアル中に保存する方法について解説する。

★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

種々のテラヘルツメタマテリアル構造とその特徴

大阪大学 高野 恵介


 メタマテリアルは材料に施した構造によって、実効的に光学定数を設計した人工媒質である。
 数百から数十マイクロメートルの波長を持つテラヘルツ波に対しては、サブ波長の構造も作りやすく、テラヘルツ領域あるいは遠赤外領域では以前から、金属構造が標準的な光学素子として実用されてきた。金属のメッシュ構造を用いた周波数フィルタや、ワイヤーグリッド偏光子などがその代表例である。今世紀はじめのメタマテリアルの概念の登場により、さらに多様な電磁応答の設計が試みられるようになった。
 自由空間を伝搬するテラヘルツ波に何らかの操作を加える場合には、透過型で薄膜状の素子が望ましく、特に平面型のメタマテリアルが多く提案され、メタ表面あるいはメタサーフィスなどと呼ばれる。種々のメタ表面の形状により、得られる電磁波応答が決定される。さらに、それらの構造の組み合わせによって、3次元的なメタマテリアルや、電磁波吸収メタマテリアルなどが実現される。構造に加えて、メタマテリアルを構成する材料の物性を光、熱、電圧などで変化させ、応答を変えるテラヘルツ波変調子などの研究例がある。光学素子としてだけでなくテラヘルツ波の検出や、発生にメタマテリアルを含む微細構造が利用できる。
 種々の構造で、どのような電磁波応答の実現が試みられているかを、我々の実験結果を交えながら特にテラヘルツ領域に着目して概説する。

★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

テラヘルツメタマテリアルによる細胞計測と将来展望

京都大学 小川 雄一


細胞内部の水分子は、生命活動を司るさまざまな重要な役割を担っている。また、生物は約70%以上が水で構成されており、水分子のサイズが約3Åと微小であることを考えると、生体中には圧倒的多数の水分子が存在していることになるが、水分子自身が透明でかつ蛍光標識などをつけることが出来ないことや、水そのものが生体反応の“場”になっていることから、現在ライフサイエンス分野で用いられているアプローチを持ってしても研究が困難な対象物と言える。そこで我々は、THz帯の誘電情報から水の水素結合ネットワークや分子間振動、水分子の緩和に関する知見を得られることから、細胞内の水分子の振る舞いをテラヘルツ波で評価するとの着想に至り、現在さまざまな研究を進めている。
本発表では、THz TD-ATRを用いた細胞の誘電率測定および、テラヘルツメタマテリアルによる細胞計測応用の研究事例などを紹介する。


閉会挨拶

福井大学 谷 正彦

 
【SC-2】コース
分光スペクトルデータのコンピューター解析

11月17日(火) 13:00-16:55



スペクトル解析入門

大阪電気通信大学 森田 成昭


 分光スペクトルには、原子・分子、及びその凝集体における、結合、構造、相互作用、環境、といった情報が豊富に含まれている。それらを知るには、適切な実験手法を選ぶだけでなく、得られたスペクトルから情報を適切に読み取る技術が必要である。
 本講演では、得られたスペクトルチャートデータをコンピューター解析することによって、分子情報を抽出する技術を紹介する。そのような技術は、どのような分光分析手法であっても応用が可能であり、分光スペクトル以外にも、クロマトグラムや熱分析チャートにも応用できる。

★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

二次元相関法の基礎と応用

大阪電気通信大学 森田 成昭


 本講演では、スペクトル−スペクトル二次元平面に相関強度をプロットすることで、バンド間の関係を解析することができる二次元相関法について解説し、いくつかの応用例を紹介する。
 二次元相関法が開発された当時は、交流信号への応答に対してしか解析ができなかったが、最近では一般化二次元相関法により、どのような信号に対する応答でも解析が可能となっている。例えば試料温度を変化させながら測定した複数のスペクトルを解析することで、どのバンドが、どのように変化しているのかを視覚的に捉えることができる。これにより、タンパク質の赤外スペクトルにみられるアミドIバンドのような、複数のバンドが重畳した複雑なバンドに帰属を与えることも可能である。
 さらに、波数−波数平面だけでなく、波数−温度平面に相関値をプロットするような新しい解析手法もあり、それらについても概説する。

★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

ケモメトリックス

産業技術総合研究所 新澤 英之


数学・統計的な手法でスペクトルの解析を行う「ケモメトリックス」について解説する。分光法によって得られるデータは、多数の波長・波数における吸光度を示したものとなり、このようなデータは多変量データと呼ばれる。
多くの変数(波長・波数)からなる多変量データは情報量が多く含まれる反面、データの解釈が困難になりやすい。近年、多変量のスペクトルを解析する技術としてケモメトリックスが盛んに用いられている。
本講演ではケモメトリックスの核となる主成分分析、およびそれを基にした定量分析の技法等を解説する。

★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

量子化学計算の基礎と応用

京都大学 下赤 卓史


コンピュータの進化により量子化学計算を手軽に行えるようになって久しく、量子化学計算は研究の現場において身近な解析ツールとして定着している。汎用プログラムにより得られる分子構造や計算スペクトルは、実験で得られる描像を高い精度で再現できるため、量子化学に限らず、様々な研究現場で必須な手法となったことが、ここまで普及した原因といえる。DFTやB3LYPというような、量子化学のキーワードも、言葉としては広く認識されているように感じる。
しかし、任意の系について簡便に結果を出力できる汎用プログラムは、計算の中身について理解せずとも、データを出力する“ブラックボックス”となる危険性をはらんでいる。本講演では、研究の現場において量子化学計算を“ユーザーとして”用いている方を対象とし、計算を行う上で不可欠な情報の理解、計算で得た振動スペクトルを用いた実測スペクトルの解析を最終目標にして、以下のような流れで講演する。
1.大学で学ぶ「量子力学」とコンピュータ内の「量子化学」
2.量子化学計算の計算理論・基底関数
3.Gaussian 09による計算の実行と出力ファイルの読み方
4.振動スペクトルの解析ツールとしての量子化学計算
最後に振動分光法と量子化学計算を用いた最近の研究成果を紹介する。

★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)
 
【SC-3】コース
表面増強/チップ増強 ラマン散乱(SERS/TERS)の基礎と応用プログラム

11月18日(水) 13:00-16:50



SERS/TERS入門

関西学院大学 尾崎 幸洋


最近、表面増強ラマン散乱(Surface-Enhanced Raman Scattering: SERS)やチップ増強ラマン散乱(Tip-Enhanced Raman Scattering; TERS)が産業界においても注目されている。SERSを用いると単一分子からのラマンスペクトル測定も可能になる。したがってSERSに基づくいろいろな超高感度分析が可能になる。次世代の夢の高感度分析法といっても過言でないであろう。
単一分子のSERS測定の成功以来、SERSの機構解明の研究が急速に進んできた。それにともないどのようにすれば、SERSスペクトルがより高感度で、しかも再現性よく測定できるかも明らかになってきた。SERSの応用の実用化に一歩近づいたと言えよう。
TERSでは原子間力顕微鏡(AFM)等につかわれるナノメートルオーダーの探針先端を、増強電場の発生源に使うことで、サンプルの任意の場所の微小空間からのラマンスペクトルを非常に高感度に測定することができる。
本講演ではSERS/TERSの入門について基礎から応用まで講演する。

★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

表面増強ラマン散乱(SERS)の基礎

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 伊藤 民武


 表面増強ラマン散乱(SERS)とは非常に感度が低いラマン散乱で単分子検出を可能とする興味深い現象である。本講演はラマン散乱と金属ナノ粒子のプラズモン共鳴の基本、そしてプラズモン共鳴によるラマン散乱増強現象、即ち表SERSの理解を目的としており以下の4つのパートから構成される。

 1)光と分子の相互作用を量子力学的描像を用い簡便に紹介する。光による摂動の結果として分子に生じる光吸収・光放出現象をラマン散乱について解説する。
 2)金や銀のナノ粒子に生じるプラズモン共鳴についてその起源と分光学特徴を紹介する。プラズモン共鳴の粒子形状依存性や媒体屈折率依存性等についても解説する。
 3)SERS機構の基礎、即ちプラズモン共鳴によって光と分子の相互作用効率が増強することを説明する。
 4)SERS機構の実証例を紹介する。最後に、SERS機構に用いられている前提の幾つかが破綻した場合に生じる興味深い現象を紹介する。


TERSの基礎と応用

国立研究開発法人 理化学研究所 早澤 紀彦


 レンズを用いるという従来の光学顕微鏡による分光技術の常識を取り払い、金属のナノ構造体を用いることで、回折限界を超えた空間分解能によりナノ光物性分析を可能とする分光技術の紹介を行う。
 光沢のある金属を単なる光散乱体として考えるのでなく、光を増幅するアンテナと捉え光増幅効果を電磁場計算により導出し、微弱な分光分析手法に適応できることが実験的に実証された。ナノ光源を創り出す手法としてナノサイズの金属針を用い、種々の先端増強近接場分光法の開発が行われた。光電場特に電場の偏光成分が針の軸方向である場合、自由電子の集団的振動(プラズモン)が誘起される。その際、針の先端において電界の集中が起き、増強電場が発生する。即ち、極めて明るい分光用ナノサイズ光源(先端径と同程度の大きさ)となり、局所的に微弱な信号を増幅し検出できる。即ちナノ材料からの微弱な分光信号を検出する上で極めてユニークかつ大きな利点を有している。ナノ金属構造先端による電場の増強効果を用いた近接場分光法は、特にラマン分光において、先端増強ラマン散乱(tip-enhanced Raman scattering: TERS)として世界的に認識されつつある。
 最新の成果では、波長633nmの光を用いて、カーボンナノチューブを1.7nmの空間分解能でTERS分光イメージングを可能とし、常温大気中におけるラマン分光の世界記録となっている。種々のナノ粒子・材料の真の局所光物性が平均化することなく検出できるようになってきていることを意味している。
 本講演では、TERSの基礎から応用までを実際の測定例を多数引用することで、わかりやすく紹介する。


SERSナノ構造体の設計製造と産業応用

アーカイラス/兵庫県立大学 福岡 隆夫


 この講演では表面増強ラマン散乱(SERS)を発現させる貴金属ナノ粒子集合体と、実践的なSERSの活用事例を紹介する。
 SERSには、1)分子構造に応じた「分子の色」を、2)シャープなスペクトルとして、3)高感度に検出でき、4)干渉の少ない近赤外光でも利用できる、という特徴があり、標識色素を必要とするバイオ分析において標識を用いない画期的超高感度分析法として期待されてきた。今までに多様なSERSナノ構造体(SERS基質)が提案され、主として金ナノ粒子の集積構造から成る市販品が簡単に入手できるようになっている。しかしSERSを利用するためには、このようなSERSナノ構造体に分析対象の分子を吸着させる過程が必要である。SERSは実質的に吸着現象であり、SERSナノ構造体の使い方は光学デバイスというよりは化学試薬に近い。
 そこでSERSナノ構造体のコロイド型、基板型の違いと特長を踏まえつつ、吸着過程としてのco-aggregation法、pre-aggregation法、浸漬法などのin situ法、drop-and-dry法を解説する。分析対象の分子を直接吸着させるdirect SERSに対し、より産業上の有用性が高いと期待されるindirect SERSによる新規な分析、および分析目的以外のSERS利用であるナノビーコンの事例についても展望する。

★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

SERSプレートによる分析

株式会社右近工舎 右近 寿一郎


市販されているSERSプレートを含むいろいろなSERSプレートを概観し、その作成方法と分析例を中心に説明する。
またSERSプレートによる分析の特徴について長所と弱点について説明し、その弱点を克服する手段について提案する。

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