
ポジショニング特別セミナー講演内容詳細
【PE-3】 新しい位置決め技術の動向(2)
精密位置決めにおける実用的制御技術
制御技術は,構成要素である機構等の特性を活用し,最終的なシステム性能を決定する重要な役割を担っている。そのため古典制御以降様々な制御技術が提案され,位置決めへの応用が試みられてきている。制御技術において,要求仕様を満足する十分な性能はもちろん必要であるが,同時に設計・調整の容易さも実用上極めて重要で,制御技術選択に大きな影響を与える。
本講演では,精密機構に用いられる制御技術に関し,まずこれまでの動向を実用性の観点から概観し,次で,初心者でも簡単に超精密位置決めを実現できる制御技術として,講演者が提案しているNCTF制御を,機構への適用例を用いて紹介する。
☆古典制御に関する基礎知識があった方が分かりやすい。
東京工業大学
佐藤 海二 氏
パラレルメカニズムにおける位置決め技術
従来,精密な加工機や測定機などの精密機構には直交座標形のメカニズムが多く用いられてきた。
1990年代に入って「パラレルメカニズム」という従来にない機構が工作機械やロボットマニピュレータの分野で常識を変えつつある。
このパラレルメカニズム(parallel mechanism)とは静止節(ベース)と出力節(エンドエフェクタ)の間を並列的(in-parallel)に配置された複数の連鎖(連結連鎖)により連結・駆動される閉ループ機構である。
この機構は,直交座標形や多関節形などの直列に連鎖を配したシリアルメカニズムと比較して,多自由度な機構が比較的容易に構成でき,各軸の運動誤差が累積しないため高精度であるという特長を持っている。
このため,近年微動機構を含む多自由度な位置決め装置などに使われ始めている。
本講演では,まず従来の直交座標形メカニズムとの違いや特長を説明し,応用例を紹介する。
次に位置決め機構として用いる際に重要となる運動誤差の伝搬の様子を従来の直交座標形メカニズムと比較した。
直交座標形の空間機構では出力節の運動誤差が発生しやすいが,パラレルメカニズムでは各ジョイントのリンク方向の誤差だけが出力節に伝搬し,他の方向の誤差は無視でき,運動精度を向上のために好都合である。
次に,従来空間運動機構において遵守が困難であったアッベの原理を6自由度パラレルメカニズムではどのように考慮すればよいかについて述べる。
最後に,フィードバックセンサとしてパラレルメカニズムを用いる超精密な機械システムを紹介する。
☆機械工学科1、2年程度の知識がある方
静岡大学
大岩 孝彰 氏
超精密加工機における位置決め技術
超精密加工機の主な対象ワークである光学部品金型は、ますます高精度化が進み、形状精度数十nmを求められることも珍しくない。
そのため各ステージの位置決め精度もナノメートルレベルが求められている。更に近年、この光学部品の多機能化に伴い、非常に滑らかな曲面に微細で複雑な溝加工など多軸での加工が求められ、その位置決め技術はより高いレベルが要求されている。
当社は1980年代,CDのピックアップレンズ金型の加工機としてAHN10超精密非球面加工機を開発した。その後も市場のニーズに応えるべく超精密加工機の開発に取り組み現在に至っている。
本講では最新の5軸超精密加工機AHN15-3Dの特徴を位置決め技術を中心に説明し、その加工事例などについても紹介する。
☆一般向けの内容としますが、工学的な基礎知識は必要
株式会社ジェイテクト
岩井英樹 氏