
VISION特別セミナー講演内容詳細
【VJ-2】 セキュリティ(本人認証技術)
セキュリティにおける顔画像認識の現状と未来
研究開発当初から顔画像認識技術の主な応用分野はセキュリティであったと言える。計算機の価格低下と、計算機および認識アルゴリズムの性能向上を背景に、10年ほど前には「顔画像認識の問題が完全に解決されるのは時間の問題」とも言われ、カメラ画像に登場する人物をほぼ間違えずに特定し、様々な不正行為(不正入場、不正入国、詐欺など)を防いだり、犯人や指名手配者を捕まえたりすることが簡単に出来るようになると期待されていた。
しかし、2001年の同時多発テロ後に急きょ実装された多数の顔画像認識システムは、実環境下でのパフォーマンスが予想に反してかなり低く、顔画像認識技術そのものの信頼を失った。近年、実環境での技術の性能向上に加え、顔画像認識技術に何を期待すれば良いかについて以前より正しく把握されるようになり、例えば、高レベルのセキュリティが要求される場合には、顔だけでなく複数のバイオメトリック(顔、虹彩、指紋など)を併用する必要性やオペレータである人間の重要性が理解されはじめた。
本講演では顔画像認識技術のセキュリティへの応用の歴史をレビューし、現状とトレンド踏まえ未来を予測する。
☆高校生程度の知識を持つ方
NHK放送技術研究所
サイモン・クリピングデル 氏
光暗号の原理に基づく生体認証技術
人間の生体情報から本人を特定する生体認証技術は、近年の技術の進歩と社会情勢の変化により急激な普及を見せるようになった。しかし生体情報は一度漏洩すると取り換えがきかない情報であるため、インターネット等のオープンなネットワーク上での利用は進んでいない。このような状況に対し、近年生体情報を保護しつつ、安全に生体認証を行うテンプレート保護型生体認証が盛んに研究されるようになった。我々はこの研究分野に対する光情報処理技術からのアプローチとして、二重ランダム位相暗号化(Double Random Phase Encoding:DRPE)に着目し、より安全性の高い生体認証を実現するための研究に取り組んでいる。DRPEは光の位相変調に基づく画像の暗号化手法として提案された技術であるが、単に光画像を光学的に暗号化・復号化可能であるというだけでなく、画像のパターンマッチングと情報秘匿を融合した技術としてそのアルゴリズム自体にも独特の特徴を有する。我々はこの特性を利用し、生体情報を鍵とする暗号化手法を開発し、またこの手法を発展させた技術として、オープンなネットワーク上での生体認証を安全に実現する手法や、提案手法を光学的に実装することで電子的には生体情報を存在させない暗号システムを実現する光学系を提案している。本講演ではこれらの技術を紹介する。
☆理系大学卒業適度の知識のある方
東京工業大学
鈴木 裕之 氏
デンタルメモリ―本人認証のための歯への情報記録
地震や津波といった大規模な自然災害において、多くの人が被害にあった。このような大規模な災害の際には、多数の被害者の身元確認が必要となる。身元確認には、歯科的特徴や指紋を用いた認証方法が用いられる。これらの方法は、事前に登録された情報と比較を行うため、不特定多数の身元確認において、多くの時間と費用を要する。近年、DNA鑑定は精度の高い認証方法として使用されているが、認証時間・費用の面から不特定多数の身元確認を行うことは難しい。これらの問題を解決する1つの方法として、人体もしくは人体にとりつける補助物への情報の記録がある。補助物に個人情報を記録できれば、被害者の特定にかかる時間や費用を大幅に低減できる。RF-ICタグの個人認証への適用が試験的に実施されているが、実用化のためには個人情報保護のためのセキュリティやルールを必要とする。爪への情報記録も検討されているが、実用上同様な課題を抱えている。我々は、本人認証のための歯科補綴物への個人情報の記録を行うデンタルメモリを実証した。発表では、医療保険が適用される一般的な歯科用金属である金銀パラジウム合金製の歯科補綴物へのフェムト秒レーザー加工を用いた光記録と光学顕微鏡再生に関して報告する。
☆一部、フェムト秒レーザーを用いた金属の加工特性は、レーザー加工の専門家むけ部分も含めるが、研究の概念や方法等、ほとんどの内容は、技術系の方なら容易に理解できる。
宇都宮大学 早崎 芳夫 氏
徳島大学 市川 哲雄 氏