-紫外線

2016年11月16日(水) 13:10-16:05
【-1 紫外デバイス開発と応用分野


光取出し効率の向上による高出力UVCLEDの実現

理化学研究所 平山 秀樹
 波長が230-350nmの紫外発光ダイオード(DUV-LED)、レーザダイオード(LD)は、殺菌・浄水、医療、生化学産業、照明、公害物質の高速分解(ダイオキシン、PCB)、高密度光記録、紫外硬化樹脂応用など、さまざまな分野での応用が考えられており実用化が期待されている。
 最近、窒化物AlGaN系半導体を用いた紫外LEDの開発が盛んに行われており、すでに実用可能な出力が達成されている。殺菌用途(波長250-280nm)の100ミリワット以上出力LEDの実現や、現在まだ開発途上にある光取出し効率向上に関して重要性が高まっており、これらの開発が最近大きな注目を集めている。
 本講演では、窒化物紫外LEDの最近の進展と実用化に向けた今後の技術開発のポイントについて、ワイドギャッップAlGaN系半導体の結晶成長、高効率化の素技術などについて概説し、今後の展望を述べる。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

AlGaN系紫外レーザーダイオードの短波長化と高出力化の動向

浜松ホトニクス(株) 吉田 治正
 紫外線レーザーには計測、分析をはじめ材料加工など様々な応用が考えられる。しかし現在のところガスレーザーや固体レーザーが広く利用されており、重量・大きさや効率、運用コストなどに加え波長制約などの課題がある。レーザーダイオードはこれらの課題をクリアするポテンシャルを有するが、短波長化が難しく動作波長370nm未満での実用化は進んでいない。装置の小型軽量化だけでなく用途の拡大や環境の観点から、紫外レーザーダイオードの開発と普及は極めて重要だ。
 発光ダイオード(LED)では、すでに210nmという深紫外領域までの短波長動作が実証された。また、光励起による紫外レーザー発振の報告も数多くあるが、電流注入による紫外レーザーダイオードの進展はLEDのそれと比べて極めて限られていた。
 2008年には初めてAlGaN系レーザーダイオードが波長342nmにて実現された。さらに短波長化などの研究開発が進められ、今ではHeCdガスレーザー波長に相当する326nmでの動作が実現している。また、従来のサファイア基板に代え、GaN基板上へのデバイス形成も試みられてきた。GaN基板の良好な劈開性により、発光遠視野パターンが著しく改善している。さらに縦伝導デバイスの構造が可能となり、ワイドストライプ化によるワットクラスのピークパワーも得られた。
 講演ではこれら最近の研究開発の動向について解説すると共に、開発したレーザーダイオードの短パルス動作や短波長を生かした応用の一部として、時間分解蛍光測定や距離測定、リモートセンシングについても言及する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

深紫外LED(波長<300nm)の実用化と応用の展望

創光科学(株) 平野 光
 創光科学株式会社は、2006年7月に設立された大学発ベンチャー企業である。2006年7月にに天野・赤﨑教授らの発表したサファイア上の超高温(1400℃)AlN成長を用いて、AlGaNによる短波長紫外線LEDを実用化する目的で設立された。2012年には、チップの出力が100mWで10,000h以上の長寿命を実現する技術的目処を立てた。量産化決定までには、歩留まり・故障解析・樹脂封止技術・量産結晶成長装置開発を行った。2014年6月には、ライセンス先の量産工場が竣工し、2015年6月より本格稼動した。今回は、最新成果である樹脂封止の実現を中心に紹介する。
 この技術により、DUV-LEDチップは電力効率で7%を達成する目処が立った。高圧水銀灯や超高圧水銀灯の効率は、10%前後である。これは全波長積分の効率で、用途によって利用しない波長も含む値である。総合効率で考えれば、波長を選べるLEDは水銀灯を凌駕しつつある。樹脂封止は、コストダウンに大きく寄与する。ウェファー単位でロット生産するLEDチップの製造コストに比べて、パッケージコストは高止まりする場合が多い。セラミック板にチップを配列して、転写成型でパッケージする方法は普及を促進する。寿命は、高圧・超高圧水銀灯の10倍を量産でも実現しており、水銀灯の一部と競争が出来る。水銀条約の批准もあり、DUV-LEDの普及が勢いを得る周辺状況である。実は、波長280-300 nmのLEDは効率も高く、280 nmは殺菌能力も高い。コンシューマ市場への期待も高まりつつある。
初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2016年11月17日(木) 09:30-12:25
【-2 紫外デバイスの応用(1)


深紫外LEDの高効率光取出し技術の現状と将来展望

丸文(株) 鹿嶋 行雄
 紫外線LEDは殺菌・浄水・院内感染の殺菌用途、白斑・アトピー性皮膚炎の医療用途、樹脂硬化の工業用途など多岐にわたる。しかし、電力光変換効率は数%と水銀ランプの20%に比較して低く実用化には未だ至っていない。その理由は量子井戸層で発光した光がp-GaNコンタクト層及びAu/Ni電極で吸収消失される事、LED素子と空気の屈折率差に起因する内部全反射により光を外部に取り出すことが容易ではないなど、光取出し効率が6~8%と低いことである。更に、LED素子をパッケージに搭載した場合、紫外光の吸収を抑制する有効な材料が無いことも挙げられる。
 この問題を解決する有効な手段として、サファイア基板の裏面に透過型フォトニック結晶を形成して紫外光をLED外部に取り出す事や、p-GaNコンタクト層に反射型フォトニック結晶を形成して紫外光の吸収消失を抑制する方法がある。そこで、本講演ではシミュレーションによるフォトニック結晶の設計方法及びナノインプリント・ドライエッチング・二層レジストを使用した一貫プロセスによる光取出し効率改善について紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

近紫外半導体レーザの高出力化と高輝度照明への応用

パナソニック(株) 瀧川 信一
 近紫外半導体レーザを蛍光体に照射することで白色光を得るレーザ照明は、省エネ、高効率、長寿命、水銀レス等の固体光源の特長に加えて、小発光点による高集光性などで白色LED光源に比べて優位性を有する。このレーザ照明は、工場などにおける高天井照明やスタジアム等の施設照明など新市場が期待されており、より明るい照明を得るため、近紫外半導体レーザの高出力化が望まれている。
 パナソニック(株)では、レーザ共振器内の光損失を低減させた素子構造による効率向上、および、素子の放熱経路を二重化させた実装による放熱性向上により、熱飽和を抑制し光出力を大幅に向上させた近紫外半導体レーザを実現した。また、高い光密度を有するレーザ光が照射されても変換効率が低下しない新型蛍光体材料や高均一蛍光体励起光学系などを開発した。これらにより、レーザ励起蛍光体の点光源性を活かせることができ、高効率で明るい遠方照明が可能となった。
 本講演では、上記の近紫外半導体レーザの技術要点を説明し、三つの照明機器応用例(スポット照明光源、小型高輝度光源、調色光源)について概説する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

紫外線皮膚治療器の開発

ウシオ電機(株)/名古屋市立大学 益田 秀之
 2002年に国産初のナローバンドUVBが、2008年にエキシマライト治療器が開発・上市されたことを契機に、乾癬や白斑等の自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患に対する治療方法として、紫外線皮膚治療器の普及が急速に進んでいる。ナローバンドとはピーク波長が311nmにあり、発光スペクトルが狭帯化されたランプを用いた機器であり、エキシマライトは、誘電体バリア放電の短時間放電が多数生じる特徴を生かして、希ガス原子や、希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの光を放射する放電ランプであるエキシマランプを用いた機器である。
 本セミナーでは、紫外線治療(ブロードバンド、PUVA、UVA1、ナローバンドUVB、エキシマライト)全般に関する概要、安全かつ効果的な紫外線治療に求められる装置仕様、およびそのための光学的な工夫に関する説明を行う。「紫外線によって免疫細胞を抑え、同時に皮膚への紫外線による副作用をどれだけ軽減できるか」という課題をもとに、乾癬に治療効果があるスペクトルを数値化、T細胞のin vitro試験を実施した際のデータを紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2016年11月17日(木) 13:10-16:05
【-3 紫外デバイスの応用(2)


非極性面上に作製したAlGaN量子井戸の発光特性

京都大学 船戸 充
 AlGaN系の量子井戸構造を用いたLEDやレーザダイオードの開発が進展している。これらデバイスの発光効率は、電流を注入する効率、注入したキャリアが光に変換される効率(内部量子効率)、発光した光を取出す効率の積によって記述される。
 本講演では、特に内部量子効率の向上を目指したわれわれの取り組みを紹介する。内部量子効率は、発光性と非発光性の再結合過程の競合により決定されており、「速い発光再結合」あるいは「遅い非発光再結合」が、効率向上に向けた基本的な設計指針となる。前者に関して、通常用いる(0001)極性結晶面においては、格子の歪に起因した分極効果により再結合確率が低下する(つまり、再結合が遅くなる)ことが知られている。これに対して、(0001)極性面から傾斜した、例えば(1-102)結晶面のような「非」極性面を用いることが有用である。窒化物半導体の作製で主として用いられる有機金属気相成長法によって、(1-102)面上に素子を作製する条件を確立し、その発光特性をフォトルミネッセンス法により評価した。(0001)面と比較して、分極効果が1/3程度に抑えられ、それにより発光効率が向上することを見出した。また、発光効率だけではなく、発光の狭線化など副次的な効果も表れている。講演では、これらAlGaN系量子井戸構造の作製、評価などを概説する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

高温アニール法を用いた高品質AlNテンプレートの作製

三重大学 三宅 秀人
 AlN(窒化アルミニウム)はAlGaN系深紫外発光素子や高出力電子素子の基板として最も有力であり、低コスト化、大口径化が可能なサファイアがAlN堆積の下地基板として主に用いられている。さらに、そのAlN堆積法として低コストで大口径が可能なスパッタ法に着目した。
 サファイア上にスパッタ法でAlNを堆積させるとc軸配向した微少な柱状のグレインが集合した膜が形成された。スパッタ法AlNにアニールを行うと原子のマイグレーション効果により島同士の合体が促され、表面の平坦化および転位の対消滅が発生した。X線回折によりAlNの応力評価を行うと、より高温でアニールを行ったAlNには強い圧縮応力がかかっている。これは、より高い温度でアニールを行うとグレイン同士の合体がより促され、主にサファイアとAlNの格子定数差に起因して発生する応力の緩和効果が小さくなったためである。1700℃でアニールを行った試料では、刃状転位、混合転位ともに大幅に低減したことが確認できた。見積もられる転位密度は108cm-2台であった。
 これらの結果から、サファイアを基板に生産性の高いスパッタ法を用いてAlN緩衝層の堆積を行っても1700℃でアニールを行うことで、平坦な表面を持ち低転位密度であるAlN緩衝層が形成できることが明らかになった。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

高AlNモル分率AlGaN混晶・量子井戸へのSi添加による発光効率改善について

東北大学 秩父 重英
 高速殺菌や消毒、バイオケミカル検出や見通し外光通信用の深紫外線光源として、高AlNモル分率(x)AlxGa1-xN混晶薄膜及び量子井戸を活性層に用いたLEDや電子線励起素子等が注目されている。有機金属気相成長(MOVPE)法によりAlxGa1-xN単結晶薄膜の成長を行う際、適量のSiを添加する事により発光効率が格段に向上することが三重大三宅教授らの研究により明らかになっていたが、その物性学的原因については明らかにされていなかった。
 本講演では、この原因を究明するため、先ず添加するSi濃度を変化させた高AlNモル分率AlxGa1-xN混晶薄膜のカソードルミネッセンス(CL)スペクトルや時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)信号を計測し、筑波大上殿教授により得られた陽電子消滅測定の結果と合わせて考察を行い、点欠陥を起源とする非輻射再結合中心(NRC)濃度と発光効率の関係を示す。
 次に、高AlNモル分率AlxGa1-xN多重量子井戸構造においても、井戸層に適量のSiを添加すると発光効率が向上する事を示し、その原因を時間空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)測定によって明らかにし、結晶成長時に取り込む点欠陥の濃度が変化する原因について議論する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

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