-関連学協会 特別交流シンポジウム

2016年11月15日(火) 10:30-16:40
【-1 バイオ・医療産業を支える最近のトピックス


JPC関西(日本フォトニクス協議会 関西支部)

植物バイオテクノロジーの現状と未来
大阪府立大学 岡澤 敦司
 本年度新規NEDOプロジェクトとして「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」がスタートした。 本プロジェクトでは、特定特定物質をターゲットに設定した上で、生産性向上に寄与する遺伝子の特定と改変、環境条件の最適化を行い、植物による高機能品生産の実用化技術を開発することが目的とされている。また、OECDは2030年にバイオテクノロジーを利用した産業が全GDPの2.7%規模(約200兆円)に成長すると予測している。その背景には、ゲノム情報の集積や生物機能の改変に関する技術革新などがある。植物の育成には光が不可欠であるため、植物を用いた物質生産技術には光技術が含まれる。
 本講演では、まず植物バイオテクノロジーの基礎を概説し、いくつかの実用化事例を紹介することで、現状とその課題について述べる。さらに、植物バイオテクノロジーにおける光の活用を中心に、植物による物質生産の将来について論じる。

光学薄膜研究会

LEDを利用した光環境制御による高品質野菜の生産
玉川大学 大橋 敬子
 植物工場には太陽光を一切利用せず閉鎖系で人工光源のみを利用して植物生産する完全人工光型植物工場と太陽光のみを利用する、あるいは太陽光と補光ランプを併用する太陽光利用型植物工場の2つのタイプが存在する。本講座では玉川大学で運営している完全人工光型植物工場の取り組みと研究の紹介を行い、植物工場の可能性や問題点をレビューする。
 我々は、赤色(660 nm)と青色(450 nm)の2色の発光ダイオード(以下、LED)を基本的な栽培光源として利用している。赤色光は光合成色素であるクロロフィルでの吸収が高く、光合成利用効率の高い光である。青色光は茎の長さや葉の形を変えるなどの形態形成を誘導する光であり、またアントシアニンを含む幾つかの二次代謝成分の合成を誘導する作用をもつ光である。まず始めに、リーフレタス栽培に適した赤色光と青色光の組み合わせについて説明する。次にミニトマトの栽培事例について紹介を行う。トマトの栽培には高い光強度が要求され、かつ、苗定植後から収穫までの栽培期間に膨大な日数を要する。既存の園芸種トマトを完全人工光型植物工場で生産することは極めて難しい。我々は、野生種、突然変異体や矮性種トマトを遺伝資源として用い, 完全人工光型植物工場に向いたトマト品種を開発する取組を始めている。それらの紹介を行いたい。最後に完全人工光利用型植物工場の将来について考えたい。

日本赤外線学会

連続波テラヘルツ光源とその応用 - 医薬品の分光分析 –
静岡大学 佐々木 哲朗
 電波と光の中間に存在するテラヘルツ波は、その特徴を利用して高速大容量無線通信や隠匿物検査などの実用化が進められつつあります。いっぽう、テラヘルツ波の周波数が分子振動の周波数に一致することを利用した「テラヘルツ分光スペクトル測定」は遠赤外分光測定と呼ばれ、古くから基礎研究の手段として注目されていたのですが、近年特にレーザー技術の進化に伴って技術が急速に進化し、改めてテラヘルツ分光スペクトル測定と呼ばれるようになり、容易に精密なスペクトルが得られるようになってきました。この周波数帯の分光スペクトルには、それらの分子や結晶構造に固有な振動に対応した吸収が現れるので、物質の検知・定量や結晶構造の特定を行うことができることに加え、結晶中に混入する不純物や格子欠陥などの結晶欠陥を検出できるので、これを利用して医薬品などの有機分子製品の分子レベルの品質検査への応用が期待されています。
 我々は広帯域連続波テラヘルツ光源を独自に開発し、高精度テラヘルツレーザー分光スペクトル測定装置を実現しました。講演ではこれらの装置を紹介すると共に、有機分子のテラヘルツ帯分子振動の帰属について考えながら、特に医薬品の分光分析応用について、できるだけ実際の測定例を示しつつ将来展望を議論します。

日本光学会

光学顕微鏡の基本的限界と限界突破技術
理化学研究所 磯部 圭介
 光学顕微鏡は、生命現象を可視化可能な手法として、生物・医科学分野における重要な技術となっている。空間分解能は回折限界によって制限され、電子顕微鏡などに比べると不十分であったが、回折限界を超えた空間分解能を達成可能な超解像顕微鏡が開発されている。しかし、空間分解能を向上させると、信号強度が弱くなるため、焦点面外から発生する背景光に埋もれやすくなり、観察可能な深さが制限されている。一方、背景光の発生を抑制可能な多光子顕微鏡も開発され、生体組織などの深部観察に有用な技術となっている。しかし、それでもなお、背景光が多光子顕微鏡の観察可能な深さを制限している。また、多光子顕微鏡では、可視光ではなく近赤外光が使用されるため、空間分解能が低い。このように、空間分解能と観察可能な深さはトレードオフの関係にあるため、空間分解能や観察可能な深さが足りない場合がある。
 我々は、空間分解能と観察可能な深さのトレードオフの関係を打破する技術として、背景光を抑制・除去すると同時に空間分解能も向上可能な技術の開発に取り組んでいる。本講演では、開発技術の原理を説明するとともに、開発技術を用いたイメージング例を紹介する。また、最近の装置開発状況と今後の展望についても述べる。

日本分光学会

赤外自由電子レーザーの生命科学への応用    :タンパク質フォールディング病の治療に向けた工学的アプローチ
東京理科大学 築山 光一/川﨑 平康
 自由電子レーザーとは、相対論的電子ビームと電磁場との強い相互作用により、コヒーレントな電磁波を発生させる装置の総称である。東京理科大学野田キャンパスに設置されている赤外自由電子レーザー(FEL-TUS: Free Electron Laser at Tokyo University of Science)は、5 ~ 10 mにおいて周波数可変であり、ピコ秒パルスを発振する高出力パルス光源であることから、赤外多光子吸収過程に基づく選択的な化学反応を誘起することが可能である。
 本講演では、前半にFEL-TUSの概要並びに化学の基礎分野における利用研究について講演し(築山)、後半では生命科学分野へのFEL-TUSの応用研究、特にアルツハイマー病など難疾患を含むタンパク質フォールディング病の新規治療技術の開発に向けたFEL-TUSの利用研究の最近の成果と今後の展望について発表する(川﨑)。

レーザー学会

誘導ラマン散乱を用いた無染色生体顕微鏡とその応用
東京大学 小関 泰之
 近年、生体を染色せずに観察可能なラマン顕微鏡の研究が活発になされている。ラマン顕微鏡では、試料の前処理を省略できるだけでなく、従来の染色や標識技術の適用が難しかった、脂質等を始めとする小さな生体分子の可視化に有効と考えられている。従来、ラマン顕微鏡は極めて低速であったが、近年、ラマンイメージングに要する時間が大幅に短縮され、高精細なイメージングが可能となり、ラマンイメージングの応用が広がっている。我々は、ラマン効果のひとつである誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering, SRS)を用いた顕微鏡の開発を進めてきた。また、独自の波長可変光源を用いたSRS分光顕微鏡によって、生体組織や種々の細胞をマルチカラーで3次元的にイメージングすることに成功している。
 本稿では、SRS顕微鏡の原理や特長について平易な説明を試みるとともに、これまでの応用例を概観し、今後の展開を議論する。

日本フォトニクス協議会 紫外線研究会

光線皮膚治療の現状と将来展望
名古屋市立大学 森田 明理

皮膚疾患に対する光線療法は、311nmナローバンドUVBや308nmエキシマライトなど波長特性を利用し、非常に高い効果をあげている。乾癬、アトピー性皮膚炎、白斑などの難治性皮膚疾患に有効である。本邦で、多くの照射機器の開発をおこなってきたが、特にエキシマライト療法では、病変部のみの照射を可能にし、さらに照射回数を少なくすることも可能となった。現在、メカニズムの解析を行い、波長特性を明らかにし、対象とする疾患も皮膚がんを加え、さらなる光線療法(光線力学療法)の機器開発をすすめている。将来のLED化は、波長特性の意味でも、また、安定した照射からも、次世代光線療法の多くは、LED化されるであろう。

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