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Vol.2コラム「流星」に対するご意見

名古屋大学プラズマナノ工学研究センター 海老塚 昇 特任准教授

【国立極地研究所(元MUレーダー観測所)の中村 卓司 教授のコメント】
 メールで申し上げたように流星数についてはどの程度以上のものをかぞえるか(肉眼流星、電波流星、高感度での電波流星など)によって総数が異なります。これと重量総量に諸説があるというのは別次元と思います。前者は観測データがふえてもどの程度以上の流星をかぞえるかで依然ばらばらですが、後者は観測が進めばやがて精度がよくなる数字です。したがって前者はこれは間違いとかいう性格のものでないですが、後者は事実よりも多い少ないという議論がサイエンティフィックにありうると思います。


肉眼で見える流星の数について

 宮崎大学の前田さん(編集部注:宮崎大学工学部 前田幸治准教授)や我々の高感度ビデオカメラ(I.I.CCTV, I.I.-HDTV)による観測では、標準レンズの視野内(高度110kmにおいて4000 km^2)に肉眼で見える(5等級より明るい)流星の出現数は、季節や時刻によって変動がありますが、1時間あたりに6〜40個程度でした。
 肉眼で見える流星は地球が進む方向が天頂にある時(明け方)に多く出現し、反対側(夕方)は極端に少ないので、上記の肉眼流星数をザックリと地球半球の面積について換算すると、1日あたり900万〜6,000万個くらいになります(査読付き論文等には掲載していない,非公式な数値)。


MUレーダーが捉える流星の数について

 MUレーダーの観測について調べてみたところJ. Kero et al., "First results from the 2009-2010 MU radar head echo observation programme for sporadic and shower meteors: the Orionids 2009", MNRAS, 416, 2550-2559, 2011にはヘッドエコーモード(流星の大気衝突面による等法的な電波の散乱を検出する観測モード。流星体の正確な軌道や質量を求めることが可能。比較的大きな流星体が観測対象。)で検出可能な流星体の最小質量が10^-9 kgとあります。
 この時の観測では明け方に散在流星数がピークになり30 [km^-2 hour^-1]であり、光学観測と同様に夕方にはほとんど検出されていません。この値からザックリと地球半球の面積について1日あたりの流星数に換算すると30*24*2*π*(6,400)^2=1900億個/日(編集部注:NHKの計算方法と同じく地球全球で換算すると3700億個/日)になります。

【中村 教授のコメント】
 NHKのTVクルーが観測所を来所したときに、レーダーで観測した1晩(1昼夜)の流星の軌道観測を紹介しました。それを地球全体24時間に換算したのが2兆個で、MUレーダーで全世界を覆った時に観測できる流星数ということになります。この推定数も±1桁くらいの誤差のある量です。すこし微小な(暗い)ものまで含めると流星の数は飛躍的に増大します。

地球に流入する流星体の総量について

 一般に星間粒子や惑星間粒子(流星体)の数は直径の-2.5乗の冪に乗ると言われていますので、総質量の大半を最小サイズの粒子が占めることになります(直径が1桁、すなわち質量が3桁異なる流星体の総質量比は1:10^0.5= 1:3.16)。
 太陽風や光圧に対抗して地球軌道まで到達できる粒子は密度が1g/cc、直径が1μm程度であるとすると、質量が約10^-15 kgになります。このサイズでは単位質量あたりの表面積が大きいため、加熱に見合う冷却が容易に得られるために燃え尽きることなく地表に到達すると考えられています。このような流星体が生命起源物質を地球に運ぶという内容をNHKスペシャルでも取り上げていたように記憶しております。
 地球への流星体の総流入量について最近の論文を調べてみたところ、G. Drolshagen et al., "Comparison of Meteoroid Flux Models for Near Earth Space", Earth, Moon, and Planets,102, 191-197, 2008. のAbstractに“The persisting differences even for near Earth space can be seen as surprising in view of the numerous ground based (optical and radar) and in situ (captured Inter Stellar Dust Particles, in situ detectors and analysis of retrieved hardware) measurements and simulations.”とあります。意訳すると「数多くの地上(光学や電波)観測、宇宙空間における計測(流星体の捕獲、粒子検出器、地上に持ち帰った衛星)およびシミュレーションの見地から求めた地球近傍空間における[流星体の総質量に関して]、過去から続いている相違が驚くべきことに依然として見られる。」といった感じでしょうか。
 また、U. von Zahn, "The total mass flux of meteoroids into the Earth's upper atmosphere", ESA SP-590, 33-39, 2005(査読なし)によると、流星の明るさや電波反射強度、衛星のマイクロクレータから質量を求めるのにはいくつかの仮定があり、あるサイズの流星数について高感度CCTVカメラ等の光学観測と電波観測によって求めた値、あるいは電波観測と衛星のマイクロクレータによって求めた値が一致しないことが問題になっています。

【中村 教授のコメント】  von Zahnのいってる電波観測はMUレーダーの最新の観測のようなヘッドエコーでなくて飛跡観測(流星の飛跡に対して電波が垂直に反射するエコーを検出する観測モード。微小流星の検出が可能。ただし、流星軌道を法線として観測地点を含む平面近傍に出現した流星のみが観測可能)で誤差が大きい(仮定が多い)ものだと思います。

 私もある研究会で「太陽系外起源の流星」について発表した時に引用した文献の主に電波観測の値と、前田さんや我々の高感度カメラデータを比較した時に確か2桁くらいの違いが生じてしまいました。

【中村 教授のコメント】
これも古い電波観測をいってると思います。

 さらに、流星体の地球に対する速度によって明るさが大きく異なり、低速の流星体(主に小惑星起源)については不確定性がかなり大きいはずです。そのために地球への流星体の総流入量等は研究者によって意見が分かれるところではないかと思われます。

【中村 教授のコメント】  流星数は質量が小さくなるほど数が極端に多くなるため平均値での議論は有効でないかと思います。あと質量を考えるときには電波による流星(ヘッドエコー)の数分布に速度の3乗という補正項を掛けて我々は集計しています。これは速度の速いものほど小さいものまで大気を電離することの補正です。

 von Zahnが地球への流星体の1日の総流入量についてもっとも良い値としてスペースシャトルによって回収された衛星のマイクロクレータの直径から求めた110±55t(Love & Brownlee, 1993)を挙げています。
 他には衛星の貫通, 衝突, イオン化検出器等、電波、光学観測を内装して求めた44t(Hughes, 1978)、プエリトルコの300mアレシボ電波望遠鏡観測(1997年11月15-18日と1998年11月15-17日、しし座流星群の活動時期)の4.4tと7.4t(Mathews et al., 2001)を比較しています。

【中村 教授のコメント】  地球全体でどのくらいの流星重量が降っているか、単体の観測から求めるのはなかなか大変ですが、我々MUレーダーの観測からもレーダー信号の強度(散乱断面積)や速度によるレーダーの観測面積の差異などを精査して質量フラックスを見積もる予定にしています。もちろんレーダーで見えない部分は外挿するなどの仮定をする必要もあります。

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