-宇宙・天文光学

2017年04月19日(水) 09:30-12:25
【-1 JAXA(相模原)の研究者が語る宇宙コース


世界初の宇宙ヨット「イカロス」の挑戦

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 森 治
 「ソーラーセイル」は、太陽の光の圧力をセイル(帆)に受けて宇宙空間を航行する宇宙ヨットであり、太陽の光さえあれば燃料なしで推進力を得ることができる夢の宇宙船です。このアイデア自体は約100年前からあり、SFやアニメにもよく登場します。しかし、これまで世界中で研究が進められているにもかかわらず実現されていませんでした。
 一方、「ソーラー電力セイル」は、セイルの一部に薄膜の太陽電池を貼り付けることで、太陽光による加速と発電を同時に行う日本独自のアイデアです。ソーラー電力セイルはソーラーセイルにより燃料を節約できるだけでなく、太陽から遠く離れた場所でも、大面積の薄膜太陽電池を利用することで十分な電力を確保できます。
 JAXAでは2010年に小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」を打ち上げ、世界で初めてソーラーセイルとソーラー電力セイルを実証することに成功しました。この成果を踏まえ、新たに、大型のソーラー電力セイルと高性能なイオンエンジンを組み合わせて木星圏を探査する計画を検討しています。
 本講演では、イカロスのシステムおよびミッションについて説明し、現在検討中のソーラー電力セイル探査機による木星トロヤ群小惑星探査計画について紹介します。
難易度:一般的(高校程度、一般論)

「あかつき」が解き明かす金星気象の謎

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 佐藤 毅彦
 金星探査機「あかつき」は2015年12月に金星周回軌道に投入され、初期チェックアウトを経て2016年4月から本格的な金星観測を開始した。5台の観測カメラと、1台の電波科学用超高安定発振器を搭載し、金星大気の3次元的な観測(時間を含めれば4次元)を行っている。地球の双子星と呼ばれるほど大きさ・質量が似通いながら、地球とはまったく異なる環境をもつ金星。「あかつき」は、その金星の特異な気象(スーパーローテーションに代表される)を連続観測する世界初の惑星気象衛星であり、金星がなぜ今のような姿になったのか、その本質に迫ることが期待されている。
 講演では、金星とその科学について概観し、それに挑む「あかつき」の構成、そして最新データと得られつつある知見などを分かりやすく説明する予定である。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

火星衛星探査ミッション(MMX)

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 川勝 康弘
 火星衛星探査ミッション(Martian Moons eXploration:MMX)は、火星の衛星からの世界初のサンプルリターンミッションである。火星衛星の起源の解明、惑星形成過程と物質輸送への制約、火星圏進化史への新たな知見の獲得とともに、宇宙工学を先導する航行・探査技術の獲得をミッション目的として掲げ、2020年代前半の打上げを目指し、JAXA宇宙科学研究所にて検討を進めている。
 火星衛星からのサンプル回収を目指す本ミッションは、火星圏へ往復する世界初のミッションとなる。探査機は、打ち上げの約1年後に火星圏に到達、火星衛星近傍には約3年間滞在し、火星衛星や火星のリモートセンシング観測を実施する。また、火星衛星に接近・着陸し、火星衛星表面から試料を回収する。試料の回収後、探査機は火星圏を脱出、地球への帰路につき、約1年後に地球に到達、採取した試料は地上で回収する。
 探査機は、火星往復に必要な軌道変換を実現するため、打上総質量が約3000kgを超える、我が国最大の深宇宙探査機になると想定される。探査機に搭載するミッション機器は、火星衛星表面の観測や周辺環境の計測に用いる科学観測機器、火星衛星試料を採取するサンプリング装置、そして、採取したサンプルを収納して地球大気圏に突入するサンプルリターンカプセルから構成される。
 現状、ミッションの定義が終わり、概念設計を進めつつ、探査機システムの仕様を検討している段階にある。発表においては、その検討状況についても紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2017年04月20日(木) 09:30-12:25
【-2 JAXA(つくば)の研究者が語る宇宙コース


地球観測用赤外線検出器の開発とその応用

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 片山 晴善
 赤外線センサは、気象観測、災害観測、環境監視など多くの地球観測ミッションにおいて重要な役割を果たしている。
 本講演では地球観測用の赤外線センサについて、光学系、赤外線検出器等の要素技術についての概要を述べた上で、JAXAがこれまで開発を行ってきた赤外線センサについて紹介する。
 またJAXAが将来の地球観測用赤外線センサに向けて開発を行っている赤外線検出器の研究とそれらを利用した地球観測への応用事例を紹介する。
 本講演ではこれらを極力、初心者にも分かり易く説明する予定である。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

地球観測衛星搭載大型カメラの基礎 ~「だいち」から先進光学衛星へ~

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 度會 英教
 JAXAは2種類の大型光学カメラを搭載した陸域観測技術衛星「だいち」を2006年に打ち上げ、大きな成果を挙げてきました。「だいち」は2011年に運用を終了していますが、その撮影データは現在も様々な分野で活かされています。
 現在、JAXAでは「だいち」の光学ミッションを引き継ぐ先進光学衛星(2020年度打上げ予定)の開発を進めており、「だいち」と比べ大型・高性能化したカメラを搭載することにより、広い観測幅(直下70km)を維持した上で、さらに高い地上分解能(直下0.8m)の実現を目指しています。このように広視野と高分解能を両立させたカメラは世界にも類をみず、先進光学衛星の大きな特徴となっています。

 本講演では、まず「だいち」搭載カメラを素材に、地球観測用大型光学カメラの撮像原理や仕組み、さらに宇宙環境に起因する開発の苦労などについて示します。
 後半では、先進光学衛星のミッションを紹介し、それらがどのように搭載カメラの具体的な設計にブレークダウンされているかを主に光学的な観点から示します。
 海外の商用高分解能衛星搭載のカメラと比較も行いながら、先進光学衛星搭載カメラの設計思想および特徴について詳しく解説します。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

光データ中継システムについて

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 佐藤 洋平

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2017年04月21日(金) 09:30-12:25
【-3 国立天文台の研究者が語る天文コース


重力波天体を追って

自然科学研究機構 国立天文台 田中 雅臣
 2015年、2つのブラックホールの合体によって放たれた「重力波」が史上初めて直接検出されました。重力波を使って宇宙を探る「重力波天文学」が幕を開けたと言えます。宇宙において代表的な重力波源は、ブラックホールや中性子星などの超強重力天体が合体する現象で、今後はブラックホールの合体だけでなく、中性子星の合体からの重力波も検出されることが期待されています。
 重力波に加えて、重力波天体が放つ可視光や赤外線、電波などの電磁波を捉えることができれば、重力波天体の研究がより一層進むと期待されています。このように、天体が放つあらゆるシグナルを駆使する天文学は近年「マルチメッセンジャー天文学」と呼ばれ注目を集めています。特に中性子星を含む合体現象は、金やプラチナなどの元素を宇宙空間に放出することが分かっており、重力波天体からの電磁波を捉えることができれば、宇宙におけるこれら貴金属の起源を明らかにすることができると期待されています。
 本講演では、重力波天体からの電磁波放射を捉えようとする研究の最前線をお伝えします。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

30m超大型望遠鏡の巨大・精密システム

自然科学研究機構 国立天文台 杉本 正宏
 口径が30mにもなる超大型光学赤外線望遠鏡 – Thirty Meter Telescope (TMT)の建設が進められています。TMTはアメリカ合衆国、カナダ、中国、インド、そして日本の5カ国が協力をして建設します。
 TMTの望遠鏡本体は日本が開発・製造を担当します。重量は2500トン、幅・高さが50mにも及ぶ巨大な構造物でありながら、時々刻々と位置を変えていく星を精度よく追尾します。30mの望遠鏡が達成できる解像力は東京から大阪にある1円玉を識別できるほどですが、この実現のためには望遠鏡の追尾能力はこれよりさらに高い精度が必要となります。このほか、望遠鏡本体の安全設計にも細心の注意が払われており、例えば1000年周期で発生する巨大地震(震度7相当)が起こったとしても望遠鏡が壊れないよう考慮されています。また望遠鏡には最先端のロボット技術を応用した分割鏡交換機構も搭載されます。これはTMTの主鏡を構成する分割鏡(492枚)を安全にかつ効率的に交換するための装置です。
 本講演では、TMTプロジェクトの紹介とともに、最先端のメカトロニクス技術が応用されながら開発が進むTMT望遠鏡を紹介します。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

星くずから地球へ

自然科学研究機構 国立天文台 小久保 英一郎
 生命を宿す惑星、地球。地球はどのようにして誕生したのでしょうか。地球をはじめとする太陽系の惑星は、約46億年前に原始太陽系円盤とよばれる太陽のまわりの円盤から誕生したと考えられています。円盤は、太陽の前の世代の星の星くずであるガスと塵からできています。この塵が地球のもとになります。
 まず塵が集まり、微惑星とよばれる小さな天体が生まれます。微惑星は衝突合体をくり返して大きくなり、原始惑星へと成長していきます。現在の地球の軌道付近には約10個の原始惑星ができます。この原始惑星が衝突をくり返して、最終的に地球が誕生します。そして、太陽からちょうどいい距離に、ちょうどいい質量と組成で誕生した地球は、海をもつ惑星となったのです。
 星くずから地球へ、最新天文学が解き明かした地球の誕生物語を紹介します。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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