赤外線

2017年04月19日(水) 09:30-12:25
【-1 赤外線技術の基礎 、計測、ガラス材料


赤外線の基礎

静岡大学 廣本 宣久
 赤外線は、光や電波と同じく光速で伝搬する電磁波で、可視光の赤色よりも波長が長い(周波数が低い)、目に見えない不可視光です。赤外線の「線」は、放射線の「線」に由来しますが、「線」を付けずに赤外や、また赤外光とも呼ばれます。本講演では、電磁波としての赤外線の分類と性質、研究の歴史、赤外線の物理を記述するマクスウェル方程式、伝搬、放射と光源、熱放射とプランク放射、検出、雑音と性能指標、利用について学びます。本講演の主な内容は以下の通りです。
 1.赤外線 (1)光と電磁波 (2)赤外線・テラヘルツの分類 (3)基本的な性質と特徴
 2.研究の歴史 (1)赤外線の発見 (2)赤外検出器の発展 (3)赤外分光の発展  (4)赤外線からテラヘルツへ
 3.電磁波のマクスウェル方程式 (1)電磁気の波動波 (2)電磁波の性質 (3)波動性と粒子性 
 4.伝搬 (1)透過と反射 (2)吸収 (3)大気の伝搬特性と窓 (5)透過材料
 5.放射 (1) ダイポール放射 (2)熱放射 (2)キルヒホッフの法則 (3)プランクの黒体放射 (4)量子カスケードレーザと光源
 6.検出 (1)赤外検出器の分類 (2)量子型検出 (3)熱的検出 (4)電界検出
 7.雑音とNEP、検出能  8。赤外線の利用 ハイパースペクトルイメージング
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

赤外線計測の実際

国立研究開発法人情報通信研究機構 水谷 耕平
 地上においては環境からの赤外線輻射に囲まれているため、赤外線を検出し、計測を行おうとする場合には測ろうとする対象からの赤外線以外の赤外線も検出器に入ってきます。また、検出器の雑音も可視光用の検出器に比べ大きくなりがちです。
 本講演では赤外線計測で問題となる赤外線放射元や検出器の感度、雑音などの表現方法を解説し、赤外線センサの性能評価法を説明します。また、どのように赤外線放射が計測されるのか実際の状況での定式化を行います。分光やイメージング、アクティブセンシング等での赤外線計測の応用例についても学びます。
 主に直接検出技術について扱いますが、ヘテロダイン検出についてもレーザー光を使ったアクティブセンシングの例をとって解説します。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外透過材料の基礎 ~ガラス材料を中心に

株式会社住田光学ガラス 沢登 成人
 赤外透過材料に関し、どのような物質が赤外透過可能なのかこの波長域での光吸収と透過の関連を分子振動特性から考察し、赤外透過特性のよい材料を作るためにはどのような化合物が適切かを予想する。
 また、予想される化合物から作られる赤外透過ガラスはどのような組成系となるのかこれまでの研究事例などから酸化物ガラス、カルコゲナイドガラス、フッ化物ガラスなど、いくつかの具体例を紹介する。
 これらのガラスの製法や特徴的な物性から、光学素子としての実用性などについて考察する。また、波長1~2μmの近赤外領域における光学ガラスの光学物性についても解説する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2017年04月19日(水) 13:10-16:05
【-2 赤外線機器の利用法 ~サーモグラフィ、農業・食品分野~


赤外線サーモグラフィの産業への応用

株式会社サーモグラファー 山越 孝太郎
 近年、赤外線サーモグラフィ装置は小型・軽量化と操作性の向上が進み、価格も安価になり急速に普及しつつあります。
 本講演では、赤外線サーモグラフィ装置の原理と特徴と、様々な産業分野での応用と特に最近注目されている保全分野での赤外線サーモグラフィの適用について、具体的なアプリケーション事例と一部実演を交えながら説明いたします。
難易度:一般的(高校程度、一般論)

農業・食品工学分野への応用

筑波大学 粉川 美踏
 赤外線の中でも可視光に近い近赤外線は、農産物や食品の検査や品質評価に広く使われています。果実の収穫適期の判定、穀物や野菜の品質評価、異物検出・同定など様々な計測を迅速、かつ非破壊で行えることが大きな利点です。一方、近赤外スペクトルはピークの幅が広く、複雑な形状をしているため、1波長での値(吸光度)から特定成分の同定や定量を直接行うことができず、スペクトル全体の形状と化学成分の情報を結びつけるための多変量解析が必要となります。
 本講演では、主に近赤外領域の光を扱い、食品や農産物への応用事例を紹介しつつ、化学成分とスペクトルをつなぐ多変量解析の基礎的知識やポイントを解説します。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

近赤外イメージング装置開発とその応用

東北大学 石川 大太郎
 近赤外分光法は、非破壊性、非侵襲性や高い透過性だけでなく、スペクトルの再現性や安定性等実用上の多くの利点を有している。
 近赤外分光装置は高速性やコストパフォーマンスにも優れていることから、製造工程中でのリアルタイム(もしくは準リアルタイム)な対象評価ツールとして医薬品、生体、高分子および農業分野など様々な分野で利用されている。ここで対象の均質性や形態特性は、最終製品の質に重要であるため、近年では、対象をより詳細に分析するため、濃度分布の不均一性等に関する情報を提供可能なイメージング技術が注目されている。分光イメージング装置の開発は、波数、空間分解能、測定領域、装置のサイズとコスト等の考慮が必要不可欠である。一般的に近赤外イメージング装置の空間分解能は赤外やラマンイメージングのそれより劣る場合が多いが、上述したような特徴を活かし、より実用的な用途を模索することで、プロセスモニタリングのための有効なツールとなる可能性を秘めている。
 本講演では、近赤外イメージング装置の特徴について解説し、また近赤外イメージングを用いた錠剤の溶出過程モニタリング事例や高分子の結晶性評価に関する事例について紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2017年04月20日(木) 09:30-12:25
【-3 赤外線機器の開発 ~防衛、赤外線カメラ etc.~


防衛分野における赤外線技術

防衛装備庁 工藤 順一
 情報化が進んだ現代においては、情報収集能力は安全保障に大きく影響を与え、如何に有益な情報を収集できるかが重要になっています。赤外線技術は情報収集に多大な貢献をしており、今後も我が国の安全保障において重要な役割を果たしていくと考えられます。
 本講演では、「防衛分野における赤外線技術」と題し、安全保障の重要な役割を担う防衛分野において、実際にどのように赤外線技術が活用されているかについて、防衛分野における赤外線技術の特徴や技術動向、民生技術との係わり、諸外国の状況などをまじえながら、実際に防衛装備庁において実施した研究例を紹介しつつ、防衛分野における赤外線技術について述べていきたいと思います。

 なお、本講演資料は、昨年の同講演題目をベースに作成しております。重複する内容が多々ありますので聴講申込にはご注意ください。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

非冷却型&量子型赤外線カメラの開発とその問題点について

株式会社ビジョンセンシング 水戸 康生
 非冷却型遠赤外線カメラは、この数年で半額になり、色々な用途に活用される価格帯に入ってきた。この遠赤外線カメラを設計するにあたり、カメラの心臓部ともいえるディテクタの選び方から設計上の注意点を紹介します。また、遠赤外線カメラが、可視カメラと異なり、簡単にレンズを交換することができない理由など、光学系を含めた設計上の難しさを紹介します。
 最近、購入可能な価格になってきた、量子型近赤外線カメラの性能の違いを紹介します。カタログに記載されていないことが、多いこのカメラの評価方法を含め設計上の注意点やアプリケーション例なども含めて紹介致します。
 また、赤外線用のディテクタは、輸出管理規制品であるため、輸出入や再輸出など法律上の問題点も紹介します。
難易度:一般的(高校程度、一般論)

最新の赤外線機器の動向 ~近赤外線からTHzまで~

コーンズテクノロジー株式会社 平岩 哲也
 近年の急激な技術の進歩に伴い、産業や研究用途をはじめとする幅広い分野で赤外線技術を用いた機器が開発され、もはや我々の生活には欠かせないものとなっています。
 本講演では一部でテラヘルツにも触れつつ、最新の赤外線センサや装置について幅広くご紹介致します。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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2017年04月20日(木) 13:10-16:05
【-4 赤外線検知技術 ~癌組織、ガス検知等~


癌組織の赤外イメージング

関西学院大学 尾崎 幸洋
 最近、赤外、近赤外、ラマンイメージング等いろいろなケミカルイメージング手法が発展してきた。これらのケミカルイメージング手法は材料分析(ポリマーなど)、ナノマテリアル分析、薬品分析、生物医学分析などさまざまな分野で活発に用いられつつある。
 本講義では、赤外イメージングを中心にその原理、装置、解析法の基礎についてまず紹介する。装置については市販の装置を中心にイメージングの測定の原理について説明する。次に赤外イメージング法の長所、利点について解説する。解析法については、最も簡単なピーク強度によるイメージング測定のほかに、ケモメトリックス法を用いたイメージング作成法についても説明する。次に、生物医学分野一般への応用、最後に癌組織への応用について詳しく紹介する。
 また赤外イメージングとの比較で、近赤外イメージングやラマンイメージングの原理、装置、解析法について解説する。赤外イメージングの場合と同様にいろいろな装置を具体例にしてそれぞれの装置の特徴、利点などについても述べる。ラマンイメージングについては最近急速に進歩しつつある表面増強ラマン散乱や、チップ増強ラマン散乱法のイメージングについても説明する。
 また生物医学への応用についても解説する。最後にこれらの方法の現時点での問題点、将来への発展方法について解説する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

中赤外・量子カスケードレーザーの進展とその応用

浜松ホトニクス株式会社 秋草 直大
 量子カスケードレーザー(Quantum Cascade Laser; QCL)は、4μm~10μmに発振波長をもつ中赤外帯の半導体レーザーです。FTIRなどに取って代わる次世代の赤外分析用光源として普及し始めています。また、テラヘルツ帯の発振が実現されるなど、高機能化の進展にもめざましいものがあり、中~遠赤外領域におけるレーザー計測の可能性を急速に広げつつあります。
 本講演では、量子カスケードレーザの原理と特徴を解説し、具体的な応用例について紹介します。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

非分散型赤外線吸収方式によるガス検知の応用

理研計器株式会社 山下 大輔
 私たちの身の回りにある様々なガスは、世の中の産業を支える存在であると同時に危険な存在でもあり、正しい知識と設備で適正に扱う必要があります。そのため、ガスを消費・製造・貯蔵する現場、ガスが発生する現場などにおける作業の安全や設備の保全に、ガス検知器が役立てられています。対象となるガスに応じて様々な検知方式があり、赤外線技術を用いる方式もその1つです。
 本講演では、赤外線を利用したガス検知の安全・安心に関連する様々な場面での応用について、具体的な事例を中心に説明します。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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