赤外線応用技術セミナー

2020年04月22日(水) 09:30-12:25
【IR-1 赤外線技術の基礎

赤外線検出器(センサ)の基礎

立命館大学 木股 雅章 氏
本講演では室温付近の温度を持った物体から放射される赤外線を検出する波長領域3〜5µm帯および8〜14µm帯用赤外線検出器の基礎について解説する。対象とする赤外線検出器は、熱型と量子型の検出器で、イメージングにも適用できるものを中心に紹介する。熱型では、熱型検出器の基本構造と動作に加え、温度変化の検出方式として抵抗ボロメータ方式、焦電方式、誘電ボロメータ方式、ダイオード方式、熱電方式、バイマテリアル方式、サーモオプティカル方式に議論する。量子型については、赤外線エネルギーを吸収して変化した電子/ホールのエネルギー分布の変化を検出する手法と、半導体材料/構造に関わる技術(HgCdTeやInSbなどの狭バンドギャップ半導体を用いた検出器、Type-Iの量子構造を利用したQWIP (Quantum Well Infrared Photodetector)、Type-IIの量子構造を利用したType-II超格子検出器、内部光電子放出型検出器)をについて議論する。さらに、赤外線検出器を多数集積し、赤外線画像を得るために用いられる赤外線イメージセンサの構成、構造、動作についても説明する。また、赤外線検出器を利用する際必要となる赤外線放射、赤外線大気伝搬、放射率などに関する基礎、および感度、雑音等価温度差など赤外線検出器の基本性能の評価方法についても解説する。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外線光源の動向

(国研)理化学研究所 湯本 正樹 氏
赤外線領域の中でも、およそ2~15µmの領域に相当する中赤外線領域は、分子固有の吸収スペクトルが無数に存在するため、分子の指紋領域とも呼ばれます。この波長域における光源は、レーザー分光計測の技術を基礎とした環境計測、医療、レーザー加工など様々な分野への応用が期待されています。
本講演では、近年のLEDや半導体レーザーに加えて固体レーザー等の中赤外光源の開発動向について紹介します。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外線による計測の動向

(国研)情報通信研究機構 水谷 耕平 氏
赤外線を検出し、計測を行おうとする場合には測ろうとする対象からの赤外線以外の赤外線も検出器に入ってきます。また、検出器の雑音も可視光用の検出器に比べ大きくなりがちです。本講演では赤外線計測で問題となる赤外線放射元や検出器の感度、雑音などからどのように赤外線センサの性能評価を行うのか説明します。赤外線放射が計測される実際の状況での定式化を行います。測光、分光やイメージング等のパッシブセンシングとともに、レーザー光等を使ったアクティブセンシング(レーザーレーダ等)における赤外線計測の応用例についても学びます。主に直接検出技術について扱いますが、ヘテロダイン検出についてもレーザー光を使ったアクティブセンシングの例をとって解説します。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2020年04月22日(水) 13:10-16:05
【IR-2 赤外線の光学系の基礎

赤外透過材料~ガラス材料を中心に

(株)住田光学ガラス 沢登 成人 氏
赤外透過材料に関し、どのような物質が赤外透過可能なのかこの波長域での光吸収と透過の関連を分子振動特性から考察し、赤外透過特性のよい材料を作るためにはどのような化合物が適切かを予想する。また、予想される化合物から作られる赤外透過ガラスはどのような組成系となるのかこれまでの研究事例などから酸化物ガラス、カルコゲナイドガラス、フッ化物ガラスなど、いくつかの具体例を紹介する。これらのガラスの製法や特徴的な物性から、光学素子としての実用性などについて考察する。また、波長1~2μmの近赤外領域における光学ガラスの光学物性についても解説する。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外レンズ -設計と活用

(株)タムロン 安藤 稔 氏
近年可視光では見ることのできないものを見る技術として、赤外線(1 ~14μm)領域が注目されている。

赤外線の領域には、さまざまな分子のスペクトルが存在し物質の異なった特性を
見ることができる反面、その特徴から透過する材料が限られる。

レンズ設計においては、材料の特性や色収差の問題のため近赤外、中間赤外、
遠赤外それぞれの領域で使える材料などについて理解をすることが必要となる。

本公演では赤外線用カメラの活用について紹介するとともに,赤外線用レンズの材料の特徴を比較,それらを使用した光学設計について解説を行う。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

赤外コーティング

東海大学 室谷 裕志 氏

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2020年04月23日(木) 09:30-12:25
【IR-3 赤外線材料・光源とその応用

赤外吸収メタマテリルとその応用

(国研)理化学研究所 田中 拓男 氏
メタマテリアルは、波長より細かな人工構造を用いて物質の光学特性を制御した疑似材料である。メタマテリアルそのものは構造体であるが、それを構成する構造のサイズを波長より細かく設計・加工することで、1つ1つの構造は光波に直接感知されずにメタマテリアル全体が1つの均質な物質として振る舞う。そしてこのメタマテリアルでは、その構造をうまく設計することで、自然界から直接得られる物質では持ち得ない特異な光学特性をもつ物質を生み出すことができる。本講演では、メタマテリアルの概要について簡単に触れた後、光学領域で動作するメタマテリアルの中から特に光を吸収する光吸収メタマテリアルを中心にその原理と特性を述べる。そして可視光を吸収するメタマテリアルを例に、構造を調整するだけでその光吸収波長を自在に制御できることを利用して、様々な「色」を呈する発色構造体が実現できることを紹介する。さらに、赤外光を吸収する赤外吸収メタマテリアルにフォーカスを絞り、それを応用して赤外分光法の分子検出感度を飛躍的に高感度化する技術など、赤外吸収メタマテリアルの応用技術についても最新の研究成果と共に紹介する。また時間が許せば、メタマテリアルの加工技術やその特性評価手法についても紹介する。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

焼結法による赤外透過多結晶セラミックスの創製

(国研)物質・材料研究機構 森田 孝治 氏
焼結プロセスによって製造することができる透明多結晶セラミックは、比較的高い生産性と共に光学および機械的特性を同時に実現できる点で注目を集めている。多結晶セラミックにおいて優れた透過率を達成するための重要な要素は、緻密で微細な微細構造を達成することである。最近、緻密で微細な組織を有する透明なセラミックを達成するために、電場、超高圧および磁場のような外場効果が焼結プロセスにおいて広く利用されている。前者の2つは、粉末の緻密化を加速することができ、それ故に低温で緻密で微細構造を達成することを可能にする。3つ目は、多結晶セラミックの結晶配向を制御することで、結晶間の方位差を小さくし、粒界での光散乱を減少させることができる。個々の外部電界効果のさらなる改善が必要であるが、外場効果を融合した高度な焼結技術は優れた光学的および機械的特性を有する新規の透明セラミックの開発を加速できるであろうと予想される。本講演では、これまで物材機構において取り組んでした赤外透過多結晶セラミックスの創製に関する成果を中心にご紹介させて頂きます。

中赤外・量子カスケードレーザ(QCL)の基礎と赤外応用

浜松ホトニクス(株) 秋草 直大 氏
量子カスケードレーザ(Quantum Cascade Laser; QCL)は、4µm~10µmに発振波長をもつ中赤外帯の半導体レーザです。極めて高い波長分解能、および波長制御性により、干渉ガス雰囲気中のリアルタイム計測や、ppb (parts per billion) レベルの極微量検出など、次世代のガス計測用・赤外分析用光源として普及しています。また近年では、帯域幅1µm を超える波長スキャンが可能な外部共振器型の量子カスケードレーザも実現されており、非侵襲のグルコース計測や、食品や農作物の味覚の評価、表面残渣物の遠隔分析など、ガス計測以外への応用展開が急速に進んでいます。さらに、デバイス研究においてもサブテラヘルツ帯での発振が実現されるなど、半導体レーザの常識を覆す特性が得られています。本セミナーでは、量子カスケードレーザの基礎と特徴を、応用例と将来展望を織り交ぜながら概説します。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2020年04月23日(木) 13:10-16:05
【IR-4 赤外線のアプリケーション―防衛・ヘルスケア・農業への応用

防衛分野における赤外線技術

防衛装備庁 工藤 順一 氏
本講演では、防衛用光波センサにおいて特に重要な技術であります赤外線センサ技術について防衛装備庁電子装備研究所での研究開発状況 等を踏まえながら発表する予定です 。 また、昨年8月に防衛装備庁から公表されました研究開発ビジョンにも触れつつ、当該技術の動向について説明したいと思います。
発表できる範囲は限られております が、出来る限り 装備品への技術の適用の 考え方や将来への方向性が感じられるような内容にしたいと考えております。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

中赤外光を用いたヘルスケアモニタリング

東北大学 松浦 祐司 氏
最近、注目されている量子カスケードレーザ(QCL)などの中赤外光源を用いて、血糖値や脂質などを非侵襲で測定することが可能なヘルスケア機器の現状と将来展望について報告する。
 波長が2~12ミクロン程度の中赤外光を用いた分光法により、生体を構成するタンパク質、脂質、糖質などの高精度な分析が可能になるが、これまで分析にはフーリエ赤外分光光度計(FT-IR)などの大型の装置が必要であり、一般的な機器の開発は困難だった。ところが最近、中赤外量子カスケードレーザや、室温動作の半導体検出器が登場し、これらと中赤外光を伝送可能な中空光ファイバを組み合わせることにより小型かつ安価なヘルスケア機器の実現性が高まってきた。
 そこで本講演では、はじめに光学的手法による非侵襲血糖値測定法の原理を紹介し、中赤外光を用いることによるメリットについて述べる。次にFT-IRと中空光ファイバを組み合わせたシステムによる血糖値測定を行った結果についての報告を行う。その後、測定システムの小型化、低コスト化を目指し、光源として中赤外域で動作するQCLを新たに導入したシステムについての最新技術を報告するとともに、中赤外光を用いたヘルスケア機器の今後の展望などについて述べる。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

農業・食品分野への応用

東京大学 吉村 正俊 氏

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木股 雅章

立命館大学

理工学部 特任教授

1976年 名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 三菱電機株式会社入社。 2004年 三菱電機株式会社退社。同年 立命館大学理工学部教授。1980年より現在まで赤外線イメージセンサの研究開発に従事。2009年よりJAXAのType-II超格子赤外線センサの開発に参画。電気学会、日本赤外線学会、応用物理学会、IEEE会員、SPIEフェロー。2013〜2014年 日本赤外線学会会長。1988年 市村賞貢献賞、1993年 全国発明表彰内閣総理大臣発明賞、2016年 日本赤外線学会業績賞などを受賞。工学博士

湯本 正樹

(国研)理化学研究所

光量子工学研究センター 光量子制御技術研究開発チーム 研究員
バトンソーン研究推進プログラム 中赤外レーザー光源研究開発チーム 副チームリーダー(兼務)

2010年 東京理科大学大学院物理学研究科修了
2010~2015年 (独)理化学研究所 光グリーンテクノロジー研究ユニット 特別研究員
2015年~  (国研)理化学研究所 光量子制御技術開発チーム 研究員
2018年~  (国研)理化学研究所 中赤外レーザー光源研究開発チーム 副チームリーダー(兼務)

水谷 耕平

(国研)情報通信研究機構

戦略的プログラムオフィス マネージャー

1980年京都大卒,1985年京都大学理学博士.1991年郵政省通信総合研究所科学技術特別研究員,1998年同光計測研究室長.2006年情報通信研究機構センシング・ネットワークグループマネージャー,2011年同センシング基盤研究室総括主任研究員,2018戦略的プログラムオフィスマネージャー.2001-2017年首都大学東京(2004年までは都立科学技術大学)客員教授.専門分野はリモートセンシング、赤外線天体物理学。天文学会、赤外線学会、応用物理学会、米国光学会。

沢登 成人

(株)住田光学ガラス

専務取締役

1980年 立命館大学理工学部化学科卒業
同年 ㈱住田光学ガラス入社
研究開発部で光学ガラス、機能性ガラスの開発に従事する。
2019年 専務取締役
現在に至る

安藤 稔

(株)タムロン

光学開発本部 本部長

2003年 3月 名古屋大学大学院素粒子宇宙物理学専攻博士課程後期修了
 博士(理学)取得 赤外線天文学
2003年8月 株式会社 タムロン入社
デジタルカメラ用レンズ,リアプロジェクター用レンズ,監視カメラ用レンズ,車載用レンズ,赤外線レンズなどを担当
2014年3月 本部長代理
2015年4月~ 本部長

田中 拓男

(国研)理化学研究所

主任研究員

1991年3月 大阪大学工学部応用物理学科 卒業
1993年3月 大阪大学院工学研究科応用物理学専攻博士前期課程修了
1996年3月 同大学院工学研究科応用物理学専攻博士後期課程修了 博士 (工学)
1996年4月 大阪大学大学院基礎工学研究科 助手
2003年4月 理化学研究所 ナノフォトニクス研究室 研究員
2008年4月 理化学研究所 田中メタマテリアル研究室 准主任研究員
2017年4月〜 理化学研究所 田中メタマテリアル研究室 主任研究員
 理化学研究所 光量子工学研究領域 チームリーダー 兼務
 北海道大学 電子科学研究所客員教授 兼務
 埼玉大学 大学院理工学研究科 連携教授 兼務
 学習院大学 理学部物理学科 講師 兼務
 台湾 国立清華大学 客員教授 兼務
 徳島大学 pLEDフォトニクス研究所 客員教授 兼務

森田 孝治

(国研)物質・材料研究機構

機能性材料研究拠点 外場制御焼結グループ 主席研究員

1997年九州大学大学院総理工材料開発工学博士後期課程修了,博士(工学).1996年-1997年日本学術振興会特別研究員,1997年4月金属材料技術研究所(現:物質・材料研究機構)研究員、2010年-2012年ダルムシュタット工科大学客員研究員を経て、2016年4月より同機構主席研究員.セラミックスの超塑性・高温変形、放電プラズマ焼結(SPS)装置を利用した構造/機能セラミックスの創製と特性評価に関する研究に従事. 2001年日本金属学会奨励賞,2007年文部科学大臣表彰,2013年日本金属学会功績賞などを受賞.日本金属学会、日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会、各会員.

秋草 直大

浜松ホトニクス(株)

レーザ事業推進部 主任部員

1996年 北海道大学工学部 卒業
1996年 浜松ホトニクス株式会社 入社
1997年 同、中央研究所
2009年 同、開発本部
2014年 同、レーザー事業化部
2018年 同、レーザ事業推進部
現在に至る

工藤 順一

防衛装備庁

1995 年筑波大学大学院理工学研究科修了。 1995年より防衛庁技術研究本部第2研究所(現防衛装備庁電子装備研究所)にて、光波センサシステム、赤外線撮像装置等の研究開発に従事。 2015年11月より現職。工学博士。

松浦 祐司

東北大学

大学院 医工学研究科 教授

1988年東北大学工学部通信工学科卒,1992年東北大学大学院工学研究科修了,博士(工学).1993年住友電気工業横浜研究所研究員,1994年米国ラトガース大学セラミック工学科研究員として勤務の後,1996年東北大学大学院工学研究科助教授.2008年東北大学大学院医工学研究科教授.X線から遠赤外にわたる電磁波伝送路とその医療応用に関する研究に従事.レーザー学会,電子情報通信学会,応用物理学会,電気学会、SPIE会員.平成17年度文部科学省若手科学者賞受賞.レーザー学会東北・北海道支部長.