紫外線応用技術セミナー

2020年04月24日(金) 09:30-12:25
【UV-1 紫外線の基礎と応用

紫外線の基礎と応用

東海大学 佐々木 政子 氏
紫外線・可視光線・赤外線は“光”と総称される。可視光線の紫より短波長側にある眼には見えない400~100nmの電磁波が紫外線と呼ばれる。専門用語は紫外放射(ultraviolet radiation: UV)であり、略語UVが常用される。光は横波の性質を持つエネルギー粒子である。1光子のエネルギーεは 式(1)で示される。
ε=hγ=hc/λ(1)ここで、hはプランク定数、γは振動数、λは波長、cは真空中の光速である。式(1)から、光子のエネルギーは、電磁波の振動数に比例し、波長に反比例することがわかる。原子や分子で構成される物質が光子を吸収して起こる化学反応は、mol単位で行われる。物質1molあたりに含まれる粒子数はアボガドロ定数NA(NA ≒ 6.022 × 1023 mol-1)と呼ばれる。
1molあたりの光子エネルギーは、1光子のエネルギーεにアボガドロ定数NAを乗じて、E =NAε=NAhγ=NAhc /λ  [kJ mol-1] と求められる。
赤外線や可視光線より波長の短い紫外線の光子エネルギーは大きく、物質に吸収されると電子状態を変化させ光化学反応を起こす。物質への紫外線照射で始まる光化学反応は、日々の生活を支える多種・多様な産業に幅広く利用されている。 
本講演では、1. 紫外線とは、2. 紫外線の放射源 太陽光と人工光源、
3. 紫外線の計測法、4. 紫外線の人体作用、5. 紫外線利用技術と産業応用
について述べる。

なお、紫外線波長帯域を区分する用語:UV-A、UV-B、UV-Cは、1932年に光療法の普及過程で提案され、現在は国際照明委員会(CIE)の定義用語となっている。しかし、研究・産業分野によって同一用語を使いながら、帯域区分波長が異なる場合が多々ある。
用語UV-A、UV-B、UV-Cを用いて紫外線を論ずるときには波長明記が必須と言える。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

AlGaN系紫外線LEDおよび紫外LDの現状

名城大学 岩谷 素顕 氏
固体材料を用いたAlGaN系紫外発光素子は、従来用いられてきた真空管を用いた紫外線光源やガスレーザ、さらには固体材料を用いたレーザに比べ、小型・高効率・長寿命・高量産性など多くの利点がある。したがって、実用化すれば応用分野の拡大が大きく期待されている。現状、紫外LEDに関してはAlGaN結晶の高品質化などによる内部量子効率の向上、さらには光取り出し効率の改善が進められ、外部量子効率が10%を超えるものが実現されている。一方、紫外レーザに関しては2019年度に大きく進展があり、UV-CおよびUV-B領域の半導体レーザの実証が進められており、今後実用化に向けた可能性が見いだされつつある。これらの課題を解決するためにどのような方法が用いられているのかを解説した上で、今後の方向性に関して説明を進めたいと考えている。内容はできる限り素人でも分かるように説明する予定ですが、一般的な大学で学んだ半導体工学や電気磁気学、量子力学などの基本的な知識を有していることを前提で進める予定です。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

産業用紫外線レーザーの応用展開

(国研)理化学研究所 和田 智之 氏

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2020年04月24日(金) 13:10-16:05
【UV-2 紫外線応用技術-EUV、UV硬化、殺菌

EUVの半導体製造アプリケーション~リソグラフィからフォトマスク計測まで

ギガフォトン(株) 溝口 計 氏
半導体デバイスはIoTに加え高速データ伝送が可能な5G時代を迎え、高性能化が日進月歩で進みつつある。先端のデバイスも昨年2019年からEUV光を使ったリソグラフィプロセスが量産工場で使用され始めた。講演では昨今のEUV実用化のターニングポイントとなったEUV光源の高出力化の歩みと露光装置のスループット向上。またそれを支えてきた技術開発の動向について解説する。またリソグラフィを支えるフォトマスクの検査もボトルネックの1つであったが、最近EUV光を使用した量産用検査装置も販売され始めている。この検査装置用光源の動向についても解説する。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

UV硬化の基礎と最新動向

東京理科大学 有光 晃二 氏
UV硬化技術は省エネルギーかつクリーンな技術として注目されており、インキ、接着剤、エレクトロニクス関連部材、自動車関連部材の製造などに用いられ、現代産業に欠くことのできない技術となっている。この技術では光硬化を実施するための光源、および光開始剤とモノマー・オリゴマーが必須アイテムであり、これらを両輪とした研究開発が不可欠である。UV硬化技術が成熟したと感じている技術者もいるようだが、産業界での高度な要求性能に応えるべく新規な硬化機構、材料、光源、プロセスが産学官から現在も創出され続けている。ここでは、UV硬化の基礎(ラジカルUV硬化、カチオンUV硬化、アニオンUV硬化)、および高感度化や影部の硬化法について筆者らの研究を中心に紹介する。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す) 中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

水処理における紫外線殺菌技術の現状と展望

お茶の水女子大学 大瀧 雅寛 氏
近年、上下水処理において注目されている紫外線殺菌技術について、その原理を説明しながら、この技術の長所および短所について解説する。また紫外線利用の歴史は100年以上となるが、特に水道において注目を浴びるようになったのは、ここ十数年のことである。その理由についても説明するとともに、実際の現場の適用例として日本や海外における水道への適用事例を紹介する。水道では消毒の要求基準を満たすことが必須であるため、紫外線装置の能力検証が非常に重要視されている。この検証はユニークな方法が実践されているが、その解説と共に、問題点についても紹介する。
下水処理での紫外線殺菌技術の適用例については、国内外において見ることができる。特に日本における適用拡大の可能性を条例と併せて紹介するとともに、今後の展望として海外で実際に稼働している下水の再生水への適用法を紹介する。その中にはオゾンや過酸化水素といった酸化処理との併用によるAOP(促進酸化処理)も含まれるが、その発展可能性についても紹介する。さらに新光源であるUV-LEDの水処理への適用の可能性などについても今後の展望として紹介する予定である。
(昨年とほぼ同じ内容となります)
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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佐々木 政子

東海大学

名誉教授

東京理科大学理学部化学科卒業.東京大学工学博士.東京大学生産技術研究所文部技官・助手を経て,東海大学に転出.東海大学開発技術研究所・総合科学技術研究所教授を経て,現在,東海大学名誉教授,日本化学会フェロー,日本フォトニクス協議会(JPC)名誉会員,日本皮膚科学会倫理委員会委員,松前国際友好財団評議員, JSTさきがけ「光の利用と物質材料・生命機能」領域アドバイザーなど.この間,日本女性科学者の会第5代会長,日本光生物学協会第10代会長,内閣府男女共同参画推進連携会議議員,Photochemical & Photobiological Sciences, Associate Editorなどを歴任.日本女性科学者の会功労賞,第1回日本光医学・光生物学会賞,光化学協会功績賞,国際照明委員会(CIE)Awardなど受賞。

岩谷 素顕

名城大学

理工学部 准教授


●学歴
2003年03月, 名城大学大学院, 理工学研究科, 電気電子工学専攻博士後期課程, 修了
2003年03月 博士(工学)

●職歴
2003年4月 名城大学理工学部材料機能工学科講師
2007年4月 名城大学理工学部材料機能工学科准教授

溝口 計

ギガフォトン(株) 

代表取締役 副社長 兼 CTO

2020年2月現在、㈱ギガフォトン、代表取締役副社長(兼)CTO。日本レーザー学会、日本応用物理学会、SPIEフェロー。
1982年九州大学総合理工学研究科修了。同年㈱小松製作所入社。1987年8月~1989年12月西ドイツ、マックスプランク生物物理化学研究所の客員研究員(社費留学生)1994年工学博士(1994年九州大学工学部)。1990年以来、リソグラフィ用KrF、ArF、F2レーザー、LPP-EUV光源、ハイブリッド・エキシマレーザの研究開発に従事。2000年ギガフォトン社創立。現在に至る。
2002年、2016年、レーザー学会論文賞(DUVレーザー、EUV光源)受賞。2009年、2019年日本レーザー学会産業賞(装置部門)受賞。2018年光振興協会桜井賞受賞(インジェクションロックレーザ)

有光 晃二

東京理科大学

理工学部 先端化学科 教授

平成9年7月 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 電子化学専攻 博士課程中退
同年7月 東京工業大学 資源化学研究所 光機能化学部門 教務職員
平成13年3月 博士(工学) 東京工業大学
同年4月 東京理科大学 理工学部 工業化学科 助手
平成18年4月 マサチューセッツ工科大学 (Prof. Timothy M. Swager) 博士研究員
平成19年4月 東京理科大学 理工学部 工業化学科 講師
平成22年4月 東京理科大学 理工学部 工業化学科 准教授
平成29年4月 同大学 同学部 先端化学科 教授
(平成29年4月より学科名を先端化学科に改称)
現在に至る

大瀧 雅寛

お茶の水女子大学

基幹研究院 教授

1995年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了した後,
1995年 4月 東京大学大学院工学系研究科の助手として勤務.
1997年11月に同講師として勤務した後,1999年 4月よりお茶の水女子大学大学院人間文化研究科に助教授として就任.以後2012年に同教授,現在に至る.
途中,2000年8月から2001年3月には南フロリダ大学にて客員研究員.
専門は環境衛生工学だが,特に水処理における消毒技術が専門.他にも国内外の都市用水需要の予測に関する研究も行っている.