宇宙・天文光学 特別技術セミナー

2020年04月22日(水) 09:30-12:25
【SA-1 JAXA(相模原)の研究者が語る宇宙コース

赤外線で見通す宇宙

宇宙航空研究開発機構 和田 武彦 氏

<検討中>

宇宙航空研究開発機構 前田 良知 氏

宇宙インフレーションの痕跡を探る宇宙マイクロ波背景放射の偏光観測

宇宙航空研究開発機構 関本 裕太郎 氏

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2020年04月23日(木) 09:30-12:25
【SA-2 JAXA(つくば)の研究者が語る宇宙コース

静止地球観測と大型分割望遠鏡システムの研究開発

宇宙航空研究開発機構 佐藤 世智 氏
口径3.6mの望遠鏡を静止軌道に打ち上げ、地球観測衛星として活用するという構想がJAXA研究開発部門で検討されている。理論上の地表面分解能(可視域)で7mに迫るこのような静止軌道衛星が実現されれば、即時性の高い観測システムの構築が可能となり、災害時における被災地の迅速な状況把握に役立つと期待される。また、即時性は静止軌道衛星より劣るが、より高分解能な低軌道周回衛星と組み合わせることで、時間分解能と空間分解能を相補的に活用した新たな観測システムの実現も望まれる。
以上が動機的な背景であるが、一方で技術的な背景に目を向けると、これまでに打ち上げられた宇宙望遠鏡は可視域ではハッブルが最大であり、その口径は2.4mである。望遠鏡は大型になるほど主鏡と支持構造の重量が打ち上げの負担となるため、単純に口径をサイズアップしていくことは難しい。
このような課題に対し、JAXA研究開発部門では軽量な主鏡材料と分割鏡システムによって上述した静止地球観測衛星を実現すべく検討を進めている。本講演では、静止地球観測衛星構想について要素技術の概要を交えながらJAXAの取り組みを紹介する。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の運用成果

宇宙航空研究開発機構 此上 一也 氏
JAXAでは、宇宙空間におけるフロンティア領域の開拓と地球観測利用の拡大を目指し、超低高度にて長期間にわたり観測運用可能とする衛星技術を獲得することを目的とした、超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS:Super Low Altitude Test Satellite)を開発し、2017年12月23日にしきさい(GCOM-C)とともにH-IIAロケット37号機にて種子島宇宙センターから打ち上げました。「つばめ」は、計画したミッションをすべて成功裏に完了し、2019年10月1日に軌道上運用を終了しました。
超低高度衛星のメリットは小さなセンサを用いて高分解能の衛星画像を取得できることですが、「超低高度」と呼ばれる軌道高度200~300kmでは通常の地球観測衛星が飛行する高度に比べて大気抵抗や衛星材料を劣化させる原子状酸素の密度が1000倍程度となります。このため、超低高度は、精密な姿勢・軌道制御や長期間の衛星運用が求められる地球観測衛星には不向きとされていました。
「つばめ」は、推力は極めて小さいものの推進効率の高いイオンエンジンを用いて、高度300km以下の超低高度域において軌道保持技術を実証するとともに、高分解能の衛星画像を取得する実験により、良好な画質の画像を取得しました。また、大気密度、原子状酸素の密度や大気に曝露した材料サンプルの劣化状況など、これまでにない長期間のデータを取得するとともに、JAXAが開発した材料が長期間の原子状酸素の曝露に耐えることも実証しました。 このようなイオンエンジンを用いた超低高度からの地球観測運用や原子状酸素対策に関する基盤的な技術・ノウハウを獲得したのは、JAXAが世界初となります。
本講演では、「つばめ」の軌道上運用で得られた成果と将来に向けた構想について紹介します。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

大地を見つめる「だいち」の眼 ~先進光学衛星「だいち3号」の開発とデータ利用~

宇宙航空研究開発機構 度會 英教 氏
先進光学衛星ALOS-3「だいち3号」は、JAXAが2006年に打上げた陸域観測技術衛星ALOS「だいち」(2011年運用終了)の光学ミッションを引き継ぐ地球観測衛星である。現在、2020年度中の打上げを目指してフライトモデルの開発を進めている。
「だいち3号」の主要なミッションは、日本全域および全地球規模の陸域を高分解能かつ高頻度に観測し、蓄積した平時の画像や発災時の画像を防災・災害対策等を含む広義の安全保障に活用すること、また高精度な地理空間情報を整備・更新することである。このミッション要求に応えるため、「だいち3号」では新たに広域・高分解能センサ(WISH: WIde-Swath and High-resolution imager)を開発した。WISHは光学系の大型化・検出器の高感度化により、「だいち」と比較して広い観測幅(直下70km)を維持しつつ、約3倍高い地上分解能(直下0.8m)および可視・近赤外における観測バンド数の増加を実現している。
本講演では「だいち3号」のミッション、機能・性能、最新の開発状況を紹介するほか、様々な分野における衛星データの利活用についても具体的事例を交えて解説したい。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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2020年04月24日(金) 09:30-12:25
【SA-3 国立天文台の研究者が語る天文コース

天の川の最新描像と赤外線位置天文観測衛星JASMINEで挑む天の川と巨大ブラックホールの謎

国立天文台 郷田 直輝 氏
太陽のように自らが燃えている恒星が数千億個も集まった天体である銀河は、この宇宙に2兆個以上存在すると言われています。しかし、銀河の誕生やその時間進化はまだ完全に解き明かされていない難しい問題です。先ず、銀河の研究を行う上で、我々が住む天の川銀河が、この上もなく貴重で重要な研究対象であることを説明します。そして、天の川銀河を探求する上で大きな観測手段となる位置天文観測についての概説を行います。さらに、現在運用中のヨーロッパ宇宙機関(ESA)のGaia衛星による高精度位置天文観測で得られてきている科学的成果、特に天の川銀河の最新描像についての説明も行います。次に、Gaiaでは残される謎を解くために、日本で進めている赤外線位置天文観測衛星(小型JASMINE)計画に関して説明します。なお、小型JASMINEは、JAXA宇宙科学研究所により、公募型小型計画3号機の唯一の候補として選定されています。そしてJASMINEの科学的成果として期待される、銀河中心考古学と銀震学による天の川銀河の探求(太陽が生まれた場所や今まで天の川銀河内でどのような軌跡をたどってきたかの探求にもつながります)や巨大ブラックホール形成の探求を概説します。なお、以上のような科学目標を達成するためには、JASMINEは、25マイクロ秒角という非常に高精度で天球面上での星の動きを評価する必要があります。このような精度を達成するためにはデータ解析方法と観測システムの両輪をうまく工夫することが必要であることについても概説します。
★難易度:一般的(高校程度、一般論)

すばる望遠鏡と30m光学赤外線望遠鏡TMTが結ぶ新たな宇宙像

国立天文台 岩田 生 氏
すばる望遠鏡は、国立天文台がハワイ島マウナケアに設置し運用する口径8.2mの鏡を擁する光学赤外線望遠鏡です。1999年の観測開始から20年を超え、最も遠くの銀河の記録を塗り替え続ける、太陽系外の惑星の直接撮像に成功するなど、これまでに大きな成果をあげていますが、新しい観測装置を搭載することで、その性能を不断に向上させています。また、国立天文台では、国際協力により、すばる望遠鏡と同じマウナケアに口径30mの光学赤外線望遠鏡=Thirty Meter Telescope (TMT)の建設を目指しています。TMTは、現在の地上光学赤外線望遠鏡をはるかに上回る口径と先進の補償光学システムにより、恒星のような点光源に対してすばる望遠鏡の100倍もの感度向上と、3倍以上の空間解像度の向上を達成し、宇宙最初の天体の検出や地球型太陽系外惑星の発見と生命の兆候の探査など、人類に新たな宇宙像をもたらすことを目指しています。他の大型望遠鏡に類を見ない非常に広い視野での探査を特徴とするすばる望遠鏡とTMTの連携で、どんな科学研究を行おうとしているか、紹介させて頂きたいと思います。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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佐藤 世智

宇宙航空研究開発機構

2005年 東京大学工学部卒業.2007年 東京大学大学院情報理工学系研究科卒業、同博士後期課程進学.2008~2010年 JST-CREST研究員(技術領域:先進的統合センシング).2010年 東京大学大学院情報理工学系研究科修了 博士(情報理工学).計測分析機器メーカー勤務を経て2018年より現職.専門は光計測。計測自動制御学会会員。

此上 一也

宇宙航空研究開発機構

第一宇宙技術部門 SLATSプロジェクトチーム

1998年 東京工業大学工学部機械宇宙学科卒業
2006年 東京工業大学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻博士後期課程修了(博士(工学))
同年 宇宙航空研究開発機構入社。
2006~2008年 JAXA研究開発本部にて宇宙航空プロジェクト研究員として宇宙ロボティクスの研究に従事。
2008年より、JAXA第一宇宙技術部門にて、超低高度衛星技術試験機(SLATS)プロジェクトに携わり、衛星システム(姿勢制御系)およびミッションセンサ(光学センサ)を担当。
所属学会:日本航空宇宙学会

度會 英教

宇宙航空研究開発機構

第一宇宙技術部門 先進光学衛星プロジェクトチーム ファンクションマネージャ

名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理学専攻満了 博士(理学)
宇宙科学研究所COE研究員、日本学術振興会特別研究員として赤外線天文学の研究に従事したのち、2001年に宇宙開発事業団(当時)入社。陸域観測技術衛星「だいち」プロジェクトチームにおいて「だいち」搭載パンクロマチック立体視センサ(PRISM)および高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)の開発を担当。地球観測研究センター等を経て2016年4月より先進光学衛星プロジェクトチーム。広域・高分解能センサの開発と衛星データの利用推進業務を担当。

郷田 直輝

国立天文台

国立天文台JASMINEプロジェクト プロジェクト長・教授

京都大学理学部卒業。1989年、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学理学部助手、大阪大学理学部助教授を経て、1999年に国立天文台教授に着任。現在、JASMINE プロジェクト長、東京大学大学院教授、総合研究大学院大学教授、 JAXA 宇宙科学研究所客員教授、鹿児島大学大学院客員教授を兼任。日本天文学会、国際天文学連合(IAU)、日本物理学会に所属。専門は宇宙論、銀河の形成・力学構造、重力多体系の非線形現象、位置天文学。現在、赤外線位置天文観測衛星である「JASMINE(ジャスミン)」計画を推進中。著書として『天の川銀河の地図をえがく』 (旬報社) 、『ダークマターとは何か』 (PHP研究所) 、『宇宙のことがだいたいわかる 通読できる宇宙用語集』(ベレ出版)等がある。

国立天文台

准教授

2003年 京都大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博士。
2004年 国立天文台上級研究員
2010年から2018年まで国立天文台ハワイ観測所ですばる望遠鏡の運用に携わる。
現在 国立天文台TMTプロジェクト准教授。