量子光技術の最前線

2020年04月23日(木) 13:00-16:40
【QLT-1 量子光技術の最前線

量子コンピュータ、実用化への期待

東京工業大学 小寺 哲夫 氏
量子コンピュータは、量子力学の原理に基づく超高速次世代コンピュータとして、実用化が期待されている。通常のコンピュータが「0」もしくは「1」のいずれか(ビット)を情報処理に用いるのに対し、量子コンピュータでは、「0と1の重ね合わせ状態」である量子ビットを計算に使用する。大規模に集積した量子ビットを操作することで、超並列的な高速計算が可能となることが知られており、その応用探索も進んでいる。
量子ビットを実現するための研究は、様々な物理系で精力的に行われている。超伝導体を用いる方式が進んでいるが、シリコン量子ドット中のスピンも有望な系の1つとして期待されている。半導体加工技術による将来的な素子の集積化が可能であり、また情報の保持時間に相当するコヒーレンス時間が長いという利点がある。本講演では主にこの方式の研究開発動向について紹介する。
大規模な量子ビットの集積には、3次元配線も含めた本格的な設計を行う必要がある。また、量子ビットを高速かつ正確に操作するためには、量子ビットと制御回路を近づける方が望ましいと考えられる。比較的高温で動作する量子ビットの開発や、低温動作する量子ビット制御用のエレクトロニクスが必要となる。量子コンピュータの実用化に向けて、量子技術の高度化を進めながら、既存の半導体技術も活用し、デバイス、回路、システムを連携させて、研究開発を推進する必要がある。本講演では今後の展望についても述べたい。
★難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

量子計測

京都大学 竹内 繁樹 氏

光技術が拓く量子通信の最前線

学習院大学 平野 琢也 氏
近年、量子技術に対する期待が高まっており、我が国の経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる重要技術として、国を挙げた戦略的な推進が始まっている。量子通信は、量子技術の最も重要な一分野と考えられ、量子技術の社会実装は量子鍵配送から始まり、将来的には、分散配置された量子コンピュータを量子通信で結合した量子ネットワークの実現が期待されている。いうまでもなく量子通信の主役は光技術であり、逆に光技術の将来像の一つが量子通信であるといえる。
量子通信では、量子効果を利用することにより、従来は不可能であった機能を持つ通信を実現することができる。量子鍵配送はその代表例であり、理論的に安全性が保証された通信を実現することができる。その安全性は、物理法則が正しいことを仮定して理論的に証明されるものであり、理論的にはどのような技術を持つ盗聴者に対しても、たとえ量子コンピュータを有する盗聴者に対しても安全性を保つことができる。どんな未来の技術に対しても安全であるので、今日行う通信の安全性を未来永劫保つことができるといえる。このような長期の安全性は、従来の技術では実現することはできないものである。
本講演では、光技術が拓く量子通信の現状について紹介する。特に、量子鍵配送については、単一光子検出を用いる方式のほか、コヒーレント光通信で用いられているホモダイン検出を用いる方式についても紹介する。
★難易度:入門程度(大学一般教養程度)初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

量子光源

(国研)物質・材料研究機構 栗村 直 氏

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小寺 哲夫

東京工業大学

准教授

2007年東京大学理学系研究科物理学専攻博士課程修了。同年東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構特任助教。2009年東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センター助教。2014年同大学理工学研究科電子物理工学専攻准教授。2016年より同大学工学院電気電子系准教授(現職・改組による)。2010~2014年JSTさきがけ研究員兼任。博士(理学)。半導体量子ドット構造を用いた量子情報素子の創製に向け、量子状態の制御技術や相互作用の物理に関する研究に従事。文部科学大臣若手科学者賞や日本物理学会若手奨励賞などを受賞。

平野 琢也

学習院大学

教授

1980年鳥取大学附属中学校卒業、1983年広島大学附属福山高校卒業、1987年東京大学理学部物理学科卒業、1992年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了、1992年日本学術振興会特別研究員(PD)、1993年東京大学教養学部物理学教室助手、1998年学習院大学理学部物理学科助教授、2005年~同教授、2017年~同主任。2007年~2009年文部科学省学術調査官、2004年~2006年日本物理学会男女共同参画推進委員会、2019年~日本物理学会代議員、2010年~2013年応用物理学会量子エレクトロニクス研究会副委員長、2017年~2019年応用物理学会フォトニクス分科会幹事、2018年~電子情報通信学会量子情報技術特別研究専門委員会委員長。