可視化技術セミナー

2024年10月29日(火) 13:30-16:00 アネックスホール F206
【VZ-1 コンピュテーショナルイメージングの最新動向

コンピュテーショナルイメージング

東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授 堀崎 遼一 氏
カメラに代表される従来のイメージングシステムは、光学系と信号処理系が独立してデザインされ、両者が不必要に肥大化する傾向があった。

深層学習を含む機械学習に代表される情報科学分野の発展やGPUなどの演算器パワーの向上を背景に誕生した「コンピュテーショナルイメージング」は、信号処理系を前提に光学系をデザインするイメージング技術の総称であり、従来型のイメージングシステムでは達成困難であったイメージング性能の向上、非可視情報の可視化、光学系の簡略化などを実現している。

また、光学技術の進歩により、設計自由度の高い光学素子の実装が可能になったことも、光学系と信号処理系の協調設計を目指すコンピュテーショナルイメージングの推進力となっている。
その結果、イメージングシステムをツールとして用いる医学、天文学、工業、エンターテインメントを含む幅広い分野へも、コンピュテーショナルイメージングは影響範囲を拡大させている。

本講演では、コンピュテーショナルイメージングの概要および近年の技術動向を、我々の取り組みを中心に紹介する。

コンピュテーショナルイメージングで実現する薄型カメラ

東京科学大学(旧 東京工業大学) 教授 山口 雅浩 氏
従来のカメラでは、レンズなどの光学系はセンサー上に高品質な像を結像するように設計されているが、近年ではデジタル画像処理技術と融合した設計も進んでいる。コンピュテーショナルイメージング(計算イメージング)は、光学系と信号処理系を一体的に設計するという概念に基づいている。この技術では、光学系によるセンサー上の像はあくまでも中間像であり、信号処理を通じて所望の像を取得する。このため、光学系は必ずしもセンサー上に像を結ぶ必要がなくなり、これによって従来には無い薄型のカメラ構成が実現できる。そして、そのためには信号処理系の設計が重要な役割を果たすため、様々な画像再構成手法が開発されている。

本講演では、当グループにおいて研究を進めているレンズのないカメラ(レンズレスカメラ)や透明スクリーンカメラを例として、画像再構成処理と融合した薄型カメラの基礎技術を解説する。具体的には、まず計算イメージングやレンズレスカメラの基本概念について説明し、その後、①画像合成技術に基づくレンズレスカメラの高解像度化とリフォーカス、②深層学習(ビジョントランスフォーマー)によるレンズレスカメラの画像再構成・物体認識、③ホログラフィック導波路デバイスを用いたコンピュテーショナル透明スクリーンカメラの技術を紹介する。
●初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

被写界深度の深いレンズレスイメージング

大阪大学 産業科学研究所 准教授 中村 友哉 氏
コンピュテーショナルレンズレスイメージングは、近年注目を集める新しい撮像技術であり、レンズを用いない符号化光学系と高度な画像再構成処理を組み合わせることで、従来のカメラシステムでは実現が困難であった撮像系の大幅な薄型化を可能にする。レンズレス光学系では一般的に、画像再構成処理の安定性を確保するため、符号化マスクが撮像素子の近傍に配置される。

しかし、このマスクの設計には自由度が存在し、様々な工夫の余地がある。
我々の研究グループでは、符号化マスクを放射状に設計することで、距離に依存しない光学特性を実装できることを提案し、さらに、この設計概念を応用することで、被写界深度が深いレンズレスイメージング技術の実証に成功している。

本講演では、まず符号化マスクを活用したレンズレスイメージングの基本原理について、光学設計とアルゴリズム設計の両面から概説する。続いて、我々が開発した放射状符号化マスクの最適化設計手法とその性能解析結果について説明する。また、原理実証実験の結果を紹介し、得られた知見や課題について議論する。最後に、今後の展望について述べる。
●中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)
受講料(1セッション/税込)
一般 主催・協賛団体会員/出展社 月刊オプトロニクス定期購読者 シニアクラブ会員 学生
¥18,000 ¥15,000 ¥9,000 ¥9,000 ¥5,000

併催イベント一覧へ

元のページに戻り選択を続ける
お申込み受付は終了いたしました。
よくあるご質問

お支払方法
●クレジットカード(領収書発行)

※クレジットカード決済後、件名「【ZEUS】決済完了メール(自動送信)」が届いた時点でお申し込み受付完了となります。




※有料セミナー キャンセル規程:
お客様のご都合による受講解約の場合、9/30までは受講料の50%、10/1以降につきましては受講料の全額を解約金として申し受けます。
但し、申込者が既定の人数に達しない場合、中止とすることがあります。その場合には、申し受けた受講料は返金致します。

※学生料金:
個人もしくは学校からのお支払いで、30歳未満の方が対象となります。

※月刊OPTRONICS定期購読者割引:
月刊OPTRONICS定期購読につきましては【こちら】をご確認ください。
購読者割引は読者番号(送本時の宛名ラベルに記載)とお申込み者のお名前が一致している方が対象となります。

受講申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。申し込み後、受講者のご都合で欠席となる場合でも受講料は申し受けます。テキスト(pdf)は事前に参加者全員にメールにてお送りいたします。
なんらかの不可抗力により該当セミナー、及び付帯するイベントの開催が不可能となった場合、主催者は受講のキャンセルの受け付け致しません。また、受講料の返金を含む、これにともなった損害の補填・補償は行いません。

【不可抗力】台風、洪水、地震を含む天災、あるいはそれらを原因とする様々な事態、疾病や伝染病の蔓延、労働争議、主催者の合理的なコントロールを超えた会場設備の使用制限や講師の欠席等を含むもの


[ 特定商取引法に基づく表記 ]



堀﨑 遼一

2010年 大阪大学 大学院情報科学研究科 博士後期課程修了
2010年~2020年 大阪大学 大学院情報科学研究科 助教
2017年~2020年 JSTさきがけ(兼任)
2020年~現在 東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授

山口 雅浩

東京科学大学 (旧 東京工業大学)

教授

1987年東京工業大学理学部卒、1989年同総合理工学研究科修士課程修了、同年より同大学像情報工学研究施設助手、同助教授、准教授を経て2011年同大学学術国際情報センター教授、2016年同大学工学院教授、2024年より東京科学大学教授。1994~1995年アリゾナ大学訪問研究員。博士(工学)。光工学、画像工学、ホログラフィー、分光イメージング、病理画像解析等の研究開発に従事。2018~ CIE(国際照明委員会)RF-01 "Spectral Imaging" コンビナー。2020~2022 Optical Review編集委員長、2017~ 日本光学会理事。

中村 友哉

大阪大学 産業科学研究所

准教授

2010年大阪大学工学部応用自然科学科卒業。2015年同大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。博士(情報科学)取得。同年、東京工業大学大学院総合理工学研究科(2016年より工学院に改称)にて助教。2020年より現所属にて准教授を務める。