赤外線セミナー

2019年11月13日(水) 09:30-12:25
【-1 赤外線と赤外線センサの基礎技術

量子型赤外線センサの基礎と最近のトピックス

(株) 富士通システム統合研究所 中里 英明 氏
赤外線に関する基礎講座の一つとして、量子型(冷却型)と熱型(非冷却型)に大別される赤外線センサの内の量子型について、赤外線検知原理等の基礎と、その最近のトピックスについて概説します。
量子型赤外線センサの代表的な検知原理は、赤外線の波長によって決まるエネルギに対応したバンド・ギャップ・エネルギ(価電子帯と伝導帯のエネルギ差)を持つ半導体の価電子帯にいる電子が赤外線エネルギを受けて伝導帯に励起し、電流信号として取り出させることを利用するというものです。可視光に比べて小さい赤外線エネルギを如何に高い精度で電気信号に変換するかを中心に、長年に亘り技術開発が続けられています。
また近年、ナノテクノロジによって禁制帯(価電子帯と伝導帯の間のエネルギ準位が存在できない領域)だったエネルギ・レベルに新たな基底準位と励起準位を創生する量子閉じ込め効果を利用した超格子検知デバイスが著しく進展しています。
動作温度と共に増大して信号電流の割合を減らしS/N低下を来す暗電流を大幅に低減する障壁層を設け高動作温度化を可能にするHOT(High Operating Temperature、高動作温度)、システム性能極大化に向けた検知素子ピッチ縮小やアイセーフ・レーザとの整合性が高いSWIR(Short Wave Infra-Red、短波長赤外)域の利用拡大等も注目の的です。
2011 ~ 15年の米国ビッグ・プログラムVISTA(Vital Infrared Sensor Technology Acceleration、必須赤外線センサ技術加速)で加速されたタイプⅡをはじめとする超格子検知デバイスや、その検知波長エンジニアリングの活用を中心に最近のトピックスをご紹介したいと思います。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

非冷却赤外線イメージセンサ

三菱電機(株) 藤澤 大介 氏
非冷却赤外線イメージセンサは、シリコン基板上に断熱構造を有する画素を2次元アレイとして形成したものであり、赤外線を吸収する赤外線吸収体と温度センサから構成された温度検知部において、赤外線の入射により発生する微小な温度変化を検知する。非冷却赤外線イメージセンサは、民生用途など幅広い分野での応用に向け、画素サイズ縮小、高感度化および低コスト化の技術開発が著しい。
今回の講演では、非冷却赤外線イメージセンサの中で、三菱電機が開発を行っているダイオード方式を中心に非冷却赤外線イメージセンサ技術(画素縮小・TECレス・シャッタレス)について紹介し、開発事例にも触れる。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

併催イベント一覧へ

2019年11月13日(水) 13:10-16:05
【-2 赤外線応用と周辺技術

赤外線の波長による違いとそれを利用した計測

(株)アイ・アール・システム 舘花 一人 氏
赤外線と一言で言っても、使用する分野によってその波長範囲は異なります。ここでは波長1~15μm あたりについてお話ししますが、それでも非常に広い波長範囲となります。(可視光を0.4~0.8μm とすると、可視光の35倍です。)
その為、波長によって使用できる光学材料やセンサは異なってきます。見えるものや見え方も変わってきます。
可視光で色(波長の違い)があるように、赤外線でも波長によって見え方が違います。
例えば、透明なガスを可視化したり、逆に物を透かして見えたりすることもあります。
「赤外線カメラ」と一般に呼ばれている物は、近赤外線カメラ(波長0.8~1μm 付近)やサーモグラフィ(波長8~14μm 付近)があります。しかし、他の波長帯のカメラも存在し、それぞれに違った特徴を持っています。本講演では、そのような赤外線の波長による見え方の違いを利用した計測例を紹介します。

赤外線の光学系技術

三菱電機(株) 中野 貴敬 氏
赤外線を集光したり、画像化するために使用される光学系について概説します。
赤外線は赤色より長い波長の領域の光を指していますが、その領域は広いので、特性も同じではありません。たとえば、波長1μmぐらいの光線は近赤外線と呼ばれ、赤色の光線とほとんど同じ特性を持っていますが、波長10μmの光線は熱赤外線などとも呼ばれ、熱によって放射されるなど特性が大きく異なります。このため、赤外線の光学系は波長に合わせた設計や材料の選択が行われています。
本講座では、光学系の基礎から始めて赤外線特有の留意点、実際の光学設計の事例を紹介します。

赤外線カメラとその応用

日本アビオニクス(株) 奥田 雄飛 氏
赤外線の歴史は、1800年W. Herschel(英)が発見したことから始まり、その後多くの研究がなされ、現在では広い分野でその技術が応用されている。その一つに赤外線カメラがあり、「全ての物体からは、その温度に関係付けられるエネルギー(プランクの放射則)の赤外線が放射される」という原理から、その赤外線を画像化する暗視カメラや、定量化し温度計測カメラなどに利用されている。
近年、非冷却二次元赤外線センサ(UFPA)が開発され、MEMS技術の向上などにより、狭ピッチ・多画素化、高性能化、低価格化が進み、赤外線カメラの様々な分野で利用が拡大している。その種類は使用目的により、保守保全用ハンディタイプ型、研究開発用高性能多機能型、特殊計測用光学フィルタ内蔵型、計測システム用固定設置型など多岐にわたる。
本稿では、赤外線カメラの動作原理、特徴、性能・機能を有効に活用するための技術、更にその応用例について紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

併催イベント一覧へ

元のページに戻り選択を続ける
お申込み受付は終了いたしました。


お支払方法
●クレジットカード(領収書発行)
●銀行振込

セミナー申込手順

※有料セミナー キャンセル規程:
お客様のご都合による受講解約の場合、10/15までは受講料の50%、10/16以降につきましては受講料の全額を解約金として申し受けます。

※学生料金:
個人もしくは学校からのお支払いで、30歳未満の方が対象となります。

※月刊OPTRONICS定期購読者割引:
月刊OPTRONICS定期購読につきましては【こちら】をご確認ください。
購読者割引は読者番号(送本時の宛名ラベルに記載)とお申込み者のお名前が一致している方が対象となります。

※新税率に関しまして:
2019年10月以降のイベントにつきましては消費税率10%でご請求させていただきます。

[ 特定商取引法に基づく表記 ]



中里 英明

株式会社富士通システム統合研究所

先進システム研究所 テクノロジ研究部 テクニカル アドバイザ

1980年03月 東北大学理学部天文および地球物理学科第1卒
1980年04月 富士通株式会社入社。無線事業部・特機技術部に配属。宇宙・防衛用赤外線機器開発に従事
1981年01月 (株)富士通システム統合研究所に出向。防衛用赤外機器研究・開発に特化。以来、防衛用光波システムの研究・開発に従事。
2011年度~ 防衛装備庁電子装備研究所研究試作「遠距離探知センサシステム」に参画。
2012年度~ 「戦闘機の概念設計および3次元デジタル・モックアップ」等将来戦闘機関連事業に参画。
2004年06月~ (一財)防衛技術協会「防衛用赤外・ミリ波技術研究部会」および後継の「赤外・ミリ波センシング研究部会」幹事。
2016年06月~ 日本赤外線学会執行役員。
2016年12月 富士通株式会社退職、(株)富士通システム統合研究所に再雇用。継続して光波センシング・システムの研究・開発に従事。

藤澤 大介

三菱電機株式会社

先端技術総合研究所 主席研究員

2002年,豊橋技術科学大学大学院工学研究科電気電子工学専攻 修士課程修了.2005年,同大学院工学研究科電子情報工学専攻 博士後期課程修了.同年,三菱電機株式会社に入社.同年より赤外線固体撮像素子の研究開発に従事し,現在に至る.博士(工学).

舘花 一人

株式会社アイ・アール・システム

営業1部EO システム課 営業技術

株式会社アイ・アール・システムに入社。赤外線カメラや赤外線センサを検査するための試験装置の提案、販売、保守を行う。主な製品は、黒体炉、コリメータ、赤外分光計測器、防衛用光波検査装置など。
また、赤外線カメラや分光測定器の販売と共に、それらの計測器を用いた測定サービスを担当。顧客の要望に合わせた測定系の構築や、客 先へ訪問しての各種計測を実施。

中野 貴敬

三菱電機株式会社

1997年 三菱電機株式会社 入社
各種光学センサシステム、望遠鏡の開発に従事

奥田 雄飛

日本アビオニクス株式会社

赤外線サーモグラフィ事業部 技術部 アプリケーション技術G

2008年 岡山大学 理学部 物理学科卒業
2008年 NEC/Avio赤外線テクノロジー株式会社 入社
2019年 現職