オプティクスセミナー

2019年11月13日(水) 09:30-12:25
【-1 新しいイメージング技術:コンピュテーショナルカメラ

ライトフィールド光学とアプリケーション

(株)ニコン 岩根 透 氏
ライトフィールド光学は、これまでの結像光学系とは異なって、光の“像”ではなく空間上の光線を直接的に記録、再生する技術である。空間の光線情報は2次元面に記録される。そして2次元面上に記録された光線情報は、同じ系を逆にたどることによって、再び、3次元空間の光線群が再現される。光線群は3次元空間像を表しているから、3次元空間がそのまま2次元面上に符号化され記録されていると考えていい。したがって、2次元データとして3次元空間像がそのまま記録されていることから、このデータを処理することによって、従来光学装置でなされていた焦点合わせや絞りの変更などの撮影操作がコンピュータ上で可能になる。これがライトフィールドカメラである。
本講演では、ライトフィールド光学の原理と3次元空間の再現にかかるアプリケーションについて述べていく。符号化された2次元データから、光線状態が再現されるということは、実際の3次元空間が再現しうるということにほかならない。昨今、視覚分解能を超える高精細の平面ディスプレイが供されるようになってきたが、これを符号化2次元データ出力装置として使用すれば、ライトフィールド光学系を通して品質の高い3次元像を得ることができる。また、再帰性反射材やAIPなどの光学素子を組み合わせることで、3次元像を空中に浮遊させるような表示装置が実現できる。
こうしたライトフィールド光学の原理にに基づく、新たな光学表示装置とその可能性について述べる。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

フレネルゾーン開口によるレンズレスカメラ測距技術

(株)日立製作所 中村 悠介 氏
FZA(Fresnel Zone Aperture)によるレンズレスカメラは、高速な現像処理やリフォーカス(撮影後のピント調整)などの特徴を有する技術である。このリフォーカス機能により、1回のみの撮影で複数の異なるピント位置の画像を生成することができるため、コントラスト法などを用いたDepth画像の生成が可能になる。しかし、コントラスト法には複数の現像画像が必要なため演算時間を要するのが問題であった。
 そこで、FZAによるレンズレスカメラ向けの高速アルゴリズムを考案している。本レンズレスカメラは、現像過程で現像画像が複素数となり被写体位置の前後でその位相が反転する。すなわち、2枚の現像画像から位相のゼロクロス点を推定することでDepth画像を生成できるため、演算時間の大幅な短縮が可能となる。本測距技術を用いれば、特殊な光源や撮像素子が不要な単眼の測距センサを実現できる。
 本講演では、開発したプロトタイプによる実験結果を交えながら、レンズレスカメラの撮影原理と三次元測距原理について説明する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

シングルピクセルイメージングとその動向

神戸大学 仁田 功一 氏
 シングルピクセルイメージングは、イメージセンサーを必要とせずに、画像計測が行える手法であり、圧縮サンプリングによる信号再構成を利用することで、効率的な画像取得が可能である。最初の提案から10年が経過し,様々な応用が報告されている。当初は、受光デバイスが高価であるテラヘルツ波長帯の信号を用いた画像計測に対する期待が高かった。現在では、時間分解イメージングや散乱イメージングに適用されるなど用途が広がっている。また、2017年ごろからの特徴的な動向としては、深層学習が積極的に導入されつつあることが挙げられる。この技術において、深層学習は、画像再構成だけでなく、変調分布の選択にも利用できる。
 本セミナーでは、まず、シングルピクセルイメージングの基本的な原理と処理手順について概説する。この手法において、ディジタルマイクロミラーデバイスが重要な要素であることを説明する。シングルピクセルイメージングの特徴と、応用事例を近年の報告を中心に紹介する。シングルピクセルイメージングの課題の一つに高速化が挙げられる.この課題の解決に貢献しうるものとして期待されているのが深層学習の適用である。深層学習を適用することで、計測において少ない測定回数で高画質な結果が得られる可能性がある。また、近年の深層学習の進展により、高速な信号再構成も期待される。セミナーにおいては、取り組みが始まったばかりのシングルピクセルイメージングと深層学習の融合について今後の展開に対する予想も含めて解説する予定である。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2019年11月13日(水) 13:10-16:05
【-2 ゆらぎ・散乱における高分解能イメージング技術

補償光学の原理と応用

自然科学研究機構国立天文台 早野 裕 氏
補償光学は天文学の分野だけでなく、様々なイメージングの分野で広く応用ができる。特に、観察対象(物体)とイメージングデバイスとの間にある光学系や伝搬媒質による結像性能の劣化が問題となる場合は、大きな効果をあげる。
本講演では、まず、観察対象が天体、イメージングデバイスは望遠鏡及び観測装置、伝搬媒質が大気という天文学用補償光学の基礎を概説する。続いて、天文補償光学の現状・成果、及び開発中のシステム、将来計画について紹介をする。さらに、補償光学の応用例として、自由空間光通信、顕微鏡などをはじめ、様々なイメージングシステムの特徴を示し、システム検討や設計をする場合の留意点について説明する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

散乱媒質の背後の物体を透視する相関イメージング

宇都宮大学  武田 光夫 氏
屈折率ゆらぎ媒質を通したイメージング技術は天文学、生物学、医学など広い分野の共通基盤技術として重要性を増しつつある。本講演では、補償光学による波面補正が困難な強い散乱性を持つ媒質(例えば、すりガラスや光拡散板など)の背後に隠された物体の3次元像を散乱光の空間コヒーレンスや光強度相関情報から透視再現する相関イメージング技術について紹介する。補償光学がマクロな空間構造を持つ波面乱れを可変鏡で「補正」するのに対して、相関イメージングはミクロな空間構造をもつ位相乱れに対して「不感」なイメージングを波動場の相関演算により実現する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)/中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)
★大学3、4年次の知識で理解できるところと大学院修士レベルの内容が含まれる

ディジタル位相共役鏡による高分解能イメージング

神戸大学 的場 修 氏
近年、位相変調型空間光変調素子などを用いて波面を変調し、散乱体内部において回折限界以下の集光スポットを形成する技術や散乱体によって乱された波面を補正し、高分解能なイメージングを行なう技術が提案されている。また、たたみ込みニューラルネットワークなどの学習を用いて散乱体によって変調された画像識別や画像復元なども行われている。
本講演では、これらの散乱体における様々な取り組みを概観するとともに、波面計測と位相変調型空間光変調素子を組み合わせたディジタル位相共役鏡について紹介し、その応用例として散乱体による波面歪みをダイナミックに補正し、高分解能光コヒーレンストモグラフィーに応用した研究を紹介する。

【講演内容】
-波面変調を用いた散乱体応用
-位相共役鏡の原理
-ディジタル位相共役鏡
-高分解能光コヒーレンストモグラフィー
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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※新税率に関しまして:
2019年10月以降のイベントにつきましては消費税率10%でご請求させていただきます。

[ 特定商取引法に基づく表記 ]



岩根 透

株式会社ニコン

研究開発部 技監補

3D Volume Image Reconstruction in Space, Using Combined System of Light-Field Display and Aerial Imaging Device,IDW,2016
Light-field display combined with aerial imaging by retro-reflection (AIRR),OSA Imaging and Applied Optics、2016
High-resolution 3D light-field display,SPIE Newsroom
http://spie.org/newsroom/6623-high-resolution-3d-light-field-display

京都大学理学部宇宙物理学科卒

中村 悠介

株式会社日立製作所

研究開発グループ 光学情報処理研究部 主任研究員

2005年 大阪大学大学院 基礎工学研究科 修士課程修了
2005年 株式会社日立製作所 入社(現職)
光ディスク信号処理、Computational Photographyに関する研究に従事
2014年~2015年 米国 アリゾナ大学 光科学部 客員研究員
<受賞歴>
2015年 International Symposium on Optical Memory, Program Chair Award
2016年 International Workshop on Image Sensors and Imaging Systems, Best Poster Award
2017年 日本光学会光設計優秀賞
2017年 映像情報メディア学会 優秀研究発表賞
2018年 International Display Workshops, Best Paper Award

仁田 功一

神戸大学

大学院システム情報学研究科 システム科学専攻 准教授

2003年 大阪大学大学院工学研究科物質・生命工学専攻
     博士後期課程修了。学位 博士(工学)を取得
2003年 科学技術振興機構 研究員
2004年 神戸大学工学部 情報知能工学科 助手
2010年 神戸大学 大学院システム情報学研究科 准教授
    現在に至る
   この間2014年6月〜2015年1月 ジャウメ1世大学(Spain)客員研究員

武田 光夫

宇都宮大学 オプティクス教育研究センター

特任教授

電気通信大学卒業(1969), 東京大学大学院工学系研究科(物理工学専門課程)修士課程(1971),
博士課程(1974)修了(工学博士).
キヤノン株式会社勤務後,1977年に電気通信大学に着任.
専任講師,助教授,教授を経て2012年に電気通信大学名誉教授.
宇都宮大学オプティクス教育研究センター特任教授.
専門:光計測,結像理論,情報光学,統計光学などの光工学.
フンボルト賞(ドイツ政府フンボルト財団),ガボア賞(SPIE),
ヴィクラム賞(SPIE),応用物理学会「光・量子エレクトロニクス業績賞」(宅間宏賞),
精密工学会・吉澤賞を受賞.SPIE、OSA、応用物理学会の各フェロー