可視化技術セミナー

2022年11月09日(水) 13:30-16:00 3F 会場内特設会場
【VZ-1 可視化技術のイノベーション -見えないものを視る技術-

テラヘルツ波イメージングシステムの開発

(有)スペクトルデザイン 代表取締役 深澤 亮一 氏
テラヘルツ周波数帯はおよそ0.1~10THzの周波数を呼ぶことが多い。これまで簡便に使える発生源、検出器、計測システムの開発が困難であったことから応用も限られていた。

近年、この帯域の電磁波の発生・検出技術の研究開発が国内外で急速に進展してきている。また応用研究も盛んになってテラヘルツ波の持つ透過性と物質固有のスペクトルが得られるという特長を生かして分析や非破壊検査に応用されつつある。

産業応用で最も期待されているのが工業製品の外から見えない異常(傷、欠陥、不良)などを見つける非破壊検査である。

前半では我々が取り組んできたテラヘルツ波イメージングシステム開発の例を紹介する。テラヘルツ波によるイメージングはエックス線や超音波によるイメージングとは原理的に異なるものを見ることができる点において有用なツールとなる。反面、広く社会実装するためにはシステム技術として解決しなければならない技術課題がある。

後半では技術課題を解決するために実施された(国研)JST-ACCELプログラム「半導体を基軸としたテラヘルツ光科学と応用展開」の研究開発の取り組みについて紹介する。本プログラムではテラヘルツ光源(発生源)、検出器、高速イメージング、テラヘルツレーダーなどの研究開発がなされ、ボディスキャナーや非破壊検査のプロトタイプが開発された。

今後、さまざまなテラヘルツ関連コンポーネントが開発され、市場に出回ることで用途に合ったシステムを構成できるようになるだろう。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

レーザ超音波による溶接施工中の欠陥計測に関する研究

大阪大学 大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻 講師 野村 和史 氏
一般に溶接・接合技術においては、プロセスで生じる外乱や接合対象物に生じる外乱などから継手品質を完全に保障することができない。結果として溶込み不良、気孔欠陥、割れなどの欠陥が発生する。そのため欠陥の有無を確認する検査が必要となる。

超音波探傷などに代表される検査は、接触型で溶接直後のような高温状態には適用できないため、接合プロセスの後に行われることが通例である。

しかし、後戻り工程を回避するための多層盛中のパスごとの検査や、現在抜き取り検査が行われている製品に対する全数検査、といったインプロセスもしくはインラインでの検査、計測が望まれている。

そこで我々は測定対象に遠隔から非接触で超音波を送受信できるレーザ超音波法に注目し、レーザ超音波による溶接品質モニタリング技術の開発に取り組んでいる。

本講演では、まずいくつかの適用例を用いてその有用性を述べる。さらに、近年開発の進んでいる高出力かつ小型のマイクロチップレーザを用いることで、溶接ロボットアームに搭載可能で可搬性のあるレーザ超音波計測システムを開発し、欠陥計測に応用した例を紹介する。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

ハイパースペクトルカメラの展開 ~研究室から市場へ

エバ・ジャパン(株) 取締役最高技術責任者 高良 洋平 氏
近年、新しい画像検査技術として“ハイパースペクトルカメラ”を展示会やweb上で見かけることが多くなり、その名前自体は耳馴染みになってきたのではないだろうか。

画像技術はこれまで、4K、8Kといった空間解像度(画素数)の拡大や、3D計測といった空間計測の方向に進展してきたが、ハイパースペクトルカメラはこれらと異なり、通常モノクロもしくはR、G、Bの3色で捉える色情報、即ち光の波長情報を数十から数百波長に拡張することで、従来技術では捉えられなかった対象の特徴を画像計測できるようになることから、画像認識を飛躍的に向上させる技術として大変期待されている。しかし、本技術を実際の産業現場に応用するためには障壁が多く、基礎研究用途にとどまっていることが多いのが実情と思われる。

そこで本講演では、ハイパースペクトルカメラ技術を研究室から市場へと展開させる鍵となる考え方と、そのベースとなるスペクトルイメージングという概念がもたらす、同じデジタル画像技術でありながら、AIとは逆のベクトルの価値創造を含んだ産業、人間活動へのインパクトを紹介する。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

スキャンレス共焦点デュアル光コム顕微鏡

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 最高研究責任者/教授 安井 武史 氏
共焦点顕微鏡(CLM)は、共焦点光学系を利用することにより、3次元イメージを取得可能なため、非接触表面形状測定やバイオイメージングの分野で広く使われている。しかし、点計測に基づいているため、画像取得には、焦点位置を機械的に走査する必要がある。

また、従来のCLMで得られる画像のコントラストは光強度に基づいているため、無色透明性や非蛍光性の測定対象物(細胞、ガラスなど)、あるいはサブ波長オーダー段差構造を有する反射物体の観測には向いていない。

我々は、超離散マルチスペクトル構造を有する光コムに波長/2次元空間変換を適用して、光コムモードとイメージ画素を1対1対応させることにより、CLMにおける共焦点性とフルーフィルードイメージングを両立可能とした。

更に、このイメージ重畳光コムをデュアル光コム分光してモード分解光振幅スペクトルとモード分解光位相スペクトルを同時取得し、1対1対応関係に基づいて画像再構成をすることにより、共焦点光振幅イメージと共焦点光位相イメージがスキャンレスで同時取得可能なデュアル光コム顕微鏡を開発した。これらの研究成果について紹介する。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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深澤 亮一

(有)スペクトルデザイン

代表取締役

1989年新潟大学大学院自然科学研究科博士課程修了(学術博士)、日本分光㈱にて赤外・ラマン分光装置開発、エモリー大学物理学科研究員、郵政省通信総合研究所関西先端研究センター研究員、㈱栃木ニコンにてテラヘルツ技術開発に従事、2004年㈲スペクトルデザイン設立、2008年~現在まで同社代表取締役、2017~2021年度(国研)(JST)ACCELプログラム「半導体を基軸としたテラヘルツ光科学と応用展開」のプログラムマネージャー、専門は半導体光物性、研究用装置開発、テラヘルツ波分光・イメージング装置の開発

野村 和史

大阪大学

大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻 講師

大阪大学 大学院工学研究科 講師.
2007年 大阪大学大学院工学研究科博士課程卒業.同研究科 共同研究講座での特任助教,企業研究員を経て,2010年 同研究科マテリアル生産科学専攻 助教.2021年より現職.アーク溶接を中心とした,高度先端計測,制御技術に関する研究に携わる.現在は,レーザ超音波法による欠陥・溶融現象のその場計測,溶融池モニタリングと機械学習の融合による溶込み推定などの研究に従事.溶接学会,レーザー加工学会,日本非破壊検査協会会員.
http://www.mapse.eng.osaka-u.ac.jp/miea/

高良 洋平

エバ・ジャパン(株)

取締役最高技術責任者

分光イメージングを用いた腎臓病態における Ca2+ シグナル動態研究、ハイパースペクトルイメージングによる蛍光発現大腸菌の増殖過程の可視化などを行い、産学連携・医工連携を通じてハイパースペクトル技術を用いた診断技術の研究開発を施行。
2011年よりエバ・ジャパン株式会社で研究開発責任者として、分野横断的なハイパースペクトル技術の応用研究および産業還元に従事。

安井 武史

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所

最高研究責任者/教授

1997年徳島大学大学院工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。2013年奈良県立医科大学大学院医学研究科・論文博士、博士(医学)。
1997年徳島大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー博士研究員、同年通産省工業技術院計量研究所博士研究員、1999年大阪大学大学院基礎工学研究科助教を経て、2010年より徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部教授、2019年より徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所(pLED)所長(現、最高研究責任者/CRO)。2007年および2012年仏ボルドー大学招聘教授、2010年仏リトラル・コート・ド・パール大学招聘教授。主な研究テーマは、テラヘルツ計測、光コム計測、非線形光学顕微鏡。