分光セミナー

2022年11月11日(金) 10:30-13:00 3F 会場内特設会場
【SC-1 遠・深紫外分光法の基礎と応用

日本分光学会

紫外フロンティア分光法概説

関西学院大学 生命環境学部 名誉教授 尾崎 幸洋 氏
ここで言う紫外フロンティア分光法は、10-300 nm の領域の分光法を言う。

この領域の分光法は高エネルギー側から、真空紫外分光法(10-120 nm)、遠紫外分光法(120-200 nm)、深紫外分光法(200-300 nm)の三つに分けることができる。真空紫外の中で波長の短いところは極端紫外と呼ぶことがある。

これらの領域について国際的な定義があるわけではないが、上記の分類がかなり広く使われるようになってきた。

真空紫外と遠紫外の境目は、真空紫外の場合は装置を真空にひく必要があるが、遠紫外の場合は必ずしもその必要はなく、窒素やアルゴンガス置換で済むという点にある。

遠紫外と深紫外の違いは、前者では窒素ガス等での置換が必要となるが、後者ではその必要はないという点にある。遠紫外と深紫外ではこのほかにも大きな違いがある。

遠紫外域には全く電子遷移を示さない水やアルカンも遠紫外域には電子遷移を示す。また遠紫外領域ではRydberg遷移が数多く観測されるのに対し、深紫外では観測されない。σ電子の遷移は遠紫外域に特徴的に観測される。演者らは遠紫外―深紫外領域の分光にATR法を用いている。その長所についても講演する。

減衰全反射遠紫外の装置と基礎研究

近畿大学 理工学部 准教授 森澤 勇介 氏
遠紫外領域(120-200 nm)にはすべての分子が許容電子遷移を持ち、液体・固体に対して従来の透過吸収スペクトルを測定するのは困難である。

我々が開発している遠紫外領域における減衰全反射法(ATR法)を用いることで、これまで測定できなかった遠紫外領域の吸収スペクトルを再現よく測定することができる。

その結果、これまで見られていなかった液体・固体中での分子間相互作用によって、π軌道だけでなく、n軌道、σ軌道の電子の変化を捕らえることができるようになった。

講演では、ATR遠紫外分光法の装置およびその原理を説明し、最近得られた水・アルカン・ポリエチレン・高濃度電解質溶液などの電子状態に関する基礎研究についてお話しします。

ATR紫外分光の電気化学界面への応用

立教大学 理学部 准教授 田邉 一郎 氏
電極反応や触媒反応などの化学反応をともなう界面や、トランジスタやバッテリーのような電気化学デバイスにおける界面を考えたとき、機能発現の駆動力となる電位勾配が局在する電気二重層を理解することは必須であり、プローブ顕微鏡や非線形分光法をはじめとした多くの分析手法が開発されてきた。

本セミナーの主題である遠・深紫外域において、数多くの物質が強い吸収をもつということは、界面分析や薄膜分析において利点となる。例えば、単分子層程度の有機薄膜も、非常に強い電子励起吸収をもつ。

また、トランジスタとしての応用が期待されている有機半導体薄膜/イオン液体の界面に着目すると、電圧印可によって電位応用する分子は界面のみであり、そのわずかな空間領域の変化を検出する必要がある。これを実現するのが、測定深さが僅か数十ナノメートルに制限された、ATR紫外分光法である。

本セミナーでは、有機半導体薄膜/イオン液体界面に加えて、電極/イオン液体の分光分析例について紹介する。また、同手法による、金属イオン周りのイオン液体の溶媒和構造研究についても取り上げる。
量子化学計算、分子動力学計算、多変量解析を駆使することで、得られたスペクトルから分子描像を獲得する方法についても解説する。

深紫外領域のナノフォトニクス

北海道大学 電子科学研究所 准教授 田口 敦清 氏
波長が200 nmから300 nmの深紫外光は、フォトンエネルギーが物質の電子遷移エネルギーに相当し、吸収分光や光重合、光加工や触媒などこれまでも科学と産業に幅広い応用があった。

その深紫外光で、表面プラズモンポラリトンにより深紫外光の局在と増強を高めた新しい紫外光科学がはじまりつつある。

本講演では、アルミニウムを用いた紫外プラズモニクスの発見とその深紫外ラマン散乱増強への応用、深紫外二光子重合による3次元レーザー光造形の新しい話題などについてお話する。

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尾崎 幸洋

関西学院大学

生命環境学部 名誉教授

1978年、阪大院理学研究科博士課程修了(理学博士)、1989-2018年関西学院大学勤務、2018年-同大学名誉教授、大学フェロー、豊田理化学研究所客員フェロー、理研主幹客員研究員、神戸大学客員教授等を務める。
受賞歴:紫綬褒章、日本化学会賞、日本分析化学会学会賞、分光学会賞等を受賞

森澤 勇介

近畿大学

理工学部 准教授

2005年 京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了、同年 台湾国中央研究員原子分子研究所博士後研究員、2008年 関西学院大学理工学部博士研究員、2012年 近畿大学理工学部理学科講師を経て、2016年 現職。
受賞:日本分光学会賞(奨励賞)(2013)、NIR Advanced Award (2020)
専門はテラヘルツ領域から遠紫外領域までの広い分光領域を用いた分子分光学と、それを用いた物理化学・分析化学