レーザー安全セミナー

2022年11月10日(木) 10:30-17:45 3F 会場内特設会場
【SF-1 令和4年度 レーザー安全セミナー

一般社団法人 レーザー学会

 
本セミナーは、厚生労働省・基発0325002号(平成17年3月25日付)「レーザー光線による障害防止対策要綱」に記載されている安全衛生教育の5項目を遵守してプログラムを構成しています。
本セミナーは、レーザーの取り扱い初期段階を対象としており、レーザーの基礎・応用、人体への影響、保護具、安全基準、安全対策と幅広い範囲を網羅します。但し、レーザー安全基準の詳細についてはセミナーの対象外となります。
レーザーを初めて取り扱う人、既に取り扱っている人のみならず、指導・教育に当たる人にも有用な内容となっています。

【開催日時】
 ●2022年11月10日(木)10:30~17:45(10:15開場)
【会場】
 ●東京都立産業貿易センター 浜松町館 展示会場3階 特設セミナー会場

 セミナーお申込み、詳細は下記のページをご確認ください
 
レーザー安全セミナー申込ページ

【聴講料】
 ● レーザー学会正会員:25,000円(税込)
 ● 非会員※ :35,000円(税込)
 ● 学生:10,000円(税込)
   ※ 賛助会員に所属する非会員の方を含みます。

レーザーの基礎とその特徴

鈴木 将之 氏(同志社大学)
レーザーの安全な取り扱いを学ぶ上で、その特徴を理解する必要がある。そこで本講演では、レーザーの基礎とその特徴について解説を行う。
はじめにレーザーと自然界の光(太陽光や蛍光灯など)の特徴について述べ、それらの違いについて説明する。特にレーザーはコヒーレントという特徴を持っており、レーザーは指向性と単色性、可干渉性を有する光である。一方、自然界の光は、コヒーレントではない、インコヒーレントな光である。このような特徴の違いから、レーザーを安全に取り扱うための基本的な特徴について説明を行う。
つぎにレーザー発振の原理について解説を行い、この原理から得られるレーザーの指向性と単色性、可干渉性の物理的なイメージを理解する。特に指向性と単色性の特徴は高い集光特性を得ることができる。さらに時間幅という概念を含めて考えると高ピーク強度が実現できるため、これについて考えてみる。
最後にレーザーは、光であるため波の特徴をもつ。このことからレーザーは回折や屈折、反射、散乱などの現象を生じる。これら現象は、レーザーを実用的に利用する上で必ず理解する必要がある。そこでレーザーの回折や屈折、反射、散乱の振る舞いについて説明を行う。

レーザー装置の仕組みとその応用

近江 雅人 氏(大阪大学)
レーザー光はレーザー発振器によって人工的に作られる光であり、レーザー光を作り出すレーザー発振器内の主要部分を「光共振器」と言う。光共振器内にはレーザー媒質があり、レーザー媒質は外部から励起され、誘導放出光を発生する。誘導放出光は向かい合う2枚の鏡(共振器ミラー)の中でエネルギーを吸収・放射し、増幅される。この対面する2枚のミラーによって、レーザー光を特定の方向へ向かわせ、光を増幅する。1枚のミラーは部分透過ミラーになっており、増幅されたレーザー光の一部を外部に出射する。このように、レーザー光は誘導放出の過程で発生した単一の色で発光し、指向性が極めて良い。また、レーザー光をレンズで集光すると、波長程度の極めて小さいスポットまで集光できる。さらに、レーザー光は出力が非常に大きいことも特徴である。パルス動作ならTW(1012W)のピーク出力や連続発振では数百kWの出力が得られている。このレーザーはレーザー媒質によって、気体レーザー、固体レーザー、液体レーザー、半導体レーザーに分類されている。
 上記のレーザー光を用いて様々な応用がなされている。レーザーの性質を用いたものとして、バーコードリーダー、CD/DVDのディスクからの情報読み取りや書き込み等に利用されており、また、レーザー照準器などの土木測量、レーザーレーダーという大気中の粒子測定などにも利用されている。高出力のレーザー光を利用したものには、レーザー加工、レーザー溶接、穿孔、マーキングなどがある。レーザーは医療分野にも積極的に利用されている。レーザーメス、レーザー凝固装置、皮膚科・形成外科におけるあざ治療、さらに内視鏡にレーザー光を導光して様々な治療に利用されている。

目に与える光・レーザーの影響と眼傷害事例

中西 孝子 氏(昭和大学)
ヒトの視覚情報認知では、まず視界全体で漠然と対象を感じ、次いで中心で詳細に見極めるという特徴がある。解剖学的には視界が網膜全体に上下左右逆に投影され、その中で網膜中心窩に視線の先にある対象が結像されている。詳細に見極めるという点を視力で表現すれば、周辺網膜では 0.1以下で、中心窩では、1.0 である。視界全体のどこかで何か光るものを感じると、無意識に、これは何だ?と、つい中心窩で詳細に見極めようとする。これがレーザーを直視することになり、結果として網膜中心部に重篤な障害を起こしてしまう。網膜の直径は約40 mmあるのに対して、“よりによって” 直径わずか0.35 mmの中心窩に障害を受けるのは、ヒトのこのような視覚情報認知の特性によるためであろう。レーザーの性質を熟知している研究者でも、つい、うっかり光路調整中などにビームをのぞき込んでしまうようである。高出力レーザーポインターによる「いたずら」もこの特性が原因で網膜傷害が引き起こされる。このように、レーザーによる網膜障害を予防するためには眼の構造、視覚機能を理解する必要がある。今回の講演では、目の構造と視覚、可視光またはレーザーによる眼の傷害事例について解説する。

休憩・昼食(90分)


皮膚に与える光・レーザーの影響と皮膚傷害事例

河野 太郎 氏(東海大学)
本講演ではまず、皮膚の構造と創傷治癒について解説する。次にレーザーの生体作用と熱緩和時間について説明する。レーザーの生体作用を大きく分けると光熱作用、光機械的作用、光化学作用次の3種類に分けられ、皮膚レーザー治療の中心的働きである、光熱作用と光機械的作用について、説明する。標的とその周囲の温度分布は、標的の直径と組織拡散性で決まるガウシアン分布となる。中心温度が50%に減衰の時間を熱緩和時間という。この熱緩和時間以下の照射時間で、レーザーを照射することで、周囲組織が熱損傷が伝わる前に、標的の不可逆性の熱変性が生ずる熱緩和時間を考慮することで、瘢痕のない治療が可能となる。我々、日本人は西洋人と比較して、皮膚色が濃いため、レーザーが皮膚表面のメラニンに吸収され合併症が出やすい。合併症例を減らすためには、皮膚の冷却が有用である。また、照射方法を変更することで、生体作用が異なる。微細なレーザーを1 平方センチメートルあたり数百から数千発の照射を行うフラクショナルレーザー照射法は毛根よりも細い照射口径で間隔をあけて正常皮膚を残しつつ点状に照射する方法である。従来の面状照射する方法に比べて剥皮されない分、上皮化が早く、炎症後の色素沈着等の合併症がすくない。皮膚のレーザーの生体作用は多くの点で、無生物への作用とことなる。低侵襲に治療をすることは可能であるが、これを無視すると熱傷となり時に瘢痕を形成する。

光・レーザー用保護めがねと防護シールド

加尻 慎也 氏(山本光学 (株) )
高出力のレーザー放射を直接受けた場合、身体はダメージを受け、大きな災害につながる。また、傷害が目に及ぶ場合は、永続的な機能障害に悩まされることとなる。レーザーの利用分野の拡大に伴い、知識と操作に未熟な者もレーザー機器に接する機会が増えてきている。これらを背景にして、JISC6802「レーザー製品の安全基準」の規格改正や、厚生労働省が基発第0325002号「レーザー光線による障害の防止対策について」を通達するなど安全規格の整備も進みつつある。しかし、これらの規格は主に装置側から見た安全に重点が置かれており、レーザー機器を取り扱う者の保護対策に関しては、必ずしも十分に施されているとは言えない。レーザーの性質と深く関係する事故を未然に防ぐ効果的な予防措置(安全対策)とは、どのようなものか、その安全対策の考え方と保護めがねの重要性について、保護具を作る立場からこれらを解説する。

レーザー安全基準

鷲尾 邦彦 氏(パラダイムレーザーリサーチ)
レーザーに関する各種の安全基準は、レーザー光の人体に及ぼす作用の生物物理学的知見や、レーザー光による障害事例、及び動物実験などを基にして得られた最大許容露光量MPE (Maximum Permissible Exposure)がベースとなっている。MPEは、目の角膜や皮膚などについてそれぞれ定められており、それらの値は波長、露光時間、光源の視角などの複雑な関数として表にまとめられている。
ここでは、レーザー安全の考え方及びレーザー安全に関する国際規格群及び国内規格等のリストを簡単に紹介した後、国内規格「レーザ製品の安全基準JIS C6802: 2014 (国際規格IEC 60825-1:2014)」の要求事項について主に解説する。
レーザー製品には、一部のクラスを除き、各クラスに被ばく放出限界AEL (Accessible Emission Limit)が定められている。
要求事項には、レーザー製品のクラス分けの原則に基づいてレーザー製品の被ばく放出レベルを決定しクラス1~クラス4までの8種のいずれかのクラスに分類すること、レーザー製品は各レーザークラスに応じた保護きょう体、セーフティインタロックなどの技術的要求事項を満たすこと、使用者及びサービス実施者への安全確保/注意喚起として、レーザー製品に各クラスの要求事項に従った各種ラベルを付けること、などが含まれている。
レーザーの安全基準は、レーザー技術の進歩やレーザー光の人体に及ぼす作用の生物物理学的知見の進展などによって、絶えず改訂されているので、常に最新動向を注視しておくべきである。

光・レーザー安全対策の基礎

間 久直 氏(大阪大学)
安全対策は使用するレーザーのクラスや種類によって異なるが、最も危険性が高いクラス4のレーザーに対する代表的なレーザー安全対策を以下に挙げる。

(1) レーザー光を透過しない壁やカーテンで囲まれた管理区域を設け、出入口には関係者以外に対する警告表示を行い、関係者以外の者がレーザー光にさらされないようにする。
(2) 使用するレーザーの波長で十分な光学濃度を持った保護めがねを着用し、保護めがねを着用していてもビームを直接見ることは厳禁である。
(3) 反射、散乱光も目に入らないように注意し、腕時計、指輪など光を反射しそうなものは外す。
(4) 可能な限り明るい環境で作業し、視線とビームの高さが一致しないようにする。
(5) レーザーの光路およびその延長上には立たないようにする。光路の延長上では何かの拍子にミラー等がずれたり倒れたりすると、自分にレーザー光が当たる恐れがある。
(6) レーザービームの終端は拡散反射体または吸収体(パワーメータなど)で遮蔽する。
(7) レーザーの調整や、光路の調整を行う場合には、レーザーの出力やパルスの繰り返しを可能な限り低くして行う。
(8) レーザービームに直接皮膚をさらさないようにする。衣服は皮膚の露出の少ない難燃性の素材のものが良い。
(9) 半導体レーザーを除くほとんどのレーザーでは内部に高圧電源があり感電の危険性が高いので、筐体を開ける作業は教員や管理責任者の立ち合いのもとでのみ行う。
(10) レーザー照射で発生する有害物質、またはレーザー内部やレンズ等の光学部品で使用されている有害物質にも注意を払う。

休憩(15分)


光・レーザー安全対策の実際(一般消費者)

橋新 裕一 氏(近畿大学)
近年、各種レーザー応用製品が登場し、一般消費者向けの製品も増えてきている。保険収載されるレーザー治療も多くなってきており、その恩恵に浴する患者も増えてきている。レーザーの普及に伴い、一般消費者をも巻き込んだ事故や事件が発生している。本邦では販売が禁止されている100mWを超える緑色あるいは青色の高出力レーザーポインターを用いて、ヘリ、バス等の操縦席を狙った事件で逮捕される事例も多くなってきた。レーザー脱毛器などを購入し、自身で脱毛を行い、熱傷を被った事例もある。医師免許を持たない職員による、レーザーあるいは光による脱毛治療で熱傷被害に遭ったケースも散見される。国民生活センターの公開資料についても紹介する。
一般消費者が事故や事件に遭遇せず、レーザー製品の安全な使用方法や注意事項を学んで、安心して使って頂けるよう、平易に解説する。

光・レーザー安全対策の実際(教育・研究機関)

吉田 実 氏(近畿大学)
レーザーを利用するには、従来の電気ならびに機械的な工具および研究用具とは異なる知識と取り扱い方法が求められます。学生や初心者は、思い込みにより、レーザーと発振器などのレーザー装置ならびに光学機器を長年扱っている技術者にとっては想像できないような危険な扱いをしてしまうことがあります。むしろ、そのような扱いをする人物であると思わなければならないと想定するのが安全です。
加工用の高出力レーザーはもちろんのこと、研究室で使用している計測用の光源も危険をはらんでいます。さらに、ファイバに閉じ込められているため比較的安全だと思われている通信用の光源も、トラフィックの増加に対応するために出力が増加しています。ことに、波長多重通信に代表される多重化により、単一の半導体レーザー出力を大きく超える高い出力がコア径10 µm足らずの単一モードファイバを伝搬していることは、技術の流れとして避けられなくなっています。さらに、通信波長域はアイセーフだと言われていますが、それを鵜呑みにして安全確保をおろそかにするようなことがあってはなりません。
本講演では、学部の教育をほぼ終えている、卒業研究のために配属された学生が陥りそうな間違いや、初めてレーザーを扱う企業の技術者が気を付ける(気を付けさせる)べき事項を軸に、取り返しのつかない事故に発展する可能性をできるだけ低く抑えるために役に立ちそうな、また、学生に代表される初心者の思い込みを払拭するための指導や説明内容などを説明する予定としています。

光・レーザー安全対策の実際(産業分野)

橋新 裕一 氏(近畿大学)
厚生労働省が毎年調査している「業務上疾病発生状況等調査」の対象作業の内、紫外線・赤外線およびレーザーについて、そのデータを供覧する。講演者自身が遭遇した事故・ヒヤリハットについて紹介する。事故発生時と事後の対応と賠償責任保険についても言及する。
レーザーの産業分野への応用は計測機器・モニタリング機器・認証機器・加工機器・通信機器など、広範囲・多用途である。これらに関連する安全基準を提示する。
厚生労働省・基発0325002号(平成17年3月25日付)「レーザー光線による障害防止対策要綱」に記載されている安全対策について詳述する。
事故に遭遇せず、レーザー製品の安全対策を図って、安心して使って頂けるよう、平易に解説する。

休憩


習熟度確認試験(10問)

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