NICT(情報通信研究機構)の研究者が語る開発動向

2023年04月21日(金) 13:00-16:15 アネックスホール F203
【NIC-1 NICT(情報通信研究機構)の研究者が語る開発動向

NICTにおける空間光通信の研究開発の概要

情報通信研究機構 ネットワーク研究所 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 研究マネージャー 久保岡 俊宏 氏
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)では、1980年代より人工衛星を活用した光空間通信の研究開発を行ってきた。
その主眼は人工衛星と地上の間の光通信に置かれており、静止軌道に近い高軌道の大型衛星、低軌道の大型衛星、低軌道の小型衛星(1.5μmのレーザ光利用)、という3つの異なるタイプの衛星と地上の光地上局の間で世界初の光空間通信に成功した。

これらの実績をベースに、現在では、

 (1)さらに高速な通信、
 (2)搭載機器、光地上局をより小さく、
 (3)通信をより安全に、

という3つの方向性で研究開発を行っている。

本講演では、NICTの第5期中長期計画(令和3年度〜7年度)における光衛星通信に関する研究開発の概略について説明する。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

Beyond 5G/6Gの実現に向けた衛星光通信技術と非地上系ネットワーク(NTN)の研究開発

情報通信研究機構 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究技術員 小竹 秀明 氏
NICTは、5Gに代わる次世代の通信基盤として、Beyond 5G/6Gの研究開発を推進しています。

Beyond 5G/6Gでは、地上系のネットワークだけでなく、静止衛星や低軌道衛星を含む多数の衛星や無人航空機同士が3次元で接続された非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の構築が進められています。
さらに、対象エリアを月面にまで拡張し、海洋から宇宙に至るまでの3次元のシームレスな通信ネットワークの実現を目指しています。
この実現に向けて、NICTでは、衛星光通信技術のNTNへの適用に向けた研究開発を進めております。

本講演では、Beyond 5G/6Gの実現に向けた衛星光通信技術とNTNの研究開発動向として、NICTで実施している衛星光通信実験や衛星搭載用光通信ターミナルの開発、NTN構築に向けた取組みを中心に紹介します。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)/ 中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

光衛星通信技術の課題とNICTでの研究開発状況

情報通信研究機構 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究員 ディミタル コレフ 氏
質の高い衛星通信サービスを提供するには、超高速なデータレートが必要である。
光衛星通信は国際周波数調整不要で、搭載機器の重量や消費電力を小さくできコストの低下や衛星の小型化が可能であるなどのメリットが挙げられる。
また、レーザー光により通信することから、電波より大容量な高速通信が可能となる。

光空間通信技術の研究開発においては、上記のメリットであるが、信頼性や可用性のため、他に複数の課題が残る。
例えば、細いレーザで長い距離のリンクなので、追尾システムが必要。この追尾システムの構成とトレードオフを展示されている。また、大気伝搬の影響、特に大気ゆらぎと雲量の課題と対策を説明する。
NICTの研究開発活動と実験も紹介する。

NICTにおける衛星地上間光通信用地上局整備の取り組み

情報通信研究機構 ネットワーク研究所 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究員 斉藤 嘉彦 氏
衛星-地上間の通信における高速化を目指す上で空間光通信は有望な手段として近年研究・開発が進められています。
また、空間光通信はその指向性の良さから暗号通信との親和性も良く、今後ますます需用が増すと考えられる高いレベルでの安全性を持つ通信を確保する上で非常に重要な通信手段となっていくはずです。

現在NICTではテストベッドとして利用可能な光地上局の整備をしています。鹿島に2m口径の光アンテナに加え、小金井、鹿島、神戸の3拠点に40cm口径の光アンテナが整備される他、可搬型光地上局や運搬可能な小型地上局も用意されます。

また既存の光アンテナに対しても天球上を高速で移動する衛星を精度よく追尾するための精追尾機構や、さらに大気を通過してくる際に劣化したビームの波面を補正する補償光学系の整備も進んでいます。

この講演では、これらの取り組みに加えて今後NICTが行うべき地上局整備に関する研究開発を紹介します。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)/ 中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

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久保岡 俊宏 氏

国立研究開発法人 情報通信研究機構 

ネットワーク研究所 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 研究マネージャー

1996年東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程修了(理学博士)、1996〜1999年、科学技術振興事業団科学技術特別研究員 派遣先:海上保安庁水路部(現:海洋情報部)海洋研究室、2000年 郵政省通信総合研究所(現:情報通信研究機構)に入所。2011年内閣府総合科学技術会議事務局に出向。2012年情報通信研究機構に復帰、現在に至る。専門分野は、光衛星通信と人工衛星の軌道力学。

小竹 秀明

国立研究開発法人 情報通信研究機構

ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究技術員

2008年、慶應義塾大学院理工学研究科修士課程修了。同年、日立製作所に入社。光ファイバ通信技術の研究開発に従事。2015年、日本電気に入社。衛星搭載用光通信機器の開発に従事。2020年、情報通信研究機構(NICT)に出向。2022年、NICT入所。以来、衛星光通信技術及び非地上系ネットワークの研究開発に従事。静止衛星から低軌道衛星、月面に至るまで、様々な光通信プロジェクトに携わる。現在、ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究技術員。技術士(電気電子部門)。

ディミタル コレフ

国立研究開発法人 情報通信研究機構

ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究員

2008年 ソフィア理工大学通信学科修士課程終了
2014年 早稲田大学国際情報通信研究科博士課程修了
2014年 国立研究開発法人情報通信研究機構 入社
現在  国立研究開発法人情報通信研究機構 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究員

斉藤 嘉彦

国立研究開発法人 情報通信研究機構

ネットワーク研究所 ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究員

北海道出身。2002年東京大学大学院博士課程修了、博士(理学)。国立天文台光赤外研究部研究員、国立天文台ハワイ観測所RCUH研究員、東京工業大学特任助教を経て、2017年国立研究開発法人情報通信研究機構に入所。
専門は天文学。すばる望遠鏡にて取得した銀河系外球状星団の観測データをまとめて博士号を取得。国立天文台ハワイ観測所では2002年よりレーザーガイド星補償光学系の開発に従事。東京工業大学では遠隔制御望遠鏡の運用・システム改良に携わる。

現在は衛星地上間光通信の中でも主に地上局の光学系関連の研究開発に従事。2021年より現職。