光通信技術セミナー

2024年04月24日(水) 13:00-16:50 アネックスホール F206
【FGC-1 商用化が見えてきた光空間多重通信技術 - 現状と将来

開会の挨拶

早稲田大学 鈴木 正敏 氏

マルチコアファイバーを用いる光海底ケーブルの研究開発と商用化

日本電気(株) 海洋システム事業部門 海洋開発統括部
方式技術グループ長 井上 貴則 氏
光海底ケーブルシステムは国際間通信を担う重要なインフラであり、年々増加するトラフック量をカバーするために大容量化が求められている。

一方で、光海底ケーブルシステムにはケーブル内や中継器筐体内における空間制限、および陸揚局から海底に敷設された中継器などの機器に電力を供給する給電装置の電力制限が存在する。これらの制限化において、更なる大容量化を実現するため、光海底ケーブルシステムへの空間分割多重技術の適用が注目されている。

中でも、マルチコアファイバーは単一の光ファイバー内に複数のコアを有することで、伝送容量を大幅に増やすことが可能な光伝送技術として期待されている。また、2023年には米国とアジアを結ぶ光海底ケーブルシステムの一部にマルチコアファイバーが適用されることが発表され、商用化に向けた取り組みも始まっている。

本講演では、マルチコアファイバーを適用した光海底ケーブルシステムに関する研究開発と商用化に向けた取り組みについて紹介する。

極低損失マルチコア光ファイバの研究開発と商用化

住友電気工業(株) 光通信研究所 空間多重光伝送技術研究部
グループ長・シニアスペシャリスト 林 哲也 氏
シングルモード光ファイバの伝送容量は、信号変調レートの高速化、波長多重化、デジタルコヒーレントによる信号変調フォーマットの多値化により、指数関数的な拡大を続けてきたが、研究レベルでは実用的な増幅波長帯域内での伝送容量はシャノン限界に迫りつつある。
この限界を打破すべく、2010年頃から空間分割多重(Space Division Multiplexing: SDM)技術を用いる光ファイバ通信技術の研究開発が盛んに行われ、SDM光通信用の光ファイバ技術についての原理的検証、研究的な視点からの限界の探索、そして実用化に向けた研究開発が行われてきた。

SDM光通信用の光ファイバのなかでもマルチコア光ファイバ(Multi-Core Fiber: MCF)は最も実用化の近い技術として研究開発が行われてきたが、2023年9月に遂に、海底光通信システムへのMCFの適用の予定がアナウンスされ、また、世界初の極低損失MCFの量産化および販売開始がアナウンスされるなど、MCF技術の実用化に向けた進展は大きく進みつつある。

本講演では、MCFが必要とされる背景について特に海底光通信システムを中心に議論したうえで、主要なMCFの種類とMCF特有の設計要素/光学特性について紹介することで大まかな設計背景を踏まえたうえで、商用販売が開始された極低損失MCFを紹介する。また、最新のMCF関連技術の研究開発状況について紹介する。

マルチコア光ファイバの標準化展望

日本電信電話(株) アクセスサービスシステム研究所 上席特別研究員
中島 和秀 氏
2000年代後半に、将来の光通信システムにおける空間分割多重(SDM)技術の必要性を日本から発信して以来、10年以上に渡り世界各国で多様なSDM光ファイバ、並びにそれらを用いたSDM光通信技術の研究が活発に推進されてきた。
近年では、従来の光ファイバと同等の外径を有する、標準クラッド径マルチコア光ファイバ(MCF)の有用性・適用性が盛んに議論されている。

標準クラッド径MCFは、実用展開に最も近いSDM光ファイバとして注目されており、2023年9月には、2025年を目途に新たな海底システムへの部分導入を予定していることも公表された。このような背景も踏まえ、ITU-Tでは、2023年11月の会合で、SDM光ファイバ標準の制定に向けたロードマップについて議論を開始することが合意された。

本講演では、これまでの光ファイバ国際標準の変遷と近年のSDM光ファイバ研究動向を俯瞰し、世界初のSDM光ファイバ標準の制定に向けた私見を述べる。

標準外径マルチコアファイバを用いた光伝送技術の現状と将来展望

(株)KDDI総合研究所 先端技術研究所 光部門 フォトニックネットワーク研究所
光トランスポートネットワークグループ エキスパート 相馬 大樹 氏
近年、単一モードファイバ(SMF)における伝送容量の物理的限界を打破する技術として、マルチコアファイバ(MCF)を用いた空間分割多重(SDM)技術が注目されている。

中でも125 µmの標準クラッド外径を持つMCFは、従来のSMFと同等の優れた機械的強度が見込め、さらに従来型のケーブル構造も適用可能であるため、SDMシステムの実現に向けたファーストステップとして有望視されている。
MCFは、コア間の結合を光学的に抑圧する弱結合型MCFとコア間の結合を許容し受信後のデジタル信号処理によって信号分離する結合型MCFに分類される。

本講演では、標準クラッド外径の弱結合型及び結合型MCFを用いた光伝送技術について、大容量化に向けた研究開発と実用化に向けた研究開発の最新動向を紹介し、その将来展望を述べる。また、当社の最新の研究開発成果として、標準外径MCFを用いた大洋横断級伝送実験や標準外径MCF光ケーブルの敷設環境下かつ異ベンダ接続時における光学特性及び伝送性能評価の結果についても説明する。

SDMネットワーク技術の現状と将来展望

香川大学 創造工学部 神野 正彦 氏
2030年前後の実用化を目標に研究開発が進む、空間分割多重(SDM)に基づく超大容量かつ経済的な光ネットワーク(空間チャネルネットワーク(SCN))の実現技術を紹介する。

講演では、まずSCNの基本技術として、 SCNアーキテクチャと、コア選択スイッチ(CSS)に基づく空間チャネルクロスコネクト(SXC)を紹介する。
続いて、CSSの挿入損失、偏波依存損失、コア間クロストーク、高次モードによるマルチパス干渉などの基本特性と、NICT委託研究PHUJIN(風神)プロジェクトの成果である小型化・パッケージ化・装置実装化の進展について説明する。その後、SXCの接続自由度に応じた各種構成と、これが収容効率とノードコスト、ノード内配線数に与える影響について論じる。

最後に、CSSの適用領域としての海底系ネットワークとデータセンタ間ネットワークについて、2芯単方向/1芯双方向伝送や、ネットワークグローバルなコアIDの定義等の研究成果を紹介し、SDM光ネットワークの将来を展望する。

マルチコア光ファイバ増幅器の最新動向と今後の展望

古河電気工業(株) 主席研究員 高坂 繁弘 氏
小型化と低消費電力化を狙うマルチコア光ファイバ増幅器についてコア励起型とクラッド励起型それぞれの技術動向を紹介する。

コア励起4コアファイバ増幅器は光デバイスの集約に伴う小型化を狙った開発が行われており、その最新状況を紹介する。クラッド励起型は、小型化に加えて従来の光ファイバ通信用光増幅器(EDFA)を超える低消費電力を狙った開発が行われている。

非結合型19コアEDFを用いる光増幅器はLバンドでEDFA同等の消費電力を達成した。結合型12コアEDFを用いる光増幅器では非結合型マルチコアEDFが消費電力削減に達していないCバンドでEDFAを超える低消費電力を達成した。これらの消費電力削減に寄与した技術を紹介する。

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井上 貴則

日本電気株式会社

海洋システム事業部門 海洋開発統括部 方式技術グループ長

1998年と2000年に広島市立大学で情報科学の学士号と修士号を取得。2000年にKDD-SCSに入社し、超長距離光伝送システムの研究開発に従事。2005年には日本テレコムに転職し、陸揚局での通信機器およびネットワークの運用保守業務に携わる。その後、2008年にNECに転職し、現在は海洋システム事業部門 海洋開発統括部の方式技術グループ長として、超長距離光伝送システムの先進技術の開発に従事している。

林 哲也

住友電気工業株式会社

光通信研究所 空間多重光伝送技術研究部 グループ長・シニアスペシャリスト

2004年 東京大学工学部卒業,2006年 同大大学院 修士了.2013年 北海道大学大学院 博士了.
2006年に住友電気工業(株)に入社し,光通信研究所に配属.光ファイバおよび関連技術の研究開発に従事し,近年マルチコア光ファイバ(MCF)を含め空間分割多重光通信に関する研究開発に注力.MCFの導波理論・伝送理論・評価手法等の構築に先駆的な貢献を果たすとともに,ファイバに曲げ・捻れのある実際的環境下での低クロストークMCF(同種コア型・異種コア型)の提案・実証や,低ロス・低モード分散の結合型MCFの提案・実証など,光通信用MCF実用化に向けた技術開発においても重要な貢献を果たす.
2017年OSA Tingye Li Innovation Prize,2020年度 電気通信普及財団テレコムシステム技術賞など受賞.Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2024 Program Chair,Journal of Lightwave Technology: Deputy Editor.

中島 和秀

日本電信電話株式会社

アクセスサービスシステム研究所 上席特別研究員

1994年、日本電信電話株式会社入社
以来、各種光ファイバの設計、評価に関する研究、並びに光ファイバ技術の国際標準化に関する業務に従事
2009年より、ITU-T光ファイバ国際標準検討グループのラポータ
2017年より、NTTアクセスサービスシステム研究所、上席特別研究員
現在、NTTアクセスサービスシステム研究所、アクセス設備プロジェクト、先端媒体研究グループ、グループリーダー、上席特別研究員

相馬 大樹

株式会社KDDI総合研究所

先端技術研究所 光部門 フォトニックネットワーク研究所
光トランスポートネットワークグループ エキスパート

2012年北海道大学大学院 情報科学研究科 修士課程修了。2012年KDDI株式会社入社、2013年よりKDDI研究所(現KDDI総合研究所)勤務。以来、空間多重伝送技術の研究開発に従事。2023年よりKDDI総合研究所 先端技術研究所 光部門 フォトニックネットワーク研究所 光トランスポートネットワークグループ エキスパート。電子情報通信学会会員。博士(工学)。2021年一般社団法人 電子情報通信学会「業績賞」、2021年公益財団法人 電気通信普及財団「第36回電気通信普及財団賞 テレコムシステム技術賞」、2022年公益財団法人 通信文化協会「第67回前島密賞」受賞。

神野 正彦

香川大学

創造工学部

1986年 金沢大学大学院修士課程修了、同年日本電信電話株式会社入社。1993年−1994年 米国National Institute of Standards and Technology客員研究員。1995年 大阪大学博士(工学) 。 2012から年 国立大学法人香川大学教授。
2013年電子情報通信学会フェロー 「波長多重光ネットワークの広波長帯域化と高利用効率化の研究」、2017年電子情報通信学会業績賞「エラスティック光ネットワーク技術の先駆的研究」、 2020年IEEEフェロー ”for contributions to elastic optical networks and C-and L-band transmission systems”。

高坂 繁弘

古河電気工業株式会社

主席研究員 高坂 繁弘

1999年 北海道大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。東京大学でポストドクターを従事後2002年に古河電気工業株式会社に入社し、光ファイバ応用技術の開発に従事している。光増幅技術としてマルチコアEDFA、ラマン増幅、パラメトリック光増幅技術を、光信号処理技術として波長変換、光パルス圧縮、光スペクトル拡大、光信号再生、光PLL技術を開発してきた。2004年から3年間JST さきがけプロジェクトを受託した。IEEEシニア会員。