集積コムによる通信コンソーシアム講演会

2024年04月25日(木) 13:00-16:00 アネックスホール F206
【CBS-1 第三世代光コム「マイクロ光コム」が切り拓く次世代光技術

マイクロ光コムへの期待

情報通信研究機構 Beyond 5G研究開発推進ユニット ユニット長
寶迫 巌 氏
次世代移動通信システム(B5G/6G)の要求仕様が見えつつある中、研究開発の現状を述べ、その中で活躍が期待されるマイクロ光コム技術への期待を示す。
次にその仕様を如何に実現するか、さらにはどのようなサービスが実現するかを示す。これらにより、マイクロ光コム技術の社会的意義、実現への期待を述べる。

マイクロ光コムの技術ロードマップ

慶應義塾大学 理工学部電気情報工学科 教授 田邉 孝純 氏
光周波数コムは2005年にノーベル物理学賞を受賞した技術であるが、当時の光周波数コム光源は大きく扱いにくいものであった。近年、光周波数コム光源を超小型化する技術が進展している。

光周波数コム光源を小型化・効率化・高集積化できると、従来光周波数コムが利用しにくいと思われていた分野にまで適用し、新たな価値をもたらすことができる。例えば、単一素子で実現する多波長光通信用の小型集積光源や、超低ノイズテラヘルツを生成可能なシステムの実現、さらにはLiDARへの応用などである。
このような小型な光周波数コムをマイクロコムと呼ぶ。

本発表ではマイクロコムの技術ロードマップについて発表する。マイクロコムは国内外で注目度が急速に高まっている。この技術ロードマップを発表することで、科学技術や産業応用におけるマイクロコムの必要性能や今後の展開について明らかとする。

低位相雑音なミリ波・テラヘルツ波発生におけるマイクロ光コムの活用

情報通信研究機構 主任研究員 鐵本 智大 氏
Beyond 5Gの無線通信においては、ミリ波・テラヘルツ波帯の非常に高い周波数の電波の活用が検討されている。これらの帯域においては従来の帯域よりも低雑音な信号発生が難しいため、高出力特性、低位相雑音特性、低周波数帯との同期特性、集積性等を高いレベルで兼ね備える信号発生手法が精力的に検討されている。その有力な手法の一つとして、微小光共振器中で発生できる光周波数コム、マイクロ光コムが注目されている。

マイクロ光コムは集積した微小光共振器の作製技術の向上により発生が可能になった光周波数コム光源の事で、典型的には周波数帯域においてミリ波・テラヘルツ波周波数で等間隔に並んだ光線群を成す。これを高速フォトダイオードで受光する事で、低雑音なミリ波・テラヘルツ波信号を取り出すことが出来る。また、光周波数コムの特性を利用する事で信号の超低位相雑音化、幅広い帯域の周波数の同期等が可能である。

本講演では、マイクロ光コムを用いた低位相雑音な無線信号発生技術の基礎とその特徴を紹介する。

マイクロ光コムを使ったLiDAR

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 准教授 久世 直也 氏
マイクロコムは小型で量産性に優れた光周波数コムとして注目されている。
また、これまでの光周波数コム(例えばファイバーコム)と比べ、コムモード間隔が1000倍程度大きくなり、空間分離が可能になる。近年、この特性を活かしてマイクロコムを使った距離測定(LiDAR)技術の研究が進められている。

講演では光周波数コムと距離計測の関係について紹介し、その後、マイクロコムを使ったLiDARを紹介する。
特に、マイクロコムを2台使うデュアルマイクロコム、周波数変調CW(FMCW) LiDARとカオスLiDARの並列化の研究について紹介する。

光技術がもたらすテラヘルツ通信技術の進化

大阪大学 特任教授 永妻 忠夫 氏
近年、Beyond 5G/6G時代に向けて、テラヘルツ無線通信技術の研究開発が活発になってきた。
本講演では、テラヘルツ無線通信における光技術の役割について解説し、最近の進展や今後の展望について述べる。

集積コムによる通信コンソーシアム (Com^2) の紹介

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 最高研究責任者/教授
安井 武史 氏
現在、テラヘルツ波(周波数300GHz以上)を用いた次世代移動通信(6G)に向けた研究開発に関心が集まる中、『集積コムによる通信コンソーシアム(略称:Com^2 またはコムスクエア)』が昨年7月に設立された。

本コンソーシアムでは、6Gで技術的限界に直面することが危惧される電気的手法を光学的手法に代替することにより(光駆動型テラヘルツ通信:Photonic 6G)、その技術的限界を超えようとすることを目指している。

研究のキーとなるのは、光導波路の微小光共振器から発生させる『マイクロ光コム』である。2005年ノーベル物理学賞の技術である光周波数コム(光コム)も技術進化が進み、第一世代の固体レーザー光コム、第二世代のファイバー光コムに続く第三世代の光コムとして、マイクロ光コムが注目されている。マイクロ光コムは、半導体プロセスにより一括大量生産が可能であり、シリコン・エレクトロニクスやシリコン・フォトニクスとの親和性も高いため将来的には周辺回路を取り込んだ高度な集積化が期待できる。

これまでの光コムに欠けていた使い易さを実現できるだけでなく、従来からの「光周波数の物差し」以外の使い方(例えば、光から電気への周波数変換)や、新たな応用も期待されることから国内外の研究開発が加速している。このマイクロ光コムを各種の光学素子と共に集積することにより、高性能かつ小型で省エネルギーなPhotonic 6G送受信モジュールの実用化が期待されている。

本講演では、本コンソーシアムの体制や取り組みについて紹介する。

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寶迫 巌

国立研究開発法人 情報通信研究機構

Beyond 5G研究開発推進ユニット ユニット長

1993年博士号(理学)を取得。日本鋼管(株)のULSI研究所を経て通信総合研究所(現NICT)に入所。情報通信研究機構(NICT)の未来ICT研究所所長、ワイヤレスネットワーク総合研究センター長を経て、2021年4月よりBeyond 5G研究開発推進ユニット長。これまでにテラヘルツ帯の半導体デバイス・カメラ・ワイヤレスシステムの研究開発、Beyond 5Gのホワイトペーパー出版やアーキテクチャの研究に従事。IEEE 802.15 TG3mb及びStanding Committee Terahertz (SC-THz)の副委員長。

田邉 孝純

慶應義塾大学

理工学部電気情報工学科 教授

2004年 慶應義塾大学理工学研究科 博士(工学)
2004年 日本電信電話株式会社 NTT物性科学基礎研究所 入社
2010年 慶應義塾大学理工学部電子工学科 専任講師
2018年 慶應義塾大学理工学部電子工学科 教授 現在に至る

鐵本 智大

国立研究開発法人 情報通信研究機構

主任研究員

2018年3月に慶應義塾大学大学院より博士(工学)の学位を授かる。在学中は、超低損失な光信号処理に向けた微小光共振器関連技術の研究に携わる。
2018年4月よりIMRA America Inc.の米国コロラド州に所在するボルダー研究所でPostdoctoral Research Scientistとして勤務。
2019年4月から2021年9月まで同社同研究所でResearch Scientistとして勤務。
同社では主に微小光共振器中で発生した光周波数コム(マイクロ光コム)を利用した超低位相雑音のミリ波・テラヘルツ波発生技術の研究に取り組む。
2021年10月より国立研究開発法人情報通信研究機構で主任研究員として勤務。Beyond 5Gの無線通信応用等に向けてマイクロ光コムを用いた低位相雑音の光・無線信号発生に取り組んでいる。

久世 直也

徳島大学

ポストLEDフォトニクス研究所 准教授

2013年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了。その後、IMRA Americaに就職し、2019年に現職である徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所に着任。専門は光周波数コムであり、内容は光源開発・制御技術開発・応用開拓とコム研究の全般を扱う。最近は光周波数コムの中でもマイクロコムの研究に集中している。

永妻 忠夫

大阪大学

特任教授

1986年,九州大学大学院工学研究科 博士課程修了.同年,日本電信電話(株)入社,厚木電気通信研究所,LSI研究所,マイクロシステムインテグレーション研究所等を経て,2007年より大阪大学教授.主として,マイクロ波・ミリ波フォトニクス(光技術と電波技術の融合分野)の研究開発に従事.大河内記念技術賞,科学技術長官賞,電子情報通信学会業績賞,逓信協会前島賞,文部科学大臣表彰科学技術賞,電子情報通信学会功績賞等を受賞.電子情報通信学会・IEEEフェロー.

安井 武史

徳島大学

ポストLEDフォトニクス研究所 最高研究責任者/教授

1997年徳島大学大学院工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。2013年奈良県立医科大学大学院医学研究科・論文博士、博士(医学)。 1997年徳島大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー博士研究員、同年通産省工業技術院計量研究所博士研究員、1999年大阪大学大学院基礎工学研究科助教を経て、2010年より徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部教授、2019年より徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所所長(現、最高研究責任者)。2007年および2012年仏ボルドー大学招聘教授、2010年仏リトラル・コート・ド・パール大学招聘教授。2023年より日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員。主な研究テーマは、テラヘルツ計測、光コム計測、非線形光学顕微鏡。