赤外線技術セミナー

2025年04月23日(水) 10:00-12:55 アネックスホール F204
【IR-1 赤外線技術の動向

赤外線入門

静岡大学 廣本 宣久 氏

赤外線は近年、検出器や光学素子の性能向上、小型化、低価格化によって、利用分野が拡大し、イメージング・分光などの技術を用いる非破壊非接触の検査・物質識別のために、なくてはならないものとなっています。また、赤外線は地上の熱環境の保全、地球温暖化の影響の緩和などのため、熱放射の制御を行う主要な手段として重要性を増しています。

本講演では,赤外線の科学・技術を理解するための基礎を説明します。
 1.現代物理学における赤外線―赤外線とは何か、その性質と利用
 2.赤外線放射の測定の物理量―何を測定しているか、主要な測定量
 3.温度・熱と赤外線-物体の温度・熱と放射の温度・熱
 4.熱放射の制御、熱放射光起電―黒体放射を超える熱放射の制御

●入門程度(大学一般教養程度)

赤外コヒーレント光源の最前線 -LD、QCLから様々な非線形結晶まで-

(国研)理化学研究所 宮田 憲太郎 氏

赤外コヒーレント光源(赤外領域で高いコヒーレンスを持つレーザー技術基盤の光源)は、環境計測、バイオ・医療、精密加工、航空・宇宙など、多岐にわたる最先端産業分野での活用が進んでいる。また、真空紫外・テラヘルツ領域への波長変換やアト秒パルスの生成など、次世代光源開発において、基本波光源・励起光源として重要な役割を果たす。

レーザー技術は現在、ノーベル物理学賞の受賞研究にも多大な影響を与えており、特に2018年には、超短パルスレーザー技術に対する貢献が評価され、ノーベル物理学賞を受賞した。この業績は、レーザー技術の発展における革新的なマイルストーンとなり、現在でも高強度レーザーの生成に広く利用されている。さらに、2023年には、アト秒パルス生成技術に関する研究がノーベル物理学賞を受賞し、極めて短い時間スケールでの電子の挙動の探査が新たな研究領域を切り開いている。

本講演では、そのような先端の産業・科学を支えるコヒーレント光源の、特に赤外領域での最前線について、レーザーダイオード(LD)や量子カスケードレーザー(QCL)といった光源を含め、固体・ファイバーレーザー、非線形光学を活用した波長変換やパルス生成技術まで、レーザー物理パラメーターの特異性や可変性を生かした応用例や最新の研究成果を解説する。

●初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外線イメージング技術

(国研)宇宙航空研究開発機構 片山 晴善 氏

受講料(1セッション/税込)
一般 主催・協賛団体会員/出展社 月刊オプトロニクス定期購読者 シニアクラブ会員 学生
¥18,000¥15,000 ¥15,000¥12,000 ¥9,000¥7,500 ¥9,000¥7,500 ¥5,000

併催イベント一覧へ

2025年04月24日(木) 10:00-12:55 アネックスホール F204
【IR-2 赤外線の光学系の基礎

メタマテリアルと赤外線センシング技術

(国研)理化学研究所 田中 拓男 氏

メタマテリアルは、波長より細かな人工構造を用いて物質の光学特性を制御した疑似材料である。メタマテリアルそのものは構造体であるが、それを構成する構造を波長より細かく設計・加工することで、1つ1つの構造は光波に直接感知されずにメタマテリアル全体が1つの均質な物質として振る舞う。

メタマテリアルの特徴の1つは、その構造をうまく設計することで、自然界から直接得られる物質には無いような光学特性を物質に付与できることである。メタマテリアルが実現する特異な光学特性の1つが、透磁率を制御した物質である。一般に光周波数においては自然界のほぼ全ての物質の透磁率の値は真空の透磁率と同じになる。

物質の透磁率を人工的に変化させることができると、誘電率と透磁率の比で定義される物質のインピーダンスも人工的に操作できることとなり、物質界面での光の反射を抑制して光を完全に吸収する物質もつくることができる。

本講演では、メタマテリアルの概要について簡単に触れた後、特に光を完全に吸収する光吸収メタマテリアルを中心にその原理と特性を述べる。そして赤外光を吸収する赤外吸収メタマテリアルのような新しい赤外材料にフォーカスを絞り、それを応用して赤外分光法の分子検出感度を飛躍的に高感度化する技術など、赤外吸収メタマテリアルの応用技術に関する最新の研究成果を赤外線センサーの最近の動向と共に紹介する。

●初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外透過材料 - 焼結法による赤外透過多結晶セラミックスの創製 -

(国研)物質・材料研究機構 森田 孝治 氏

焼結プロセスによって創製することができる透明多結晶セラミックは、高い生産性とともに光学および機械的特性を同時に実現できる。但し、多結晶セラミックにおいて優れた透過率を達成するためには、緻密で微細な組織を達成することが重要となる。

最近、緻密で微細な組織を有する透明なセラミックを達成するために、電場、超高圧および磁場のような外場効果を利用した焼結プロセスが利用されている。個々の外場効果のさらなる改善が必要であるが、外場効果を融合した高度な焼結技術は優れた光学および機械特性を重畳する新規の透明セラミックの開発を加速できる。

本講演では、透過性の支配因子の概説から、これまでに取組んできた赤外透過多結晶セラミックスの創製に関する成果をご紹介させて頂きます。

●入門程度(大学一般教養程度)

赤外レンズ - 設計と活用

(株)タムロン 安藤 稔 氏

近年可視光では見ることのできないものを見る技術として、赤外線(1 ~14μm)領域が
注目されている。

赤外線の領域には、さまざまな分子のスペクトルが存在し物質の異なった特性を見ることができる反面、その特徴から透過する材料が限られる。

レンズ設計においては、材料の特性や色収差の問題のため近赤外、中間赤外、遠赤外それぞれの領域で使える材料などについて理解をすることが必要となる。

本公演では赤外線用カメラの活用について紹介するとともに,赤外線用レンズの材料の特徴を比較,それらを使用した光学設計について解説を行う。

●入門程度(大学一般教養程度)
受講料(1セッション/税込)
一般 主催・協賛団体会員/出展社 月刊オプトロニクス定期購読者 シニアクラブ会員 学生
¥18,000¥15,000 ¥15,000¥12,000 ¥9,000¥7,500 ¥9,000¥7,500 ¥5,000

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2025年04月25日(金) 10:00-12:55 アネックスホール F204
【IR-3 赤外線のアプリケーション

防衛分野における赤外線技術

防衛装備庁 工藤 順一 氏

本講演では、防衛用光波センサにおいて特に重要な技術であります赤外線センサ技術について防衛装備庁新世代装備研究所での研究開発状況とその周辺状況等を踏まえながら発表する予定です。

公開情報が中心になりますが、将来への考え方や方向性が感じられるような構成と説明に努める予定です。

●入門程度(大学一般教養程度)

中赤外光を用いたヘルスケアモニタリング

東北大学 松浦 祐司 氏
波長6ミクロン以上の中赤外光を用いたヘルスケア機器の現状と将来展望について報告する。

中赤外光を用いた分光法により、生体を構成するタンパク質、脂質、糖質などの高精度な分析が可能になる。この領域では最近、中赤外量子カスケードレーザや、室温動作の半導体検出器が登場し、小型かつ安価なヘルスケア機器の実現性が高まってきておおり、新しいアプリケーションの発現が期待されている。

そこで本講演では、中赤外減衰全反射(ATR)法に基づく血中コレステロール分析、さらにはATR法に代わる光熱変換分光法として、光音響分光法、光熱偏向分光法などの血中成分分析への応用例などについて報告するとともに、中赤外光を用いたヘルスケア機器の今後の展望などについて述べる。
●入門程度(大学一般教養程度)

LiDARとLidarの原理と応用 ―地上から宇宙まで―

千葉大学 椎名 達雄 氏

車載をはじめとする安全安心の技術として発展しているLiDAR(ハードターゲット用ライダー)と黄砂や大気、ガス計測を主としたLidar(ソフトターゲット用ライダー)は同じToF(Time of Flight)計測技術を用いている。しかしその機器構成や検出される信号は異なる処理、意味を持ち、それぞれ独自の発展を遂げて今に至っている。レーザーや検出器の技術開発に沿って様々な適用技術が提唱され、また、応用が提案され、今に至っている。

本セミナーではそれぞれの原理を説明し、検出信号が持つ意味とその処理方法を述べる。LiDARでは3D情報の取得と安全安心のための技術展開、ノイズ処理による欲しい情報の鮮明化技術、また、Lidarでは大気・ガスのモニタリング技術から海洋、放射線計測への適用技術を概説する。応用計測の事例を多数紹介し、地上の対象物、大気・ダストモニタ、危険ガス検知、宇宙応用まで言及する。

講演の内容は必ずしも赤外光に限った話ではないが、赤外光の実利用例と、ライダーへ応用する際の現行での課題を明示し、将来展望を提起する。

●入門程度(大学一般教養程度)
受講料(1セッション/税込)
一般 主催・協賛団体会員/出展社 月刊オプトロニクス定期購読者 シニアクラブ会員 学生
¥18,000¥15,000 ¥15,000¥12,000 ¥9,000¥7,500 ¥9,000¥7,500 ¥5,000

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廣本 宣久

静岡大学

名誉教授

1985年京都大学理学博士。
1984年より郵政省電波研究所,郵政省通信総合研究所(現国立研究開発法人情報通信研究機構)にて赤外・テラヘルツ工学の研究に従事。
2001年独立行政法人通信総合研究所関西先端研究センター長。
2003年総務省情報通信政策局技術政策課企画官。
2005年国立大学法人静岡大学工学部教授。
2020年静岡大学名誉教授。現在に至る

宮田 憲太郎

(国研)理化学研究所

研究員

2008年 マックスボルン研究所 客員研究員
2009年 マックスボルン研究所 博士研究員
2010年 メガオプト 研究員
2012年 メガオプト グループ長
2016年 メガオプト プロジェクトリーダー
2018年 理化学研究所 研究員

国際学会プログラム委員:
・ SPIE Photonics West LASE
・ OPTICA ASSL (Advanced Solid State Lasers)
・ OPIC ALPS (Advanced Lasers and Photon Sources)

田中 拓男

(国研)理化学研究所

チームリーダー/主任研究員

1968年3月28日生.1991年大阪大学工学部応用物理学科卒業,1996年大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士後期課程修了,博士(工学),1996年大阪大学基礎工学部電気工学科助手,1997年大阪大学大学院基礎工学研究科助手,2003年理化学研究所 研究員,阪大フロンティア研究機構 特任助教授,2005年理化学研究所 先任研究員,2008年理化学研究所 准主任研究員,2010年北海道大学電子科学研究所 客員教授,2010年埼玉大学 連携教授,2012年学習院大学 講師,2014年理化学研究所 チームリーダー(兼務),2014年東京工業大学 連携教授,2017年理化学研究所 主任研究員,2017年台湾国立清華大学 客員教授,2019年フィリピン大学ディリマン校 客員教授,2020年台湾国立中興大学 客座教授

森田 孝治

(国研)物質・材料研究機構

電子・光機能材料研究センター 多結晶光学材料グループ
グループリーダー

1997年九州大学大学院総理工材料開発工学博士後期課程修了,博士(工学).1996年-1997年日本学術振興会特別研究員,1997年4月金属材料技術研究所(現:物質・材料研究機構)研究員、2010年-2012年ダルムシュタット工科大学客員研究員を経て、2022年4月より現職.セラミックスの超塑性・高温変形、放電プラズマ焼結(SPS)装置を利用した構造/機能セラミックスの創製と特性評価に関する研究に従事. 2001年日本金属学会奨励賞,2007年文部科学大臣表彰,2013年日本金属学会功績賞などを受賞.日本金属学会、日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会、各会員.

安藤 稔

(株)タムロン

光学開発センター センター長

2003年 3月 名古屋大学大学院素粒子宇宙物理学専攻博士課程後期修了
       博士(理学)取得 赤外線天文学
2003年8月 株式会社 タムロン入社
デジタルカメラ用レンズ,リアプロジェクター用レンズ,監視カメラ用レンズ,車載用レンズ,赤外線レンズなどを担当
2014年3月 本部長代理
2015年4月 本部長
2022年1月~ 光学開発センター センター長

工藤 順一

防衛装備庁

新世代装備研究所 飯岡支所長

1995年筑波大学大学院理工学研究科修了。1995年より防衛庁技術研究本部第2研究所(現防衛装備庁新世代装備研究所)にて、光波センサシステム、赤外線撮像装置等の研究開発に従事。2016年4月同庁電子装備研究所センサ研究部光波センサ研究室長、2024年4月より現職。工学博士。

松浦 祐司

東北大学

大学院医工学研究科 教授

1988年東北大学工学部通信工学科卒,1992年東北大学大学院工学研究科修了,博士(工学).1993年住友電気工業横浜研究所研究員,1994年米国ラトガース大学セラミック工学科研究員として勤務の後,1996年東北大学大学院工学研究科助教授.2008年東北大学大学院医工学研究科教授.X線から遠赤外にわたる電磁波伝送路とその医療応用に関する研究に従事.レーザー学会,電子情報通信学会,応用物理学会,電気学会、SPIE会員.平成17年度文部科学省若手科学者賞受賞.レーザー学会東北・北海道支部長.レーザー学会フェロー

椎名 達雄

千葉大学

大学院工学研究院 准教授

1998.3 東京理科大学 理工学研究科 博士後期課程修了 博士(工学)
1998.4 和歌山大学 システム工学部 助手
2003.8 千葉大学 工学部 助手
2008.2 千葉大学 大学院工学研究院 准教授
現在に至る。
大気用ライダー、産業用OCT、並びに高散乱体中の光伝搬に関する研究に従事。