集積コムによる通信コンソーシアム講演会

2025年04月24日(木) 13:30-16:20 アネックスホール F203
【COM-1 光コムが拓く次世代光コンピューティングと信号処理のフロンティア

開会

慶應義塾大学 理工学部電気情報工学科 教授 田邉 孝純 氏

光ニューラルネットワークの進展と挑戦

産業技術総合研究所 プラットフォームフォトニクス研究センター 上級主任研究員 叢 光偉 氏(CONG Guangwei)

近年、人工知能(AI)システムの大規模化が進む中、大きなエネルギー消費の課題にも直面している。AIの大規模化に伴い必要とされる計算能力は指数関数的に増大し、半年ごとに倍増する一方で、ムーアの法則が限界に近づき、デジタルプロセッサの性能向上は停滞が見られる。

従来のデジタルプロセッサは性能の限界に達しつつあり、AIシステムの計算能力への需要が増大し続ける中、新しい計算プラットフォームの探求が急務となっている。こうした背景のもと、光ニューラルネットワークを含む光演算システムは、高速かつ低消費電力での演算を実現する技術として再び注目されている。近年、新たな光ニューラルネットワークのコンセプトが世界中で提案・実証され、活発に進められている。

本講演では、光ニューラルネットワークの実現手法、最新の進展、および残る課題について概説し、それらの課題を克服するための最新の研究動向を紹介する。本講演を通じて、光ニューラルネットワークの将来展望と、今後の研究開発における挑戦について議論できればと考えている。

マイクロコムによる多腕バンディット問題とリザバーコンピューティングの研究

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 教授 久世 直也 氏

マイクロコムは小型で量産性に優れた光周波数コムとして注目されている。また、コムモード間隔が100 GHz以上にすることが容易であり波長多重光源としてコヒーレント光通信やLiDARに応用されている。
近年、同様の考えで、光コンピューティングにおいても波長多重性を活かしてマイクロコムを使った並列化の研究が進められている。

講演では、マイクロコムの中でも非モード同期状態であるカオスコムを使った多腕バンディット問題に関する研究と、モード同期状態であるソリトンコムを使った光リザバーコンピューティングの研究について紹介する。

光信号処理応用に向けたマイクロコム

慶應義塾大学 理工学部電気情報工学科 教授 田邉 孝純 氏
光周波数コムとは、光周波数軸上に等間隔で周波数成分が並ぶ光であり、従来は固体レーザやファイバレーザなどを用いて実現されてきました。近年、チップ上に実装可能な集積型光周波数コム(マイクロコム)の開発が活発化しています。これは超小型の単一素子でありながら、広帯域にわたる多波長光を一括して生成できる点に大きな特徴があります。

多波長光源を用いることで、光信号処理において波長多重技術による並列処理が可能となり、大規模AI計算に伴う電力消費増大という課題に対して、光によるテンソル演算を活用することで消費電力の劇的低減が期待されます。つまり、波長多重技術を用いれば、行列の各成分を独立に計算することができるので、多波長光源としてマイクロコムが適していると考えられています。さらに、高密度集積や高効率な光電変換を実現する上でも、マイクロコムの持つ小型性や安定性が有利に働くことが期待できます。

本講演では、マイクロコムの基礎原理から光信号処理への応用までを概観し、将来的な展望を概説します。

シリコン光回路を用いた深層学習プロセッサと波長多重に対する期待

東京大学 大学院工学系研究科 教授 竹中 充 氏

プログラミング可能なシリコン光回路を用いた光演算は、低消費電力で積和演算を実行できることから、生成AIの消費電力を大幅に削減可能な技術として注目を集めている。我々は、異種材料を集積したシリコン光回路を用いた光演算用デバイスや回路の研究を進めている。

これまでに、化合物半導体薄膜や相変化材料、強誘電体をシリコン光導波路に集積した高効率・不揮発性光位相シフタや光パワーモニタ、低消費電力光電変換素子の実証に成功してきた。

また、リング共振器をクロスバーアレイ状に配置した独自の演算用光回路の実証にも成功している。光信号の入力方向を切り替えることで、推論に加えて光誤差逆伝播による学習加速も可能であることを示している。リング共振器クロスバーアレイでは、光入力として波長多重光を使用する。このため、光コム光源の活用も期待されている。

本講演では、異種材料集積を用いたシリコン光回路に関する我々のこれまでの研究の取り組みを紹介すると共に、光演算における波長多重への期待について述べる。

光AIコンピューティングとそのセンシング応用

金沢大学 理工研究域 教授 砂田 哲 氏

プログラミング可能なシリコン光回路を用いた光演算は、低消費電力で積和演算を実行できることから、生成AIの消費電力を大幅に削減可能な技術として注目を集めている。我々は、異種材料を集積したシリコン光回路を用いた光演算用デバイスや回路の研究を進めている。これまでに、化合物半導体薄膜や相変化材料、強誘電体をシリコン光導波路に集積した高効率・不揮発性光位相シフタや光パワーモニタ、低消費電力光電変換素子の実証に成功してきた。

また、リング共振器をクロスバーアレイ状に配置した独自の演算用光回路の実証にも成功している。光信号の入力方向を切り替えることで、推論に加えて光誤差逆伝播による学習加速も可能であることを示している。リング共振器クロスバーアレイでは、光入力として波長多重光を使用する。このため、光コム光源の活用も期待されている。

本講演では、異種材料集積を用いたシリコン光回路に関する我々のこれまでの研究の取り組みを紹介すると共に、光演算における波長多重への期待について述べる。

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叢 光偉

産業技術総合研究所

プラットフォームフォトニクス研究センター 上級主任研究員

2006年、中国科学院半導体研究所にて工学博士を取得。同年8月に産業技術総合研究所へ入所し、ポスドク研究員および日本学術振興会特別研究員として、量子井戸を用いた超高速全光スイッチの研究に従事。2010年4月より同研究所の常勤研究員として、シリコンフォトニクス光スイッチとMOSFETのモノリシック集積や高速光変調器の研究に従事。主任研究員を経て、現在は上級主任研究員。現職にて光集積回路を用いた光演算に関する研究に従事。応用物理学会、IEEE(米国電気電子学会)、Opticaの各会員。

久世 直也

徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所

教授

2013年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了。その後、IMRA Americaに就職し、2019年に現職である徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所に着任。専門は光周波数コムであり、内容は光源開発・制御技術開発・応用開拓とコム研究の全般を扱う。最近は光周波数コムの中でもマイクロコムの研究に集中している。

田邉 孝純

慶應義塾大学

理工学部電気情報工学科 教授

2000年慶應義塾大学理工学部電子工学科卒業.2004年同大学理工学研究科総合デザイン工学専攻博士課程修了、博士(工学)取得.その後日本電信電話株式会社に入社し、NTT物性科学基礎研究所量子光物性研究部・フォトニックナノ構造研究グループでフォトニック結晶デバイスに関する研究に従事。2010年4月から慶應義塾大学理工学部電子工学科(現電気情報工学科)専任講師、2012年4月より同准教授。2018年4月から同教授。応用物理学会、電子情報通信学会、IEEE、SPIE各会員、レーザー学会上級会員、Opticaフェロー。

竹中 充

東京大学

大学院工学系研究科 教授

1998年東京大学工学部電子工学科卒業、2000年東京大学大学院工学系研究科修士課程電子工学専攻修了、2003年 東京大学大学院工学系研究科博士課程電子工学専攻修了。 2003年~2007年財団法人光産業技術振興協会研究員。2007年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻講師、2008年東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻准教授、2020年より東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻教授。博士(工学)(東京大学)。 異種材料集積を用いた光電子集積回路の研究に従事。応用物理学会、電子情報通信学会、IEEE, OPTICA会員。ドコモ・モバイル・サイエンス賞 (2023年)、堀場雅夫賞特別賞 (2023年)、電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞 (2020年)、IEEE EDS Paul Rappaport Award(2014年)などを受賞。

砂田 哲

金沢大学

理工研究域 教授

国際電気通信基礎技術研究所(ATR),NTT コミュニケーション科学基礎研究所,金沢大学理工研究域助教,准教授を経て,2021年4月より現職.2019年から2023年3月までJSTさきがけ研究員兼務.2023年フランスFEMTO-ST Institute・招聘教授.光情報物理,非線形科学に関する研究に従事.