光電融合技術が切り拓く通信・情報処理の新時代

2025年04月23日(水) 13:30-16:25 展示ホール内特設会場2
【PF-1 光電融合技術が切り拓く通信・情報処理の新時代

AI/MLの進展と大規模演算を実現する光電コパッケージ技術

三菱電機(株) 情報技術総合研究所 大畠 伸夫 氏

現在、急速に拡大するAIデータセンターでは1兆を超えるパラメータの機械学習のために数千ものGPUを光通信で並列接続し、大規模な計算を行っている。
演算規模の拡大にともない、AIデータセンターの電力も爆発的に増加しており、演算と消費電力の両立が喫緊の課題となっている。

本講演ではバックエンドネットワークのトレンドを示すとともに、大容量通信と低消費電力の両立が可能な、光電コパッケージのトレンドについて言及する。
更に当社が開発する高速の光デバイスを紹介し、今後の展望について述べる。

●初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

InP小片 / SOIウェハ接合を用いた異種材料集積プラットフォーム

技術研究組合光電子融合基盤技術研究所 / 住友電気工業(株) 八木 英樹 氏

モバイル通信やAI技術の発展に伴い、通信量が急激に増大しており、 2030年代には一つの光トランシーバに要求されるデータレートが10 Tbpsを超えると予想されている。

一方、光通信システムを支えてきたIII-V族半導体やSiフォトニクスを用いた単一材料光デバイスにおいては、10 Tbps級のデータ伝送に向けた広帯域化と低消費電力化の両立に限界が見え始めており、技術的なブレークスルーが求められている。
その中で、III-V族半導体(通信波長帯ではInP)とSiフォトニクスのそれぞれの利点を組み合わせた異種材料集積光デバイスは、その有望なアプローチの一つとして期待されている。

これまで、異種材料集積光デバイスの取り組みは数多く報告されており、その集積手法についても様々な方法が検討されている。その中で、我々はInP系アクティブ素子のSiフォトニクス上への高密度集積、InP系素子およびSi導波路間の低損失光結合の観点で優れているInP小片/SOIウェハ接合技術を用いて、異種材料集積光デバイスの検討を行ってきた。

これまで、InP小片/SOIウェハ接合による波長可変レーザにおいて、InP/Si異種材料接合集積構造の特長を活かすことで、Cバンドを超える広波長可変域における単一モード動作・狭スペクトル線幅特性を実証してきた。また、本接合プロセスを変調素子や受光素子にも展開してきた。

本講演ではInP小片/SOIウェハ接合プロセスとそれを用いた異種材料集積光デバイスの検討結果について紹介する。

●中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

通信・情報処理応用に向けたメンブレン光デバイス

日本電信電話(株) NTT先端集積デバイス研究所 西 英隆 氏

留まることのないデータトラフィックの増大や人工知能技術の急速な発達により、短距離データ通信でこれまで用いられてきた電気配線では通信容量増大や消費電力低減において限界を迎えつつあり、その一部を光配線に置き換えた光電融合技術への期待が高まっている。
中でも実現に向けてキーとなるのは、小型、高速、かつ低消費電力な光送受信デバイスであり、メンブレン光デバイス技術は重要な要素技術として研究開発が進められている。

本講演では、メンブレン光デバイスの基本的構造・特性を紹介した上で、将来世代を見え据えたメンブレン光デバイスの高性能化に関する近年の研究開発成果についても紹介する。
さらに、光送受信デバイスに留まらずに、光情報処理デバイスとしてもメンブレン光デバイスが重要な要素技術となる可能性についても議論し、さらに発展的なメンブレン光デバイスの将来展望について述べる。

●中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

集積シリコンフォトニクス光送信機の光電融合設計

横浜国立大学(現東京科学大学所属) 川原 啓輔 氏

データセンターの大規模化と消費電力の増加に伴い、高速・低消費電力な光インターコネクションの重要性が高まっている。ASICの直近に光トランシーバを配置するコパッケージド・オプティクスの開発が進展しており、中でも、シリコンフォトニクスは高い集積性や量産性の観点から注目を集めている。

従来のプラガブル光トランシーバでは、電子回路と光デバイスを個別に設計する手法が一般的であったが、フットプリントや電力効率の向上には限界があった。そのため、我々はこれを打破する手法として光電融合設計を提案している。
本講演では、融合設計環境の開発に加え、集積シリコン光送信機の試作とその実証結果について紹介する。

融合設計では、電子回路と光デバイスを単一のシミュレーション環境で取り扱うことが望まれる。そこで、業界標準の電子回路シミュレータを用いて光と電気の協調シミュレーションを可能にするフォトニクスモデルライブラリを開発した。
これにより、コパッケージトランシーバ全体の性能を高精度に予測できるようになり、電子回路と光デバイスの特性を考慮した新たな回路アーキテクチャやデバイス構造の開発が可能になった。これを用いて、高電力効率かつ省フットプリントな集積シリコン光送信機を開発し、従来設計に対する優位性を実証した。また、融合システムによりディジタル信号処理などの機能を実現することで、さらなる電力効率向上も期待される。

●中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

光電融合による新型ニューラルネットワーク演算システム

(国研)産業技術総合研究所 Cong Guangwei 氏

人工知能(AI)技術の急速な発展に伴い、ニューラルネットワークの演算処理能力に対する要求がますます高まっている。従来のCMOS技術をベースにする電子計算システムは、消費電力や処理速度の面で限界に近づき、新たなパラダイムシフトとなる演算技術の導入が求められている。

そこで、光技術と電子技術を融合する光電融合によるニューラルネットワーク演算を含む新型演算システムが注目されている。デジタルプロセッサ間のデータ移動におけるレイテンシおよび電力ボトルネックを克服するための光電融合演算システムや、大規模ニューラルネットワーク演算のための光電融合による積和演算技術などの新型演算システムが次々に実証され、世界中で活発に研究が進められている。

光信号を用いることで、高速処理と低消費電力の特性を活かしつつ、電子回路による柔軟なデータ処理を同時に行い、エネルギー効率の向上とリアルタイム処理を可能にするニューラルネットワーク演算を実施できる。エッジでのリアルタイムAI処理や次世代データセンター向けAIシステムに向けて、光電融合演算システムは新たな計算パラダイムとみなされている。

本講演では、光電融合技術を活用する新型ニューラルネットワーク演算システムについて紹介するとともに、当グループで取り組んでいる光集積回路と電子技術を融合するニューラルネットワーク演算に基づき、次世代AIの計算基盤としてどのように機能するのか、そして残されている課題について、最新の研究成果を交えて議論する。

●中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

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大畠 伸夫

三菱電機(株)

情報技術総合研究所 光技術部
先進フォトニクスグループ グループマネージャー

2008年:宇都宮大学大学院工学研究科を修了後、三菱電機(株)に入社。同社情報技術総合研究所にて、光波長変換器やアクセス系光モジュール、40Gb/s EML TOSAの開発に従事。
2014年:同社 高周波光デバイス製作所で100G APD ROSAの量産化に従事。
2018年:同社 情報技術総合研究所で400G EML TOSAの開発や多波長光源の検討に従事。
2021年:同研究所のグループマネージャーとして、研究の立案、グループの運営に従事。

【受賞】
2011年 一般社団法人 電子情報通信学会 学術奨励賞
2022年 公益社団法人 発明協会 近畿地方発明表彰
2023年 一般社団法人エレクトロニクス実装学会 技術賞

八木 英樹

住友電気工業(株)

伝送デバイス研究所 主幹、シニアスペシャリスト

技術研究組合光電子融合基盤技術研究所

研究員

2004年3月 東京工業大学 理工学研究科 博士後期課程 修了 博士(工学)
2004年4月-2005年9月 科学技術振興機構研究員
2005年10月 住友電気工業株式会社 入社
2021年8月 技術研究組合光電子融合基盤技術研究所 研究員(併任出向) 現在に至る。

【受賞歴】
2013年 CLEO-PR, and OECC/PS2013 Best Paper Award受賞
2020年 電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ功労賞

西 英隆

日本電信電話(株)

NTT先端集積デバイス研究所 主任研究員

2007年、日本電信電話株式会社入社。シリコンフォトニクスデバイス、化合物半導体メンブレン光デバイス、薄膜ニオブ酸リチウム光デバイス、およびこれら異種材料集積光デバイスの研究開発に従事。2016年、東京工業大学(現:東京科学大学)より博士(工学)の学位を取得。現在は光通信・光情報処理向け集積光デバイス、非線形光学デバイス、プラズモニクスデバイス等の研究開発に従事。Optica、応用物理学会、電子情報通信学会、各会員。

川原 啓輔

東京科学大学

助教

東京理科大学理工学部を卒業後、同大学院で修士(工学)を取得。2025年3月に横浜国立大学で博士(工学)を取得。2023年4月から2025年3月まで日本学術振興会特別研究員(DC2)。2025年4月より東京科学大学助教。研究テーマは高速集積回路、集積フォトニクス。米国電気電子学会、米国光学会、国際光学会、電子情報通信学会、応用物理学会に所属。

Cong Guangwei

(国研)産業技術総合研究所

プラットフォームフォトニクス研究センター 上級主任研究員

2006年、中国科学院半導体研究所にて工学博士を取得。同年8月に産業技術総合研究所へ入所し、ポスドク研究員および日本学術振興会特別研究員として、量子井戸を用いた超高速全光スイッチの研究に従事。2010年4月より同研究所の常勤研究員として、シリコンフォトニクス光スイッチとMOSFETのモノリシック集積や高速光変調器の研究に従事。主任研究員を経て、現在は上級主任研究員。現職にて光集積回路を用いた光演算と光電融合演算に関する研究に従事。応用物理学会、IEEE(米国電気電子学会)、Opticaの各会員。