レーザー安全セミナー

2025年11月12日(水) 10:00-18:00 アネックスホール F201
【SF-1 令和7年度 レーザー安全セミナー

一般社団法人 レーザー学会

 本セミナーは、厚生労働省・基発0325002号(平成17年3月25日付)「レーザー光線による障害防止対策要綱」に記載されている安全衛生教育の5項目を遵守して構成しています。具体的には、レーザーの基礎とその応用、レーザーが人体(目および皮膚)へ与える影響、保護めがね・防護シールド、レーザー安全対策の基礎と実際であり、レーザー安全に関する幅広い範囲を網羅しています。JIS C6802:2014 「レーザ製品の安全基準」はその概要について説明します。レーザー技術の進展および応用範囲の展開に合わせて、セミナー内容を更新しています。
 本セミナーは主にレーザーを初めて取り扱う人を対象としていますが、既に取り扱っている人、教育・指導を担当している人にも有用な内容になっています。全講演を受講し、習熟度確認試験を受験して頂いた方には、レーザー学会より「受講証」をお渡しします。  皆様のご参加をお待ちしております。

※全講演を受講し、習熟度確認試験を受験して頂いた方には、レーザー学会より「受講証」が発行されます。

【開催日時】
 ●2025年11月12日(水)10:20~18:00(10:00開場)
【会場】
 ●パシフィコ横浜 アネックスホール

 セミナーお申込み、詳細は下記のページをご確認ください
 
レーザー安全セミナー申込ページ

【聴講料】
 ● レーザー学会正会員:25,000円(税込)
 ● 非会員※ :35,000円(税込)
 ● 学生:10,000円(税込)
   ※ 賛助会員に所属する非会員の方を含みます。

レーザーの基礎とその特徴

同志社大学 鈴木 将之 氏
レーザーの安全な取り扱いを学ぶ上で、その特徴を理解する必要がある。そこで本講演では、レーザーの基礎とその特徴について理解を深める。
 はじめにレーザーと自然界の光(太陽光や蛍光灯など)の特徴について述べ、それらの違いについて説明する。特にレーザーはコヒーレントという特徴を持っており、レーザーは指向性と単色性、可干渉性を有する光である。これらの特徴を理解し、レーザー安全を考えるための基礎を学ぶ。
 つぎにレーザー発振の原理について解説を行い、この原理から得られるレーザーの指向性と単色性、可干渉性の物理的なイメージを理解する。特に指向性と単色性の特徴は高い集光特性を得ることができる、さらに時間幅という概念を含めて考えると高ピーク強度が実現できるため、これについて考えてみる。
 最後にレーザーは光であり、波の特徴をもつ.このことからレーザーは回折や屈折、反射、散乱などの現象を生じる。一方、光には粒子性の特徴も有する。これは光の吸収と放出の特徴を表しており、特に光の吸収について、生体への光吸収はレーザー安全にとって最も注意すべき事例である。以上に述べた現象は、レーザーを実用的に利用する上で必ず理解する必要があり、これらの振る舞いについて理解を深める。

レーザー装置の仕組みとその応用

同志社大学 鈴木 将之 氏
レーザー光は,レーザー発振器によって人工的に作り出される光である。レーザー発振器は光共振器構造を有しており、この共振器はレーザー媒質と励起源、反射鏡から構成されている。励起源にてレーザー媒質を励起して、レーザー媒質内に反転分布を形成したのちに誘導吸収による誘導放出を引き起こす。このとき誘導放出により生成された光は、共振器内の反射ミラー間を往復するにつれてエネルギーが増幅され、共振器内の片側のミラーを部分反射ミラーにしておくと、そこからレーザー光を出力されることができる。
この出力されるレーザー光の特徴としては、単一波長であることや指向性(直進性)が高い、そして可干渉性が高い、などが挙げられる。レーザー光の出力はパルス動作であれば、TW(テラワット:1012 W)のピーク出力や連続光であれば、数百kWの出力が得られている。レーザー光は指向性が高いことからレンズを用いるとレーザー光の波長程度まで集光することができ、先に述べた出力のレーザー光のパワーを一点に集めることができる。
このような特徴から、レーザー加工や溶接、穿孔などに利用される。また、レーザー光の高い直進性により、レーザー光は長い距離を伝搬させても広がらないため、土木測量用のレーザー照準器や大気中の粒子測定技術のひとつであるレーザーレーダーにも利用されている。医療分野においては、レーザーメスやレーザー凝固装置、皮膚科・形成外科におけるあざ治療、内視鏡にレーザー光を導光して、体深部の治療にも利用されている。
 本講演では,様々な分野で利用されているレーザー光を生成するレーザー装置の原理とその仕組みについて学び、その理解を深める。

目に与える光・レーザーの影響と眼傷害事例

聖隷浜松病院 尾花 明 氏
眼内の光透過性は波長に依存し、UV-C(280nm以下)は角膜表層で吸収され、UV-B(280-315nm)、UV-A(315-380nm)はほぼ角膜と水晶体で吸収される。可視光線の波長は400-720nmで、中および遠赤外線は、角膜、前房、水晶体、硝子体の水に吸収されるが、近赤外光は透過性に優れ眼球深部に到達する。光による眼球傷害は、波長、照射時間、照射強度によって決まり、熱作用、光化学作用、物理的作用の3つのいずれかによって生じる。
 紫外線は主に光化学作用を及ぼし、急性傷害は電気性眼炎や雪眼炎を生じ、慢性傷害は翼状片や白内障を生じる。可視光は網膜に熱作用や光化学作用を及ぼし、急性傷害には眼科診療での事故や日食網膜症、レーザーポインターによる事故があり、慢性傷害には青色光による網膜光傷害がある。
赤外線は溶鉱炉やガラス職人の慢性傷害として熱による白内障があるが、もっとも事例の多いものがNd:YAGレーザーによる事故である。本レーザーはパルス発振で使用されるため、組織に物理的損傷を生じる。レーザー機器のアライメント時の受傷例が多く、利き目の網膜中心に出血や黄斑円孔を生じ、高度の視力低下を来すため特に注意が必要で、ゴーグル装用や作業場の環境整備など適正な防御処置が重要である。

皮膚に与える光・レーザーの影響と皮膚傷害事例

大阪公立大学 小澤 俊幸 氏
皮膚の構造と創傷治癒について解説の後、レーザー治療時の熱緩和時間について解説を行う。また、レーザーが生体に及ぼす作用は、大別すると光熱作用、光機械的作用、光化学作用の3種類に分類され、皮膚レーザー治療の中心的作用は、光熱作用と光機械的作用であり、その詳細を解説する。レーザー治療では、その標的とその周囲の温度分布は、標的の直径と組織拡散性で決まる正規分布となる。中心温度が50%に減弱する時間を熱緩和時間という。この熱緩和時間以下の照射時間で、レーザーを患部に照射することで、周囲の正常組織に熱損傷が伝わる前に、標的の不可逆性の熱変性が生じる。この熱緩和時間を治療の際に考慮することにより、瘢痕の生じない治療が可能となる。日本人は西洋人と比較し、皮膚のメラニン色素が多いので、レーザーが皮膚表皮の正常メラニンに吸収され合併症が生じやすい。合併症を減らすためには、皮膚の冷却が必須である。
 また、レーザー治療では照射方法を変更することにより、生体への作用を変更することが可能である。微細なレーザーを1cm2あたり数千発の照射を行うフラクショナルレーザー照射法は毛根より細い照射口径で間隔をあけて正常皮膚を残しつつ点状に照射する方法である。従来の面状照射する方法に比較し、皮膚が剥離されないため上皮化が早く、炎症後の色素沈着等の合併症が少ない。
 皮膚へのレーザーの生体作用は多くの点で、無生物への作用と異なる。より効果的に治療することは可能であるが、これらの作用を無視すると熱傷となり瘢痕及び醜形を残す。
 講習の最後は、皮膚障害事例を供覧し、その事故の背景を検討する。

光・レーザー用保護めがねと防護シールド

山本光学(株) 加尻 慎也 氏
 高出力のレーザー放射を直接受けた場合、身体はダメージを受け、傷害が目に及ぶ場合は、永続的な機能障害に悩まされ、大きな災害につながる。レーザーの利用分野の拡大に伴い、知識と操作に未熟な者もレーザー機器に接する機会が増えてきている。
 これらを背景にして、法整備が進められてきたが、これらは主に装置側から見た安全に重点が置かれており、レーザー機器を取り扱う者の保護対策に関しては、必ずしも十分に施されているとは言えない。そのため、レーザーの性質と深く関係するリスクに対して事故を未然に防ぐための効果的な予防措置(安全対策)とはどのようなものか、その安全対策の考え方と保護めがね・防護シールドの重要性とその特長と選定方法について、保護具を作る立場からこれらを解説する。

レーザー安全基準

オフィス橋新 橋新 裕一 氏
 レーザーに関する各種の安全基準は、レーザー光の人体に及ぼす作用の生物物理学的知見や、レーザー光による障害事例、及び動物実験などを基にして得られた最大許容露光量MPE (Maximum Permissible Exposure)がベースとなっている。MPEは、目の角膜や皮膚などについてそれぞれ定められており、それらの値は波長、露光時間、光源の視角などの複雑な関数として表にまとめられている。
 ここでは、レーザー安全の考え方及びレーザー安全に関する国際規格群及び国内規格等のリストを簡単に紹介した後、国内規格「レーザ製品の安全基準JIS C6802: 2014 (国際規格IEC 60825-1:2014)」の要求事項について解説する。現在、このJIS規格の改正作業が進められており、2025年8月に発行される予定である。
 レーザー製品には、一部のクラスを除き、各クラスに被ばく放出限界AEL (Accessible Emission Limit)が定められている。
 要求事項には、レーザー製品のクラス分けの原則に基づいてレーザー製品の被ばく放出レベルを決定しクラス1~クラス4までの8種のいずれかのクラスに分類すること、レーザー製品は各レーザークラスに応じた保護きょう体、セーフティインタロックなどの技術的要求事項を満たすこと、使用者及びサービス実施者への安全確保/注意喚起として、レーザー製品に各クラスの要求事項に従った各種ラベルを付けること、などが含まれている。
 レーザーの安全基準は、レーザー技術の進歩やレーザー光の人体に及ぼす作用の生物物理学的知見の進展などによって、絶えず改正されているので、常に最新動向を注視しておくべきである。

光・レーザー安全対策の基礎

大阪大学 近江 雅人 氏
 レーザー光は高密度のエネルギー源として切断、開孔、溶接等各種材料の加工に、また高コヒーレンスな電磁波として計測、通信、情報処理等に、さらにレーザー治療などの医療分野にも広く利用されている。特に、レーザー加工等の分野においては、レーザー光線は高出力のエネルギーを小さな面積に集光し高密度のエネルギーを利用するため、レーザー光線に対する安全配慮が十分でないと、眼又は皮膚に大きな障害を与える恐れがあることが懸念されている状況である。
 本邦では、レーザー機器の出力によってクラス分けがされており、日本産業規格C6802「レーザー製品の安全基準」におけるクラス3B、クラス4のレーザーは出力が非常に高く、特に注意が必要である。このクラスのレーザーにおいては、レーザー管理区域を設け、レーザー機器に関してはレーザー光路に対する措置、キー・コントロール、緊急停止スイッチ、インターロックシステム、レーザー光線の表示等の措置を講じる必要がある。さらに、機器の操作や光学系調整時の措置、保護眼鏡の使用、皮膚の露出の少ない衣服の着用、レーザー機器の定期的な点検・整備等の作業管理、作業者の視力検査や前眼部検査等の健康管理や安全衛生教育を行わなければならない。クラス1~クラス3Rのレーザーにおいても安全対策に対する措置が必要である。
 本セミナーではこれら安全対策の基礎と具体的な対策について述べる。

光・レーザー安全対策の実際(一般消費者)

オフィス橋新 橋新 裕一 氏
 近年、各種レーザー応用製品が登場し、一般消費者向けの製品も増えてきている。保険収載されるレーザー治療も多くなってきており、その恩恵に浴する患者も増えてきている。レーザーの普及に伴い、一般消費者をも巻き込んだ事故や事件が発生している。本邦では販売が禁止されている1mWをはるかに超える1W以上の緑色あるいは青色の高出力レーザーポインターを用いて、ヘリ、バス等の操縦席を狙った事件で逮捕される事例も多くなってきた。レーザー脱毛器などを購入し、自身で脱毛を行い、熱傷を被った事例もある。医師免許を持たない職員による、レーザーあるいは光による脱毛治療で熱傷被害に遭ったケースも散見される。メディアに採り上げられた事例や国民生活センターの公開資料について紹介する。
 一般消費者が事故や事件に遭遇せず、レーザー製品の安全な使用方法や注意事項を学んで、安心して使って頂けるよう、平易に解説する。一般消費者向けのユーザーズガイドを供覧する。

光・レーザー安全対策の実際(教育・研究機関)

近畿大学 吉田 実 氏
 レーザーを利用するには、従来の電気ならびに機械的な工具および研究用具とは異なる知識と取り扱い方法が求められます。学生や初心者は、思い込みにより、レーザーと発振器などのレーザー装置ならびに光学機器を長年扱っている技術者にとっては想像できないような危険な扱いをしてしまうことがあります。むしろ、そのような扱いをされる可能性が高いと想定する必要があります。
 加工用の高出力レーザーはもちろんのこと、研究室で使用している計測用の光源も危険をはらんでいます。さらに、ファイバに閉じ込められているため比較的安全だと思われている通信用の光源も、トラフィックの増加に対応するために出力が増加しています。ことに、波長多重通信に代表される多重化により、単一の半導体レーザー出力を大きく上回る高い出力の光が、コア径10 μmたらずの単一モードファイバを伝搬していることは、技術の流れとして避けられなくなっています。さらに、通信波長域はアイセーフだと言われていますが、それを鵜呑みにして安全確保をおろそかにするようなことがあってはなりません。
 本講演では、学部の教育をほぼ終えている、卒業研究のために配属された学生が陥りそうな間違いや、初めてレーザーを扱う企業の技術者が気を付ける(気を付けさせる)べき事項を軸に、取り返しのつかない事故に発展する可能性をできるだけ低く抑えるために役に立ちそうな事項ならびに、学生などの初心者が冒しがちな思い込みが思い込みであることに気がついてもらうために、指導者が心に留めておきたい点などを説明する予定としています。

光・レーザー安全対策の実際(産業分野)

大阪大学 間 久直氏
 厚生労働省が毎年調査している「業務上疾病発生状況等調査」の対象作業の内、紫外線・赤外線、およびレーザーについて採り上げ、そのデータを供覧する。講演者自身やその関係者が遭遇した事故・ヒヤリハットを具体的な事例として紹介する。事故発生時と事後の対応、および賠償責任保険についても言及する。
 レーザーの産業分野への応用は計測機器・モニタリング機器・加工機器・通信機器など、広範囲・多用途である。これらに関連する安全基準を提示する。
 厚生労働省・基発0325002号(平成17年3月25日付)「レーザー光線による障害防止対策要綱」に記載されている安全対策、特にレーザー安全管理者の役割について詳述する。企業、大学における安全対策の具体例を供覧する。
使用するレーザー製品の種類によって異なる安全対策を講じて、事故に遭遇せず、安心してレーザー製品を使用していただけるよう、平易に解説する。

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