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月刊OPTRONICS

月刊オプトロニクス表紙 光技術関連業界の最新情報が満載の月刊OPTRONICS。
技術者,研究者の方はもちろん,光に携わる方は是非ご購読ください!
 
2006.10 vol.25 No.298
10月号 特集 日本発独創技術! 光触媒

酸化チタン光触媒技術の現状と展開

東京大学 入江 寛,砂田香矢乃,橋本和仁

 水分解反応である本多・藤嶋効果1)が見いだされて以来,強い紫外光照射のもとで酸化チタン粉末を用いた光エネルギー変換および水中や大気中に存在する有害物質の分解除去の研究が行われてきた。一方,筆者らは酸化チタンの酸化分解力を利用し,生活空間に存在する微弱な紫外光によって,防臭,セルフクリーニング,抗菌などの機能を発揮するような酸化チタン薄膜コーティング材料についての研究を行ってきた。また,酸化チタンを薄膜化することにより発見できた光誘起超親水化現象2)に関しての研究も進めてきた。このような強力な酸化力を有し,光誘起超親水化反応などの特有な表面機能を有する光触媒の実用化は,1990年代後半から徐々に始まり,現在では多くの商品に利用されるところまできている。・・・(続きは本誌で)

光触媒の構造特性と光触媒活性

北海道大学 大谷 文章

 光触媒は光触媒反応(photocatalytic reaction)を誘起する物質であり,狭義には,酸化チタンなどのように半導体と呼ばれる固体で,これが光を照射したときに化学反応が起こるが,固体物質が反応前後で変化しないものである。光触媒反応は,光触媒が光を吸収することによって開始し,生じた励起状態の光触媒上において化学物質の反応が起こるが,後続する化学反応は,反応物質や条件によってさまざまである。光触媒反応の実際の応用例はさまざまな媒体で紹介されており,実用化あるいはそれにむけた準備段階にあるものは数多い。
 光触媒の化学組成は,たとえば酸化チタン(TiO2)のように簡単であるものの,固体物質ではその構造は複雑である。組成がおなじでも,供給元や製造法,あるいは前処理法によって光触媒反応の速度(光触媒の特性と考えれば「光触媒活性」)が異なることから,構造が光触媒活性に影響をおよぼすことは容易に想像できる。しかし,この構造─活性相関は,経験的なものをのぞくとほとんど確立されていないといっても過言ではない。・・・(続きは本誌で)

オキシナイトライドを用いた2段階可視光水分解

東京大学 東  正信,堂免 一成

 近年,地球規模でのエネルギー・環境問題がクローズアップされている。これは,石油・石炭などの化石資源をわれわれの生活のエネルギー源や化学工業における原料として多量に消費しているからである。すなわち,化石資源の枯渇がエネルギー問題,またその消費に伴う二酸化炭素,窒素酸化物,硫黄酸化物の排出が環境問題を生み出している。この問題を改善していくために,代替エネルギーとして水素エネルギーが注目されている。水素は,燃えても水しか生成しない究極のクリーンエネルギーである。これに関連して,燃料電池の開発が急速に進展している。水素を燃料とする燃料電池は,水しか排出しない究極のクリーン発電と言える。このような水素エネルギーシステムが普及すると,環境問題がかなり改善されると期待される。しかし,現在用いられている水素は,化石資源をその起源としている。その主な製造方法は,20〜40気圧,800℃近くの高温で天然ガスや石油から生成されるナフサ等と水を反応させる水蒸気改質である。・・・(続きは本誌で)

水分解のための金属酸化物光触媒の開発

東京理科大学 加藤 英樹,工藤 昭彦

 光触媒による水の水素と酸素への分解反応は,光エネルギーを化学エネルギーへと変換する興味深い反応であるとともに,化石燃料の枯渇問題や地球温暖化などの環境問題を一挙に解決できる可能性を秘めている魅力的な反応である。光触媒による水の分解反応は,光触媒にバンドギャップ(もしくはエネルギーギャップ)以上のエネルギーの光が吸収されることで,伝導帯と価電子帯にそれぞれ電子と正孔が生成される。この光生成した電子・正孔が水を還元・酸化することで水を水素と酸素に分解できる。したがって,熱力学的な必要条件として伝導帯の下端が水素生成電位よりも負側で,価電子帯の上端が酸素生成電位よりも正側に位置していることが不可欠である(図1)。実際にはバンド構造の条件以外にも,表面活性点,電子・正孔の再結合の抑制,電子・正孔の移動度など様々な因子が複雑に関与している。そのため,水分解用の新規光触媒材料を開発することは容易ではない。・・・(続きは本誌で)

赤外光を用いた光触媒中の電子の観測

神戸大学 大西  洋

 半導体のなかに光励起された電子が吸着分子に付着してこれを還元し,光励起された正孔が吸着分子に付着してこれを酸化する。2種類の化学反応を同時にバランス良くおこす仕組みが光触媒である。半導体のバンドギャップ励起によって開始される反応ネットワークの全容を理解するには,励起電子・正孔・吸着分子を反応の中間状態と考えて,それぞれの消長を観察したい。
 伝導帯に励起された電子は波長1〜10mm程度の赤外光を吸収し,明確なピークをもたないブロードな吸収スペクトルを呈する。この吸収の強度は触媒中に存在する励起電子数をあらわす。正孔は赤外域に吸収をもたないが,電子が正孔と再結合して消滅する速度を赤外吸収の減衰から決定し,触媒中に残存する正孔量を推定できる。触媒表面に吸着した分子の赤外吸収は,それぞれの化合物に特有の振動バンドを呈するから,電子によるブロードな吸収と区別して検出できる。・・・(続きは本誌で)

絶縁性金属酸化物表面に単原子を展開した光触媒

京都大学 田中 庸裕

 1969−72年の本多・藤島効果の発見は1),半導体光触媒の一大ブームにつながった。特に酸化チタン光触媒においては水の光分解のほかに二酸化炭素の水による還元や窒素と炭化水素からのアミンの合成など種々の光触媒作用を示すことが相次いで報告された。しかしながら,これらの種々の反応では再現性よくしかも効率よく進行するものは非常に少なかった。酸素や水の存在下では微量有機物の完全酸化のみが確実に起こる反応でありこれらに恐らく関連するであろう光親水性の2本柱の研究が現在の応用に至っている2)。一方,本多・藤島効果の発見とほぼ同じ頃,シリカ上に分散されたバナジウム酸化物が有機物の光酸化に対して酸化チタンとよく似た光酸化作用を示すことが見出されていた3)。こちらは,有機物の完全酸化ではなく部分酸化が主となっている。この光触媒作用の活性発現メカニズムは半導体光触媒とは異なりむしろ錯体の光励起メカニズムに近い。この触媒は一種の「シングルサイト触媒」に相当するものであり,シリカ表面上のある決まった構造のものしか光活性がない。・・・(続きは本誌で)

特別レポート

光エレクトロニクスと光通信国際会議(OECC2006)レポート

成蹊大学 小口 喜美夫

 第11回光エレクトロニクスと光通信国際会議(OptoElectronics and Communications Conference : OECC2006)が2006年7月3日から7日までの5日間,台湾高雄市中心に位置し,市内で最も高い(378m)東帝士85ビル内の高雄金典酒店(The Splendor Kaohsiung)において開催された(写真1)。主催は,国立中山大学(National Sun Yat-sen University),後援は,行政院国家科学委員会(National Science Council),教育省(Ministry of Education), IEEE/LEOS Taipei Section,等である。
 本会議は,1996年に創設された国際会議で,光エレクトロニクス・光通信分野の基礎ならびに応用技術分野での,アジア・オセアニア地域からの情報発信を目指して,最新の成果の発表,議論の場を提供することを目的としている。・・・(続きは本誌で)

まるわかり非線形光学 第2回 非線形光学事始め(2)

科学技術振興機構 黒澤  宏

 非線形光学効果について,光の電界が原子の中の電子に力を及ぼして変位させ,その結果物質中に分極が生じます。分極の振動が新しい光の発生源となります。物質に光を入れると,新しい光の中に元の光の周波数と異なる成分が含まれることがあります。これが非線形光学効果です。今回は,少し数学を使って説明します。二次非線形光学効果と三次非線形光学効果の中から,代表的な例のいくつかについてお話しします。・・・(続きは本誌で)

進め!! 日本のイノベーション 第2回 企業の戦略

政策研究大学院大学 井田 聡子,隅藏 康一

 国全体としてイノベーションを促進するためには,大学,企業ならびに政府の3者の相互作用が重要な役割を担っている。これについて,前回の解説で述べた。一国のイノベーション・システムにおいて,企業は,実際に製品やサービスを生産し販売することにより,イノベーションを実現させる役割を担っている。企業は,製品イノベーションや工程イノベーションを実現するために,様々な戦略を策定し,実行している。
 今回は,企業の戦略に関して,全社的な経営戦略に関する代表的な理論と戦略策定の枠組みを中心に,解説する。・・・(続きは本誌で)

基礎からの量子光学 第10回 真空雑音を制御する:直交スクイーズド光の発生と検出

学習院大学 平野 琢也

 1960年のレーザーの発明により,それまでの白熱電球や蛍光灯とは異なるコヒーレントな光を利用することができるようになった。直交スクイーズド光は1985年に初めて発生が可能になった光であり1),真空雑音を制御した質的に新しい光である。本章では,直交スクイーズド光を実際にどのようにして発生するのか,そして,それをどのようにして検出するのかについて述べる。
 直交スクイーズド光は非線型光学効果を利用して,コヒーレント状態や真空状態から生成することができる。直交スクイーズド状態は,前章で述べたように,2つの直交位相振幅の間で揺らぎの分配比を変えた状態である。直交スクイーズド状態にある光,直交スクイーズド光は,量子揺らぎの大きさが位相により異なり,電場の揺らぎが時間とともに増減を繰り返すものである。・・・(続きは本誌で)

シリーズ

IT市場ウォッチング 第67回 NGN時代到来

(株)野村総合研究所 藤浪 啓

 NGN(Next Generation Network)というキーワードが注目を集めている。日経テレコン21でNGNをキーワードに2005年1月1日から2006年8月31日までに新聞にNGNというキーワードの記事が掲載された件数を検索すると202件に上る。しかし,一方でNGNとはそもそも何を示しているのか,どのようなインパクトを持ったテクノロジーなのかについては,十分に理解が進んでいるとは言いがたい。現状は各人が手探りで探している状況と言えよう。本稿では,ネットワークの技術革新におけるNGNの位置づけ,それが与えるであろうと現段階で論理的に想像されるインパクトに関する私見を述べる。・・・(続きは本誌で)

ワン・ポイント結像光学 第43回 カラーOTF(1)

朝枝 剛

 前回に述べたように私たちが観察する印画紙に写真画像ができるまでにはカメラによる撮影から始まり現像,ネガ画像の転写と現像というプロセスが入ります(図1)。その各過程で画像は少しずつ劣化していきます。良い写真レンズはなにかを評価するには本来ならばこの全てのプロセスの影響を考慮して最後に見る画像上での良し悪しを評価しなければなりませんが,これは画像劣化の要因が多すぎてとても難しい。しかし,もしこの各過程での影響を空間周波数特性として把握することができれば最終的な画像の質は各プロセスでのOTF(光学伝達関数)の掛け算で求められます。そのために写真フィルムのOTFの測定器が開発されています。・・・(続きは本誌で)

光の研究コミュニティ −技術進展を支える光関連研究会/グループ− 第38回
高分子学会 光反応・電子用材料研究会 量子ビームと高分子材料の創る世界

大阪大学 関  修平

 本研究会は,社団法人・高分子学会の研究会として1990年代初めに発足しました。現在21を数える高分子学会の研究会の中では,最も古くからある研究会の一つです。研究会が発足してから15年余り,この間に電子・情報関連技術はすさまじい発展を遂げ,多くの科学技術分野の中でも例外的なスピードで,その科学技術トレンドが移り変わってきたことは敢えて述べるまでも無いでしょう。本研究会はこのような移り行くトレンドを,高分子学会の会員のみでなく,高分子材料と光反応・電子材料への応用分野にかかわるさまざまな研究者に広く紹介する活動を精力的に行ってきました。・・・(続きは本誌で)

光技術の研究開発・特許動向II/技術別に見る最新情報 第110回 光学的論理素子

嶋本国際特許事務所 嶋本 久寿弥太

 光学的論理素子(国際特許分類:G02F3/00)の特許出願を特許出願公開でみると,1994年から2005年にかけての12年間に94社(うち外国企業25社,個人9人)が参入し,323件の特許出願公開がみられた。
 光学的論理素子の特許出願公開をランキングでみると,1位は科学技術振興機構の24件,2位は松下電器産業の16件,3位はシヤープの15件,4位は日本電気と浜松ホトニクスのそれぞれ13件で,上位5社の特許出願公開件数は,合計すると81件に達し,全体の25.1%に達している。
 6位以下をみると,6位は産業技術総合研究所の10件,7位はルーセントテクノロジーの9件,8位は富士通,オリンパス光学のそれぞれ8件,10位はソニー,東芝,富士ゼロックス,富士写真フイルムがそれぞれ6件で,上位10位13社の特許出願公開件数は,合計すると140件に達し,全体の43.3%に達している。・・・(続きは本誌で)

高まる発光効率! 注目の白色LED

 照明といえばLEDという時代がやってくるのだろうか―。20世紀中の実用化が不可能といわれた青色LEDの出現によって,白色LEDは開発された。当初は携帯電話用液晶ディスプレイのバックライト用光源として採用され,その後発光効率の向上とともに幅広い分野で用途開発が進み,現在市場は拡大傾向にある。こうした中,いま最も高い関心を集めているのが,白熱灯や蛍光灯に替わる一般照明と,ハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge:高輝度放電灯)に替わる自動車用ヘッドライトへの適用だ。・・・(続きは本誌で)

太陽光発電システム,普及のカギは経済性の改善

 光のエネルギーを直接電気に変換する太陽電池。日本では,1974年に通商産業省(現・経済産業省)の新エネルギー研究開発推進プロジェクト『サンシャイン計画』によって,太陽電池の研究開発が本格的にスタートした。その後の実用化で市場は拡大,応用製品としては電卓や時計など多岐にわたるが,なかでも太陽光発電システムは,発電に伴う二酸化炭素(CO2)などの排出物がなく極めてクリーンであることから,地球環境保全の観点からも関心が高まっている。
 その普及は,1992年の電力会社による余剰電力買取メニューや,政府の『公共施設用太陽光発電フィールドテスト事業』,さらには1994年の『住宅用太陽光発電モニター事業』,2002年からの『住宅用太陽光発電導入促進事業』などの開始によって牽引されてきた。エネルギー資源の大半を海外に依存する日本にとって,太陽光発電に期待するところは今後ますます大きくなるものと予想される。・・・(続きは本誌で)

ユーザの心を掴むのはどれ?家庭用カムコーダの記録メディア

 暑かった夏も終わり,行楽や運動会シーズンの秋が訪れた。旅行の思い出や子供たちの成長の記録に,カムコーダの購入を検討されている方も多いのではないであろうか。量販店の売り場にずらりと並ぶ各社の商品は,これまで画質,サイズ,価格等を競い合っていたが,最近はこれらに加えて記録メディアも商品を選ぶ際の大きなポイントになっている。これまで主流だったのは「miniDV」だが,ここに来て「DVD」「HDD」も注目を集めている。果たしてユーザの心を掴むのは?新メディアの長所・短所を含めて,比較検討してみたいと思う。・・・(続きは本誌で)

PLCはFTTHの対抗馬か?

 PLC(高速電力線搬送通信:Power Line Communications)という言葉をよくニュース等で耳にする。7月3日付の産経新聞Web版はこのPLCを「送電用の電線を用いてデータを送受信し,家庭の電源コンセントにモデムとPCをつなげるだけで,数10〜100Mb/sと光ファイバ並みの高速通信を可能にする技術」「今秋にも総務省が省令改正を行ない,PLCの商用化が始まる」と紹介している。もしこの技術が実現するならば,わざわざ光ファイバケーブルを敷設しなくとも,既存の電力線を用いることでブロードバンド環境が整うほか,コンセントを起点としてネットワーク接続が出来ることから,ユビキタス社会の実現へも大きく前進することになる。
 しかし一方で同記事は「電波の漏洩が問題となっており,当面のPLCの利用を屋内に限定」「審議会は当初の予定よりもPLCのデータを送る電流の許容値を厳格化,一部メーカからは商品化困難の声」と,その実現に様々な条件が課せられるとも報じている。・・・(続きは本誌で)


HEAD LINE NEWS

DATA ROOM

▼レーザ加工機,輸出数量の対前年同月比,10カ月連続のプラス
▼民生用電子機器国内出荷金額,対前年同月比108.5%の2,300億円
▼液晶テレビ生産台数の対前年同月比,34カ月連続のプラス

PHOTONICS SPECTRA

▼IPGフォトニクス,株式公開を申請
▼新素材が有機太陽電池の効率をアップ

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EVENTS

▼レーザー学会 第354回研究会 レーザー加工
▼平成18年度 第3回 ホログラフィック・ディスプレイ研究会 ホログ
▼ラフィとデジタル技術
▼第5回 ボリュームホログラフィックメモリ技術研究会 システム構
▼築のための新技術と評価
▼QCMC2006(第8回 量子通信国際会議)
▼ODFユ 06 Nara (The 5th International Conference on Optics-photonics Design & Fabrication)
▼第38回 光波センシング技術研究会講演会

Zoom in USA

第39回 始まったファイバ・ツー・ザ・ホーム

東門 元二

PRODUCTS INFORMATION

今月のコメント

 今月号の特集では光触媒を取り上げました。1990年代後半から実用化が始まった光触媒は,既に数多くの商品に利用されています。

 その機能として先ずあげられるのが空気の清浄です。エアコンや空気清浄機などのフィルターに使われ,タバコやペットの臭いの他,ウイルスなども取り除いてくれます。また光触媒は超親水性という特長を持っていて,これを自動車のドアミラーに使えば水滴が出来ないので,雨の日でも良好な視界を確保できます。

 太陽の光で汚れを分解して,さらにその汚れを雨水で洗い流すセルフクリーニング効果もあるので,これを建築材料に用いれば,汚れない建物が出来上がります。自分で自分を洗濯する建物といっても良いでしょう。

 省エネ効果という点でも期待されていて,光触媒を建物の屋根や外壁,窓にコーティングしおいて,あらかじめ貯めておいた雨水をそこに流せば,垂直な面にも水の膜が永く残っていてくれるので,建物の表面を冷やし内側の温度を下げてくれます。その分エアコンの電気エネルギーを節約できるというわけです。外側の温度も下げてくれるので,ヒートランド現象の緩和にも役立つと期待されています。

 この他,農薬や発がん性物質に汚染された土壌や水の浄化にも効果があり,さらには次世代のエネルギーとして期待を集めている水素を作り出す手段としても注目されています。

 こう見てきますと,光触媒は良いとこだらけという印象を受けますが,商品レベルではどうもその効用が一人歩きしている感もあります。こういった現象はかつての遠赤外線ブームの時にもあったようです。健康ブームにありがちな「眉唾物」的な商品があっては,消費者を混乱させる事にもなりますし,光触媒そのものの信用にも関わります。一時のブームで終わってしまっては何にもなりません。きちんとした標準化の確立も求められるところです。

 さて,光触媒実用化のもとになったのが,いわゆる本多・藤嶋効果の発見でした。1967年,東京大学の本多健一助教授(東京大学名誉教授)のもと,当時大学院生であった藤嶋昭氏(現・神奈川科学技術アカデミー理事長,東京大学名誉教授)が,水溶液中の酸化チタン電極に光を当てたところ,水が酸素と水素に分解する光触媒反応を発見しました。

 この発見は1969年,日本の「工業化学雑誌」に発表されたらしいのですが,当時はあまり注目されず,72年に「ネイチャー」に載ったところ,大きな反響があったそうです。何となく,今も昔も海外ブランドに弱い日本を表わしているようにも思えますが,それはさておき,その後の実用化を含め,光触媒はまさに日本が生んだ世界に誇れる独創的技術といえるでしょう。今後もそのような研究が生まれてくる事を期待したいと思います。

編集長 川尻 多加志

次号(11月号)の予定

特集「材料からのブレークスルー(仮題)」

▼アンチモン系量子ドットレーザ
▼有機半導体レーザー
▼窒化アルミニウムを用いた210nm遠紫外LED
▼表面プラズモンアンテナを用いたシリコンナノフォトダイオード
▼酸化ガリウム鉄結晶を用いた圧着磁石による光制御
▼単層カーボンナノチューブによる非線形光学効果と期待される光スイッチへの応用
▼高輝度発光する半導体ナノ粒子分散ガラス蛍光体
▼有機TFT駆動によるフレキシブル有機ELディスプレイ

(都合により,内容に変更のある場合があります。)

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