分光セミナー

2022年11月17日(木) 10:00-12:55 -第2会議室B
【SC-1 近赤外分光法の基礎と応用

振動分光法を用いた食品・材料高分子の内部構造評価

福島大学 農学群食農学類 准教授 石川 大太郎 氏
食品、工業および医療分野など高分子素材は多種多様な実用の現場で利用されている。しかし、ミクロからマクロに至る階層的かつ複雑な構造を有する高分子材料の構造と最終的な物性や、製造プロセスにおける物理的な変換操作が内部構造に与える影響などは、いまだ未解明な部分が多い。

分光分析化学的手法は対象のありのままの測定が可能であるが、そのうち振動分光法は、対象の分子内・分子間相互作用に鋭敏で、高分子の秩序/無秩序構造やその不均一性を解明するための強力なツールとして利用されている。著者らの研究グループでは加えて、近赤外およびテラヘルツ分光装置の開発と分析手法の提案や、近赤外イメージングによる高分子の状態変化の可視化を通して、実用的な場面における振動分光イメージング利用の可能性について検討を行ってきた。

本講演では、コメデンプンなどの食品高分子やポリ乳酸などの材料高分子を対象として、それぞれの加工プロセスや分解プロセスでの振動分光スペクトルと吸着特性等の物理化学的解析を融合したミクロ構造解明に関する研究事例を紹介する。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

近赤外分光法の基礎

武蔵野大学 服部 祐介 氏
「近赤外光」の存在は1800年頃から知られていたが、実際に「近赤外分光法」として実用化され始めたのは、1960年代になってからである。近赤外光とは、その波長範囲が可視光と赤外光の間にあり、有機化合物による可視光吸収、赤外吸収とは似て非なる光の吸収原理に基づいている。その特異的な吸収原理により、近赤外光の吸収係数は赤外吸収と比較して100分の1程度である。そのため、試料を前処理や光路長を短くする必要がなく、試料をそのまま、「非破壊」で近赤外スペクトルを測定することが出来る。一方で、近赤外スペクトルは多数の吸収ピークが重なり合っており、ピークの帰属と定量分析が困難であった。

1970年代になり近赤外分光の実用化がさらに加速されることになる。それは一波長における単回帰分析ではなく、ケモメトリックス・多変量解析を用いることで、近赤外スペクトルによる定量分析の精度が飛躍的に向上したためである。その結果、農業をはじめ様々な産業分野における品質管理の方法、医療応用として近赤外分光が応用され始め現在に至っている。さらに近年では、デバイスの小型化、低価格化、IoTへの対応など、デバイスの開発が進み、産業分野だけでなく一般に広く普及しつつある。

本講演は近赤外分光の入門編として、近赤外分光を応用、実用化する上で理解しておくべき吸収原理と、得られたスペクトルから、正確に情報を抽出し読み取るためのケモメトリックスの基礎について、応用事例を交えながら解説する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

近赤外分光による高分子材料の計測と解析

産業総合技術研究所 新澤 英之 氏

受講料(1セッション/税込)
一般 出展社/主催・協賛団体会員 月刊オプトロニクス定期購読者/シニアクラブ会員 学生
¥18,000 ¥15,000 ¥9,000 ¥5,000

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2021年11月17日(水) 13:40-16:45 -第2会議室B
【SC-2 紫外可視・蛍光分光法

分光法シリーズ第8巻「紫外可視・蛍光分光法」について

東京理科大学 理学部第一部化学科 教授 築山 光一 氏
日本分光学会分光法シリーズ 「紫外可視・蛍光分光法」 について
当セミナーの主旨について
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)
企業等において紫外可視・蛍光分光法を用い、化学物質(生体関連、材料関連等)の分析や評価等を行おうとしている研究者・技術者には最適なセミナーです。

蛍光イメージング分光法:生細胞への応用と蛍光ライブイメージング

東京大学大学院 理学系研究科化学専攻 助教 吉村 英哲 氏
蛍光分析はその感度と選択性の高さから、多くの分析手法で利用されている。特に2008年および2014年のノーベル化学賞の対象となったような蛍光タンパク質の発見と応用および各種蛍光顕微鏡技術の発展により、生体試料に対する解析についても様々な蛍光分析法・イメージング法が広く利用されている。

得られた成果は基礎研究における様々な発見はもちろんのこと、生きたままのサンプル内における分子の機能を解析することで創薬や医療などへの貢献も大きい。

本講演では生きた細胞サンプルを対象とした分析手法、特にフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を用いた分析と蛍光相関分光法(FCS)を用いた分析について原理と実際を紹介する。また演者自身の研究を含む様々な生細胞蛍光イメージング法について紹介する。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

円偏光分光法:不斉分子/不斉材料の基底状態と励起状態を知る最先端の分光ツールとして

奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 名誉教授 藤木 道也 氏
1896年フランスの物理学者Aimé Cottonは、可視吸収をもつD-酒石酸クロミウムカリウムの旋光度の波長依存性(旋光分散:optical rotatory dispersion, ORD)と左円偏光吸収と右円偏光吸収の差(円偏光二色性分光法:circular dichroism, CD)の波長依存性を始めて報告した。以来1世紀以上が経過したが、ORD/CD分光法、とりわけCD分光法は、不斉な有機分子、無機分子、超分子、生体高分子、人工らせん高分子が有する電子遷移吸収をプローブとして、基底状態のキラリティーを同定する最も有効な手段として知られている。

これまでに65000報以上の研究成果が報告され、その約1/3が生体高分子に関する。一方、1990年以降、不斉分子の励起状態におけるキラリティーを同定する円偏光発光分光法(CPL)が大きな注目を集めている。発光性分子に限られるが、これまでに2200報の成果が報告され、最近では年間250–300報もの報告がなされている。また、研究例は非常に少ないものの、CPL/CD分光法を補完する円偏光発光励起分光法(CPLE)は、CPL信号を与える起源であるCD吸収帯を選択的に検出できる。これらの研究結果として、励起状態のキラリティーは基底状態のキラリティーとはかなり異なっていることが次第に明らかにされつつある。さらに基底状態の分子キラリティーを振動準位間の遷移(吸収モード)として検出する振動円二色性分光法(VCD)が有効である。

ORD/CD/CPL分光法が適用できない紫外可視部に吸収を持たない不斉分子にも適用可能である。これまでに3300報の成果が報告されている。さらに静磁場下における電子構造の解析には、不斉分子であるかないかにかかわらず、基底状態については磁場円二色性分光法(MCD)、励起状態については磁場円偏光発光分光法(MCPL)が用いられる。MCD分光法とMCPL分光法を合わせて2500報が報告されている。

本講演では、CD分光法/CPL分光法による不斉な有機分子、無機分子、有機金属錯体、超分子、生体高分子、人工らせん高分子などの研究事例を中心に紹介する。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)/中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

キャビティーリングダウン分光法の基礎と応用

東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 研究員(PI) 荒木 光典 氏
光吸収の測定は、微量成分を検出するための最も基本的な手法である。試料の光吸収が大きければ分光光度計による測定が一般的であるが、微量成分に対しては感度が足りない。その対策のひとつとして,吸収を発光に置き換えて検出する手法もあるが、分子のサイズが大きくなると、検出できなくなる。光吸収を荷電粒子の量に置き換える手法も用いられるが、吸収過程の後にイオン化過程が加わるため純粋な吸収スペクトルではなくなり、相対強度は信頼できなくなる。そこで1988年に登場した方法がキャビティーリングダウン分光法(Cavity Ring Down Spectroscopy: CRDS)である 。向かい合わせた2枚のミラーの間でキャビティーを構築し、光を多重往復させ、キャビティーから外側へ出てくる光の減衰時間として吸収係数の情報を取り出す方法である。既存の分光用のレーザーが使え、純粋な吸収スペクトルが得られる。この手法は国内外で盛んに利用されている。

本セミナーではこの手法の代表例であるパルスレーザーを用いたCRDSとその次世代型であるキャビティー増幅吸収分光法を中心に、まず基礎的な原理を紹介し、次に東京理科大学で使用されている装置とその結果を応用例として紹介する。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)
受講料(1セッション/税込)
一般 出展社/主催・協賛団体会員 月刊オプトロニクス定期購読者/シニアクラブ会員 学生
¥18,000 ¥15,000 ¥9,000 ¥5,000

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石川 大太郎

福島大学

農学群食農学類 准教授

福島県三春町出身。鹿児島大学大学院連合農学研究博士課程修了(博士(農学))、2009年日本学術振興会特別研究員、ジョージア大学/ワシントン州立大学派遣研究員、2011年関西学院大学理工学部尾崎研究室博士研究員、2014年東北大学大学院農学研究科助教を経て、2019年より福島大学農学群食農学類准教授。日本分析化学会東北支部会幹事、日本応用糖質科学会東北支部会理事、Editorial Advisory Board (Journal of Spectral Imaging)、世界で活躍する若手研究者戦略的育成事業(文部科学省)令和2年育成対象者 受賞歴:Analytical Bioanalytical Chemistry award(ICAVS-7)、NIR advanced award(近赤外研究会)、Outstanding Reviewer award(Analytical Science)等

服部 祐介

武蔵野大学

薬学部・薬学研究所 講師

2005年3月,東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科博士後期課程を修了(博士(学術))し,同年4月理化学研究所光バイオプシー開発研究ユニットの協力研究員として勤務.2007年4月より東京女子医科大学先端生命医科学研究所にて博士研究員として研究に従事し,2010年4月より武蔵野大学薬学部・薬学研究所の助教,2014年4月より現職となる.専門は,振動分光法(赤外,ラマン,近赤外分光)による医薬品の分析・解析.2015年11月,NIR Advance Award受賞(近赤外研究会).日本分光学会企画委員,日本分光学会近赤外分光部会幹事,「Analytical Sciences」編集員.