赤外線応用技術セミナー

2022年04月20日(水) 10:00-12:55 アネックスホール F204
【IR-1 赤外線技術の基礎

赤外線の基礎

静岡大学 名誉教授 廣本 宣久 氏
赤外線は近年、検出器や光学素子の性能向上、小型化、低価格化によって、利用分野が拡大し、新型コロナウィルス感染対策など、非接触の検査のために、なくてはならない技術となっています。
本講演では、応用を考えるために必要な、赤外線の科学・技術の基本をやさしく説明します。

 1.赤外線は光、電波と同じ ―赤外線の発見、光子と電磁波
 2.赤外線の性質 ―赤外線と物質との相互作用から分かる、スペクトル
 3.赤外線は熱線 ―なぜ暖かい?熱放射、黒体放射、放射温度
 4.赤外線の伝搬と減衰 ―大気の窓、地球温暖化、OH分子夜光
 5.赤外線の測定 ―検出器の感度と雑音、NEP(エヌ・イー・ピー)
●難易度:一般的(高校程度、一般論)

先端中赤外線レーザー技術とその応用

(国研)理化学研究所 研究員 宮田 憲太郎 氏
赤外線領域の中でも、およそ2~20µmの領域に相当する赤外線領域は、分子固有の吸収スペクトルが無数に存在するため、分子の指紋領域とも呼ばれる。この波長域における光源は、レーザー分光計測の技術を基礎とした環境計測、医療、レーザー加工など様々な分野への応用が期待されている。
本講演では、近年発展が目覚ましい中赤外線レーザーの技術について、固体及びファイバーを利得媒体として用いたレーザーとその波長変換を中心に、時間領域ではフェムト秒から連続波、スペクトル領域では2~20µmまでを網羅するよう解説する。特に、本技術でキーとなる光学材料について、同分野で既に一般的なものから最前線で研究されているものまで、物性データを中心にその基本特性を丁寧に説明し、レーザー技術へとその内容を体系的に展開させる。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外線イメージング技術の動向

立命館大学 特任教授 木股 雅章 氏
赤外線イメージングは、撮像対象が放射する赤外線の分布を二次元画像として捉える技術で、防衛技術として発展を遂げてきたが、最近では民需応用も活発になり、監視、セキュリティー、設備保全、工業計測など幅広い応用分野で活用されている。

赤外線イメージング用の赤外線イメージセンサには、非冷却型と冷却型がある。
非冷却型は、室温で動作する熱型検出器によって赤外線を検出するもので、熱コンダクタンスの小さい画素構造を実現できるMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 製造技術を活用して性能向上が進められ、画素ピッチは10 µm以下、解像度はFull HDレベルに達している。非冷却型では、低コスト化のための技術開発も進められており、コロナ禍で注目を集めた発熱者スクリーニング応用に加え、スマートフォン応用や車載応用での市場拡大が期待されている。
冷却型は、半導体の光電効果を利用して赤外線を検出するもので、狭バンドギャップ半導体であるHgCdTeとInSbを用いた赤外線イメージセンサが一般的であったが、最近、Type-II超格子検出器の性能も実用レベルに達している。冷却型の赤外線イメージセンサに用いられる半導体材料は高価であり、赤外線カメラには冷凍機が必要となるため、現状では、民需分野の応用は研究開発や分光計測などに限定されている。
本講演では、赤外線イメージセンサと赤外線カメラの基礎と開発動向を解説し、注目される応用にも触れる。
●難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)
受講料(1セッション/税込)
一般 出展社/主催・協賛団体会員 月刊オプトロニクス定期購読者/シニアクラブ会員 学生
¥18,000 ¥15,000 ¥9,000 ¥5,000

併催イベント一覧へ

2022年04月21日(木) 10:00-12:55 アネックスホール F204
【IR-2 赤外線の光学系の基礎

赤外レンズ - 設計と活用

(株)タムロン 光学開発センター センター長 安藤 稔 氏
近年可視光では見ることのできないものを見る技術として、赤外線(1 ~14μm)領域が注目されている。

赤外線の領域には、さまざまな分子のスペクトルが存在し物質の異なった特性を見ることができる反面、その特徴から透過する材料が限られる。
レンズ設計においては、材料の特性や色収差の問題のため近赤外、中間赤外、遠赤外それぞれの領域で使える材料などについて理解をすることが必要となる。

本公演では赤外線用カメラの活用について紹介するとともに、赤外線用レンズの材料の特徴を比較、それらを使用した光学設計について解説を行う。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

赤外透過材料 - 焼結法による赤外透過多結晶セラミックスの創製 -

(国研)物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 蛍光体グループ 主席研究員 森田 孝治 氏
焼結プロセスによって製造することができる透明多結晶セラミックは、比較的高い生産性と共に光学および機械的特性を同時に実現できる点で注目を集めている。
多結晶セラミックにおいて優れた透過率を達成するための重要な要素は、緻密で微細な微細構造を達成することである。最近、緻密で微細な組織を有する透明なセラミックを達成するために、電場、超高圧および磁場のような外場効果が焼結プロセスにおいて広く利用されている。
前者の2つは、粉末の緻密化を加速することができ、それ故に低温で緻密で微細構造を達成することを可能にする。

3つ目は、多結晶セラミックの結晶配向を制御することで、結晶間の方位差を小さくし、粒界での光散乱を減少させることができる。個々の外場効果のさらなる改善が必要であるが、外場効果を融合した高度な焼結技術は優れた光学的および機械的特性を有する新規の透明セラミックの開発を加速できるであろうと予想される。

本講演では、これまで物材機構において取り組んでした赤外透過多結晶セラミックスの創製に関する成果を中心にご紹介させて頂きます。

メタマテリアルと赤外分光

(国研)理化学研究所 主任研究員 田中 拓男 氏
メタマテリアルは、波長より細かな人工構造を用いて物質の光学特性を制御した疑似材料である。メタマテリアルそのものは構造体であるが、それを構成する構造を波長より細かく設計・加工することで、1つ1つの構造は光波に直接感知されずにメタマテリアル全体が1つの均質な物質として振る舞う。メタマテリアルの特徴の1つは、その構造をうまく設計することで、自然界から直接得られる物質には無いような光学特性を物質に付与できることである。

メタマテリアルが実現する特異な光学特性の1つが、透磁率を制御した物質である。一般に光周波数においては自然界のほぼ全ての物質の透磁率の値は真空の透磁率と同じになる。物質の透磁率を人工的に変化させることができると、誘電率と透磁率の比で定義される物質のインピーダンスも人工的に操作できることとなり、物質界面での光の反射を抑制して光を完全に吸収する物質もつくることができる。

本講演では、メタマテリアルの概要について簡単に触れた後、特に光を完全に吸収する光吸収メタマテリアルを中心にその原理と特性を述べる。そして赤外光を吸収する赤外吸収メタマテリアルのような新しい赤外材料にフォーカスを絞り、それを応用して赤外分光法の分子検出感度を飛躍的に高感度化する技術など、赤外吸収メタマテリアルの応用技術を最新の研究成果と共に紹介する。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)
受講料(1セッション/税込)
一般 出展社/主催・協賛団体会員 月刊オプトロニクス定期購読者/シニアクラブ会員 学生
¥18,000 ¥15,000 ¥9,000 ¥5,000

併催イベント一覧へ

2022年04月22日(金) 10:00-12:55 アネックスホール F204
【IR-3 赤外線のアプリケーション―防衛・ヘルスケア・農業への応用

防衛分野における赤外線技術

防衛装備庁 次世代装備研究所 センサ研究部 光波センサ研究室長 工藤 順一 氏
本講演では、防衛用光波センサにおいて特に重要な技術であります赤外線センサ技術について防衛装備庁次世代装備研究所での研究開発状況等を踏まえながら発表する予定です。
発表できる範囲の中で最近の研究成果等をお伝えし、将来への方向性が感じられるような内容にする予定です。
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

中赤外光を用いたヘルスケアモニタリング

東北大学 大学院医工学研究科 教授 松浦 祐司 氏
 波長6ミクロン以上の中赤外光,および波長300 nmの深紫外光というこれまではあまり活用されていなかった極端波長域の光を用いたヘルスケア機器の現状と将来展望について報告する.
 まず波長が6~12ミクロン程度の中赤外光を用いた分光法により,生体を構成するタンパク質,脂質,糖質などの高精度な分析が可能になる.この領域では最近,中赤外量子カスケードレーザや,室温動作の半導体検出器が登場し,小型かつ安価なヘルスケア機器の実現性が高まってきた.また波長300 nm以下の深紫外領域は,特に種々の揮発性ガスが強力な吸収を示すため,LEDや新しい光源の開発とともに,新しいアプリケーションの発現が期待されている.
 そこで本講演では,中赤外減衰全反射(ATR)法に基づく非侵襲血糖値測定や血中コレステロール分析,さらにはATR法に代わる光熱変換分光法の応用などについて紹介する.そして中空光ファイバを微小容量かつ長光路ガスセルとして利用した深紫外,真空紫外分光分析の応用例として,代謝計測の有用な呼気中イソプレン,およびアセトンの高精度計測の結果などを報告するとともに,中赤外光および深紫外光を用いたヘルスケア機器の今後の展望などについて述べる.
●難易度:入門程度(大学一般教養程度)

農業・食品分野への応用

東京大学 大学院農学生命科学研究科 助教 吉村 正俊 氏
 農産物や食品の検査および品質評価には、赤外線の中でも可視光に近い近赤外線による分析手法が多く使われています。果実の収穫適期の判定、穀物や野菜の品質評価、異物検出・同定など様々な計測を迅速かつ非破壊で行えることが大きな利点です。
 一方、近赤外スペクトルはピークの幅が広く、複数ピークが重なり合う複雑な形状をしているため、単一波長での吸光度から特定成分の同定や定量を行うことはできず、スペクトルと目的情報(化学成分・物理構造など)を結びつけるためのデータ解析(多変量解析・ケモメトリクスなど)が必要となります。
 本講演では、主に近赤外領域を対象として、農業・食品分野における応用事例を紹介しつつ、スペクトルデータと目的情報をつなぐデータ解析の基礎的知識やポイントを解説します。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)
受講料(1セッション/税込)
一般 出展社/主催・協賛団体会員 月刊オプトロニクス定期購読者/シニアクラブ会員 学生
¥18,000 ¥15,000 ¥9,000 ¥5,000

併催イベント一覧へ

元のページに戻り選択を続ける
お申込み受付は終了いたしました。

お支払方法
●クレジットカード(領収書発行)

セミナー申込手順


※有料セミナー キャンセル規程:
お客様のご都合による受講解約の場合、3/22までは受講料の50%、3/23以降につきましては受講料の全額を解約金として申し受けます。
但し、申込者が既定の人数に達しない場合、中止とすることがあります。その場合には、申し受けた受講料は返金致します。

※学生料金:
個人もしくは学校からのお支払いで、30歳未満の方が対象となります。

※月刊OPTRONICS定期購読者割引:
月刊OPTRONICS定期購読につきましては【こちら】をご確認ください。
購読者割引は読者番号(送本時の宛名ラベルに記載)とお申込み者のお名前が一致している方が対象となります。

受講申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。申し込み後、受講者のご都合で欠席となる場合でも受講料は申し受けます。テキスト(pdf)は事前に参加者全員にメールにてお送りいたします。
なんらかの不可抗力により該当セミナー、及び付帯するイベントの開催が不可能となった場合、主催者は受講のキャンセルの受け付け致しません。また、受講料の返金を含む、これにともなった損害の補填・補償は行いません。

【不可抗力】台風、洪水、地震を含む天災、あるいはそれらを原因とする様々な事態、疾病や伝染病の蔓延、労働争議、主催者の合理的なコントロールを超えた会場設備の使用制限や講師の欠席等を含むもの


[ 特定商取引法に基づく表記 ]



廣本 宣久

静岡大学

名誉教授

1985年京都大学理学博士。
1984年より郵政省電波研究所,郵政省通信総合研究所(現国立研究開発法人情報通信研究機構)にて赤外・テラヘルツ工学の研究に従事。
2001年独立行政法人通信総合研究所関西先端研究センター長。
2003年総務省情報通信政策局技術政策課企画官。
2005年国立大学法人静岡大学工学部教授。
2020年静岡大学名誉教授。現在に至る

宮田 憲太郎

(国研)理化学研究所

研究員

2008年 マックスボルン研究所 客員研究員 2009年 マックスボルン研究所 博士研究員 2010年 株式会社メガオプト 研究員 2012年 株式会社メガオプト グループ長 2016年 株式会社メガオプト プロジェクトリーダー 2018年 国立開発研究法人理化学研究所 研究員

木股 雅章

立命館大学

教授

1976年 名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 三菱電機株式会社入社。 2004年 三菱電機株式会社退社。同年 立命館大学理工学部教授。2022年 立命館大学退職。1980年より現在まで赤外線イメージセンサの研究開発に従事。2009年よりJAXAのType-II超格子赤外線センサの開発に参画。電気学会、日本赤外線学会、応用物理学会、IEEE会員、SPIEフェロー。2013〜2014年 日本赤外線学会会長。1988年 市村賞貢献賞、1993年 全国発明表彰内閣総理大臣発明賞、2016年 日本赤外線学会業績賞などを受賞。工学博士

安藤 稔

(株)タムロン

光学開発センター センター長

2003年 3月 名古屋大学大学院素粒子宇宙物理学専攻博士課程後期修了
  博士(理学)取得 赤外線天文学
2003年8月 株式会社 タムロン入社
  デジタルカメラ用レンズ,リアプロジェクター用レンズ,監視カメラ用レンズ,車載用レンズ,赤外線レンズなどを担当
2014年3月 本部長代理
2015年4月 本部長
2022年1月~ 光学開発センター センター長

森田 孝治

(国研)物質・材料研究機構

機能性材料研究拠点 蛍光体グループ 主席研究員

1997年九州大学大学院総理工材料開発工学博士後期課程修了,博士(工学).1996年-1997年日本学術振興会特別研究員,1997年4月金属材料技術研究所(現:物質・材料研究機構)研究員、2010年-2012年ダルムシュタット工科大学客員研究員を経て、2016年4月より同機構主席研究員.セラミックスの超塑性・高温変形、放電プラズマ焼結(SPS)装置を利用した構造/機能セラミックスの創製と特性評価に関する研究に従事. 2001年日本金属学会奨励賞,2007年文部科学大臣表彰,2013年日本金属学会功績賞などを受賞.日本金属学会、日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会、各会員.

田中 拓男

(国研)理化学研究所

主任研究員

1968年3月28日生.1991年大阪大学工学部応用物理学科卒業,1996年大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士後期課程修了,博士(工学),1996年大阪大学基礎工学部電気工学科助手,1997年大阪大学大学院基礎工学研究科助手,2003年理化学研究所 研究員,阪大フロンティア研究機構 特任助教授,2005年理化学研究所 先任研究員,2008年理化学研究所 准主任研究員,2010年北海道大学電子科学研究所 客員教授,2010年埼玉大学 連携教授,2012年学習院大学 講師,2014年理化学研究所 チームリーダー(兼務),2014年東京工業大学 連携教授,2017年理化学研究所 主任研究員,2017年台湾国立清華大学 客員教授,2019年フィリピン大学ディリマン校 客員教授,2020年台湾国立中興大学 客座教授

工藤 順一

防衛装備庁

次世代装備研究所 センサ研究部 光波センサ研究室長

1995年筑波大学大学院理工学研究科修了。1995年より防衛庁技術研究本部第2研究所(現防衛装備庁次世代装備研究所)にて、光波センサシステム、赤外線撮像装置等の研究開発に従事。2015年11月より現職。工学博士。

松浦 祐司

東北大学

大学院医工学研究科 教授

1988年東北大学工学部通信工学科卒,1992年東北大学大学院工学研究科修了,博士(工学).1993年住友電気工業横浜研究所研究員,1994年米国ラトガース大学セラミック工学科研究員として勤務の後,1996年東北大学大学院工学研究科助教授.2008年東北大学大学院医工学研究科教授.X線から遠赤外にわたる電磁波伝送路とその医療応用に関する研究に従事.レーザー学会,電子情報通信学会,応用物理学会,電気学会、SPIE会員.平成17年度文部科学省若手科学者賞受賞.レーザー学会東北・北海道支部長.

吉村 正俊

東京大学

大学院農学生命科学研究科 助教

平成22年 東京農工大学 大学院連合農学研究科 環境資源共生
科学専攻 博士課程 修了
平成22年〜26年 (独)農研機構 食品総合研究所 特別研究員
平成24年〜26年 日本学術振興会特別研究員PD
平成26年〜29年 (国研)農研機構 食品研究部門 研究員
平成29年1月〜  東京大学大学院農学生命科学研究科 特任助教
平成29年7月〜  現職