4月に改正されたFIT(フィード・イン・タリフ)法では、電力買い取り価格の引き下げとともに認定の在り方が設備から事業計画へと変わり、かつそれが既存の認定案件へも適用されるなど、その内容は従来に比べ、より現実的なものになったようです。
この改正FIT法によって9月30日までに提出しなければならなくなった事業計画の策定は「事業計画策定ガイドライン」に基づいて行なうもので、太陽光発電設備のO&M(運営・管理)が義務づけられたというところも、今回の改正の注目点と言えるでしょう。
政治的なイデオロギーによって進められたのではないかと指摘する向きもある我が国の太陽光発電普及政策は、事業の開始時にではなく設備の認定時に電力の買い取り価格を決める「初めに普及ありき」というようなかたちで進められました。
買い取り価格についても市場原理に基づいてではなく、正義の実現のためには高くても構わないという理念が優先され、決められたように思えてなりません。
必然的に、太陽光発電ビジネスはバブルになりました。原発の稼働停止に伴う原油やLNGの輸入増加も加わって電気料金は上がり続け、結局そのしわ寄せは消費者に行くという結果ももたらしました。
その後、政権交代による政策の見直しでようやく落ち着いた感もありますが、電気料金は今後さらに上がるという指摘もあり、これをどう収めるかという課題は残されたままです。
そんな中、7月5日(水)から7日(金)の三日間、パシフィコ横浜において太陽光発電の総合イベント「PV Japan 2017」が開催されました。
今回の会場で「おや?」と感じたのは、何社かの展示説明員の方が太陽光発電設備における事故について、特に隠すこともなく普通に話してくれたということでした。
事故については、かつては質問をしてもなかなか答えてくれない、何かタブーのような雰囲気があるように思えたのですが、それが薄れ、これからは現実的で健全なビジネスを目指そうという姿勢が表れているように感じられました。
背景には、やはり改正FIT法でのO&Mの義務化があるのではないでしょうか。実際、我が国には危険な造りの太陽光発電設備が多く、それは部材ではなく設計や施工などに起因するものが多いと指摘する人もいます。
それでは、展示会で目についた企業の出展内容を幾つか紹介しましょう。もちろん、この他にもたくさんの企業が出展をしていたのですが、時間の関係で立ち寄ることができず、ここで紹介できなかったことをお断りしておきます。
◆O&Mの義務化に対応するために、エクソルは「改正FIT法おまかせプラン」を打ち出していました。同社は、日本電気工業会と太陽光発電協会による「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」の作成にも参画。このプランは住宅から低圧、高圧、特高設備まで、同社のワンストップソリューションの強みを活かした総合メンテナンスサービスと位置付けられています。他社が設計・施工した既設の発電設備も対応するとのことです。ガイドラインに準拠した通常プランに加え、オプションとしてモジュールの洗浄、除草、駆けつけサポート、設備内容や注意喚起の標識設置、低圧用や高圧用フェンスの設置なども行なうとしています。
◆京セラは、最大出力280Wの太陽電池モジュールを参考出展しました(W1662×L990×H46mm、セル実効変換効率19.1%、モジュール変換効率17.0%)。同社開発の「5本バスバー電極構造」を採用しており、これはバスバーを細線化することで受光面積を広げるとともに、その本数を増やすことでバスバー間の距離を短くして電極の電気抵抗を低減するというもの。この他、セル裏面に表面改質層を作って、従来失われていたマイナス電荷量を低減することで効率を上げ発電量をアップさせる新技術「ForZ」も紹介していました。
◆三菱電機は、250Wの住宅用高出力太陽電池モジュールを出展。屋根などで発電した電気を集約する端子ボックスには高い電圧がかかるため、水分の侵入などにより大きなトラブルが発生する場合がありますが、このモジュールには難燃性・耐久性に優れた同社独自の4層構造端子ボックスが採用されています。電力変換効率98%、MPPT(最大電力点追従機能)99.8%の住宅用パワーコンディショナーとの組み合わせによって、日射量の少ない朝夕や曇りの日でも高い発電量を実現できるとのことです。
◆パナソニックは、アモルファスシリコン層とn型単結晶シリコン基板を組み合わせて電荷消失を抑える独自のヘテロ接合構造を採用した、お馴染みのHIT太陽電池モジュールを出展。HITは発電効率が下がる日中の高温時、一般的な太陽電池が10℃上がると出力が約5%下がるのに対し、2.9%しか下がらないとのことです。最大出力320Wタイプは、これまでの240Wタイプのサイズでその出力を実現したもので、19.1%というモジュール変換効率を達成、これにより少ない枚数でシステムを構築でき、BOS(Balance of System)コストの低減が可能になるとアピールしていました。この他、光の反射を和らげる、開発中の防眩タイプ太陽電池モジュールも参考出展していました。
◆カネカは、同社が開発したGRANSOLAヘテロタイプの太陽電池を出展しました。ヘテロ接合という点ではパナソニックと同じですが、同社の方式は単結晶シリコンの両面をアモルファスシリコン層で挟んだ構造になっています。同社・単結晶シリコンタイプに比べ、単位面積当たりの発電量は9%アップ、熱の影響を受けにくいので高温時の出力低下が少ないとのことです(モジュール温度70℃の場合で、同社・シリコンタイプに比べて8%出力低下を抑制)。1482×985×35mmサイズで250Wの出力を達成しており、モジュール変換効率は17.1%となっています。
◆ソーラーフロンティアは、同社が開発したCIS系薄膜太陽電池モジュールの施工法「SmaCIS(スマシス)」のデモンストレーションを行ないました。この施工法は屋根の形に合わせて、従来の枚数より多くのモジュールを搭載することができ、施工時間も約20%短縮、仕上げ高さを抑えるとともに、屋根に隙間なく取り付けることでスマートな外観を実現するというものです。CIS系薄膜太陽電池の変換効率については、30平方cmのサブモジュールにおいて19.2%を達成、約0.5平方cmのセル変換効率では22.3%を達成したとアピールしていました。
この取材中、幾つかのメーカーから信頼性を重視する観点からも国内生産にこだわるという声を聞きました。低価格化という面では厳しい選択だとは思いますが、その反面頼もしくもあり、陰ながら応援したいと感じられました。
編集顧問:川尻多加志