最終章:ユビキタス・パワーレーザーが切り開く未来社会

 x月刊オプトロニクスや単行本の編集に携わって31年、この度オプトロニクス社を退職することとなりました。特集、連載、単行本、セミナー等の企画やご執筆などでお世話になった方々、読者の皆様、長い間、本当に有難うございました。本ブログも、私の担当は今回で最後となります。皆様方のご健勝とご活躍、光エレクトロニクスの発展を心よりお祈り申し上げております。

 さて、ImPACTプログラム「ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現」の「超小型高出力パルスレーザー 第3回研究会」が7月の末、TKP東京駅大手町カンファレンスセンターで開催されました(主催は内閣府と科学技術振興機構)。

 「ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現」プログラムではレーザー加速XFELの実証と並行して、超小型・高繰り返し・高出力パルスレーザーの開発が進められています。本プログラムでは、これらの課題を克服することでレーザー適用の妨げとなっている装置のサイズやスループットの問題を解決、製造現場や診断技術といった幅広い分野へ適用することで、産業および社会に革新を起こすことを目標としています。

会場風景 プログラム終了まで残り1年半となったこの時期に行なわれた今回の研究会では、掌サイズの高出力パルスレーザーとテーブルトップ機の2種類の超小型高出力パルスレーザーのこれまでの開発成果や今後の予定が紹介されるとともに、製品化に向けた取り組みや様々な分野への応用展開に向けた取り組み事例が紹介されました。

 参加申し込み人数は、実に157名に上ったそうです。中でも産業界からの申し込みは124名、この数字は本テーマに対する産業界の注目と期待の高さを示していると言えるでしょう。

佐野雄二プログラムマネージャー 当日の研究会は、ImPACT・プログラムマネージャーの佐野雄二氏による挨拶で幕を開け、続いて内閣府のImPACT担当室参事官の鈴木富男氏が登壇、ImPACTの意義を含め制度の概要を解説するとともに、参加者に対しは残りの1年半、引き続き研究会に参加していただき、一体となってプロジェクトを進めて行きたいと述べました。

 研究会は第1部、第2部、第3部と三つに分けて進められましたが、午前中の第1部「超小型パワーレーザー・応用の開発」では、佐野氏が「ImPACT超小型パワーレーザー開発の概要」を紹介、佐野氏の講演の後に紹介される二つの超小型パワーレーザー(ポテンシャルユーザー向け掌サイズ高出力パルスレーザーと既存ユーザー向けテーブルトップ機)の研究開発の現状と今後の計画、製品化と応用開発の取り組みについて概説する一方、JSTやNEDOにおける同様テーマのプロジェクトとも情報交換を密にして連携して行きたいと述べました。
 佐野氏は最後に、研究会をレーザーの製品化(シーズ)と応用(ニーズ)のマッチングの場として活用して、競争と協調により競争力の高い技術・製品を低価格で提供して行きたいと講演を締め括りました。

 続く浜松ホトニクス・副センター長の川嶋利幸氏は「高出力小型パワーレーザーの開発」の中で、同社が開発したテーブルトップ機を紹介、独自技術を用いた半導体レーザーによって従来の放電ランプ励起(~1%)に比べ効率を10倍以上向上させたと述べ、このレーザーを励起用として用いたNd-YAGセラミックレーザーにおいて出力目標の1.01J/パルス×300Hz(303W)を達成したと報告しました。発振波長は1064nm、パルス幅34ns、装置サイズは1.2×2.4mとのことです。
 同社では今後、半導体レーザーをさらに高性能化することで増幅器の小型化を図るとともに、噴流冷却から背面水冷にすることで冷却装置の負荷を低減させ、高出力・高繰り返し用にアップグレードする計画。製品化に際しては、態勢が整えば4か月程度で納入したいと述べ、価格も4,000~5,000万円を目標にしたいとのことでした。
 
 分子科学研究所・准教授の平等拓範氏は「マイクロチップレーザーの開発」の中で、応用分野の進展を考えた場合にはマイクロチップレーザーの高エネルギー化、高繰り返し化、波長域拡大化が必要と述べました。そして、その実現のために複数のレーザー利得媒質とヒートシンクを重ね合わせたDFC(分布面冷却)構造の小型集積レーザーを開発したことを紹介、さらにダメージに強く安定で何処にでもある水晶を接合した48積層QPM-水晶で第2高調波を(8.07μJ)発生させた実験成果も報告しました。
 平等氏は、DFC構造のモジュール化によって高強度・大出力レーザーを実現、その破壊的イノベーションでパラダイムシフトを起こしたいと述べるとともに、いつでも、どこでも、任意の波長が出せるギガワット・テラワットクラスのユビキタス・パワーレーザーが実現できれば、表面・材質改善や点火・燃焼、検査、計測、分析・イメージング、痣取り治療など、幅広い分野での応用が期待できると述べました。

 午前中第1部の最後の講演者、浜松工業技術支援センター・上席研究員の鷺坂芳弘氏は「浜松工業技術支援センターの紹介とレーザー試用プラットフォーム」を講演。同センターの光科は全国の公設試で唯一の光専門の部署で、その業務はレーザー加工と光計測に特化しているとのことです。光科はレーザー加工の技術支援事業や、光産業創成大学院大学が主催するレーザー中核人材育成事業の内、レーザー加工機を用いた実習を担当しているそうです。
 講演では、プラスチックのレーザー染色装置や透明プラスチックのレーザー溶着装置など、具体的な研究開発事例も紹介されました。ImPACT終了後のマイクロチップレーザーの応用研究は、同センターのレーザー試用プラットフォームで進められ、マイクロチップレーザーの問題点や要望を収集して商品仕様にフィードバックしたり、マイクロチップレーザーの用途開発を企業への支援を含めて行なう計画です。

 午後に入っての第2部は招待講演で、「超小型パワーレーザー関連技術・製品」を切り口として、東海大学・准教授の河野太郎氏が「皮膚科・形成外科領域におけるピコ秒レーザーの有用性」を紹介、オキサイド・代表取締役社長の古川保典氏が「波長変換用非線形結晶及びUVレーザーの製品開発状況」、リコー・インダストリアルソリューションズ室長の鈴圡剛氏が「面発光半導体レーザー(VCSEL)の開発状況」、三菱電機・技師長の平野嘉仁氏が「三菱電機のレーザー開発とその応用」、東京大学・准教授の小林洋平氏がNEDOの「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトを紹介しました。小林氏は「なぜ物は切れるのか?」と根源的な疑問を提示し、「そこで何が起こっているのか、本当のところは分かっていない」として、「物が破壊されるという物理にチャレンジすべきだ」と述べていました。

 休憩を挟んでの第3部は、超小型パワーレーザー製品化・応用システム化に関する公募参画機関の実施内容の紹介となりました。パナソニックプロダクションエンジニアリング・主任技師の永田毅氏が「μCHIP及び、μCHIPレーザの開発」、オプトクエスト・部長の多久島裕一氏が「スケーラビリティに配慮した高出力マイクロチップレーザーの製品化」、ニデックの足立宗之氏が「高精度・高安定・高機能な眼科手術装置を目指したマイクロチップレーザー」、大阪大学・教授の浅井知氏が「先進的スマート溶接システムの開発」、ユニタック・副社長の高橋一哲氏が「超小型皮膚疾患用レーザー治療器の開発及び実証評価」、東芝・技監の岡田直忠氏が「リチウムイオン電池向けレーザクリーニング」を紹介しました。そして最後、IHIエアロスペース・主任の松浦芳樹氏が、アイデア提案として「宇宙機用液体燃料エンジンのレーザー点火システムの実現」の講演を行ないました。

 各講演の後、国立高等専門学校機構・特命教授の柴田公博氏が今回の研究会の講評を述べて、研究会は閉幕。柴田氏は、自動車車体のレーザー加工に携わってきた経験から、ビームの品質面や安定性を含めてレーザーを開発して欲しいと要望、品質保証技術についても生産技術者が安心して使えるものが求められると述べました。
 さらに、従来技術の単純な置き換えでは上手く行かないし、多少の原価低減では生産技術者は魅力を感じないと指摘、構造そのものが変わるような提案を設計技術者に訴え、製造と設計が手を携えて行けるような仕組みが重要と述べました。

 その後に開かれた意見交換会でも、参加者の間では活発な議論が交わされていました。研究開発のさらなる進展と、それによって多くの人が希望を持てる明るい未来社会が実現することを期待したいと思います。

編集顧問:川尻多加志

 

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トラウマを超えて

 「欧米に比べて、日本ではベンチャー企業が育ちにくい」。そう指摘されてからずいぶん時が経ちますが、この問題は未だ完全には克服されていないようです。
 もちろん、昔に比べればベンチャー企業を設立する人は増えています。しかし、これが「欧米に比べて」となると、正直まだまだなのかなと思う人は多いのではないでしょうか。
 原因としては、終身雇用制に慣れてしまった、教育、リスクを嫌う国民性、投資に対する考え方など、いろいろ挙げられていますが、正直これだという答えは出てきません。

森勇介教授 「原因は幼い頃のトラウマだ」。大阪大学大学院工学研究科教授の森勇介氏は、こう指摘します。森氏は、波長変換結晶であるCLBOやタンパク質の結晶育成技術を開発、これらの技術をもとに(株)創晶や(株)創晶超光など、四つのベンチャー企業を設立してきました。
 
 森氏は、自分自身の事を昔からプレッシャーに弱かったと振り返ります。高校の卓球部では、顧問の先生が来ると途端にシュートが入らなくなり、その事で怒られると余計にシュートが入らなくなってしまう。友人からは「おまえ、本当にプレッシャーに弱いな」と、よくからかわれたそうです。その性格は大人になっても変わりませんでした。

 森氏の父親は大変厳しい方で、幼い頃によく怒られたそうです。それも非常にきつい言葉で怒られ、父親が物凄く怖かったと述べています。顧問の先生は、その父親と性格がよく似ていたそうです。

 2001年の1月、森氏はサンフランシスコでの国際学会の帰りの機中、不思議な雰囲気を持つ初老の女性と偶然、隣の席になりました。しばらくして女性が日本人だと分かり、森氏は職業を訊ねました。女性は「自分は心理学者だ」と答えました。もともと心理学に興味があった森氏は、大阪に着くまでの間、ずっと質問をし続けたそうです。
 「なぜ、日本では産学連携やベンチャー起業が成功しにくいのか」、「なぜ、学級崩壊は起こるのか」といった質問もしました。女性は「日本の問題はトラウマが原因である」と答えました。森氏は「トラウマが原因だったらどうしようもないのでは?」と、さらに訊ねました。女性は答えました。「最近、トラウマを取る方法を開発した」。

 女性の名前は田中万里子氏、サンフランシスコ州立大学カウンセリング学科の名誉教授でした。そして、彼女の開発したトラウマを取るメンタルトレーニング法がPOMR(Process Oriented Memory Resolution)でした。森氏はその時、自分がプレッシャーに弱く自信が持てないのは、もしかしたらトラウマが原因ではないかと思ったそうです。

 5月、再来日した田中氏に阪大工学部で講演会とPOMRによるトラウマ除去のカウンセリングを実施してもらいました。予想に反し会場は満員、講演1時間に対し質疑応答は何と2時間近く続きました。森氏もカウンセリングを受けました。

 トラウマとは幼少期にものすごく怒られたり、笑われたりして恥ずかしい思いをした過去の嫌な経験を潜在意識が覚えている事が原因だと言われています。森氏は幼少期に真っ暗な小屋に閉じ込められた事を鮮明に覚えていました。
 発達心理学の専門家である田中氏は、暗闇は子供にとって最も恐怖を覚える場所であって、一番やってはいけない事だと指摘しました。自分が悪いからあんなに厳しい事をされたのだと思い込み、その厳しい事をした父親に逆らうと、もっと大変な事になるという事を潜在意識が覚えている。それこそがトラウマの原因だったのです。

 カウンセリング法は、その時の自分が駄目だから怒られたのだという思い込みを、イメージの中で「そうではない」と修正するものでした。田中氏は「今のあなたが、泣いている過去のあなたを助けてあげなさい」と指示しました。
 「あなたが怒られたのは、あなたがものすごい悪い事をしたからではなく、たまたま父親が言い過ぎただけだよ」と癒してあげる作業を続けていく内に、小さい頃の自分は少しずつ笑顔になっていきました。そして、笑顔が最大になるまで作業を続け、さらに幾つかのステップを踏んで潜在意識を塗り替えていきました。
 
 最初はこんな事でトラウマが取れるのかという感想を持っていた森氏でしたが、後日奥さんが「トラウマが取れている」と驚いた時、その効果をはっきりと認識したそうです。
 
 こんな事を言ったら怒られたり、馬鹿にされるのではないかという不安は解消され、自分の思っている事を相手に、素直に伝える事ができるようになったそうです。
 相手の話している事も、相手の言い方が気に食わないからこれ以上は話したくないなど、怒りが先に出るような事もなくなり、素直に聞けるようになりました。
 自分にはできない、無理だという悲観的な考え方から、出来そうな予感が持てるようになり、前向きになれたと言います。
 起こった事は必然であるから後悔しないという気持ちにもなれ、倒産したらどうしようといったベンチャー起業にありがちな不安もなくなっていったそうです。

 森氏氏は、トラウマの解消がイノベーションの創出とベンチャー起業に繋がり、プロジェクトの活性化をもたらすと述べています。

 盲導犬の訓練はとても厳しいそうです。その訓練に耐えられるようにするため、生まれてからの1年間は子犬を溺愛してあげなければならないと言います。犬はそれによって自分が愛されているという安心感を得る事ができ、反対に暴力を振るわれたりすると、見捨られるという不安感が先行してしまい、盲導犬として上手く育ちません。
 森氏は指摘します。心の筋トレは心の骨折(トラウマ)を治してからだと。トラウマの解消はとても大切なのだと。

 森氏は「心理学的アプローチによるベンチャー企業創成」というプロジェクトを立ち上げ、大学の教員から企業のグループリーダー、医学部の先生、プロ野球選手やプログラファーに至るまで、多岐に渡る人達がこのカウンセリングを受けました。

 そして2013年、森氏は教職員を対象に心理カウンセリングを行なうベンチャー企業(株)創晶慶心を設立します。カウンセリングによって、研究室は和やかになり、予算申請も通るし、研究も楽しくなって、就活まで上手くいくといった実績を上げているそうです。

 森氏には人生を変えるもう一つの大きな出会いがありました。高野山大阿闍梨の中村公隆猊下との出会いです。中村公隆猊下は、廃仏毀釈の影響で長い間、廃寺となっていた鏑射寺を久邇宮朝融王殿下が戦後の日本復興を祈願して再建した際に住職に抜擢された方です。

 森氏は、中村公隆猊下から様々な教えを授かったと「大阪大学工学会誌テクノネット(2016年7月号)」に書いています。プロジェクトが上手くいかない時に相談したところ、中村公隆猊下は「リーダーの仕事で最も重要なことは味方を増やすこと」、「それには慈悲の心が本質となる」と教えてくれたそうです。
 その教えにより、森氏はプロジェクトの中でうまく機能しないメンバーをどう扱うか、プロジェクトから外すというのは一番簡単な選択肢だが、それはリーダーの度量が小さいことを示しているに過ぎないと思うようになりました。
 どのような人にも出来る事、出来ない事があり、その人に向いた仕事を与えるのがリーダーの仕事であり、そのためにはどのようなメンバーでも心から認めて、適材適所で頑張ってもらえるようにするというのが、慈悲の心ではないか、今ではそう思っているそうです。そして、その慈悲の心を発揮するには、トラウマの解消が不可欠だと実感しています。

 中村公隆猊下が行なってきた修行は、長期間の断食を行なうなど、まさに生死の境目を彷徨うような修行です。その事によって感性は研ぎ澄まされ、人間の個々の細胞は個体維持のために潜在能力を発揮するようになります。

 今の日本はあまりに安全・安心であるため、日本人は危機を察知する能力が衰えてしまったのではないか。森氏は危惧します。さらに、日本人は優秀で敏感であるがゆえに、気を遣いすぎて苦しんでいるのではないかとも指摘します。
 
 森氏は、「正しい」という字は「一旦止まると書く」が、正にトラウマを解消し、どのような場面でも「カチン」とならないで、「一旦止まれる(直ぐに冷静になれる)」慈悲の心に溢れた精神状態がリーダーの心得の出発点であると述べています。

 森氏は、今ではそう気付くきっかけを作ってくれたあの厳しかった父親に感謝しているそうです。

(株)創晶慶心の連絡先:info@sosho-ohshin.jp

※本稿は、6月に東京・神楽坂で開催された日本フォトニクス協議会での森氏の特別講演「心理学的アプローチによるプロジェクト活性化とイノベーション創出」と大阪大学工学会誌テクノネット(2016年7月号)をもとに纏めたものです。

編集顧問:川尻多加志

 

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管理・運営の時代を迎えた太陽光発電ビジネス

 4月に改正されたFIT(フィード・イン・タリフ)法では、電力買い取り価格の引き下げとともに認定の在り方が設備から事業計画へと変わり、かつそれが既存の認定案件へも適用されるなど、その内容は従来に比べ、より現実的なものになったようです。
 この改正FIT法によって9月30日までに提出しなければならなくなった事業計画の策定は「事業計画策定ガイドライン」に基づいて行なうもので、太陽光発電設備のO&M(運営・管理)が義務づけられたというところも、今回の改正の注目点と言えるでしょう。

 政治的なイデオロギーによって進められたのではないかと指摘する向きもある我が国の太陽光発電普及政策は、事業の開始時にではなく設備の認定時に電力の買い取り価格を決める「初めに普及ありき」というようなかたちで進められました。
 買い取り価格についても市場原理に基づいてではなく、正義の実現のためには高くても構わないという理念が優先され、決められたように思えてなりません。
 必然的に、太陽光発電ビジネスはバブルになりました。原発の稼働停止に伴う原油やLNGの輸入増加も加わって電気料金は上がり続け、結局そのしわ寄せは消費者に行くという結果ももたらしました。
 その後、政権交代による政策の見直しでようやく落ち着いた感もありますが、電気料金は今後さらに上がるという指摘もあり、これをどう収めるかという課題は残されたままです。
 
 そんな中、7月5日(水)から7日(金)の三日間、パシフィコ横浜において太陽光発電の総合イベント「PV Japan 2017」が開催されました。
 今回の会場で「おや?」と感じたのは、何社かの展示説明員の方が太陽光発電設備における事故について、特に隠すこともなく普通に話してくれたということでした。
 事故については、かつては質問をしてもなかなか答えてくれない、何かタブーのような雰囲気があるように思えたのですが、それが薄れ、これからは現実的で健全なビジネスを目指そうという姿勢が表れているように感じられました。
 背景には、やはり改正FIT法でのO&Mの義務化があるのではないでしょうか。実際、我が国には危険な造りの太陽光発電設備が多く、それは部材ではなく設計や施工などに起因するものが多いと指摘する人もいます。

 それでは、展示会で目についた企業の出展内容を幾つか紹介しましょう。もちろん、この他にもたくさんの企業が出展をしていたのですが、時間の関係で立ち寄ることができず、ここで紹介できなかったことをお断りしておきます。

(1)エクソル◆O&Mの義務化に対応するために、エクソルは「改正FIT法おまかせプラン」を打ち出していました。同社は、日本電気工業会と太陽光発電協会による「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」の作成にも参画。このプランは住宅から低圧、高圧、特高設備まで、同社のワンストップソリューションの強みを活かした総合メンテナンスサービスと位置付けられています。他社が設計・施工した既設の発電設備も対応するとのことです。ガイドラインに準拠した通常プランに加え、オプションとしてモジュールの洗浄、除草、駆けつけサポート、設備内容や注意喚起の標識設置、低圧用や高圧用フェンスの設置なども行なうとしています。

(2)京セラ◆京セラは、最大出力280Wの太陽電池モジュールを参考出展しました(W1662×L990×H46mm、セル実効変換効率19.1%、モジュール変換効率17.0%)。同社開発の「5本バスバー電極構造」を採用しており、これはバスバーを細線化することで受光面積を広げるとともに、その本数を増やすことでバスバー間の距離を短くして電極の電気抵抗を低減するというもの。この他、セル裏面に表面改質層を作って、従来失われていたマイナス電荷量を低減することで効率を上げ発電量をアップさせる新技術「ForZ」も紹介していました。

(3)三菱電機◆三菱電機は、250Wの住宅用高出力太陽電池モジュールを出展。屋根などで発電した電気を集約する端子ボックスには高い電圧がかかるため、水分の侵入などにより大きなトラブルが発生する場合がありますが、このモジュールには難燃性・耐久性に優れた同社独自の4層構造端子ボックスが採用されています。電力変換効率98%、MPPT(最大電力点追従機能)99.8%の住宅用パワーコンディショナーとの組み合わせによって、日射量の少ない朝夕や曇りの日でも高い発電量を実現できるとのことです。
  
  
  
  
  
(4)パナソニック◆パナソニックは、アモルファスシリコン層とn型単結晶シリコン基板を組み合わせて電荷消失を抑える独自のヘテロ接合構造を採用した、お馴染みのHIT太陽電池モジュールを出展。HITは発電効率が下がる日中の高温時、一般的な太陽電池が10℃上がると出力が約5%下がるのに対し、2.9%しか下がらないとのことです。最大出力320Wタイプは、これまでの240Wタイプのサイズでその出力を実現したもので、19.1%というモジュール変換効率を達成、これにより少ない枚数でシステムを構築でき、BOS(Balance of System)コストの低減が可能になるとアピールしていました。この他、光の反射を和らげる、開発中の防眩タイプ太陽電池モジュールも参考出展していました。
  
  
(5)カネカ◆カネカは、同社が開発したGRANSOLAヘテロタイプの太陽電池を出展しました。ヘテロ接合という点ではパナソニックと同じですが、同社の方式は単結晶シリコンの両面をアモルファスシリコン層で挟んだ構造になっています。同社・単結晶シリコンタイプに比べ、単位面積当たりの発電量は9%アップ、熱の影響を受けにくいので高温時の出力低下が少ないとのことです(モジュール温度70℃の場合で、同社・シリコンタイプに比べて8%出力低下を抑制)。1482×985×35mmサイズで250Wの出力を達成しており、モジュール変換効率は17.1%となっています。
  
(6)ソーラーフロンティア◆ソーラーフロンティアは、同社が開発したCIS系薄膜太陽電池モジュールの施工法「SmaCIS(スマシス)」のデモンストレーションを行ないました。この施工法は屋根の形に合わせて、従来の枚数より多くのモジュールを搭載することができ、施工時間も約20%短縮、仕上げ高さを抑えるとともに、屋根に隙間なく取り付けることでスマートな外観を実現するというものです。CIS系薄膜太陽電池の変換効率については、30平方cmのサブモジュールにおいて19.2%を達成、約0.5平方cmのセル変換効率では22.3%を達成したとアピールしていました。
 
 この取材中、幾つかのメーカーから信頼性を重視する観点からも国内生産にこだわるという声を聞きました。低価格化という面では厳しい選択だとは思いますが、その反面頼もしくもあり、陰ながら応援したいと感じられました。

編集顧問:川尻多加志

 

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シリコンフォトニクスが越えるべき課題

 データ伝送量の爆破的増大によって、既存の技術ではデータセンターや光通信ネットワークシステムは近い将来、限界を迎えると言われています。そこにブレークスルーをもたらすテクノロジーとして、今シリコンフォトニクスに多くの注目が集まっています。

 シリコンフォトニクスの展望と課題をテーマに6月16日、第9回フォトニクス・イノベーションセミナーが、東京大学・駒場リサーチキャンパスの先端科学技術研究センターで開催されました。主催したのは、東京大学・ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構で、今回のプログラム・タイトルは「シリコンフォトニクスの進展と展望」。人々の関心の高さを物語るかのように、会場には多くの人が詰めかけました。

 ナノ量子情報科学技術分野における研究・開発を先導してきた同研究機構は、これまでにも人材育成や成果普及活動として、ナノ量子情報エレクトロニクスに関する大学院講義の他、フォトニクス・イノベーションセミナーやフォトニクス・イノベーション・ビジョンワークショップなどを開催してきました。中でも、今回9回目を迎えたフォトニクス・イノベーションセミナーは学生・社会人を対象としたものと位置付けられています。

 今回行なわれた講演は2本。1本が産業技術総合研究所・電子光技術研究部門シリコンフォトニクスグループ長の山田浩治氏による「ポストムーア技術としてのシリコンフォトニクス」、もう1本は東京大学・大学院工学系研究科電気系工学専攻・准教授の竹中充氏による「異種材料集積を用いたSiフォトニクス」でした。何れの講演でも、シリコンフォトニクスの越えるべき課題と克服の可能性を秘めた研究開発の方向性が示されました。

産総研・山田浩治氏

産総研・山田浩治氏

 山田氏は、情報処理・伝送システムの基本構成要素であるエレクトロニクスとフォトニクスの両方にポストムーア技術が必要と指摘します。続けて、エレクトロニクスにおいてはすでにモアムーア、モアザンムーア、新原理デバイス/アーキテクチャーの三つのアプローチによるポストムーア技術の開発が活発に進められており、これらの技術開発はフォトニクスにおけるポストムーア技術にも適用できるし、特に技術的にエレクトロニクスの流れを汲むシリコンフォトニクスは、ポストムーア技術の開発に即効性ある解を提供するだろうと述べました。
 一方で、山田氏はポストムーア技術としてのシリコンフォトニクスの適用は1回限りで限界を迎えると指摘します。その理由として、シリコンフォトニクスは現実離れした要求加工精度や導波路システムの縮小限界など、本質的に解決が困難な技術的課題を抱えていることを挙げ、シリコンフォトニクス自身がすでにポストムーア技術を必要としていると述べました。
 山田氏は、結局は材料を変えない限り破綻すると警鐘を鳴らし、変調器や受光器などを形成した後の工程において、加工精度が緩くて済むシリコン・ナイトライド系(SiN/SiON/SiOx)の材料を用い、かつ低温で導波路層を形成できるバックエンドフォトニクスやプラズモニクス・デバイスの有用性を示して、講演を締めくくりました。

東大・竹中充氏

東大・竹中充氏

 2本目の講演者、竹中氏はボトムアップからシリコンフォトニクスを捉え、シリコンフォトニクスで何ができるのかを考察。ゲルマニウムや化合物半導体、さらにはグラフェンなどの2次元材料といった異種材料を、ウエハボンディングやエピタキシャル成長を使って電子デバイスと光デバイスへ応用した最新の研究開発事例を紹介しました。
 竹中氏は、異種材料集積技術はシリコンフォトニクスにおいて必須であり、今後ますます重要になるとした上で、これまで不可能だった機能を実現したり、難しかったレベルの集積化も実用化されると述べます。そして、すでにゲルマニウム結晶成長技術の進展によって、ゲルマニウム受光器やFK光変調器なども商用化されており、ウエハボンディングを用いた、より高品質なゲルマニウム薄膜の集積化も可能だと指摘しました。
 さらに、ウエハボンディングによるⅢ-Ⅴ/シリコン・ハイブリッドプラットフォームに関しては、レーザーの一体集積の商用化が始まるなど、近年急速に進展しているとする一方、2次元材料については商用化は遠いものの、優れた物性を有していることから多くの可能性があるとして、今後の研究の進展に期待すると述べました。
 竹中氏は、異種材料だけを用いることで、シリコンフォトニクスでは実現できないようなビヨンドシリコンフォトニクスとも言うべき光電子集積プラットフォームも可能になると述べ、異種材料は電子デバイスにおいても高性能化が実現できると研究開発が進んでいることから「電子デバイスと光デバイスは友達になれる。お互いの世界をウォッチすることが大事だ」と、講演を纏めました。

 今回のセミナーで克服すべき課題が示されたシリコンフォトニクス。研究開発は次のフェーズに移っており、その進展から目が離せません。

編集顧問:川尻多加志

 

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デジタルサイネージに見る4K・8K高精細ディスプレイ

 6月に開催された「デジタルサイネージ ジャパン」では、4Kや8Kといった高精細ディスプレイが目を惹きました。ディスプレイをビジネスとして見た時、コンシューマー向けではどうしても価格を安くしなければならないという条件が強く求められ、消耗戦的な価格競争に巻き込まれがちです。これに対し、デジタルサイネージなどのビジネス向けでは、低価格であるという点の優先順位はそこまで高くはなく、付加価値を付けた商品で勝負ができるという側面を持っています。会場で各社がアピールしていた高精細ディスプレイのいくつかを紹介しましょう。

(1)シャープ◆シャープは、70V型の8Kモニターを展示しました。約3,300万画素(7,680×4,320画素)の高解像度を有し、8K放送以外にもデザイン現場や医療分野、美術館・博物館の展示演出など、幅広い分野で使用できます。業界初の8K解像度でのHDR規格にも対応しており、HDR規格で収録された広い輝度情報を画像処理エンジンによって忠実に再現。また、独自の「メガコントラスト技術」によってエリア毎にLEDのバックライト輝度を制御できるので、輝きを復元する部分では周囲より輝度を高め、夜景などの暗い部分では輝度を抑え引き締まった黒を表現できます。さらに、広色域技術「リッチカラーテクノロジー」によって色再現範囲を、4k・8k放送の色規格であるITU-R BT.2020比79%まで拡大することに成功、自然で豊かな発色を実現しました。同社はこの他にも、70V型のフルHD液晶パネルを縦4枚×横4枚繋げた、縦3,481mm×横6,174mm(280V型相当)の8K4Kパブリックビューイング用ディスプレイや業務用のレーザー光源短焦点プロジェクターも出展していました。

(2)ソニー◆ソニーは、65型の4K有機ELテレビを展示していました。優れた画像処理を実現する同社の4K高画質プロセッサー「X1 Extreme」を搭載するとともに、映像そのものから音が聞こえるという体験を実現するために、画面自体を振動させて音を出す「アコースティック サーフェイス」を搭載。さらに、ベゼルを極限までスリムにして、スタンドやスピーカーも正面からは見えない構造にすることによって、映像だけが浮かんでいるような没入感を実現しています。

(3)BOE◆BOEは、液晶ディスプレイを縦4枚×横4枚繋げた8Kディスプレイや、4K55型3D医療用ディスプレイシステムなどを展示。医療用ディスプレイは、サイドバイサイド方式やラインバイライン方式などの3Dメガネに対応、医療を始めとした産業用システムと接続性の良いSDI入力の他、多様な入力インターフェースを搭載しています。この他、IoTインタラクティブ透明液晶ディスプレイに人感センサーとカメラを搭載した業務用冷凍冷蔵庫とその映像・配信システムも出展していました。

(4)パナソニック◆パナソニックは、3,000lmを超える超高輝度に対応した3チップDLP方式のレーザープロジェクターを展示していました。独自の映像技術「SOLID SHINEレーザー」を採用した3チップDLP方式に、高速画素4倍密化技術「クワッドピクセルドライブ」を搭載。これは、画素を水平方向と垂直方向に高速でシフトさせて4倍密化する「2軸画素シフト光学技術」と、最大5,120×3,200画素(16:10)の高解像に対応する信号処理技術「リアルモーションプロセッサー」によって投射画面の解像度を向上させるというもの。これにより4Kを超える高解像度「4K+」映像を実現しました。

(5)ピーディーシー◆ピーディーシーは、世界初の8K・STB配信システムを展示しました。8K・HEVC(次世代映像圧縮技術)リアルタイムデコードLSIを搭載、日本の放送サービスで採用されたエンコード規格ITU-R BT.2073に対応しており、8K@60Pのビデオデコードを実現します。データ転送にはLANもしくはUSBメディアが利用でき、インターフェイスはPCIe2.0(Gen2)とHDMI2.0TXを実装、8K出力(4チャンネルのHDMI2.0出力)を用いるので、4Kモニターの組み合わせでも8Kを実現できます。

編集顧問:川尻多加志

 

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無線給電に光の出番はあるか

 通信分野ではスマホや無線LANなどの普及によって、ケーブルで配線するという場面が減って来ました。一方、電力は未だケーブルで繋ぐのが一般的です。しかし、最近ではSuicaなどのICカードやスマホにおいて無線給電が実用化され、当たり前のように使われています。むしろ当たり前すぎて、無線給電が使われているなんて、知らない人の方が多いのではないでしょうか。
 ただし、電気自動車(EV)などへの大電力の給電については、未だ太いケーブルに頼っているのが現状です。ところがそれを無線で、しかも走りながらでも行なってしまおうというアプローチが提案されていて注目を集めています。通信に加え、最後に残された有線とも言うべき電力も無線で自在に繋ぐことができれば、これまでとは全く違う新しい社会が実現できるのではないでしょうか。

参加者は優に180名超え

参加者は優に180名超え

 無線給電の領域では現状、電磁誘導やマイクロ波などを利用した方式が主流となっています。では、その無線給電の世界に光技術はどのように係わることができるのか? このチャレジャブルなテーマを掲げた研究会が、6月13日(火)東京工業大学・蔵前会館くらまえホールで開催されました。
 主催したのは応用物理学会・微小光学研究会。144回目を迎える今回の微小光学研究会のタイトルはズバリ「無線給電に光の出番はあるか」。この刺激的なテーマに興味を持つ人は非常に多く、参加者は優に180名を超えました。

 電磁誘導やマイクロ波などに光無線給電が加わることで、無線給電の適用範囲はさらに拡がると期待されています。今回のプログラムは以下の通り、ざっと見て前半が研究開発の進む無線給電技術の経緯・動向について、後半が光を用いた無線給電で、光の出番を模索するといった構成になっていました。

・開会のあいさつ:中島啓幾氏(早大)
・無線化社会を拡げる光無線給電:宮本智之氏(東工大)
・無線給電特許へ光の出番:横森清氏(JST)
・特別講演 宇宙太陽光発電とワイヤレス給電:松本紘氏(理研)
・小形機器向けMHz帯磁界結合ワイヤレス給電技術:細谷達也氏(村田製作所)
・EV用ワイヤレス電力伝送技術の最新動向:高橋俊輔氏(早大)
・KTN結晶を用いた光ビームスキャナーとその光無線給電応用の可能性:藤浦和夫氏(NTT-AT)
・光無線給電用の太陽電池には何が必要か:宮島晋介氏(東工大)
・太陽光励起レーザー/単色光型太陽電池結合発電と自動車へのレーザー給電の可能性:伊藤博氏(名大)
・光無線給電によるナノレーザーとバイオセンサ応用:馬場俊彦氏(横浜国大)
・宇宙太陽光発電におけるレーザー無線電力伝送技術:鈴木拓明氏(JAXA)
・閉会の挨拶:横森清氏(JST)

 丸一日かけた講演すべてをここで紹介するとかなりの長文になってしまいますので、私の独断と偏見で印象に残った講演を二つだけ紹介することをお許し願いたいと思います。

(1)東工大・宮本智之氏

東工大・宮本智之氏

 今回の企画は、東工大の宮本氏が中心になってコーディネイトされたもの。その宮本氏は、トップバッターとして全体を俯瞰する講演を行ないました。宮本氏は、無線化社会への期待と無線給電の現状を述べるとともに、光無線給電の優位性と技術課題を考察、その事例を紹介しながら、光無線給電は新しいサービスや新しい産業を創出するポテンシャルを有していると述べました。
 しかしながら課題もあります。光無線給電はサイズ・伝送距離に優位性はあるものの、レーザー光源や太陽電池のより一層の効率向上が必要であり、かつ安全対策も重要な課題の一つだと指摘しました。現実的には、技術要素はあるもののその取り組みは未だごく僅かだとのことです。今後、光無線給電と既存の方式を組み合わせて、新しい機器・サービス・インフラ開拓などにより真の無線社会の創出を期待すると抱負を述べました。

 特別講演を行なった理研の松本氏の講演内容は、宇宙太陽光発電(SPS)の必要性を文明論を絡めながら説く、大変スケールの大きなものとなりました。松本氏は、エネルギー資源や鉱山資源の残余年数と人口爆発に関するデータを示しながら、地球型文明と人類は危機に瀕していると指摘します。そして「我々は生き残れるのか」と問いかけます。
 解決策として、地球の50万倍もの資源と広大な空間を有する宇宙空間の利用、そのための宇宙開拓を提唱します。そして、当面の1000年は太陽系を開拓すべきだと述べました。ご自身は若い頃に「太陽系を食べたい」というちょっと変わったキャッチコピーを標榜していたそうですが、それを示しながら早急にSPSに取り組むべきだと述べていました。
 松本氏は、マイクロ波伝送を用いたSPS実現に向けた技術的課題を、1万トンに及ぶ宇宙システムと数10億個の素子が必要な宇宙空間に浮かぶ直径数kmの送電アンテナや地上の受電アンテナを如何に作るかだとしました。さらに、自身のマイクロ波伝送研究も振り返りながら、我が国の宇宙基本計画やエネルギー基本計画におけるSPSの位置付けが最近、若干後退しているのではないかとの印象も述べていました。
 松本氏は講演の最後で、人類の生き残りのためには欲望の暴走を抑えなければならないとして「科学技術」と「こころ・精神文化」の調和が必要だと警鐘を鳴らしました。そして、これからは統合の科学が必要であり、それには「日本的調和のこころ」と「東洋的共存の哲学」が重要になるとも述べました。
 さらには、21世紀の方向性は「単純から複雑へ」、「平衡から非平衡へ」、「要素からシステムへ」、「西洋から東洋へ」、「地球から太陽系へ」移っていくと指摘。最後に「未来は、予測するものではなく、自分たちで設計し、創るもの」であると強く述べ「百聞は一見に如かず」という諺に掛けて「百考は一践に如かず」という言葉で講演を締め括りました。

 前述の宮本氏は、光無線給電に関する人や情報の集まる場を準備し、社会への浸透とそれによる社会・経済の変革に向けた枠組み作りをサポートするため「光無線給電検討会」を立ち上げ、2016年1月の第1回以来、これまでに11回の検討会を開催するなど、積極的に活動を続けてきました。7月初旬にも次の検討会の開催を予定しているそうですので、興味のある方は、事務局 tmiyamot@pi.titech.ac.jp まで、ぜひ連絡をしてみては如何でしょう。

 会場で配布された微小光学研究会機関誌の巻頭言の文末には、こう記されていました。「今は普通にある機器から伸びる『尻尾』を、「これはいったいなんだ」と若者に思われる世の中の到来を楽しみにしたい」と。

 次回・微小光学研究会は9月26日(火)、東京大学・先端科学技術研究センターにおいて「今が旬のスマートセンシング・イメージング(仮)」をテーマに開催される予定です。

編集顧問:川尻多加志

 

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レーザーで綺麗に

DSC05257 先日、東京ビッグサイトで開催された「2017 防災産業展 in 東京」で、ちょっと面白いものを見つけました。レーザークリーニング装置のヘッド部分で、展示されていたのは鈴与建設とフォーカス・エンジニアの共同ブース。装置を開発したのはトヨコーという会社で、フォーカス・エンジニアはトヨコーと鈴与建設が共同出資して設立したレーザークリーニング工法による構造物の施工事業を行なう会社です。
 
 塗膜や錆の除去には、これまで対象物にケイ素を吹きつけてクリーニングを行なうブラスト処理や剥離剤による方法が用いられてきました。しかしながら、これらの方法では産業廃棄物が出て処理コストが高額になってしまったり、複雑に入り組んだL字部分やボルトの付け根等では処理に時間がかかってしまうという問題がありました。また、ブラスト処理を行なうと塗膜や錆と同時に下地まで削り取ってしまうので、対象物が傷ついてしまうという問題もありました。

 これに対しレーザークリーニング工法は、レーザー光を直接照射するため、入り組んだ部分に対してもスムーズに短時間で作業ができ、塗膜や錆を溶融・蒸散させながら微粒子を集塵機に吸い込むことで産業廃棄物の発生量を抑え、処理コストを大幅に削減できます。また、瞬時に高温・高圧で一気に除去するので下地を傷めることがなく、除去後に形成される安定酸化被膜による防錆効果で対象物を延命させることもできます。工場内の大型設備の錆取りなど、耐用年数が気になる設備のクリーニングに適しているというわけです。

 同社のレーザークリーニング装置「CoolLaser」はハンディタイプで、ファイバーレーザーの光をヘッド部分で特殊なプリズムに透過・屈折させ、高速で回転させることで円形に照射するという仕組みになっています。これをスライドさせることで面照射を可能にしました。反力が発生しないので女性でも作業ができ、ロボットを使った作業なども行ないやすくなるということです。廃棄物はブラスト処理に比べ100分の1以下とのことです。

 同社は、平成20年から光産業創成大学院大学の藤田和久教授と沖原伸一朗准教授との共同研究をスタートさせたそうです。
 現状ではCWレーザーを用いていますが今後、パルスレーザーを利用して熱ひずみを減らし、版金など薄物への対応や、周波数を変えてカーボン素材表面にダメージを与えないレーザー除去、水中透過率の高いレーザーを用いた海洋土木の表面クリーニングや造船への適用など、その可能性を拡げて行きたいとしています。 
 また、浜岡原子力発電所1号機と2号機の廃炉に向けた二次廃棄物、遠隔操作、処理速度、粉塵飛散防止に関する技術開発を、中部電力、光産業創成大学院大学と共同で進めていて今後、装置の具体化に向け開発を行なっていく計画もあるそうです。

 実用化に関する今後の課題は、レーザー施工現場を念頭に置いた装置や作業面での安全性の確立とのことです。膨大な費用がかかると言われる老朽化した日本のインフラへの適用など、レーザークリーニング技術の進展に注目したいと思います。

編集顧問:川尻多加志

 

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AI、IoTにフォトニクスは如何に貢献するのか

DSCN1048 新緑が目に眩しい5月22日(月)、東京大学・駒場リサーチキャンパスENEOSホールで、第3回フォトニクスイノベーション・ビジョンワークショップが開催されました(主催:東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構)。今回のテーマは「AI-IoT時代に向けたコンピューティング技術とフォトニクス」。いま一番ホットな話題となっている技術領域におけるエキスパートから、最新の研究トレンドとフォトニクスへの期待が語られました。
 
 ワークショップの趣旨説明に立ったのは、東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長の荒川泰彦氏。AI、IoT、ビッグデータは、現代の三種の神器とも言われていますが、その進展を支えるのはハードウェア。特にLSIの進歩が果たす役割には非常に大きなものがあります。しかしながら、その技術進歩の指標となっていたMooreの法則は、いま飽和状態に陥りつつあると言われています。このような状況だからこそ、光インターコネクションとそのデバイスに対する期待はますます大きくなっています。荒川教授は、超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発プロジェクトを紹介するとともに、この4月にそこから生まれた、5mm角IOコアを製造・販売する新会社「アイオーコア」についても紹介しました。

 講演トップバッターの国立情報学研究所・所長の喜連川優氏は、ビッグデータが拓く新たな社会価値の創造について述べました。全国の主要大学等を100Gbpsで結ぶ100GNET(SINET5)が昨年構築されましたが、喜連川所長はクラウドコンピューティングが主流となっている状況でトラフィックが急伸する中、クラウドへの接続が如何にスムーズに行なえるかは、国家としての重要課題だと説きました。また、海外の裁判において人間ではなく、ソフトウェアが6年の懲役刑を下したという事例を紹介、これには時代はそこまで来ているのかという印象を持たざるを得ませんでした。喜連川所長は、もはやビヨンドAIを考えるべきと述べ、日本の国土モニタリングの先進性も紹介、米国DOEの次の狙いにも注視すべきとして、クラウド内における通信の高速化は必須である故、通信にはいくらでも頑張ってほしいと、期待を述べていました。

 東京大学大学院工学系研究科・教授の松尾豊氏は、コンピューティング技術の進化とAIについて、特にディープラーニングを取り巻く状況について述べました。AIブームは1956年からの第1次ブーム、1980年代の第2次ブーム、そして2013年から今日までの第3次ブームと、3回のブームがあったそうで、現在では何ができて何ができないか、すでに固まっている状況とのこと。画像認識の世界においては、コンピューターは人間のエラー率5.1%を2015年2月には越えてしまい、最新の値では3.1%までに到達しているそうです。松尾教授は、カンブリア紀に生物が眼を獲得したことで進化が爆発的に進んだカンブリア爆発を例に、機械・ロボットにおいても眼を持ったことで同じ事象が起きていると指摘、視覚野としてのディープラーニングと網膜としてのイメージセンサーの組み合わせで、産業の自動化が実現できると述べていました。

 東京大学・情報基盤センター長の中村宏氏は、2016年度に同センターが導入したスーパーコンピューターOakforest-PACSとデータ解析・シミュレーションの融合を目指すスーパーコンピューターReedbushを紹介しました。Oakforest-PACSは理論性能25PFLOPS、Linpack性能13.5PFLOPSで、世界のコンピューターランキングTOP500で6位、国内では最高速の性能を誇っています。メニーコア型プロセッサーを搭載していて、汎用性を重視して柔軟な運用ができるそうです。HPIC(ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)の中核をなすもので、全国の主要9大学が使用する最先端共同HPC基盤施設となっているとのこと。ビッグデータの解析や人工知能といった新しい分野の要求を満たすことを目指しており、中村センター長は講演の中でバンド幅が重要と述べていました。

 東京大学生産技術研究所・教授の平本俊郎氏は、Mooreの法則以降のLSIのトレンドとIoTについて述べました。Mooreの法則やスケーリング則をベースとしたLSIデバイスの指数関数的な進歩は曲がり角を迎えており、半導体技術ロードマップ(ITRS)も一定の役割を終えたと言われています。Ai-IoT時代のLSIに要求される機能は、従来の単なる高速性ではなく、各種センシング技術、脳を模した情報処理、数桁の電力低減などであり、その多くは従来技術の延長では達成は不可能といいます。平本教授は、今年の3月、10nmにおいて三つの新技術を開発、5nmは見えたとしてMooreの法則は続くと主張するインテルの考え方を分析するとともに、日本メーカーにはインテルとは違ったビジネスモデルが必要と指摘。28nm、200mmウェハを用いた安価なデバイスが一つの解ではないかと指摘しました。さらに、LSIの進展にはこれまで通り、新しい技術の継続的導入が必要と述べ、電源電圧の低消費電力化が重要であり、特にスタンバイパワーの低減に関しては不揮発性メモリーが有力だと指摘しました。

 光電子融合基盤技術研究所(PETRA)・主幹研究員の森戸健氏は、コンピューター性能の向上に向けたフォトニクス技術について、ネットワーク技術、特に光インターコネクト技術によるデータ伝送の高速・大容量化は不可欠とした上で、同研究所におけるシリコンフォトニクスと高密度実装を基盤としたプロセッサー間光インターコネクト技術の開発の現状と動向を報告しました。森戸主幹研究員は、開発によって光トランシーバーに対する低電力化・小型化に対する要望に応えたいと述べるとともに、今後はCバンドを使ったWDM技術によって大容量化を実現したいとして、低レイテンシーで波長ルーティング機能を併せ持ったデバイスの実現を目指すとしました。光電子集積インターポーザーを第3期の基盤技術として開発する計画とのことです。

 講演終了後、東京大学生産技術研究所・准教授の岩本敏氏の司会のもと、講演者全員によるパネルディスカッションが行なわれました。時には耳が痛い意見も出ていましたが、それはそれで真摯な議論が交わされたという証しとも言えるでしょう。個人的にですが、印象に残ったいくつかの発言を取材メモから紹介します。

・ミシュランで星を獲得している店が日本には多い。調理ロボットとメニュー配信ビジネスによって、日本は食のプラットフォームを獲得できる。
・日本企業は受託生産が出来なかったし、設計するものが日本からなくなってしまった。そういう状況で日本企業は模索している。
・日本企業から寄せられる質問は質が低い。それに比べ海外企業は戦略的であり、お金もかけている。アプリケーションも見ていて、レベルの高い戦いをしている。
・設計者から攻めるべきで、設計者が認めればデバイスも動く。
・産業の全体像を掴んでおくべきで、どこかにチャンスはあるはず。どこかのレイアーを獲ればひっくり返すことができる。
・協業する時に一番苦労するのは日本企業、グローバルな方が楽だ。
・問題意識を共有する場がない。
・あらゆる場で光は沸騰している。

 PETRA・専務理事の田原修一氏による閉会挨拶の後、会場を移して行なわれた懇談会でも、講師の方々を交えた活発な議論が交わされていました。

 ニーズ側の状況を把握していないシーズ研究は、ともすれば独り善がりになってしまうと良く言われます。その意味からも、ニーズとシーズ双方が議論できる今回のようなシンポジウムは大切で、今後も継続的に開催してほしいと思いました。さらに、議論をシンポジウムという場だけで終わらせるのではなく、例えば定期的な個別な場で、より具体的に議論を擦り合わせ、今後の研究に役立ててもらいたいなどと思う次第です。

編集顧問:川尻多加志

 

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光メモリの生きる道

 5月10日から12日までの3日間、東京ビッグサイトで「データストレージ EXPO」が開催されました。この展示会は「Japan IT Week 春 2017」を構成する複数の展示会の内の一つで、規模はそれほど大きくないのですが、当然光ディスクも出展されているだろうと、行ってきました。
 光ディスクは、パソコンやスマホなどに使われているハードディスクや半導体メモリの影に隠れて、最近ではあまり目立たない存在になっているようです。個人的には少し寂しい感があるのですが、一方でその長期保存性が買われて、データセンターなどにおいて、普段あまりアクセスしないコールドデータを保存したり、放送局などのアーカイブ用に結構使われています。会場を歩いて見つけた光ディスク・システムを紹介します。

ソニー ソニーのオプティカルディスク・アーカイブは、堅牢性が高い複数枚の業務用光ディスクを格納したカートリッジと、これを制御する高速ドライブからなる光ディスクストレージシステムです。2012年の発表以来、放送・業務用映像アーカイブを中心に、金融機関、教育・研究機関などに採用されているそうです。
 ディスクには、パナソニックと共同開発した業務用次世代光ディスク規格「アーカイバル・ディスク」を採用しています。その進化は現在第2世代に入っていて、両面合計6層構造とランド&グルーブ方式による高密度化で、1枚当たり300GBの光ディスクを11枚を収容してカートリッジ1枚で3.3TBという大容量化を実現しました。
 高速化については、8チャンネル光学ドライブを搭載したユニットを新たに開発。これは、表裏4個ずつ合計8個のレーザーヘッドでディスクの両面を同時に読み書きするというもので、読み出し転送速度2Gbps、書き込み転送速度1Gbpsを実現しています。ちなみに「アーカイバル・ディスク」の第3世代では容量が5.5TB、読み出し転送速度3Gbps、書き込み転送速度は1.5Gbpsになるそうです。
 長期保存性についても、第1世代が50年以上だったものが、第2世代では100年以上に伸びています。ライブラリーの拡張性については、カートリッジを30巻搭載する99TBタイプから535巻を搭載する1.7PBタイプまで、柔軟にシステムの拡張ができるとのことです。無通電でカートリッジを管理できるので、1.7PBのストレージをわずか700W程度の消費電力によって管理でき、大幅なトータルコスト削減を実現できるということです。
 同社では、ロボットを使ったさらに大規模な光ディスクライブラリーシステム「EVERSPAN」の技術紹介も行なっていて、光ディスクに注力する姿をアピールしていました。

三菱ケミカルメディア 三菱ケミカルメディアは、パイオニアと共同でアーカイブ用光ディスクと光ディスクライブラリーを出展しました。両社は、光ディスクアーカイブシステムを推進するために2012年、推進団体「OPARG」を設立しています。
 光ディスクの開発・製造を担当する三菱ケミカルメディアの業務用ブルレイディスク(BD)は、第三者機関であるADTC(アーカイヴディスクテストセンター)によってBD-Rの100GBモデルで推定寿命200年以上という評価を得たとしています。耐久性についても、1週間の海水浸漬試験でデータ再生が可能であることを確認しているそうです。一方のパイオニアが開発した光ディスクアーカイブシステムは、この光ディスクとRAID(安価で低容量なハードディスクを複数使った補助ストレージ装置)を組み合わせたものとなっています。

ユニテックス この他、ユニテックスはLTO(Linear Tape Open:コンピューター用磁気テープのオープン規格)装置を展示する傍ら、CD/DVDディスクパブリッシャーも出展していました。ヘッドを変えることでBDも使用できるというもので、データの書き込みからレーベル印刷までを100~200枚連続高速処理ができるそうです。
 
 

 音楽や動画などをパッケージメディアで楽しむ人は、以前よりだいぶ少なくなりました。その結果、光ディスクはメモリーにおける主役の座を譲った感もありますが、一方で長期信頼性というような特長を活かした適用分野において、決して派手ではありませんが、とても重要な役割を果たしています。

編集顧問:川尻多加志

 

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光の日

 3月8日は「光の日」ですが、その日がなぜ「光の日」になったのか、由来をご存知でしょうか? 答えは、光の速度が3×10の8乗m/sで、その数字の中から「3」と「8」をとって「光の日」としたそうです。制定したのは日本学術振興会・光エレクトロニクス第130委員会(学振130委員会)で、制定した2007年以来いろいろな活動を行なってきたということです。
 今年の「光の日」には、同委員会と日本光学会、レーザー学会、応用物理学会フォトニクス分科会の主催によって、東京・茗荷谷の筑波大学東京キャンパスで第1回の「光の日」合同シンポジウムも開催されました。
 
 光は医療やエネルギー、情報、通信、一次産業、天文、建築等に関わるあらゆる科学技術に応用され、人類の幸福、芸術、文化などの発展に貢献してきました。そして、今後ますますの進展が期待されています。
 まだ記憶に新しい2015年の国際光年では、内外で様々なイベントが催されましたが、このシンポジウム、国際光年終了後も継続して振興を図ろうと、これら光関連学会が毎年3月8日に合同記念イベントを行なうことを提案して、開催に至ったそうです。

 シンポジウムは、宮本智之氏(東京工業大学・准教授)の「開会の辞」で始まり、小林駿介氏(山口東京理科大学・名誉教授)の「『光の日』制定について:フォトンの不思議と恩恵」、中井直正氏(筑波大学・教授)の「南極で切り開く天文学-南極望遠鏡計画-」、美濃島薫氏(電気通信大学・教授)の「光コムによる光波の超精密制御とその応用」、石川哲也氏(理化学研究所・放射光科学総合研究センター長)の「X線自由電子レーザー(XFEL)施設『SACLA(さくら)』」、河田聡氏(大阪大学・教授)の「光の顕微鏡:収差と波長の壁を超えて」、荒川泰彦氏(東京大学・教授)の「量子ドットがもたらす光技術の新展開」、伊賀健一氏(東京工業大学・名誉教授)の「光の日、音の日:光エレクトロニクスの玉手箱より」と続き、神成文彦氏(慶應義塾大学・教授)の「閉会の辞」で幕を閉じました。講演終了後は、場所を茗渓会館に移して懇親会も開かれ、出席者全員で「光の日」をお祝いしました。

小林駿介 山口東京理科大学名誉教授

小林駿介 山口東京理科大学名誉教授

 「光の日」制定を提案した学振130委員会の当時の委員長、小林名誉教授は当時を振り返り、同委員会の45年間の研究活動記録CDの序文に記された制定趣旨説明文を紹介していました。そこには、こう記されていました。「ここで、われわれは、光の科学技術を研究している者として、われわれは光に感謝し、敬意をしめし、かつ親しみを込めて、3月8日を「光の日」とすることに決定しました。3月8日を「光の日」と選んだ理由は光の速さが真空中で3×10の8乗m/sであり、光は吸収されない限り休むことなく走り続けるからです」と。

 荒川教授によると、日本学術会議総合工学委員会ICO分科会ではメイマン氏がレーザー発振に成功したと言われる5月16日を「国際光デー」にすると決めたそうです。
 そうなると、国内と海外で「光の日」が二日あるということになりますが、あまり細かいこと言わないで、めでたい日が一年に二日もあるという感じで捉えて、どちらも大事にしていきたいと思いますね。

編集顧問:川尻多加志

 

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