6月に開催された「デジタルサイネージ ジャパン」では、4Kや8Kといった高精細ディスプレイが目を惹きました。ディスプレイをビジネスとして見た時、コンシューマー向けではどうしても価格を安くしなければならないという条件が強く求められ、消耗戦的な価格競争に巻き込まれがちです。これに対し、デジタルサイネージなどのビジネス向けでは、低価格であるという点の優先順位はそこまで高くはなく、付加価値を付けた商品で勝負ができるという側面を持っています。会場で各社がアピールしていた高精細ディスプレイのいくつかを紹介しましょう。
◆シャープは、70V型の8Kモニターを展示しました。約3,300万画素(7,680×4,320画素)の高解像度を有し、8K放送以外にもデザイン現場や医療分野、美術館・博物館の展示演出など、幅広い分野で使用できます。業界初の8K解像度でのHDR規格にも対応しており、HDR規格で収録された広い輝度情報を画像処理エンジンによって忠実に再現。また、独自の「メガコントラスト技術」によってエリア毎にLEDのバックライト輝度を制御できるので、輝きを復元する部分では周囲より輝度を高め、夜景などの暗い部分では輝度を抑え引き締まった黒を表現できます。さらに、広色域技術「リッチカラーテクノロジー」によって色再現範囲を、4k・8k放送の色規格であるITU-R BT.2020比79%まで拡大することに成功、自然で豊かな発色を実現しました。同社はこの他にも、70V型のフルHD液晶パネルを縦4枚×横4枚繋げた、縦3,481mm×横6,174mm(280V型相当)の8K4Kパブリックビューイング用ディスプレイや業務用のレーザー光源短焦点プロジェクターも出展していました。
◆ソニーは、65型の4K有機ELテレビを展示していました。優れた画像処理を実現する同社の4K高画質プロセッサー「X1 Extreme」を搭載するとともに、映像そのものから音が聞こえるという体験を実現するために、画面自体を振動させて音を出す「アコースティック サーフェイス」を搭載。さらに、ベゼルを極限までスリムにして、スタンドやスピーカーも正面からは見えない構造にすることによって、映像だけが浮かんでいるような没入感を実現しています。
◆BOEは、液晶ディスプレイを縦4枚×横4枚繋げた8Kディスプレイや、4K55型3D医療用ディスプレイシステムなどを展示。医療用ディスプレイは、サイドバイサイド方式やラインバイライン方式などの3Dメガネに対応、医療を始めとした産業用システムと接続性の良いSDI入力の他、多様な入力インターフェースを搭載しています。この他、IoTインタラクティブ透明液晶ディスプレイに人感センサーとカメラを搭載した業務用冷凍冷蔵庫とその映像・配信システムも出展していました。
◆パナソニックは、3,000lmを超える超高輝度に対応した3チップDLP方式のレーザープロジェクターを展示していました。独自の映像技術「SOLID SHINEレーザー」を採用した3チップDLP方式に、高速画素4倍密化技術「クワッドピクセルドライブ」を搭載。これは、画素を水平方向と垂直方向に高速でシフトさせて4倍密化する「2軸画素シフト光学技術」と、最大5,120×3,200画素(16:10)の高解像に対応する信号処理技術「リアルモーションプロセッサー」によって投射画面の解像度を向上させるというもの。これにより4Kを超える高解像度「4K+」映像を実現しました。
◆ピーディーシーは、世界初の8K・STB配信システムを展示しました。8K・HEVC(次世代映像圧縮技術)リアルタイムデコードLSIを搭載、日本の放送サービスで採用されたエンコード規格ITU-R BT.2073に対応しており、8K@60Pのビデオデコードを実現します。データ転送にはLANもしくはUSBメディアが利用でき、インターフェイスはPCIe2.0(Gen2)とHDMI2.0TXを実装、8K出力(4チャンネルのHDMI2.0出力)を用いるので、4Kモニターの組み合わせでも8Kを実現できます。
編集顧問:川尻多加志