編集長の今月のコメント

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編集長 川尻 多加志

新年,明けましておめでとうございます。新しい年が皆様方にとって良い年でありますよう,心よりお祈り申し上げます。
とはいうものの,米国のサブプライムローン破綻をきっかけに発生した国際金融危機は実体経済にも深刻な影響を与えていて,世界同時不況の先はまったく見えないというのが現状です。ですが,暗くなってばかりいても仕方ありません。こんな時だからこそ敢えて前向きに。そうでないと,負の連鎖をさらに加速させてしまいます。
テレビではやたら悲観論を煽り立て,世の中を嘆いたり憤慨したりしてますが,どうも何か勘違いしていて,我こそが正義なりと自己陶酔に浸っているのではないかと思うことがよくあります。誰かを糾弾するだけではなく,当事者になったと仮定して,ではどうしたら良いかということを,後々を含め責任持って発言して欲しいと思います。責任を取らなくて良い立場なら何とでも言えます。井戸端会議ならそれで許されますけど,自戒の念を込め,兎にも角にも「世の中が悪いのは自分以外の誰かのせい」では,なかなか良くならないと思うのであります。
ところで,国際教育到達度評価学会(本部オランダ)が4年に1回実施する小学4年と中学2年を対象にした国際数学・理科教育動向調査の結果発表によりますと,日本は小学4年が算数と理科で参加36か国・地域中4位,中学2年では48カ国・地域中,数学5位,理科3位という成績だったそうです。
この成績は,点数を含め前回2003年と同レベルということで「上位をキープ」,「学力低下に歯止めがかかった」という評価も聞かれますが,気になる点もあるようです。日本で算数・数学と理科の勉強が楽しいと答えたのが小学4年で7割と9割なのですが,これが中学2年になると4割と6割に減ってしまう。国際平均と比べると20から30ポイントも低いということです。
ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授は子供の頃,銭湯の帰りに何時も父親から「なぜ○○は起こるのか」といった科学・技術の話を聞かされて,理科を好きになったそうです。好きになったら夢中になれます。如何に答えてあげるかを含め,子供たちの「なぜ」を大切にしてあげたいですね。
今月号の特集はフォトニックトランスポートの最新技術,特に光変復調技術の最新動向を紹介していただきました。特集の中でも取り上げられているコヒーレント光通信は1990年頃までは活発に研究が行なわれていたのですが,EDFA(エルビウム光ファイバ増幅器)の登場で一旦下火になってしまい,それがここ数年で復活してきたものです。私事で恐縮ですが,かつてコヒーレント光通信の特集を企画する祭,親切にご指導いただいた東京大学の故・大越孝敬教授のことが思い出され,とても感慨深いものがありました。
それから,先月号でもお知らせした新連載が2本スタートします。「光学技術者のための電磁場解析入門」と「光技術者のための基礎数学」です。また,新春特別企画として毎年恒例,我が国を代表する先端技術産業関連のシンクタンクの方々に,今年の光エレクトロニクス市場を占っていただきました。
ということで,本年も光情報てんこ盛りの月刊オプトロニクスを何卒よろしくお願い申し上げます。

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