編集長の今月のコメント(2009年2月)

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編集長 川尻 多加志

今月号の特集は,東京大学・ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長でいらっしゃる荒川泰彦教授にナノフォトニックデバイスの最新動向を切り口とした特集を企画していただきました。
特集総論で荒川教授が指摘されているように,ナノフォトニックデバイスはエネルギー効率が高く,地球環境に優しいグリーンIT社会実現の担い手として発展することが期待されている今注目のデバイスです。今回の特集では量子ドットレーザや量子カスケードレーザ,単一光子発生素子,さらにフォトニック結晶やナノプラズモニクス,スピントロニクスを用いた期待の光デバイスに関する最新の研究成果を,この分野のトップランナーの方々に紹介していただきました。
なお,たまたま偶然なのですが,連載「21世紀を切り開く機能性単結晶の基礎と応用」でも今月号は「フォトニック結晶ナノ共振器を利用した光と物質の相互作用制御」を取り上げていますので,こちらも併せてお読みいただけたらと思います。
ノーテルが破産法の適用を申請して経営破綻しました。同社はITバブル時代には時価総額が2,500億ドルを超え,市場でも高いシェアも誇っていました。ところがバブル崩壊後,800ドルを超えていた株価は何と4ドルにまで急落,95,000人もいた従業員はたったの2年で三分の一に減ってしまいました。
その後の経営は一進一退という感じだったそうですが2007年後半以降再び業績が悪化,さらにリーマン・ブラザース破綻に端を発した金融危機が追い討ちをかけ,資金調達が不可能となって経営破綻してしまったということです。企業が競争で淘汰されるのは仕方のないことですが,今回の金融危機の実体経済への深刻な影響を見ると,無秩序・無責任に暴走した金融資本主義の罪の深さをつくづく感じます。
米国のオバマ新政権が打ち出す大型財政出動の効果に期待する声も大きい一方で,他力本願ではなく我が国自らがどうするのかが重要なわけですが,政局優先で国会が機能不全に陥っている今の状況を見ていると,その危機意識の低さに不安を感じざるを得ません。
ところで,ウォン安,円高でいま韓国にブランド品などを買いに行く人が増えているそうです。日頃は格差社会を嘆いて派遣切りを糾弾するマスコミは,その一方でブランド品がお買い得と盛り上げ,現地で買い物に勤しむ日本人を面白可笑しく取り上げる。職を失った人との間に存在するこの格差をどう感じているのだろう。格差社会肯定派に寝返ったのでしょうか。よく分かりません。
日本で得たお金は日本国内で,それも国産品を買ったほうが景気対策や雇用対策になるのではないでしょうか。政府が打ち出した定額給付金など役に立たないと言いますが(そういう面もあるのかも知れませんが),ではどれだけの人が受け取りを拒否するのでしょう。興味深いところであります。

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