雪解け

シンポジウム会場

シンポジウム会場

光産業技術振興協会(光協会)と光電子融合基盤技術研究所の主催による「平成25年度光産業技術シンポジウム」が2月13日(木)、リーガロイヤルホテル東京にて開催されました。

開会挨拶をする光協会・小谷専務

開会挨拶をする光協会・小谷専務

33回目を迎える今回のテーマは「超情報化社会を切り拓く革新的フォトニクス」。
光協会の小谷泰久専務理事の開会挨拶に始まり、経済産業省(経産省)・商務情報政策局・情報通信機器課の荒井勝喜課長が来賓の挨拶を、その後は以下に記すように、前半が視覚を中心としたユーザインタフェースに関する研究開発トピックス、後半は光電子融合技術に関する二つのナショナルプロジェクトが紹介されました。

★代替現実システムとその可能性
理化学研究所・脳科学総合研究センター・適応知性研究チーム・藤井直敬リーダー

★将来の立体テレビ実現に向けた技術開発
NHK放送技術研究所・立体映像研究部・清水直樹研究主幹

★車載用ステレオカメラの開発(衝突しない自動車から自動運転へ)
東京工業大学・放射線総合センター・実吉敬二准教授

★光テクノロジーロードマップ-光ユーザインタフェース-
NTTメディアインテリジェンス研究所・画像メディアプロジェクト・高臨場映像通信技術G
高田英明主任研究員

★最先端研究開発支援プログラム
“フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術(PECST)開発”

光電子融合基盤技術研究所・中村隆宏研究統括部長(共同研究者)

★超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
-集積光デバイス開発を中心に-

光電子融合基盤技術研究所・光エレ実装プロジェクト・森戸健サブプロジェクトリーダー

後半で紹介された二つのナショナルプロジェクトのうち、PECSTは平成21年3月にスタートした内閣府・最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)の一つ。LSIチップ間の伝送容量ボトルネックを打破するため、チップ間伝送密度10Tbps/cm2を目標に、システム実証と革新的技術の探求の両輪で目標突破を目指したもので、プロジェクトは今年度で終了します。
これまでの代表的な成果としては、システム実証では、目標の3倍を越える世界最高の伝送密度30Tbps/cm2を今年度初めに達成。革新的技術においては、量子ドットレーザのシリコン基板上への貼り合わせ技術で、世界最高の動作温度110℃を実現するとともに、フォトニック結晶変調器では、素子長50μmで10Gbps動作と温度範囲100℃を超える温度無依存動作を世界で初めて実証するなど、東京大学・ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長の荒川泰彦教授が中心研究者としてプロジェクトを牽引して、FIRSTプログラムの中でも最高ランクの評価を受けています。

一方、平成24年9月に経済産業省・未来開拓研究プロジェクトの一つとしてスタートした超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発(平成25年度からNEDO委託)は、これも荒川教授をリーダーとして、6年と4年の2期合計10年間で総額約300億円を使って、光エレクトロニクス実装システム技術の基盤技術の確立を目的に、シリコンフォトニクスをコアとする光インターコネクトをサーバ筐体内のボードレベルからチップ間まで適用する事を目指すというものです。
光技術導入の段階に応じて、光I/Oコア、光I/O付きLSI基板、光電子集積インターポーザを順次開発していく計画で、PECSTのシリコンフォトニクスデバイスの開発成果を最大限活用して事業化を図るとともに、プロジェクトを共同実施する大学が大容量・低消費電力化を両立する革新的デバイス技術の研究開発を行なうとしています。

この手のプロジェクトが本当に真価を問われるのはこれから。成果の事業化が成功するかどうかにかかっていると思います。日本企業の世界における競争力の強化や国内雇用の創出、我が国の国力の拡充に貢献する事を心より願っています。

今回、光協会の小谷専務は、開会挨拶の中で「光産業は凍えている状態がしばらく続いたが、ようやく雪解けの時期を迎えた。円高から円安へ、そして需要不足と過少投資の改善によって、我慢の時代を乗り越えて、将来に向かって色々な活動を進めていく時期に来た」と述べていました。経産省・荒井課長も来賓挨拶で「アベノミクスの成果が次第に現れてきた」と述べていました。シンポジウムも、その後に開かれた懇親会も、確かに昨年よりも明るい雰囲気に包まれていたという印象でした。これが実感として感じられる事を期待したいと思います。

櫻井健二郎氏記念賞・受賞者の方々(右から渡邉氏、小舘氏、菊地氏、大城氏)

櫻井健二郎氏記念賞・受賞者の方々(右から渡邉氏、小舘氏、菊地氏、大城氏)

なお、シンポジウム終了後、第29回(2013年度)の櫻井健二郎氏記念賞が発表されました。
今回の受賞は以下の2グループ、4人の方々でした。おめでとうございました。

★位相相関フィルタを用いた光相関技術とそのシステム化の研究開発
電気通信大学・先端領域教育研究センター・渡邉恵理子特任助教と電気通信大学・小舘香椎子特任教授(日本女子大学名誉教授、Photonics System Solutions代表取締役)の両名

★レーザーの医療応用に関する学術・社会・産業界における貢献と普及活動
医療機器センター・菊地眞理事長(日本レーザー医学会理事長、ふくしま医療機器産業推進機構理事長)と日本医用レーザー研究所・大城俊夫所長(慶光会理事長)の両名

編集顧問:川尻多加志

 

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