自動車の高度化に貢献する光技術

自動運転技術が注目を集めています。そんな中、5月21日(水)から23日(金)の三日間、パシフィコ横浜において「人とくるまのテクノロジー展2014」が開催されました(主催は自動車技術会)。主催者発表によれば、来場者数は三日間で8万7,523人、出展社数491社、小間数は1,082小間でした。会場を歩いて、光技術関連で目についたものを、一部ですが紹介します。

会場内に設置されていた企画展示コーナー。自動運転技術関連では、日産自動車がそれぞれ5台のレーザスキャナとカメラを搭載して、周囲360度の状況を常時把握できる自動運転技術を搭載した「リーフ」を展示していました。

東大 石川・渡辺研の勝率100%じゃんけんロボット

東大 石川・渡辺研の勝率100%じゃんけんロボット

 ZMPはレーザセンサやステレオカメラを取り付けて自動運転や予防安全技術開発に活用できる自動運転車開発プラットフォームを、アイサンテクノロジーはGPS、カメラ、レーザスキャナなどを搭載して、走行するだけで道路周辺の3次元情報を記録できる高精度移動体計測車両「三菱モービルマッピングシステム」を展示していました。

大学関係では、金沢大学・菅沼研究室がオンボードセンサを用いた自立型自動運転の研究を紹介。
東京大学の石川・渡辺研究室は、勝率100%のじゃんけんロボットを展示していましたが、これは高速ビジョンと高速ロボットハンド、コントローラで構成されています。この素早い反応は自動運転への応用が期待できるでしょう。

MCパイオニアOLEDライティングのフルカラー有機EL照明とサンバイザー

MCパイオニアOLEDライティングのフルカラー有機EL照明とサンバイザー

MCパイオニアOLEDライティングは、発光層150nm、パネル厚8.7mmの超薄型と、14cm角という世界最大級の大きさ、さらに調光・調色機能も付けた世界初のフルカラー有機EL照明を出展。
この有機EL照明付きのサンバイザーも展示していました。

 
 
 

三菱レイヨンの光ファイバー織物

三菱レイヨンの光ファイバー織物


 
   
 
三菱レイヨンの内装照明用面発光デバイス(光ファイバー織物)は、布のような仕上がりになっていて、曲面にインストールできるというもの。間接照明の柔和な光なので快適な照明設定が可能との事です。面受光センシングや情報インプットのインターフェースとしての役割も期待できるとしています。
  
 

小糸製作所の配光可変型ヘッドランプ

小糸製作所の配光可変型ヘッドランプ


小糸製作所の配光可変型ヘッドランプは、車載カメラで前方車両を認識してヘッドランプの配光を全自動で制御します。
我が国では歩行者の死亡事故の約70%が夜間に発生していますが、これを予防するためハイビームを使用すると、対向車や先行車のドライバに眩しさを与えてしまいます。
配光可変型ヘッドランプは、対向車や先行車のドライバに眩しさを与えることなく、路側にいる歩行者のみを明るく照らす事ができます。
 
  
カルソニックカンセイのワイドスクリーンオンザシーンHUD

カルソニックカンセイのワイドスクリーンオンザシーンHUD


  
 

カルソニックカンセイのワイドスクリーンオンザシーンHUD(ヘッドアップディスプレイ)は、ドライバーの前方視界内にカーナビの経路や歩行者、車速、燃料残量などを表示して、運転の安全性を向上させる事ができます。
フロントガラスに18インチの大型表示が確保できるとしています。
 
 
 

矢崎総業のHUD

矢崎総業のHUD


矢崎総業のHUDは、左右のディスプレイと合わせて連携した表示が可能で、HUD開口部を見せない構造になっているそうです。
同社は、POFを用いたギガビット伝送が可能な車載用光通信コネクタも紹介していました。

東芝の車載用CMOSエリアイメージセンサは、高ダイナミックレンジ機能によって明暗コントラスト比が高い被写体において明暗諧調を広げ、被写体を自然に映し出す事ができます。
またカラーノイズリダクション機能によって、低照度撮影においても豊かな色彩表現が可能との事です。

この他、住友化学のシースルー型有機薄膜太陽電池、住化スタイロンポリカーボネートの特定波長が透過できるセンサー用ポリカーボネート、ヴァレオジャパンの車両周辺対象物を検知するレーザースキャナー、イエナオプティックジャパンの各種レーザ加工機、ポリテックジャパンの3Dスキャニング振動計、日本レーザーの画像解析式粒径計測システム等々、数々の光技術関連製品も出展されていた事を付け加えておきます。

入場者数8万7,523人という数字は、昨年90万人を集めた東京モーターショーに比べれば、もちろん少ないですが、テクノロジー専門の展示会で、この人数ですから、やはり自動車産業の裾野は広いという感じですね。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート パーマリンク