編集長の今月のコメント(2009年4月)

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編集長 川尻多加志

 フェムト秒レーザは、従来のCO2レーザやYAGレーザとは違って,非常に短い時間内にレーザエネルギーを集中できるという特徴を持っています。これによって熱的でない物質加工ができ,またピークパワーも高いので非線形現象を利用した特殊な加工も可能です。その応用は半導体材料や金属材料はもちろん,透明材料の加工や医療・バイオ分野など,幅広い分野にブレークスルーをもたらすと各方面から注目を集めています。
 今月号の特集はフェムト秒レーザとその応用の最新動向を取り上げました。企画していただいたのはレーザー技術総合研究所の藤田雅之主任研究員です。総論でも述べられているように,フェムト秒レーザを用いた加工研究のトレンドは,これまでのアブレーション加工から,材料の外形を変えずに性質を変える表面改質にシフトしつつあるということです。各ご執筆者の方々にはフェムト秒レーザが持つ短パルスと高ピークパワーという特徴を利用した夫々の最新研究事例を紹介していただきました。
 
 今月号のフォーカルポイントにも掲載しましたが,光産業技術振興協会の光産業国内生産額統計2007年度実績,2008年度見込み,2009年度予測が発表されました。注目の結果は2007年度実績が8兆705億円(成長率2.6%)と2年連続の増加となったものの,2008年度見込みは7兆9,644億円(同マイナス1.3%)と8兆円台を割り込み,昨年度予測の8兆7,041億円(同6.4%)を大幅に下回りました。また2009年度予測は引き続き市場が縮小する見通しで7兆7,579億円(同マイナス2.6%)と,厳しい数字になっています。
 2008年度の見込みを分野別に見ると入出力分野が9.4 %減になったものの,その他の情報通信,ディスプレイ,光ディスク,センシング・計測分野は頑張っています。ただし,レーザ加工分野が21.5 %減と急激に落ち込みました。CO2レーザが22.2%減,固体レーザ5.4 %減,エキシマレーザも25.8%という大幅減少です。救いは太陽電池分野で26.2 %増(5,073億円),グリーンテクノロジー関連は期待が持てそうです。
 統計は2008年10月から2009年1月末にかけ116社から回答を得て,他の業界団体の調査結果も加味して作られましたが,今後2008年度の数値が下振れしないか,さらに2009年度の数値がどうなるか,気になるところです。
 
 3月8日は「光の日」でした。制定したのは日本学術振興会光エレクトロニクス第130委員会(後藤顕也委員長),光の速さが真空中でほぼ3×108m/sであることに由来しているそうです。毎年この日の近辺には「光の日」公開シンポジウムが開かれているのですが,今年は3月9日(月),東京・神楽坂の東京理科大学・森戸記念館で行われました。委員会では会員を募集中だそうです。普段はクローズドな四つの部会において厳選したテーマのもと議論を交わしていますが,オフレコであるがゆえに本音の討論ができ,研究開発の芽などを探索するには格好の場を提供してくれます。

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