情報流出

 7月の初めに明らかになり、世間を驚かせたベネッセホールディングスの顧客情報流出事件。流出件数は2,000万件にも及ぶと言われています。
 事件は、顧客情報に関するデータベース運用や保守管理を任されていたグループ会社が、業務をさらに複数の外部業者に再委託していた中でおこったもの。その内の1社に派遣されていたシステムエンジニアが、自分のIDで情報を記録媒体にダウンロードして不正入手、それを名簿業者に売りさばき、情報はさらに複数の名簿業者に拡散して行き、その転売先は数百社にも上ると見られています。ベネッセホールディングスでは、利用者への補償として200億円を準備すると発表しました。

 情報流出が一旦おこれば、これまで築き上げてきた信用を失うのはもちろん、苦労して集めてきた貴重な情報が、一瞬にして競争相手に渡ってしまいます。巨額の補償費用が必要になる場合もあります。場合によっては訴訟をおこされるということも覚悟しなければなりません。まさに情報流出は、企業の存続そのものを危うくすると言っても過言ではありません。

 このような状況の中、オフィスの入退管理におけるセキュリティ強化が求められています。生体認証システムに対する期待も高まっています。東京ビッグサイトでの「オフィス セキュリティ EXPO」で、各社が注力する製品を探ってみました。

NECプラットフォームズの入退管理ソリューション「SecureFrontia X」

NECプラットフォームズの入退管理ソリューション「SecureFrontia X」

 NECプラットフォームズの入退管理ソリューション「SecureFrontia X」は、1枚のICカードで様々な社内システムとの連携が可能で、指静脈認証装置をオプションで付け足すこともできます。PCログインにおいては、入室記録のない人のネットワークアクセスを阻止でき、入室権限を持つPC管理者が退室すると自動的にネットワークから切断される仕組みになっています。入退管理においては、扉ごとの入室者のアクセス制限が可能で、コピーやプリントを出力する複合機利用をICカードで管理して情報漏えいを防止することもできます。
 NECの顔認証技術は、米国・国立標準技術研究所(NIST)が実施した顔認証技術ベンチマークテストの「静止画像からの顔照合部門」における「1対N照合」で、第1位の評価を3年連続で獲得しました。「1対N照合」とは、データベースに登録されている大量の顔画像の中から任意の顔画像を検索して同一人物であるかを判定する照合方法。16万人の顔画像データベースを検索した際の検索精度は、高解像度画像において照合率96.9%、ウェブカメラなどの低解像度画像で92.1%を実現し、1秒当たり302万件の高速画像検索も実現しました。
 同社の顔認証システム「顔跡/KAOATO」は、この技術をもとにした顔認証エンジン「NeoFace」を使って監視カメラの映像からあらゆる顔を自動的に検出、事前登録した特定人物の顔画像と照合することでリアルタイムの警告を実現しています。

アメリカンエンジニアコーポレイションの3次元顔認証システム

アメリカンエンジニアコーポレイションの3次元顔認証システム

 アメリカンエンジニアコーポレイションが取り扱う3次元顔認証システムは、右側のカメラが赤外線センサになっていて顔画像を識別、左側のカメラが人体センサになっていて人の認識と認証に必要な距離を識別する仕組みになっています。
 他人受入率は0.0001%未満で、本人拒否率は1%未満という認証精度を持っていて、認証スピードは0.7秒以下、赤外線センサを用いているので、限りなく0ルクスに近い暗い場所でも認識が可能としています。
 

 

菱洋エレクトロの三菱電機製各種認証端末

菱洋エレクトロの三菱電機製各種認証端末

 菱洋エレクトロは、三菱電機製の各種認証端末を取り扱っていますが、このうちの指透過認証装置は、透過光によって指内部の真皮指紋を撮像して照合する独自の生体認証方式を採用。
 指内部の真皮指紋を利用することで、指表面の乾燥やふやけ、かすれなどの影響を大幅に減らすことができます。
 斜め上に配置した左右二つの光源からの光を爪の上から照射した時に、指紋の凸部分は光の透過率が低いために暗く写り、凹部分は光の透過率が高いために明るく写るという仕組みを利用しています。

 

システムイオの赤外線3D顔認証システム

システムイオの赤外線3D顔認証システム

 システムイオの赤外線3D顔認証システムは、顔の形状を約20万のポイントで識別するので、顔写真などの2Dイメージを使った「なりすまし」を排除できます。
 他人受入率は0.0001%、本人拒否率は0.1%という認証精度を持っています。認証時間は1秒以下なのでウォークスルー認証ができ、登録も3秒以下と、煩わしさを感じさせません。
 赤外線を用いているので、暗がりや顔が目視できない状況でも確実に顔形状を測定できるとのことです。
 

 
 セキュリティ分野以外ですが、オムロンのリアルタイム笑顔度センサ「スマイルスキャン」は、ちょっと変わった用途向け。営業や接客業はもちろん、病院・介護施設でも相手に好印象を与える笑顔はとても大切ですが、このセンサは自分の笑顔をトレーニングするためのものです。顔画像から様々な情報を読み取る同社独自技術「OKAO Vision」によって、表情によって変化する目や口の形、顔のしわなどの情報を正確に測定して、笑顔の度合いを0~100%までの数値で表わします。500社以上の採用実績があるとのことです。

 一般的にセキュリティ対策は直接利益に結びつかず、逆にコストとして見られがちなため、その対策が遅れているのが現状です。情報流出を防ぐには、これまでの性善説から一歩踏み出した認識が求められています。

編集顧問:川尻多加志

 

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