進化するラマン分光装置

 光を物質に入射すると、反射、屈折、吸収などの他に、散乱という現象が起こります。散乱光のほとんどは入射光と同じ波長のレイリー散乱光ですが、ごく僅か入射光とは違う波長の光が含まれています。ラマン散乱光です。
 ラマン分光装置は、このラマン散乱光の性質を調べることで物質の分子構造や結晶構造などを非接触、非破壊で調べる事ができます。無機化合物、有機物、固体、液体、気体、粉末など、私たちの回りの殆どのものを測定できて、特別な前処理も要りません。
 東京ビッグサイトで先月開催された「インターフェックスジャパン」でも、このラマン分光装置がいくつか出展されていました。

サーモフィッシャーサイエンティフィックの携帯型ラマン分光分析装置「TruScan RM」

サーモフィッシャーサイエンティフィックの携帯型ラマン分光分析装置「TruScan RM」

 欧米を初め日本においても、医薬品の製造分野では品質管理が強化され、原料の受け入れ時に全ての容器に対しての原料の同一性検査が求められています。

 サーモフィッシャーサイエンティフィックの携帯型ラマン分光分析装置「TruScan RM」は、重量が1kg以下と軽量で、どこにでも持ち運び可能、特異性と再現性の高い結果を数秒で判定します。焦点距離とスポットサイズが固定されていて、露光時間・積算回数も自動調整してくれるので、測定者によっておこる誤差もないとのことです。同社は、判定を類似性評価ではなくスペクトルのみで行なうので、完全一致判定ができるとアピールしています。容器の外からでも測定は可能です。
この他、同社では卓上タイプのDXRxiイメージング顕微ラマン、DXRレーザーラマン、DXR Smartラマンなどを取り扱っています。

樋口商会のSciAps製ラマン分光光度計「Inspector500」

樋口商会のSciAps製ラマン分光光度計「Inspector500」

 樋口商会のSciAps製ラマン分光光度計「Inspector500」は、波長1030nmのレーザを搭載。1.7kgと小型・計量を実現するとともに、防水・防塵仕様で、グローブを着用していても片手の親指走査で簡単に操作ができます。これまでの785nmレーザでは測定が難しかった微結晶セルロース、クロスカルメロース、葉酸などの栄養素を含む、ほぼ全てのラマンアクティブコンパウンドに対して信頼性の高い計測を実現、蛍光の強いサンプル計測を可能にしました。
 
 
  
 
スペクトリスのMalvern製「Morphologi G3-ID,G3SE-ID」

スペクトリスのMalvern製「Morphologi G3-ID,G3SE-ID」

 スペクトリスのMalvern製「Morphologi G3-ID/G3SE-ID」は、粒子径と粒子形状の物性情報を測定する従来品にラマン分光システムを統合した複合機で、化学情報の測定もできるようになりました。アプリケーションは、医薬品やセラミックス、電池の粉砕条件の検討や効率的な結晶多形のスクリーニング、異物解析など、多岐に渡るとのことです。

 
 
  
 

日本分光のレーザラマン分光光度計「NRS-4100」

日本分光のレーザラマン分光光度計「NRS-4100」

 日本分光のレーザラマン分光光度計「NRS-4100」は、省スペースを実現するとともに、誰にでも扱えて、メンテナンス性も高めた製品。アライメントの調整やレーザ光源、リジェクションフィルタなどの切り換えを自動化、測定操作や解析作業をアシストするソフトによって、研究開発だけでなく品質管理にも利用できるとのことです。赤外顕微鏡では測定が困難な1μm程度の微小試料が測定できるとアピールしています。
 
 
  
 

リガクの携帯型ラマン分光計「Progeny」

リガクの携帯型ラマン分光計「Progeny」

 リガクの携帯型ラマン分光計「Progeny」は、1064nm励起によって蛍光の重畳を防止。小型・軽量のハンディタイプで、バッテリ駆動による機動性も兼ね備え、現場に持参して迅速に化合物の同定ができます。ガラス容器や透明バッグの外からも測定が可能となっています。

     
  
   

 
 
 ラマン分光装置は、より現場で使いやすい装置へと進化を続けているようです。

編集顧問:川尻多加志

 

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