分光

2017年11月15日(水) 09:30-12:25 会場:会場:6F 第3会議室
【SC-1 コース】 テラヘルツ分光・イメージングの産業、IoTへの応用

開会あいさつ

福井大学 谷 正彦

テラヘルツ波分光・イメージング技術の産業、IoTへの応用のトレンド

日本電信電話株式会社 味戸 克裕

テラヘルツ分光技術の医薬品品質管理への応用

株式会社アドバンテスト 塩田 和教
 テラヘルツ波は、電波と光の中間に位置する約0.1 - 10 THzの周波数帯域の電磁波である。電波的な物質透過性と光的な直進性を兼ね備えており、非破壊検査への応用が期待され、すでに自動車のディーゼル車の排ガス処理用フィルタ解析や、半導体デバイスのモールド厚の測定などの非破壊検査装置として市販されている。新たな産業応用先として医薬品の製造工程における品質管理が挙げられる。医薬品業界では、近年、アメリカ規制当局が打ち出した医薬品品質向上に向けたガイドラインに呼応し、Process Analytical Technology (PAT) を用いた製造工程の科学的な理解と品質の作りこみが推進されている。その中で分光学的手法は、製造工程中の製剤の物理化学的な特性を非破壊で分析できるため、これを応用したセンサーや分光装置はPATのツールとして有望である。パルス状のテラヘルツ波を被測定物に入射させ、透過あるいは反射した後の時間波形を計測し、その波形をフーリエ変換することにより周波数毎の振幅と位相を得るテラヘルツ時間領域分光 (THz-Time Domain Spectroscopy: THz TDS) を用いて、乾式造粒工程において生成されるリボン製剤の密度と相関をもつ屈折率や、コーティング工程におけるコーティング膜厚などの品質を左右する重要な物理的特性が測定できる。
 本講演では、医薬品製造における品質管理応用に向けたテラヘルツ分光装置の開発、品質特性の測定原理や評価事例などについて紹介する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

「テラヘルツ波による液体状態検査装置の各種産業ヘの応用」 ~分子間相互作用プロファイルを得る「分けない分析」の需要に応える~

フェムトディプロイメンツ株式会社 渡部 明
 私たちの身の回りの製品を見渡すときいかに液状の製品が多いことか。日常生活に限ったとしても、食品にも、化粧品にも、そして医薬品にも、我々は多くの溶液状の製品に囲まれています。その製品のほとんどは複数の分子を混合して構成された化学的混合溶液です。

 ところで、科学の領域では特に、私たちは複雑な事柄は細分化することで理解することができ、説明できると教えられてきました。学術的知見や技術の根幹を支える分析装置は文字通り、細かく分けることで、様々な現象や、複雑な物質を解き明かすことで新しい知識を蓄積して来ました。

 ところが、このような細分化が充実するほどに、分子間相互作用を把握したいという需要が高まって来ています。完全に混ざっているかどうかで品質が大きく変わったり、非常に微量でも製品の特性を大きく変動させる分子の効果の理解を目指したり、複雑な混合物に対するトラブルシューティングなどの場面では、個々の分子の構造よりも系を支配する分子間相互作用網に関する俯瞰的把握が重要になります。これは「職人の経験と直感」の背景にある俯瞰的把握と通じる極めて重要な情報だと私達は考えています。

   私達は細分化をどんどん進める事で高精度化を目指すのではなく、相互作用のつながりの網を包括的に捉えることで、これまでの手法では見えなかったものを見えるようにしようとしています。

   分けてしまうと見えない過程にこそ重要な意味と価値があり、その部分に隠された情報を検知すること。我々はそれを、「分けない分析」技術と呼んでいます。実現したシステムは、分子間結合を直接捉えるテラヘルツ波を活用し、混合状態特有の分子会合を壊さずそのままで検査することを可能にします。この検査装置は最初にあげた私たちの生活に欠く事ができない様々の液体製品の品質管理や品質向上に役立つと信じています。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

食品異物検出用偏波独立型高速テラヘルツイメージング装置の開発

名古屋工業大学 裵 鐘石
 2010年から6年間実施された愛知県「知の拠点」重点研究プロジェクトの一つのテーマとして、食品中の異物検出用テラヘルツイメージング装置の研究、開発を行った。このプロジェクトでは、20m/min以上の速度でベルトコンベア上を移動する食品の異物検査が可能な実用的な高速イメージング装置開発を目的とし、高い画像分解能が得られる0.3THz帯と、食品に対する透過特性に優れた0.1THz帯の2種類のテラヘルツイメージング装置の開発を実施した。その結果、当初目標とした高速イメージングだけでなく、0.3THz帯装置では、ほぼ回折限界である1mmの画像分解能を実現している。また、0.1THz帯装置では、テラヘルツ波発生器としてテラヘルツ波雑音源を採用し、従来のテラヘルツイメージングで問題となっていた干渉による画像歪除去に成功している。両者の装置とも、水平および垂直偏波画像を独立に取得でき、その比較により食品異物検出感度を高めている。
 本講演では、開発したテラヘルツイメージング装置について詳細に述べると同時に、様々な食品とその異物のテラヘルツ波画像結果について紹介する。これらの画像取得結果に基づき、テラヘルツイメージングの特徴とその有用性、そしてその利用における問題点について述べる。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

閉会あいさつ

福井大学 谷 正彦

受講料(1コース/税込)
  一般 出展社・協賛団体会員 定期購読者 新規定期購読同時申込 学生
価格A ¥13,000 ¥10,000 ¥9,000 ¥9,000 ¥3,000
2017年11月15日(水) 13:20-16:20 会場:会場:6F 第3会議室
【SC-2 コース】 高周波数分解能分光とは何か:基礎と応用

開会挨拶、及び高周波数分解能分光の概要

前・東京大学 米津 朋尚
 化学者は古来、材料の混合と温度と圧力を変化させることで化学反応を調べてきた。こうした実験条件は、およそ原子や分子の振動や回転、並進といった様々な熱運動に由来しており、分子ごとにもつ固有の周波数(指紋スペクトル)を区別できるような、特に有効数字6桁程度以上の高い分解能をもつ分光法を分光学では高分解能分子分光(通称:High-resolution spectroscopy)と総称している。試料の様々な実験条件によって、原子や分子、或いは固体による、電磁波の放出や吸収を測定した周波数の波形(スペクトル)や、どの周波数の波形が強く出るか、スペクトルの幅や格好、重なり方などが違ってくる。スペクトルの周波数と合わせて、およそそうしたものが化学反応の反応経路をおいおい左右する。
 そのため装置の性能だけでは正しい測定はできず、再現性を確保し、高い分解能を得るには、様々なノイズを抑える工夫の他、気体試料の圧力をあまり高くできなかったり、タンパク質や、水素マトリックスに代表されるような固体の場合も冷却や冷凍したりと、測定対象に合わせてスペクトルの線幅を細くする工夫と試行錯誤が必要となる。
 そこで本講演では、セミナーの冒頭にあたり、気体分子の測定条件に基礎データとして必要な非常に精密な圧力較正など伝統的な作法や、軽い分子の純回転遷移での例など、高分解能分子分光の基本をざっくりと紹介する。温度で変わる遷移強度の分布や、線幅など諸々の概念も、これもざっくりと紹介したい。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)/一般的(高校程度、一般論)

高波長分解能分光と過渡現象

岡山大学 川口 建太郎
 高分解能分光法は、電波、赤外、可視紫外領域で比較的小さな分子に適用され、精密な分子構造、電子構造などの基礎的データを提供してきた。高い波長分解能λ/Δλ> 105で、対象となる分子の固有の線幅まで分離して観測するのが特徴である。電波領域では、主に分子の純回転スペクトルがガン発振器、シンセサイザーからのてい倍などのコヒーレントな光源で観測される。赤外領域では分散型分光器が用いられた時代は、感度が低く化学的に安定な分子種にしか適用されなかったが、赤外線レーザーの開発により高感度化が実現し、化学反応中に一時的に存在するフリーラジカル、イオン種も観測できるようになってきた。高分解能分光で得られる高精度な遷移周波数情報は、リモートセンシング(宇宙、上層大気)プラズマ診断、排気ガスモニターなどに必須になっている。手法の概観とともに最近の話題について紹介する。
1.分子回転まで含むエネルギー準位の要約
2.分子イオンの赤外高分解能スペクトルと時間分解分光法による反応研究
3.フリーラジカルのスペクトルと宇宙、地球上層大気におけるリモートセンシング
4.過渡現象を利用したキラル化合物のD-,L-異性体の識別
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

レーザーアブレーションにおける高分解能レーザー分光計測

法政大学 松尾 由賀利
 レーザーアブレーションは、パルスレーザー光を固体ターゲットに集光して瞬間的に高温にすることで蒸発・気化させるプロセスで、固体表面から原子、分子、イオン、電子等が爆発的に放出され、マイクロプラズマ状態を生成する。一方、高分解能レーザー分光においては、気相の原子分子について共鳴遷移のスペクトル線の線幅や強度を詳細に解析することにより、例えばドップラー効果から運動状態を、スペクトル線強度比からエネルギー状態分布の情報を引き出すことができる。この2つの手法を組合せると、アブレーションで発生した粒子の振舞いをレーザー分光で詳しく調べることが可能になる。特に分子は振動、回転といった内部自由度を持つので、アブレーションされた粒子のエネルギー拡散の詳細な過程など、より多くの情報が得られる。本講では、レーザー分光におけるスペクトル線の形状とその意味について解説した後、レーザーアブレーションプラズマ中の原子分子にレーザー分光を適用した実際例と、そこから知られるプラズマ中の粒子の振舞いについても紹介する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

注目の『光周波数コム』による高周波数分解能分光

慶應義塾大学 佐々田 博之
 レーザー技術は、スペクトル分解能が高い連続発振レーザー、あるいは、時間分解能が高い短パルスレーザーを目指して二つに分かれて発達してきた。それはスペクトル分解能と時間分解能が相容れない性能と考えられていたためであった。2005年のノーベル物理学賞は光周波数コムの発明者達に与えられた。光周波数コムは超短パルスレーザーでありながら、高いスペクトル分解能を持つ光源である。従来、光周波数の高精度測定は先進国の標準研究所でしかできなかった。これが、光周波数コムの登場以降、大学の一研究室で光周波数を10–11の相対不確かさで決定できるようになった。
 講演では光周波数コムの発生原理、光周波数コムを基準にした光周波数測定、さらに、光周波数コムを光源にした超広帯域分光について話す。分光学において光周波数コムは今まさに革命を起こしつつあり、その熱気を感じ取って頂ければ幸いです。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

閉会挨拶

前・東京大学 米津 朋尚

受講料(1コース/税込)
  一般 出展社・協賛団体会員 定期購読者 新規定期購読同時申込 学生
価格A ¥13,000 ¥10,000 ¥9,000 ¥9,000 ¥3,000
元のページに戻り選択を続ける



セミナー申込手順

※有料セミナー キャンセル規程:
お客様のご都合による受講解約の場合、10/15までは受講料の50%、10/16以降につきましては受講料の全額を解約金として申し受けます。

※学生料金:
個人もしくは学校からのお支払いで、30歳未満の方が対象となります。

[ 特定商取引法に基づく表記 ]

谷 正彦

福井大学

遠赤外領域開発研究センター センター長/教授

味戸 克裕

日本電信電話株式会社

NTT先端集積デバイス研究所 主任研究員 特別研究員 テラヘルツ分光分析プロジェクトリーダ

塩田 和教

株式会社アドバンテスト

新企画商品開発室

1997年 東北大学大学院工学研究科応用物理専攻修士課程修了.
同年 株式会社アドバンテスト入社.
以来,光デバイスおよび光・テラヘルツ計測システムの開発に従事.

渡部 明

フェムトディプロイメンツ株式会社

代表取締役社長

●職歴:
1979年:鳥取大学工学部(教務員)
1988年:岡山理科大学理学部(助手)
1990年:(株)Y&Yレーザー応用機器開発スタートアップに参加
1994年:(株)応用光電研究室(岡山開発センター所長)
2001年:(株)オプトクエスト(岡山開発センター所長)
2003年:(株)光フィジクス研究所設立(代表取締役社長)
2015年:フェムトディプロイメンツ(株)設立(代表取締役社長)
現在に至る。

●研究歴:
1979年鳥取大学工学部電子工学科修士課程修了後、同学部笹倉研究室に所属し小林洋志教授の指導の下、超短時間パルスレーザーの研究を始める。電子工学、半導体物性、レーザー分光学が専門。在職中の1985年から1989年にかけて東大物性研究所矢島研究室においてフェムト秒色素レーザー技術の共同研究。超薄液膜生成ノズルなどを開発。現在に至る。

裵 鐘石

名古屋工業大学

大学院工学研究科 物理工学専攻 教授

1976年3月 朝鮮大学校工学部電気工学科科卒業
1983年4月 東北大学助手(電気通信研究所)
1992年4月 東北大学助教授(電気通信研究所)
2003年10月 名古屋工業大学 生産システム工学科 教授
2016年4月 名古屋工業大学 物理工学科 教授
現在に至る。
東北大学にて、光励起型サブミリ波レーザーの開発、レーザー光による電子ビーム加速現象である逆スミスパーセル効果の実験的検証に関する研究、そしてテラヘルツ帯における準光学的回路開発、にそれぞれ従事した。名古屋工業大学に移動後は、主にフェムト秒レーザーを用いたテラヘルツ波発生、検出、そしてその応用技術開発・研究を行っている。

谷 正彦

福井大学

遠赤外領域開発研究センター センター長/教授

米津 朋尚

前・東京大学

地震研究所 技術職員

2009富山大学大学院理工学研究科博士課程修了
専門:分子エネルギー基礎科学、(遠赤外、分光計、分子イオン)
富山大学理学部 研究生
名古屋大学大学院環境学研究科 博士研究員(中赤外、分光器)
2010国立天文台野辺山宇宙電波観測所 研究支援員(ミリ波、望遠鏡)
2013東京大学大学院工学系研究科原子力専攻 学術支援専門職員
(近赤-可視、SIMIONシミュレーション、四重極質量選別器)
2016東京大学地震研究所 技術職員
(地震・高エネ・地磁気・重力波観測等用の電子回路製作、修理)

川口 建太郎

岡山大学

理学部化学科 名誉教授

1976 九州大学大学院理学研究科博士課程中退
1977 分子科学研究所
1989 国立天文台助教授(電波天文学研究系)
1999 岡山大学教授(理学部化学―自然科学研究科)
2015 岡山大学名誉教授

松尾 由賀利

法政大学

理工学部 教授

1987年東京大学大学院理学系研究科物理学専門課程博士課程修了。理学博士。
1987年ミシガン州立大学博士研究員、1989年マックスプランク量子光学研究所客員研究員、1990年理化学研究所研究員、1996年同先任研究員。2007年大阪大学大学院招へい教授、2008年東京工業大学大学院連携教授を兼務。2013年より法政大学理工学部教授。
2008-10年日本物理学会理事・男女共同参画委員長、2012-14年応用物理学会理事・英文誌編集委員長。
2006-14年日本学術会議連携会員、2014年より日本学術会議会員。
専門はレーザー分光、原子分子物理、レーザーアブレーション。

佐々田 博之

慶應義塾大学

理工学部 物理学科 教授

1976年3月 東京大学理学部物理学科卒
1981年3月 東京大学大学院理学系研究科修了 理学博士
1981年4月 慶應義塾大学理工学部助手
1990年4月 慶應義塾大学理工学部専任講師
1996年4月 慶應義塾大学理工学部助教授
2004年4月 慶應義塾大学理工学部教授

米津 朋尚

前・東京大学

地震研究所 技術職員