-紫外線

2017年11月16日(木) 09:30-12:25
【-1 注目の深紫外光源と市場展望


深紫外LED高効率化の進展と展望

国立研究開発法人 理化学研究所 平山 秀樹
 波長が230-350nmの紫外発光ダイオード(DUV-LED)は、殺菌・浄水、皮膚治療などの医療、紫外樹脂硬化・加工、UV接着、印刷・塗装・コーティング、生化学産業、農業など、さまざまな分野での応用が考えられており今後の実用化が期待されている。最近、窒化物AlGaN系半導体を用いた紫外LEDの開発が盛んに行われており、すでに実用可能な出力も達成されている。一方、素子の効率は未だ低くマーケット拡大の大きな妨げとなっている。
 本講演では、AlGaN深紫外LEDの高効率・高出力化のポイントについて、結晶成長と高効率発光、注入効率・光取り出し効率の向上などの観点から概説し、現状と今後の展望を述べる。最近得られた世界最高効率・深紫外LED“水銀ランプに迫る20%程度の効率”の達成についても紹介する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

深紫外LEDの高効率光取り出し技術

丸文株式会社 鹿嶋 行雄/国立研究開発法人 理化学研究所 平山 秀樹
 紫外線LEDは殺菌・浄水・院内感染の殺菌用途、白斑・アトピー性皮膚炎の医療用途、樹脂硬化の工業用途など多岐にわたる。しかし、電力変換効率は数%と水銀ランプの20%に比較して低く実用化には多くの課題がある。その理由は量子井戸層で発光した光がp-GaNコンタクト層及びNi/Au電極で吸収消失される事、LED素子と空気の屈折率差に起因する内部全反射により光を外部に取り出すことが容易ではないなど、光取出し効率が6~8%程度と低いことである。更に、LED素子をパッケージに搭載した場合、紫外光の吸収を抑制する有効な材料がないことも挙げられる。この問題を解決する有効な手段として①透明p-AlGaNコンタクト層の導入、②パッケージ内部側壁の高反射化、③サファイア基板裏面へのサファイア半球レンズ接合、④フォトニック結晶の導入とナノインプリントによる微細加工技術などの要素技術が挙げられる。
 直近の実験成果として、サファイア基板裏面にサファイア半球レンズを接合して、外部量子効率(EQE)20%以上、電力光変換効率(WPE)10%程度が得られた。更に、p-AlGaNコンタクト層に高反射型フォトニック結晶を導入することにより、EQE10%が得られた。
本講演では、上記二つの成果について詳細を紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

深紫外LEDの開発と応用展開

旭化成株式会社 久世 直洋
 米国Crystal IS社において開発してきた窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板の特性と開発状況、さらにそのAlN基板上に形成された深紫外LEDの性能、及びその応用について殺菌用途を中心に報告する。

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2017年11月16日(木) 13:20-16:15
【-2 応用から見る紫色・紫外デバイス開発


高出力・高効率UV-LEDがもたらす家電イノベーション~空気殺菌、水殺菌、消臭、捕虫への応用~

ナイトライド・セミコンダクター株式会社 村本 宜彦
 紫外線(以下UV-LED)のデバイス単体の市場規模は、2021年に600億円と予想される。弊社は、2000年、世界で初めてUV-LEDを開発、波長365nm近辺のNUV-LEDをセンサー、樹脂硬化、光触媒関連用途へ供給して来た。そして、国際宇宙ステーションに採用された波長275nmの深紫外線DUV-LEDの量産技術確立は、家電製品に異次元の空気殺菌、水殺菌効果をもたらすだけでなく、大幅な省エネ、長寿命、メンテナンスフリーも実現する。
 弊社は、UV-LEDを高効率化する様々な結晶成長技術、チッププロセス、パッケージ技術を開発し特許出願してきた。波長385nm近辺のパッケージ製品の外部量子効率は60%を超え、水銀の使用を制限する水俣条約が今年8月発効したことにより、ランプからLEDへの置き換えは今後急速に進むと予想される。
 波長の長いUV-LEDは、光触媒と組み合わせて、従来のプラズマイオン、オゾンといった方式と比較して、圧倒的に高い消臭、有機物分解力を備える一方、オゾン等、人体に悪影響を及ぼす物質が発生しない。また、短波長UV-LEDは、そのコンパクトさと、高い殺菌力で空気殺菌、水殺菌の分野に新たな市場を切り拓くことが期待される。
 家電にイノベーションをもたらすLEDピュア製品とUV-LEDが実現する未来像に迫ります。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

『紫外線皮膚治療器』の開発:医工連携と薬機法への対応

ウシオ電機株式会社、名古屋市立大学 益田 秀之
 2002年に国産初のナローバンドUVBが、2008年にエキシマライト治療器が開発・上市されたことを契機に、乾癬や白斑、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患に対する治療方法として、紫外線治療器の普及が急速に進んでいる。ナローバンドとはピーク波長が311nmにあり、発光スペクトルが狭帯化されたランプを用いた機器で、エキシマライトは誘電体バリア放電の短時間放電が多数生じる特徴を生かして、希ガス原子や希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの光を放射するエキシマランプを用いた機器である。
 本セミナーでは、紫外線治療(ブロードバンドUVB、PUVA、UVA1、ナローバンドUVB、エキシマライト)全般に関する内容を中心に、安全かつ効果的な治療に求められる装置コンセプト、光学的な工夫、薬機法等に関する概説を行う。「紫外線による副作用を抑えながら、免疫細胞の制御を行う」というテーマに対して、治療効果スペクトルの数値化、T細胞のin vitro試験等を実施した際のデータを紹介する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

バイオレットライトによる近視進行抑制技術

株式会社坪田ラボ 近藤 眞一郎
 近視人口は過去60年間で東アジアを中心に急増しており、2050年には世界の人口の半分、約50億人が近視となる予測がある。近視の多くは学童期に発症し、その一部は、強度近視へ進行する。強度近視の症例の中には失明に至る場合もあり、本邦では失明原因の第4位、中国ではすでに第2位となっている。近視の進行を可能な限り抑えることが肝要であるが、承認を受けた予防法、治療法や医療機器は現在存在していない。
 従来、屋外で活動する学童は近視の罹患率が少ないことが報告されていたがその理由は不明であった。最近我々は、屋外環境に含まれる波長360〜400nmのバイオレットライトが近視の進行を抑制するという研究成果を報告した。バイオレットライトは、太陽光には豊富に含まれているが、現在の窓ガラスは「UVカット製品」が多く、UVとともにバイオレットライトも一緒にカットされていることが多いため、室内には到達しないことが多い。
 本講演では、近視の危機的な状況について説明し、近視進行抑制に対するバイオレットライトの有効性と安全性について紹介する。更に、弊社が開発を進めている「近視進行抑制メガネ」を含め、この技術を用いた様々な製品への応用展開も紹介する。

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※有料セミナー キャンセル規程:
お客様のご都合による受講解約の場合、10/15までは受講料の50%、10/16以降につきましては受講料の全額を解約金として申し受けます。

※学生料金:
個人もしくは学校からのお支払いで、30歳未満の方が対象となります。

[ 特定商取引法に基づく表記 ]

平山 秀樹

国立研究開発法人 理化学研究所

光量子工学研究領域テラヘルツ量子素子研究チーム チームリーダー

1994年、東京工業大学電子物理工学専攻博士課程修了、同年、理化学研究所に入所、2005年同研究所、テラヘルツ量子素子研究チーム、チームリーダー、2012年平山量子光素子研究室、主任研究員。埼玉大学連携教授を兼務。これまで、量子電子・光デバイスの研究、特にAlGaN系窒化物半導体の結晶成長と深紫外デバイスの開発、フォトニック結晶・量子ドットを用いた光デバイス、テラヘルツ量子カスケードレーザの研究に従事。文部科学大臣表彰科学技術賞(2015年)ドコモモバイルサイエンス賞(2013年)、市村学術賞(2012年)、日本IBM科学賞(2011年)、文部科学大臣表彰若手科学者賞(2005年)、丸文奨励賞(2003年)などを受賞。

鹿嶋 行雄

丸文株式会社

システム営業本部 参事

1980年 筑波大学 自然学類 物理学科卒業
1987年 丸文株式会社 入社 
2009年より、理研、産総研、丸文、東芝機械、アルバック、東京応化工業と、深紫外LEDs高効率化に関する共同研究を行い現在に至る。

平山 秀樹

国立研究開発法人 理化学研究所

光量子工学研究領域テラヘルツ量子素子研究チーム チームリーダー

1994年、東京工業大学電子物理工学専攻博士課程修了、同年、理化学研究所に入所、2005年同研究所、テラヘルツ量子素子研究チーム、チームリーダー、2012年平山量子光素子研究室、主任研究員。埼玉大学連携教授を兼務。これまで、量子電子・光デバイスの研究、特にAlGaN系窒化物半導体の結晶成長と深紫外デバイスの開発、フォトニック結晶・量子ドットを用いた光デバイス、テラヘルツ量子カスケードレーザの研究に従事。文部科学大臣表彰科学技術賞(2015年)ドコモモバイルサイエンス賞(2013年)、市村学術賞(2012年)、日本IBM科学賞(2011年)、文部科学大臣表彰若手科学者賞(2005年)、丸文奨励賞(2003年)などを受賞。

久世 直洋

旭化成株式会社

執行役員 UVCプロジェクト長

1982年 旭化成工業(株)(現旭化成(株))に入社
2002年 博士(工学)京都大(電子物性)
2011年 旭化成エレクトロニクス(株) 研究開発センター長
2012年 旭化成エレクトロニクス(株) 執行役員
2014年 旭化成(株) UVCプロジェクト長
2017年 旭化成(株) 執行役員、UVCプロジェクト長

村本 宜彦

ナイトライド・セミコンダクター株式会社

代表取締役

昭和60年 4月 日本ガイシ株式会社 入社
平成 8年 7月 社団法人徳島ニュービジネス協議会 常務理事・事務局長
平成12年 3月 ナイトライド・セミコンダクター株式会社 創業者 代表取締役

会社受賞歴
平成21年 半導体オブ・ザ・イヤー 優秀賞
平成23年 中小企業優秀新製品・新技術賞 中小企業庁長官賞
平成24年 経済産業省 ものづくり日本大賞 経済産業大臣

益田 秀之

名古屋市立大学大学院

医学研究科 加齢・環境皮膚科学 研究員

ウシオ電機株式会社

バイオメディカル事業部 シニアリサーチャー

2006年 新潟大学大学院自然科学研究科修了
2006年 ウシオ電機株式会社 入社
2014年~ バイオメディカル事業部
2014年~ 名古屋市立大学大学院医学研究科
加齢・環境皮膚科学 研究員
入社以来、液晶パネル用露光装置、位相差フィルム用露光装置等各種エレクトロニクス分野向け光源装置の開発に従事。2014年より光治療用光源装置の開発に向け、名古屋市立大学大学院医学研究科加齢環境皮膚科学にて研究員。

近藤 眞一郎

株式会社坪田ラボ

CTO

1992年 University of Illinois at Urbana-Champaign 物理学部卒業
1998年 Iowa State University 物理学部博士課程修了、Ph.D.
1998~2001年 東京大学物性研究所 CEO研究員、ならびに同大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 日本学術振興会特別研究員として、遷移金属酸化物ならびに高温銅酸化物超伝導体における強相関系物性(実験)の研究に従事
2001~2015年 株式会社ソニー、Sony Deutschland、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)
2015年~ 株式会社坪田ラボ CTO