決定!第30回櫻井健二郎氏記念賞

右から光産業技術振興協会専務理事・小谷泰久氏、受賞者の河田聡氏と櫛屋勝巳氏、記念賞委員長の東京大学教授・荒川泰彦氏

右から光産業技術振興協会専務理事・小谷泰久氏、受賞者の河田聡氏と櫛屋勝巳氏、記念賞委員長の東京大学教授・荒川泰彦氏

第30回(平成26年度)の櫻井健二郎氏記念賞が決まりました。

受賞者は大阪大学、理化学研究所、ナノフォトン(株)の河田聡氏と昭和シェル石油(株)、ソーラーフロンティア(株)の櫛屋勝巳氏のお二人。
河田氏の受賞は「プラズモン効果による超解像度顕微鏡に関する先導的研究」に対して、櫛屋氏の受賞は「CIS薄膜技術による第2世代薄膜太陽電池の実用化」に対して贈られたものです。

櫻井健二郎氏記念賞は、光産業技術振興協会・理事であった故・櫻井健二郎氏の光産業の振興に果たした功績を讃えるとともに、光産業および技術の振興と啓発を図ることを目的として創設されたもの。これまでにで21名の個人、34グループの合計55件、延べ132名が受賞しています。今年度は14件の応募の中から選ばれました。

河田氏は大阪大学・大学院工学研究科の教授であり、理化学研究所のチームリーダー、ナノフォトンの会長でもありますが、今回の受賞理由は以下の通りです。報道資料より引用させていただきます。

「受賞者は、金属ナノ構造とフォトンとの相互作用に関わる多くの新しい概念を提唱・実証し、プラズモニクスの領域拡大と技術開発の展開を先導した。特にナノサイズの先端径を有する金属探針を用いることにより、プラズモン効果に基づくラマン散乱光の超解像度顕微システムを世界に先駆けて開発した。計測対象も、分子からナノ半導体材料、ナノバイオ材料など広く展開させており、異分野や産業へ貢献するところが大きい。これらの優れた研究業績に加え、自ら設立したベンチャー企業で最先端の研究者向けにラマン顕微鏡を10年以上にわたり製造販売しており、光産業技術分野においても革新をもたらしている。」

一方の櫛屋氏は昭和シェル石油、エネルギーソリューション事業本部の担当副部長で、ソーラーフロンティアの執行役員でもあります。
受賞理由は以下の通りです。

「受賞者は、薄膜太陽電池第1世代が実現できなかった変換効率を、CIS(CuInSe2:カルコパイライト系)薄膜太陽電池において環境負荷低減に有効なCdフリー・鉛フリーの形で実現するとともに、事業化も達成した。単結晶Si太陽電池技術の性能にも匹敵し得るCIS薄膜太陽電池は、世界最大規模の1ギガワットラインにてフル操業で生産されており、ソーラー住宅から太陽光発電所まで、「メイド・イン・ジャパン」の薄膜太陽電池事業として進展している。受賞者らが主導したCIS薄膜太陽電池技術の開発は、エネルギー安全保障、地球環境問題解決のみならず、光電変換技術を主体とする光産業の今後の発展に貢献するところが大きいと認める。」

シンポジウム会場

シンポジウム会場

授賞式は2月4日、東京・新宿のリーガロイヤルホテル東京で開かれた平成26年度光産業技術シンポジウムの会場で行なわれ、お二人には賞状、メダル、副賞の賞金が贈られました。

なお、今年の光産業技術シンポジウムのテーマは「新たなパラダイムシフト社会を築く光情報通信」。

光産業技術振興協会と光電子融合基盤技術研究所の共催で行なわれたもので、プログラムは以下の通りでした。

■ 開会挨拶:光産業技術振興協会 専務理事 小谷泰久氏 
■ 来賓挨拶:経済産業省商務情報政策局情報通信機器課 課長 三浦章豪氏 
■ 基調講演「変革する情報社会を支えるフォトニックネットワーク」
  慶應義塾大学理工学部情報工学科 教授 山中直明氏 
■ 招待講演「より柔軟な光ネットワークの実現とSDN(Software Defined Networking)」
  日本電気コンバージドネットワーク事業部 主席技術主幹 中村真也氏 
■ 招待講演「石狩データセンターの事例に見る高品質と省エネを両立するデータセンター」
  さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏 
■ 招待講演「光テクノロジーロードマップ-光情報通信技術-」
  日本電信電話NTT未来ねっと研究所フォトニックトランスポートネットワーク研究部
  主幹研究員グループリーダ 平野章氏 
■ 招待講演「8K/4K映像機器用光伝送インターフェースの開発」
  NHK放送技術研究所テレビ方式研究部 添野拓司氏 
■ 講演 「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
     -光I/Oコアとデジタルコヒーレントレシーバ-」
  光電子融合基盤技術研究所 小倉一郎氏、尾中寛氏

シンポジウム冒頭、開会挨拶に立った光産業技術振興協会の小谷氏は

「光産業を取り巻く状況は改善されつつある。新エネルギー、省エネルギー、東京オリンピックの開催、円安による製造拠点の国内回帰、さらには青色LEDを実現した日本人研究者のノーベル賞受賞など、光産業にとっての明るい将来が見えてきた。
安倍政権による成長戦略が確実に実施される中、健康・医療技術、ロボット技術、自動運転技術、IT技術、エネルギー技術などにおいて使用されるカメラ、光センサ、ディスプレイ、光ネットワーク、太陽電池、LED照明等々、成長戦略を実施に移すためのキーテクノロジーを多く含む光技術は成長戦略の柱である」

と述べていました。

 データセンタやスーパーコンピュータ、情報通信ネットワークにおける省エネルギーは解決しなければならない喫緊の問題。その解決のため、いまシリコンフォトニクスによる集積化技術やレイヤーの垣根を超えた柔軟なネットワークの実現など、光情報通信技術に求められる役割がますます大きくなっています。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート パーマリンク