システムナノ技術に関する時限研究専門委員会のキックオフ研究会、開かれる。

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 電子情報通信学会・システムナノ技術に関する時限研究専門委員会(略称SNT)主催の第1回研究会「システムナノ技術によるイノベーションへの展開に向けて」が2月5日(木)、東京は本郷の東京大学・武田先端知ビル・武田ホールで開かれました。

 SNTは昨年の10月、ナノテクノロジーと光デバイスを中心にして、出口を見据えたナノテクノロジーのシステム化を目指して立ち上げられた新しい研究会(委員長:大阪大学・フォトニクス先端融合研究センター、同大学・大学院工学研究科の高原淳一教授)。その前身は、次世代ナノ技術に関する時限研究専門委員会(略称NNN)で、これまでフォトニクスをベースとしながら異分野との連携を視野に入れ、ナノの融合化に関する研究討論や産学官連携の場を提供してきました。

 このNNN、10年という節目を昨年迎えるにあたって、グリーンイノベーションやライフイノベーションといった国家戦略を踏まえ、その存在意義を問い直したとのこと。その結果、出口に近い電子情報通信学会におけるナノテクノロジーの重要性はますます大きくなりつつあり、次の10年に向け発展的に活動を継続することが必要であると、ナノのシステム化によるイノベーションを目指し、名称を変更して引き続き活動を継続することを決定しました。

 今回のキックオフ研究会のテーマは「システム技術を活用しイノベーション創出に大きな期待がもたれる技術分野の今後の展開」。SNTへの新たな展開に当たって、その活動の方向を探るため、ナノ技術とシステムの融合による「システムナノ」技術を今後のイノベーションのキー技術と捉えています。
 講演は、高原淳一委員長の委員会設立趣旨説明からスタートして、JST研究開発戦略センター上席フェローの曽根純一氏が基調講演でナノテクノロジーのシステム化を見据えた国家戦略を紹介、さらに次世代エレクトロニクスを牽引すると期待されているシステムナノ技術に関連して、次世代スーパーコンピュータ、光電子融合集積技術、3次元集積回路から単電子トランジスタ、センサシステム、ナノプロセス技術まで、トップレベルの研究者による最先端の研究・技術開発事例が紹介されました。具体的な講演題目と講演者は以下の通りです。

「開会・委員会設立趣旨」 高原淳一氏(阪大)
基調講演
 「システムナノへの期待と戦略」 曽根純一氏(JST)
招待講演
 「今後のスパコンの視点から見たシステムナノへの期待」 松岡聡氏(東工大)
 「More comfort技術と技術マネジメント」 若林整氏(東工大)
 「小数個のドーパントを利用したSiナノデバイス」 田部道晴氏(静岡大)
 「光電子融合システムに向けた光集積回路」 中村隆宏氏(PETRA)
 「VCSELフォトニクスとシステム展開」 小山二三夫氏(東工大)
 「機能集積イメージセンサの開発動向と今後の展開」 川人祥二氏(静岡大)
 「三次元集積回路の今後の展開」 遠藤哲郎氏(東北大)

 SNTの研究討論対象は、ナノ技術とフォトニクスをベースとしながら、従来の概念に捕われずナノ技術を種々の分野へ積極的に融合、システム化する領域。新しいナノ構造の作製技術、理論/特性解析、素子/デバイスの設計、作製および評価技術をベースとして、以下の領域において、これらのナノ技術のシステム化までを研究領域としてカバーするとしています。

 ◆ナノ材料、ナノプロセス、ナノ製造技術
  (新しいナノ加工技術、新しいナノ構造作製技術、ナノインプリント技術、ナノプリント技術、
   ナノ・マイクロ3次元造形技術)
 ◆ナノフォトニクス
  (ナノフォトニックデバイス・システム、プラズモニクス、メタマテリアルデバイス・システム)
 ◆ナノメカトロニクス
  (オプトメカトロニックデバイス・システム、MEMS、NEMS、マイクロTASデバイス・システム)
 ◆ナノバイオニクス
  (バイオチップ・システム、ゲノム、生体分子機能解析デバイス・システム)

 今後の活動としては、異分野融合による新たな機能発現の探索、新規デバイスの概念創出に止まらず、それらのシステム化によって21世紀の核となるイノベーションの芽を育むことを目的に、研究情報の提供や意見交換、討論を行なう計画。具体的には研究会を年に2回程度開催するほか、関連する国内外の会議の開催にも貢献して、この分野の学問および技術の発展・普及を図りたいとしています。

編集顧問:川尻多加志

 

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