電子光技術シンポジウム開催(上)

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 産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門の主催、光産業技術振興協会(光協会)の共催のもと、第4回電子光技術シンポジウムが東京・秋葉原のUDXカンファレンスで2月18日に開催されました。
 このシンポジウム、最先端の研究開発と新産業創出の展望に関する情報を提供するとともに、電子光技術研究部門を中心にした産総研の研究成果を紹介するため、これまでも毎年開催されてきたもので、今回のテーマは「超短パルスレーザーの応用とポータブルセンサの未来」。今回のブログは少々文章が長くなってしまいましたので、(上)と(下)の2回に分けてレポートします。

 開会の挨拶を行なったのは、産総研・情報通信・エレクトロニクス研究分野研究統括の金丸正剛氏と光協会・専務理事の小谷泰久氏。金丸氏は、この4月から国立研究開発法人になる産総研の方向性として、産業界との双方向の橋渡し機能を強化するとともに、大学や研究機関との連携を強めることで研究を産業にまで発展させていきたいと述べました。一方、小谷氏は輸出産業である光産業は円安によって確実に良くなっており、特に自動車産業にリンクしているレーザー加工分野が良いと指摘。アベノミクスの成長戦略も光技術に関連しているものが多く、光産業はチャンスを迎えていると述べていました。

 続く産総研・電子光技術研究部門長の粟津浩一氏による「電子光技術研究部門の概要とシンポジウムの趣旨」説明の後は、3本の招待講演が続きます。

 トップバッターのパラダイムレーザーリサーチ・代表取締役社長、鷲尾邦彦氏は「世界のレーザー応用技術動向」の中で、加工用レーザーの市場動向を紹介するとともに、欧州各国のレーザー加工関連の国家プロジェクトを紹介。特にレーザー加工に国を上げて注力するドイツの切れ目ない国家プロジェクトと学会発表における存在感の大きさに警鐘を鳴らしていました。新しい光源として、高出力VCSELが台頭しているそうです。
 
 続いての理化学研究所・基幹研究所・先端光科学領域長の緑川克美氏は「理研における光量子工学戦略」を紹介。「超高速で動く物質中の電子や原子の動きを見る」、「生体を生きたまま見る」、「構造物や容器の中を壊さず見る」、「地球内部の変動を見る」という四つの「見えないものを見る」をテーマに掲げ、フェムト秒レーザーの限界を突破するアト秒レーザーによる電子ダイナミクス計測とその応用事例、寿命60年を迎える我が国の橋やトンネル等、社会インフラへの応用として、レーザーや中性子、テラヘルツ光を用いたコンクリート内部の計測や金属の錆びのメカニズム解明といった研究事例を紹介していました。

 産総研・環境化学技術研究部門の新納弘之氏は「CFRP材料のレーザー加工~技術研究組合ALPROTの成果~」で、平成22年度から26年度までALPROT(技術研究組合・次世代レーザー加工技術研究所)で実施されたNEDOの「次世代素材等レーザー加工技術開発プロジェクト」の概要と成果を報告。一般にCFRP材料は、連続繊維型の熱硬化性樹脂(CFRP)と短繊維型の熱可塑性樹脂(CFRTP)に分けることができますが、同プロジェクトではその双方を対象としており、3kWクラスの近赤外(1090nm)CWファイバレーザーのマルチパス照射によって、切断板厚3mmで6~10m/分の加工速度を実現、加工時の周辺樹脂部の熱損傷や蒸発も0.1mm以内に押さえることができたとのことです。

 午前のセッション後半の2本は、産総研・電子光技術研究部門の最新の研究開発成果報告。欠端雅之氏による「フェムト秒レーザー照射による物質プロセスと応用」では、200フェムト秒μJ級のファイバーレーザーシステムを開発して、CIGS太陽電池のスクライブ加工とジルコニア系セラミックス表面への周期構造を形成する応用事例が、吉富大氏による「多波長合成による超短パルス光技術の展開」では、超高速過程を計測・操作したり、非熱的高機能なレーザー加工・改質プロセスを実現するため、光で電子を自在に操る、ファイバーレーザーを用いた光ファンクションジェネレータ実現のための研究が紹介されました。長時間安定性と高精度同期の両方を兼ね備えているとのことです。(続く)

編集顧問:川尻多加志

 

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