海外生産シフトが進む我が国の光産業

10月16日(水)から18日(金)までの3日間、パシフィコ横浜で開催されたInterOptoと併催の光産業動向/光技術動向セミナーに出席して来ました。

(財)光産業技術振興協会が調査した我が国における光産業の国内生産額は、2011年度実績が7兆2,999億円で成長率は-10.3%でした。2012年度は7兆624億円で成長率は-3.3%と見込まれています。2013年度は横ばいとの予測です。

一方、この調査では日本企業が海外で生産したものを合わせた全出荷額も調べています。それによると、2011年度実績は15兆7,162億円で成長率は-2.7%となっています。2012年度は15兆6,798億円で成長率は-0.2%と見込まれています。
2013年はやや増加すると予測しています。

2011年度実績、2012年度見込み、2013年度予測ともに、成長率を見ると国内生産額より全出荷額のほうが上回っています。国内生産額の減少だけを見ると、日本の光業界は国際競争力を大幅に失ったという思い込みをしてしまいそうですが、全出荷額を見ればリーマンショック以降の厳しい状況の中、実際のところ日本企業は健闘しているという見方もできるのではないでしょうか。

分野別の2012年度見込みを見てみたいと思います。ただし、数値は講演予稿集に載っているグラフから読み取っているものもあるので、数値に若干の誤差がある事はご容赦いただきたいと思います。

海外生産比率は、全分野を合わせると55%強という値になります。このうち、比率の高い分野を見ていくと、情報記録分野が実に75%強、ディスプレイ・固体照明分野は70%弱、入出力分野は60%弱という結果です。

比率の低い分野では、センシング・計測分野が15%強、太陽光発電分野が約15%です。情報通信分野が約10%で、レーザ加工分野は大体2%位という感じですね。

講演予稿集のデータでさらに細かく見ていくと、先ず情報記録分野は2012年度見込みで国内生産額が約2,700億円、全出荷額は約1兆1,000億円で、75%強が海外で生産されているという事になります。

ディスプレイ・固体照明分野は2012年度見込みで、LCD装置が対前年度国内生産額-76%の1,506億円になるのに対して、全出荷額は-7%の3兆8,766億円で、約96%が海外生産になっています。LCD素子は-21%の1兆2,134億円に対し、全出荷額は+5%の1兆9,321億円で約37%が海外生産です。プロジェクタは国内生産額が+32%の784億円に対し、全出荷額は対前年比+9%の2,135億円で、約63%が海外生産となっています。

入出力分野は2012年度見込みでMFP(複合機)が約80%、光学式プリンタが70%弱、カメラ付携帯電話50%強、ビデオカメラが50%弱、デジタルカメラは40%弱が海外生産となっています(この講演では回答率が50%程度で低いものの、全体の傾向は掴めると言っていました)。

光通信分野では(この分野だけは2013年度予測にもとづく)、通信用半導体レーザのうち励起用の1.49/0.98μm帯の半導体レーザが海外生産シフトで横ばいの成長に留まり、1.3μm帯半導体レーザでも海外生産シフトが始まると予測しています。光ファイバケーブルもSMF(シングルモードファイバ)の海外生産が始まり、その比率は約20%になると予測しています。MMF(マルチモードファイバ)は急速に海外生産が進んでいて、その額は国内生産の倍以上になるとしています。

反対に、レーザ加工分野におけるレーザ応用生産装置は、殆どが国内生産で占められているという事なので(ファイバレーザといった発振器単体では、また別の話だと思います)、「優等生」と言いたくなりますね。

今回の講演では、何人かの方が「調査は昨年の政権交代前のものなので、それ以降の数値は上がると期待している」と述べていましたが、この言葉、非常に象徴的でかつ印象に残りました。
海外生産シフトは、特定の先端技術が成熟方向に向かえば向かうほど避けられない減少かもしれません。
光産業が国内雇用に貢献し続けて欲しいという面では、アベノミクスへの期待に加え、リストラで人員削減ばかりを考えるのではなく、新しい雇用を創出し続けるためにも研究開発や技術開発へ強力に力を注ぐ発想と行動が求められると思います。

編集顧問:川尻多加志

 

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