日本技術の逆襲を!

液晶テレビを始めとした我が国のフラットパネルディスプレイ(FPD)テレビ市場は、相変わらず厳しい状況が続いているようです。BCNの発表によれば、8月の国内販売額が2年ぶりにプラスに転じたものの、販売台数についてはマイナスが続いているという事です。日本のテレビメーカーの国際競争力も回復しているとは言い難いのが実情です。
3Dテレビ普及の当てが外れ、各社とも今は4kテレビに活路を求めているようですが、海外メーカーが仕掛ける価格競争にいつ巻き込まれるのか、予断を許しません。以前シーテックをレポートしたブログにも書きましたが、技術で勝ってビジネスで負けるというパターンを繰り返さないよう、くれぐれも注意が必要です。

10月23日(水)から25日(金)の3日間、パシフィコ横浜においてFPD International 2013が開催されました。

会場を歩いてみると、かつては華やかに展示されていたFPDパネルやテレビといった出展は目立たず、フィルムやテープなどの部材や製造装置、測定・検査・評価装置等がメインとの印象を受けました。

実際、シャープ、ソニー、東芝、三菱電機といった日本メーカーの単独ブースでの出展はありませんでした。約1ヶ月前に開催されたシーテックに出展して、まだ余り時間が経っていないという事もあり、液晶テレビの販売が思わしくないこのご時勢、広告宣伝費を絞り込んだのでしょうか?
その代わりかもしれませんが、主催者企画コーナーの「次世代高画質パビリオン」でシャープ、ソニー、東芝の3社の4k液晶パネルが展示されていました。

そんな中でもパナソニック系列のパナソニック液晶ディスプレイは単独出展、IPS技術をアピールしていました。
高コントラストの医療・業務用55インチ/多用途用31インチの4kパネル、ノートPC用やタブレット用、メディカル用の各種ディスプレイを展示して、20インチの4kタブレットはシーテックのプロダクト部門グランプリを受賞したものです。また、31インチの4kディスプレイとFHDディスプレイを並べて画質を比較、4kの美しさをアピールしていました。

さて、今回の展示会場で個人的に特に目立っていたと思うのが、日本の二つの研究開発会社です。

その一つ、シャープと共同でIGZOを開発した半導体エネルギー研究所は今回、OLED(有機EL)を前面に打ち出していて、その展示は多くの人の注目を集めていました。
半導体エネルギー研究所の4kフレキシブルOLEDディスプレイ
先ずは、13.5インチの4kフレキシブルOLEDディスプレイ。
その前には黒山の人だかりができていました。
トップエミッション構造と白色タンデムOLED、カラーフィルタによって実現したものです。

 
 

半導体エネルギー研究所のサイドロールOLEDディスプレイ
もう一つの注目が、5.3インチと3.4インチのサイドロールOLEDディスプレイです。
サイドロールとは、スマホなどの両サイドの一番端までをOLEDをロール状に曲げて額縁レスの表示ができるというもの。
この技術を応用して、上側を曲げて表示できる3.4インチトップロールOLEDディスプレイも展示されていました。胸のポケットに入れて、上からメッセージを見る事ができます。
この他、ともにフレキシブルなOLEDと電池を組み合わせたブレスレッド型ウェアラブル・ディスプレイも展示・提案していました。
 
 
JD
もう1社、目を離せないのがジャパンディスプレイです。

同社は、IGZOとともに低消費電力を実現するデバイスとして注目を集めているWhite Magicを開発。このデバイスは赤・緑・青に加えて、ディスプレイで最も使われる白色の画素を加え、画像に応じてバックライトをコントロールする事で約40%の低消費電力を実現するというものです。
このWhite Magicを適用したa-Si TFT-LCDモジュールは消費電力を50%削減、屋外モードで従来比2倍の高輝度を実現しています。同社は、このWhite MagicをOLEDにも適用して、5.2インチのFHDディスプレイを展示していました。

今回の展示会、かつては日本メーカーに対抗して派手な展示を繰り広げていたサムソンやLGはもとより、台湾の有力メーカーも出展をしていませんでした。市場や技術力をアピールする場所としての日本にはもう魅力を感じておらず、部材や製造装置、検査・評価装置などを物色する場所と思っているとしたら、とても残念な事ですね。
日本技術の逆襲を大いに期待します。

編集顧問:川尻多加志

 

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