オプトロニクス社のレーザー発振50年キャンペーン・ロゴマーク

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来年はレーザー発明・発振から50周年という記念すべき年にあたります。
弊社では来るべき2010年の1年間を通して「レーザー発振50年記念キャンペーン」を行いますが、それを通してレーザーに関する人々の関心を高めたいと考えています。そのためのキャンペーン・ロゴマークをデザインしましたので、一般に先だってご紹介いたします。
マークの中の赤・青・緑という3本の線は、今年発表された緑色レーザーを加え、漸く揃った「光の三原色」赤色、青色、緑色のレーザー光線を現わしています。3色が揃ったことで活躍する分野が増え、今後応用面でも大きな飛躍が期待されています。
因みにレーザーを世界で最初に発振させたのは米国の物理学者セオドア・メイマン博士(2007年5月5日没)で、1960年の5月16日にヒューズ研究所でルビーレーザを発明・発振しました。

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編集長の今月のコメント(2009年12月)

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編集長 川尻 多加志

光科学分野で活躍するフェムト秒レーザと産業分野で用いられているナノ秒レーザの中間にあるピコ秒レーザが,欧州を中心に注目を集めています。そこで,今月号の特集では千葉大学の尾松孝茂教授に,ピコ秒レーザとその応用に関する最新動向を企画していただきました。
教授が総論でも述べられているように,ピコ秒レーザはフェムト秒レーザに比べ高出力化に向いていて,ナノ秒レーザと比べればデブリの少ないアブレーション加工ができるという特長を有しています。レーザ加工における省エネ化にも適していて,波長変換もフェムト秒レーザより容易,さらにフェムト秒レーザの代表,チタンサファイアレーザが産業応用として見た場合にフォトンコストが高いのに対し,ピコ秒レーザは半導体レーザで直接励起できるために安いということです。欧州に比べ遅れていると言われるこの分野の研究・開発が,我が国でも進展する事を期待しています。
次世代スーパーコンピューティング技術推進事業が,政府の行政刷新会議の作業グループの事業仕分けで「限りなく予算計上見送りに近い縮減」とされ,事実上の凍結になるもようです。報道によれば,作業グループからは「民間3社のうち2社が撤退し,見通しが不透明だ」とか「開発できなければ二流国になるなんて,あり得ない。見直しても国益には何のマイナスにもならない」とか「科学技術予算は,自民党のお陰で確保できたかもしれないが,結果的に損をした。予算は足りないぐらいが,アイデアが出ていい場合もある」などという意見が相次いだそうです(11月14日付・読売新聞6面)。
NECが撤退したのは,民間企業が開発費用の一部を負担するプロジェクト方式に変わったため,製造段階でさらに必要な負担(150億円とも言われている)が世界的不況による業績悪化で重いと判断,離脱を申し入れたもので,ベクトル型で共同開発を行なってきた日立も自動的に離脱したのが実情。意味がないとか,達成できないといった理由でやめたわけではありません。プロジェクトは残った富士通と設計を変更した上で,平成22年度の一部稼動を目指していました。
折りしもこの11月,「TOP500プロジェクト」が最新スパコン・ランキングを発表しました。それによれば中国が5位と19位,ロシアも12位と,新興国の台頭が目立ちます。日本の「地球シミュレータ」は31位,ついにトップ30から転落してしまいました。
資源のない我が国は科学技術で生きて行くしかありません。国家戦略の自覚もなく,前政権が決めた事だという感情的視点から科学技術関連プロジェクトも無駄とのスタンスで行くなら,世界における地位はドンドン低くなって行き,やがて日本はアジアの片隅の本当に小さな国になってしまうのではないでしょうか。
ノーベル賞を受賞した小柴昌俊氏は,ご自身の研究に対する新聞記者からの「研究は何の役に立つのですか」という質問に「何の役にも立ちません」と言ったそうです。作業グループがそこにいたら,研究はすぐ中止でしょう。

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非営利活動法人日本フォトニクス協議会のお披露目フォーラム

最近NPOの話が続き申し訳ありませんが、設立記念のお披露目フォーラムの日取りと場所が、決まりましたのでお知らせいたします。
新年2010年の1月15日(金)に早稲田大学で開催いたしますのが、会場スペースの都合上、満員になった場合はお断りすることもありますので、なるべく早めにお申し込みください。
http://j-photonics.org/jpc.htm
特定非営利活動法人日本フォトニクス協議会(JPC)
設立記念フォーラム
Japan Photonics Council
日時  平成22年1月15日(金) 15:00-17:00
会場  早稲田大学理工学部 55号館1階 大会議室B
     〒169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1 
      地下鉄東京メトロ副都心線西早稲田駅出口3直結
      JR高田馬場駅徒歩15分
主催  特定非営利活動法人 日本フォトニクス協議会
参加費 無料
光技術の範囲は幅広く、我が国の研究・開発の時代の要請と共に発展してまいりましたが、多くの場合専門分野のつながりに限られていました。
日本フォトニクス協議会は、幅広い光技術の専門家の知識を集結し、協力することにより、光技術の人材と関連団体、企業、機関との連携を図って行きます。
10月27日に特定非営利活動法人日本フォトニクス協議会として認可されたのを記念して設立記念フォーラムを開催いたします。
プログラム
15:00-15:05  開催の挨拶——–羽鳥光俊 JPC理事長(東京大学名誉教授)
15:05-15:40  レーザーエネルギーと新しい産業の創成——–中井貞雄 JPC副理事長(レーザー学会会長、大阪大学名誉教授)
                                             15:40-16:15  レーザーディスプレイの新しいインパクト——–黒田和男 JPC副理事長(東京大学教授)
16:20-16:55  ますます発展する光通信——–三木哲也 JPCシニアアドバイザー(電気通信大学理事)
16:55-17:00  閉会挨拶——–中島啓幾 JPC理事(早稲田大学教授)
フォーラム終了後懇親会を行います。(参加費1,000円)
【参加申し込み/連絡先】
FAXまたは電子メールで申し込みください
〒162-0814 東京都新宿区新小川町5-5 サンケンビル1F オプトロニクス社内
         特定非営利活動法人日本フォトニクス協議会(JPC) 
         事務局長 小椋行夫
         電話 03-5228-3541
 FAX 03―3269-2551
E-mail jpcinfo@j-photonics.org   
         http://www.j-photonics.org  

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特定非営利活動法人日本フォトニクス協議会の設立登記完了

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本ブログの今年平成21年の6月11日に既報特定非営利活動法人日本フォトニクス協議会の設立登記が漸く本日11月13日に完了いたしました。
最初に内閣府にNPOの申請書を提出したのが5月13日、その後書類内容の修正を繰り返し、申請の受付日が7月27日、その後も補正手続きの必要を指摘され修正を行い、設立認証を得たのが10月19日、漸くこれで手続きも終わったと思っていたら、最後の詰めともいえる法務局での法人登記手続きの際に、住所表記の間違いが見つかり、再度補正手続きをし漸く本日登記が完了致しました。最初の書類提出から実に丁度6カ月、この間理事長の羽鳥先生には修正手続きの度に、何度もお手を煩わせあるいはご足労いただき、ご迷惑の掛けっぱなしでした。この場を借りてお詫びとお礼を申し上げます。
このような顛末で正式発足した日本フォトニクス協議会のミッションは、その幅広い活動を通じて、光技術の発展と光ビジネスの創出・確立を図ることです。具体的には関連団体、機関、企業と適切に連携しながら、我が国の光に関するこれまでの実績とノウハウをベースに新しいニーズを発掘し、加えてそれを実現するシーズ技術を開発します。そしてこれらの活動成果として、光技術立国日本を再構築し、グローバルな視点で人類の幸せに貢献することです。
また同時に光技術の立場から環境保護と資源エネルギーに関しての提言を行い、地球に優しいグリーン・テクノロジーの普及を推進します。
また日本フォトニクス協議会では、上記のミッションに賛同し、活動する個人・企業・団体が連携し、新たな価値を創造し、かつ共有できるNPO法人であることを目標としています。ご承知の通り光技術の範囲は幅広く、我が国の研究・技術開発も時代の要請と共に発展してきましたが、従来のやり方では専門分野に限られていましたので横の連携が少なく、社会貢献や影響範囲は限られ、その活動も継続的であるとはいえませんでした。そこで幅広い光技術の専門家の知恵と活動を結集し、協力することで、光技術の専門分野に横串を貫き、新しい技術立国日本におけるNPOのモデルを構築していくことをビジョンとしています。
これらのことを実現するために今回ご就任いただいた羽鳥光俊理事長はじめ中井貞雄副理事長、黒田和男副理事長、谷田貝豊彦副理事長ほか各理事のご専門ご経歴はまことに多士多様です。因みに羽鳥先生はこれまで映像メディア学会会長、電子情報通信学会会長、財団法人データベース振興センター理事長、社団法人情報通信技術委員会(TTC)理事長などを歴任してこられ、通信光学や放送工学がご専門分野です。中井貞雄先生はこれまで大阪大学のレーザー核融合研究センター長、光産業創成大学院大学学長等を歴任され、現在はレーザー学会の会長です。勿論専門分野はレーザー工学。現在東京大学教授の黒田和男先生と宇都宮大学オプティクス教育研究センター長の谷田貝豊彦先生は共に光学分野のオーソリティーです。このように光技術とは言え、それぞれ専門の違う先生方と多くの企業がスクラムを組み新しい挑戦をスタートしたばかりです。ご関心のある方は是非会員としてご参加・ご支援いただきますようお願いいたします。
特定非営利活動法人日本フォトニクス協議会
追伸)勿論のことながら月刊オプトロニクス誌はメディアとして本協議会の活動を支えていくつもりです。

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編集長の今月のコメント(2009年11月)

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20090114-kawajiri.JPG 編集長 川尻多加志

急速に普及が進んでいるブルーレイディスクですが,今後はインターネット上でもハイビジョンクラスの動画像が行き交うことが予想されていますし,さらに高精細なスーパーハイビジョンの研究・開発も進んでおり,メモリの世界においても,この流れに対応できる次世代超大容量メモリの研究・開発に注目が集まっています。その中でも,光メモリ分野では近接場光を用いたものやホログラフィックメモリ,2光子吸収を応用した多層メモリなど,様々な方式の研究・開発が内外で活発化しており,その進展から目が離せません。
今月号の特集では,次世代光メモリの有力候補の一つである2光子多層メモリに関する特集を静岡大学・工学部の川田善正教授に企画していただき,注目すべき最新の研究・開発にスポットライトをあててみました。
光メモリは記録や再生といったデータアクセス時以外には余計なエネルギーを使わず,また長期保存も可能でメンテナンスも不要なので,大きな省エネルギー効果を実現するグリーンITデバイスとしても注目を集めています。今後の研究・開発の進展を期待したいですね。
今年のノーベル物理学賞がチャールズ・カオ博士とウィラード・ボイル博士,ジョージ・スミス博士の三人に決まりました。カオ博士の受賞理由は光通信の発展に寄与した光ファイバ技術の開発。同氏は光ファイバのガラスの中に含まれる不純物などが損失の原因であり,これを取り除けば光ファイバ通信は実現できると提唱,この事を世界中に呼びかけ,まさに光ファイバ通信実現の伝道師ともいうべき役割を果たしました。その後,コーニングが実用的な低損失光ファイバの開発に成功して,続いて日本メーカーがさらなる低損失化を達成,世界中に拡がる現在の光ファイバ通信ネットワークの礎をつくりました。
一方のボイル博士とスミス博士の受賞理由は電荷結合素子(CCD)センサの発明。このCCDセンサの実用化でも日本の企業は大きな貢献を果たしました。1979年,松下電器は世界初の白黒CCDカメラを商品化,翌年にはソニーがカラーのCCDを用いたビデオカメラを商品化しています。
光ファイバ通信もCCDセンサも,現代の情報社会にはもはや欠かす事の出来ないもので,今回ともにオプトエレクトロニクス分野の研究・開発が受賞した事は何とも喜ばしい限りです。また,これらの実用化において日本企業が果たした役割には非常に大きいものがありました。アジア諸国のキャッチアップ等によって厳しい環境に立たされている感もある我が国の電子産業ですが,今後の頑張りに期待するとともに,その活躍にエールを贈って行きたいと思います。
総務省が発表した2009年第1四半期(6月末時点)ブロードバンド回線加入者数の調査結果によれば,FTTHは対前期比110.2%の1,588万8,686加入になり,ブロードバンドサービス合計数に占める割合も50%を超えました。2007年9月時点で一桁台の伸びに落ち,2008年12月には4.8%と伸び率が鈍化したFTTHですが,2009年3月には上昇に転じ今回二桁台の伸びに戻した格好です。このまま順調に推移して欲しいですね。

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弊社の新しいビジネス展開

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暫くの間、諸般の事情によりブログのメンテナンスを怠っていましたが、漸く復活出来そうですので、心機一転引き続き情報発信してまいります。
現在、弊社のホームページをリニューアルするための準備を進めていますが、大幅変更するまでの間はマイナーチェンジで凌いでまいります。
http://www.optronics.co.jp/index.php
トップページの右サイドに「光関連ビジネス」という項目があり、その下に■オプトキャリアと■オプトパートナーズ、■マルチクライアントスタディが収録されています。「オプトキャリア」は2004年にスタートした人材紹介ビジネスですので、皆さま既にご承知でしょうが、下の二つについては今年の9月からスタートしたばかりですので、あまりお馴染みでないと思います。
オプトパートナー」とは光産業に特化した「事業承継/M&Aコンサルティング」ビジネスで、光業界再編に少しでもお役にたてればと思ってスタートいたしました。いわば光業界の会社同士の結婚の仲人みたいなものです。
また「マルチクライアントスタディ」とは、いわゆるモノクライアントの受託調査が特定の企業様向けの個別のオリジナル調査であるのに対し、これは弊社が企画・提案する特定のテーマについて、複数のクライアント様からの共同受託に基づいて、調査・分析を行うものです。
 したがいまして、共同受託のため、個別のオリジナル調査と比べ、大幅なコスト削減が可能となります。
 現在「紫外線および赤外線領域のビジネス動向調査」を開始し、ご好評をいただいており、年内には調査報告書をまとめる予定です。本テーマにご関心のある方は今からでも参加が可能ですので、是非詳細をご覧いただき、参加していただきますようご案内申し上げます。

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編集長の今月のコメント(2009年10月)

20090114-kawajiri.JPG 編集長 川尻多加志

日本人はかつて「水と安全はタダ」と思っていました。ところが,今やミネラルウォーターをコンビニで買うことなど珍しくもなくなり,一方これまでには考えられなかった凶悪犯罪がずいぶん起きるようになったと感じる人も多いのではないでしょうか。
日本人の場合,お人好しというか,基本的に性善説に立っている人が多いようで,犯罪に対する警戒心が外国人に比べてかなり希薄です。海外旅行に行くと,それがよく分かると言いますね。実際,ちょっと油断していた隙に置き引き等の被害に遭ったという人も多いようです。
一方,外国人にとっては,財布やパスポートをタクシーに忘れても後から戻って来ることが信じられないようです。電車の中で居眠りをしていたり,女性が夜一人歩きするなど,日本では珍しいことではありませんが,彼らの目には何とも牧歌的と映っているかも知れません。
でも,最近では事情が変わって来ました。人々のモラルも下がって来たのか,騙す人間より騙される方が悪いという風潮も一部では見受けられるようですし,何の恨みもない無関係の人を平気で殺してしまうなど,信じられないような犯罪もかなり起きています。
インターネット絡みの犯罪も急増しています。パスワードやクレジットカードの暗証番号を盗まれたり,パソコンやサーバの中の情報を改竄されたり盗まれて悪用されるなどといった犯罪が実際に多発しています。つい最近では,入国審査に使われている指紋認証システムが,特殊なテープを人さし指に貼って指紋を変造する方法で簡単に破られてしまったという事件もありました。
情報セキュリティに対する関心とその重要性はますます高まっています。その期待に応えるには,現行の情報暗号技術だけでは不十分で,そこに光技術を絡めてより信頼性の高いセキュリティ・システムを確立して行こうという研究が注目を集めています。そこで今月号の特集は,光技術を用いた情報セキュリティの研究最前線を大阪大学・大学院情報科学研究科の谷田純教授に企画していただき,本分野の第一線で活躍中の方々に,その最新研究を紹介していただきました。
そう言えば,外国では当たり前の国家機密に関するスパイ防止法への関心が日本では低いように思えてなりません。改正不正競争防止法や改正外為法は今年成立しましたが,諸外国に比べると,その対策もまだまだ不十分のようです。
例えば米国,韓国,英国,ドイツでは不正取得が未遂でも加罰対象になりますし,米・韓・独に加え中国では,外国政府を利する目的の場合には罰則を重くもしています。国が安全保障上必要と判断すれば,企業の出願特許を非公開にもできるといいます(2009年4月22日付け読売新聞社説)。
日本では核兵器開発に絡むような先端技術装置の不正輸出に対する処罰も甘く,核物質関連の情報を漏洩しても懲役が1年以下では抑止力にも何にもならないと思うのですが。

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編集長の今月のコメント(2009年9月)

編集長 川尻多加志

青色LEDと青色LDの登場によって,例えばLEDを使用した屋外用大型フルカラーディスプレイは,もはや珍しいものではなくなりました。最近ではLED照明も普及し始めましたし,光ディスク分野ではハイビジョンクラスの高精細な動画像を記録・再生できるBlu-ray Discを実現して,これも家庭では当たり前のものになりつつあります。
しかしながら,緑色のLEDやLDとなると,波長を含めて現状ではまだ実用的に十分な特性を達成できていないというのが正直なところで,いわゆるグリーンギャップ問題が急務の課題となっています。このことは例えば,より高品質な液晶ディスプレイのバックライト用LEDや赤・緑・青色のLDを用いたプロジェクタを開発する際の障害となっています。この問題を解決しようと,いま緑色発光デバイスの研究・開発が内外で活発に進められています。
既に弊誌のニュース・フラッシュでもお伝えしているように,日亜化学工業は波長515nmのInGaN系CW緑色LDの開発に成功したと発表しました(応用物理学会・英文レター誌『APEX(Applied Physics Express)』より)。この緑色LDはGaN結晶の極性面であるC面を成長軸に作製したものです。515nmでのしきい値電流は53mAで,しきい電圧は5.2Vだそうです。510-513nmでの寿命は5,000時間で,出力は5mW(温度25℃時)を確認したということですが,一方では,まだしきい値が高く,高出力化に課題が残されているという見かたもあります。
 そのしばらく後になりますが,今度は住友電気工業が室温パルス発振する波長531nmの純緑色LDの開発に成功したと発表しました(同じくAPEXより)。純緑色領域での発振は世界で初めてとのことです。開発にあたっては,発光層に発生する内部電界の影響を弱めるため,結晶成長の方向を変えるとともに発光層の品質も高めたそうです。結晶の成長面や出力,しきい値電流・電圧など詳細は非公表のようですが,半極性面を使用しているもようです。同社によれば,発光層を制御することで緑色全波長領域をほぼカバーでき,これにより緑色LDにおける最適な波長が選択できるといいます。また電流を増加させても発振波長の変化が殆ど無いため,高電流下での高出力化にも対応するとしています。
 今月号の特集は,研究・開発が活発化する緑色発光デバイスのうちでも,特に注目の無極性面や非極性面を用いた発光デバイスを取り上げてみました。特集を企画していただいたのは京都大学・大学院工学研究科の川上養一教授です。特集では,各ご執筆者に最新の研究を発表していただきました。各研究のさらなる進展を期待しています。

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編集長の今月のコメント(2009年8月)

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20090114-kawajiri.JPG 編集長 川尻多加志

今月号の特集は,ラマン分光法の最新動向にスポットライトをあてました。企画していただいたのは学習院大学の岩田耕一教授。特集ではこの分野の第一線で活躍中の方々に,いま注目すべき最先端の研究を紹介していただきました。
岩田教授が総論で述べられているように,80年という長い歴史を持つラマン分光法は気体,液体,固体と,測定対象を選ばず,非常に幅広い試料の測定が可能です。この使い勝手の良さは,使用される光が紫外,可視,近赤外領域であって,この波長領域では空気や水がほぼ透明であるということに起因しているということです。さらに,ラマン分光法は光源や分光器,検出器など,測定者がそれぞれの要求に合った最適なものを選んで独自のラマン分光計を組み立てることができるなど,創意工夫によって測定結果を大幅に向上させることができるという特長を持っています。
ラマン分光法は,ハードウエアを始めとした技術的進歩を幾つも取り入れ,今も進化を続けています。また,我が国の研究水準は世界的に見ても高く,幅広い人材が活躍中です。本文野のより一層の発展を期待しています。
ここ数年,新興国を含めた太陽電池メーカが急増しています。根本的な背景にはフィード・イン・タリフ制度を始めとした各国の普及施策による市場の急拡大があるのですが,一方で製造ノウハウが余りなくても製造装置を買えば後はお任せで,ある程度の品質のものを作れてしまう,太陽電池もいわゆるターンキー製品になりつつあるという状況があるようです。
太陽電池の光電変換効率向上のための研究・開発では,内外の企業,大学,研究機関が熾烈な競争を繰り広げています。その一方で,かつて新興国にキャッチアップされた幾つかの先端技術製品と同じように,太陽電池においても例えば変換効率が少しくらい悪くても気にせず「安かろう,まぁ良かろう」の製品で十分という流れになってしまうのでしょうか。
去る6月22,23日の両日,日本科学未来館において第5回・産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター・成果報告会が開かれましたが,発表の中で2004年からスタートした各種太陽電池を用いた発電システムを設置したメガ・ソーラタウンのその後の不具合実例報告がありました。それによると,モジュールの裏面に焦げ付きなどができ,サブモジュールが発電しなくなった不具合が幾つか見つかっているということです。
メーカ点検によるモジュールやパワーコンディショナの交換率も,パワーコンディショナで9%,モジュールの枚数で2%なのですが,これをシステムとして見た場合,32%にもなるということです。メガ・ソーラタウンで実験中の太陽電池発電システムはそれなりの品質のものと思われますが,これが「安かろう,まぁ良かろう」製品で,一般家庭に導入された場合,将来おこり得るトラブルが心配になります。ぜひとも,国際標準に則った信頼性試験法の早急な確立と導入,さらには製品への表示を望みたいところです。

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編集長の今月のコメント(2009年7月)

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20090114-kawajiri.JPG 編集長 川尻多加志

 半導体デバイスは, Mooreの法則に沿うかたちで配線幅の微細化によりデバイスの高性能化を進展させて来ました。これからの方向としては,さらに微細化を進めることで高集積化・高密度化を図って行く「More Moore」と,これまでのCMOSデバイスに新機能を付加してデバイスの多様化・多機能化を図って行こうという「More than Moore」やCMOSとは全く異なる原理に基づくデバイスを目指す「Beyond CMOS」の方向に進んで行くと言われています。
 このうち「More than Moore」を具現化する基盤技術として,いま異機能集積・実装技術が注目を集めており,CMOSベースのシリコン上に光MEMSや光センサ等の機能を融合させる集積技術の進展が期待されています。内外では既にその実現のため,例えば格子常数や熱膨張係数が同じである必要がなく,材料の組み合わせ自由度が大きいウエハダイレクトボンディングや低温で且つハンダを使わないチップボンディング技術などに関する研究開発が活発化しています。
今月号の特集は,東京大学・先端科学技術研究センターの日暮栄治先生に企画していただいた異種材料光集積技術の最新動向をお届けします。特集の各ご執筆者にはエピフィルムボンディングやウェットボンディング,表面活性化ボンディング等,各種技術を用いて作製した最新の高機能光デバイスを紹介していただきました。
我が国の「国家基幹技術」である次世代スーパーコンピュータの開発から,NECと日立が離脱するそうです。このスパコンは1150億円を投入して神戸市のポートアイランド地区に建設中で,2010年度に稼動の予定でした。システムは専用MPUを用いるベクトル型と汎用MPUを多数用いるスカラ型の二つの演算部で構成され,ベクトル型をNECと日立が,スカラ型を富士通が担当していました。
NECは既に60億円をプロジェクトに投入したということですが,今後の製造段階ではさらに150億円が必要と言われ,同社は業績の悪化によってこの負担が重いと判断,離脱を申し入れたとのことです。NECとベクトル型の部分で共同開発契約を結んでいた日立も自動的に離脱となりました。
スパコン開発は,これまでは国がメーカを支援するかたちを採ってきましたが,今回のプロジェクトから,民間が開発費用の一部を負担する代わりに企業の事業転用を認めるというかたちに切り替わったそうで,世界的な不況の影響もあって,これが裏目に出たような格好となりました。
スパコンの研究開発は裾野の広い技術が結集して初めて成り立つもの。研究開発の過程や結果で得られる技術成果は「More Moore」や「More than Moore」を実現する技術開発にも貢献すると期待されています。さらに,完成した高性能スパコンは様々な分野に応用ができるわけですから,その開発は我が国の企業競争力を高め,延いては我が国全体の国際競争力向上につながるはずです。費用負担を含めナショナル・プロジェクトのやり方にも再考の余地はないのでしょうか。プロジェクトの今後が気になるところです。

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