みんな注目!ウェアラブル

1月14日から16日の3日間、東京ビッグサイトで「ウェアラブルEXPO」が開催されました。
ウェアラブルというキーワードがメディアを賑わしていますが、確かに展示会は盛況。各社の展示説明員の方からお話を聞くことも儘ならなかったのですが、今回は会場で見かけたメガネ装着タイプを含むウェアラブルグラスやヘッドマウントディスプレイなどを紹介します。

旭化成イーマテリアルズ◆旭化成イーマテリアルズ
同社の反射型ワイヤーグリッド偏光フィルムは、吸収が少なく、薄い樹脂フィルムならではの高い加工性を有している。可視光から近赤外までをカバーして、高温・高湿度でも使用できる優れた耐久性も持っているとのこと。
会場では、応用例としてOptinvent社の「ORA」デジタルアイウェアプラットフォームを展示。

カラーリンクジャパン◆カラーリンクジャパン
覗き込んだ先の空間に映像を表示できる同社の光学ユニットは、偏光ビームスプリッタとLCOSを組み合わせている。
ウェアラブルグラスに使用すれば、工事現場などで業務手順を説明する映像を見ながらの作業ができる。

   
 
 
ブラザー工業◆ブラザー工業
同社のヘッドマウントディスプレイ「AiRScouter」は、1280×720 pixelの高解像度、焦点距離も30cmから5mまで幅広く調整することが可能だ。
1m先の距離で13インチという画面サイズを実現するとともに、様々な機器に簡単に接続ができ、ずれにくく自然な装着感を実現したとのこと。

  
 
美貴本◆美貴本
同社の「Recon JET」は、長距離走や自転車走などの野外スポーツアスリート向け。ワイドスクリーンWQVGAディスプレイ(16:9)を搭載して、7mの距離から30インチのHD画面サイズを実現。高周囲照明でも読みやすい高コントラストと明るさも有している。9軸センサ(3D加速度計、3Dジャイロスコープ、3D磁力計)、圧力センサ(高度計&気圧計)、外気温センサ、光学式タッチセンサ、HDカメラ、スピーカ、マイクロホンなども内蔵。

ウエストユニティス◆ウエストユニティス
「InfoLinker」は工場等での作業に集中できるようコンパクトに設計されたウェアラブルグラス。
ディスプレイ部は瞳分割方式光学レンズを使用、1m先の距離で14インチの画面サイズを実現した。日差しの強い屋外でも画面を見ることができ、使用しない時はヘッドを上もしくは下に曲げてディスプレイを視野から避けることも可能。
センサは磁気3軸・角速度3軸・加速度3軸、カメラおよびマイクなども搭載されている。

ビュージックスコーポレーション◆ビュージックスコーポレーション
「M100 Smart Glasses」はWQVGAカラーの解像度を有し、アスペクト比は16:9、視野角14度、約35cm先に4インチの画像を映し出すことができる。
輝度は2000nits以下で、静止画500万画素、動画フルHDのカメラも内臓している。
将来的にはコンシューマ向け用途を目指したいが、当面は生産現場での用途開発を行ないたいとのことだ。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | みんな注目!ウェアラブル はコメントを受け付けていません

新たなる旅立ち 一般社団法人日本光学会が活動をスタート

 1月16日の金曜日、東京都板橋区の「ハイライフプラザいたばし」において、一般社団法人日本光学会の設立記念シンポジウムが開催されました。

 日本光学会は、これまで公益社団法人応用物理学会に属する分科会の一つでしたが、昨年9月に一般社団法人として登記を行ない独立、この1月から本格的に学会活動をスタートさせました。今回のシンポジウムは、これを記念して開催されたものです。

 日本光学会の前身である光学懇話会は、応用物理学会の分科会として1952年に設立されて以来、定期刊行の会誌や英文論文誌の発行、年次学術講演会やシンポジウムの開催、14に及ぶ研究グループ活動などを含め、活発な活動を展開してきました。

 ところが2011年、公益法人制度改革法に伴って、親学会である応用物理学会が公益社団法人となり、日本光学会によれば、その活動も大きく制約を受けることになります。具体的には国際会議や国内会議の共催、他学会とのMOU(Memory Of Understanding)締結も独自の責任で行なえず、対外的に対等な立場を維持することも難しくなり、国際的なアピアランスが悪くなっていったとのことです。

 そこで2012年の11月、同学会内に将来問題検討委員会が設立され、2013年1月の新旧合同幹事会において一般社団法人日本光学会の設立を答申、2014年3月の幹事会で、その設立と現分科会活動の新法人への移行が三分の二以上の賛成で承認されました。これを受けて昨年6月には会員による投票が行なわれ、投票資格者1,432名のうち投票総数853票を得て、うち774票(93%)の賛成で新法人の設立が決まりました。

「大事なのは人」と語る黒田和男会長

「大事なのは人」と語る黒田和男会長

 初代会長の黒田和男氏(宇都宮大学)はシンポジウムの挨拶の中で「10年前に約1,800名だった会員が昨年は約1,400名と、会員数も減少傾向にあったが、この閉塞感を打破するためにも独立の道を選んだ」と述べるとともに「新生日本光学会は、これまでの事業を殆どそっくり引継ぐ。国際光年の事業にも全面協力する。財政的に不安もあるが、学会は人と人の繋がりで出来ている。大事なのは人」と述べていました。
 
 日本光学会の会員数は現状では約700名ですが、未だ登録していないだけの人もいるということで、会員数は800~900名にはなるだろうと予想されています。
同学会では、将来的には1,000名を目指したいとのことでした。

 この後、応用物理学会会長の河田聡氏(大阪大学)が来賓の挨拶を行ない「応用物理学会としてもデリケートで悩ましい問題であったが、これからは対等の関係で光学の発展に努めたい。シンポジウムを拡充して、若い研究者・技術者が全体を見渡せるような情報が手に入るよう気を配ってほしい」と述べていました。

 続く日本光学会副会長の谷田純氏(大阪大学)は設立の経緯を報告、「今回の設立は持続的発展を目指した20年、30年先のための改革。学会は人がすべて、日本光学会を人を育てるところにしたい」と述べていました。

 引き続いてのシンポジウム講演は、東京大学の荒川泰彦氏が「量子ドット・フォトニック結晶ナノ共振器結合系における光学-固体共振器量子電気力学の発展-」、慶應義塾大学の斎木敏治氏が「ナノオプティクスのこれから-新しいアプローチを求めて-」、大阪大学の伊東一良氏が「誘導ラマン分光顕微鏡-非線形光学への期待をこめて-」、宇都宮大学の武田光夫氏が「シンセティック統計光学-波動場の揺らぎの制御と統計的秩序の生成-」、ニコンの市原裕氏が「高精細光学系開発における波面測定法の発展」、キヤノンの松田融氏が「すばる望遠鏡用主焦点補正光学系の開発」と続き、それぞれの最先端の研究・開発成果を紹介しました。
 
 シンポジウム終了後は情報交換会が行なわれ、祝福とこれからの期待について和やかな雰囲気の中、活発に議論が交わされていました。
 
 なお、日本光学会の事務局は板橋区役所に隣接する板橋区情報処理センターに置かれる予定です(正式には4月から)。
連絡先は以下の通り。

 一般社団法人 日本光学会
 〒173-0004 東京都板橋区板橋2-65-6 板橋区情報処理センター
 E-mail:info@myOSJ.or.jp

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: ニュース, レポート | 新たなる旅立ち 一般社団法人日本光学会が活動をスタート はコメントを受け付けていません

謹賀新年

新年、明けましておめでとうございます。
昨年中は大変お世話になりました。
本年が少しでも明るい方向に進んでいくよう願ってやみません。

国内では、大胆な改革による経済成長の実現に期待が集まっていますが、一方で世界に目を向けると、イスラム国を始めとしたイスラム過激派のテロやロシアとウクライナ間の紛争など、相変わらず喜べない状況が続いています。
我が国の外交面においても、中国や韓国の対日強行姿勢は変わっていませんし、日本人拉致に対する北朝鮮の緩慢な対応などを見ていると、引き続き難しい対応が求められるようです。

臭いものには蓋とか、一時しのぎの妥協といった目先の判断ではなく、言うべき事は言うという姿勢で、政府には中・長期の戦略をしっかりと持って、事にあたってほしいと思います。

本年も何卒よろしくお願いいたします。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: Voice | 謹賀新年 はコメントを受け付けていません

来年もよろしくお願いいたします

 2014年もあと少しで終わりです。時が経つのは速いものですね。

 今年を振り返ってみると、光業界の一番のニュースはやっぱり
赤﨑先生、天野先生、中村先生、日本人三人によるノーベル物理学賞の受賞ではないでしょうか。
改めてお祝いを申し上げたいと思います。
さてさて、来年はどんな年になるのでしょう。
 
 この一年、私の駄文にお付き合いいただきまして、本当に有難うございました。
これに懲りず、来年も何卒よろしくお願い申し上げます。
 ただ、今年後半は弊社主催の展示会併設セミナーやら別媒体への原稿執筆、
遅れてしまった特集企画や原稿執筆依頼等で手一杯になってしまって、
ブログ更新がずいぶん滞ってしまいました。すみませんでした。

 皆様方のご多幸をお祈り申し上げています。
 良いお年を。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: Voice | 来年もよろしくお願いいたします はコメントを受け付けていません

時代はカーフォトニクスへ

1412827900748 10月9日(木)、東京は目白の日本女子大学・新泉山館において第133回微小光学研究会が開催されました。主催は応用物理学会・日本光学会・微小光学研究グループ、今回のテーマは「自動車を進化させる微小光学」でした。

 我が国の電子産業が韓国、台湾に加えて、中国などの追い上げによって、かつてのような競争力を失ったと言われる中、自動車産業はそれに代わって日本経済を支える屋台骨になっているとの感があります。使われる部品なども多岐に渡り、それだけに産業としての裾野は非常に広く、雇用という面でも大きく貢献しています。
 その自動車は、衝突防止センサなどの運転支援システムの搭載が当たり前になりつつあり、最終的には自動運転を目指し、2020年は自動運転元年になるとも言われています。そんな中で、光技術がどのように用いられていくのか。研究会では自動車用光部品や加工技術、運転アシスト技術など、進化する自動車関連光技術に関する最新の話題が紹介されました。

 当日行なわれた講演は全部で9本でしたが、ここでは豊田中央研究所の各務学氏による基調講演「転換期にある自動車技術と光の貢献」から、いくつかを紹介したいと思います。講演では、先進運転支援システム(ADAS)をさらに高度化する光技術としてセンサ、通信、ディスプレイ、照明等を概説、高速光通信用低コスト部品の研究や国際標準の現状が紹介されました。

 先ずはレーザレーダですが、CMOS基板上に超高感度の単一光子検出デバイス(SPAD:Single Photon Avalanche Diod)アレイと信号処理回路を一括形成したイメージセンサを用いて、最悪の条件下(白昼下、黒色ターゲット)でも80m前方の人間を検出することが可能になったとの事です。
 夜間の検出性能を高めるための近赤外線カメラも実用化されていて、100m以上前方の人間をディスプレイ上で検出できるそうです。認識性能の向上の研究開発においては、マルチバンドカメラを用いた反射分光スペクトルによって、人間の肌やアスファルト、草木、自動車等の識別が可能になりました。課題は光学系の小型化と低コスト化との事。

 照明では、ハイビームによる可視範囲の確保を行ないながら、対向車や歩行者の防眩を行なう配光可変ADB(Adaptive Driving Beam)の搭載が進んでいて、アウディA8に搭載されたMatrix LED Head Lightと呼ばれる25個のLEDアレイを用いたADBシステムが注目されています。

 車載Ethernetでは、UTP(Un-shield Twist Pair)とSTP(shielded Twist Pair)の電線を用いた2方式とPOF(Plastic Optical Fiber)の3方式の適用が検討されていて、それぞれの標準化が進んでいるとの事。

 光トランシーバの低コスト化においては配索、コネクタスペース、軽量化を実現できる一心双方向(BIDI)通信を実現するための研究開発が進んでいます。自己形成光導波路技術を用いた2波長利用BIDIモジュールでは、光物理層としてコア直径1mmのPOFと波長500/660nmのLEDを用いて、250Mbps以上の高速LEDと8PAM以上の多値化を行なって1Gbps伝送が可能との事。また、コア直径200μmのPCS(Plastic Clad Silica)と波長780/850nmのVCSELを用いた自己形成技術によるBIDIモジュールでは、16PAM以上の多値化で10Gbps伝送が可能になったそうです。
 コア径とNAが大きいために接続トレランスが大きく、部品コスト、実装コストが小さくなるというメリットを持つマルチモード光ファイバ(MMF)は、一方で伝送モード分布(MPD)を精密に管理する必要があります。自動車では複数の電線を束にしたハーネスが組配線中に沿って配索されるので、ネットワークにおいて様々な問題が生じます。信頼性の高い通信品質を保つためのMPD定量化法の標準化が求められており、その現状も紹介されました。

 講演はその後、名古屋大学・山里敬也氏による「高速イメージセンサーを用いたITS可視光通信」、明星大学・齊藤剛氏による「ガソリンエンジンにおけるレーザー着火」、前田工業・三瓶和久氏による「自動車におけるレーザー加工」、産業技術総合研究所・新納弘之氏による「CFRP材料のレーザーによる加工」、パイオニア・靭矢修己氏による「車載レーザーヘッドアップディスプレイ」、デンソー・高須賀直一氏による「自動隊列走行におけるLIDARを用いた白線検知技術」、慶応義塾大学・青木義満氏による「運転支援システムのための歩行者検知技術」、東京工業大学・実吉敬二氏による「ステレオカメラによる障害物検出」と続き、それぞれのホットな研究開発の現状が報告されました。

 来年は、1815年にフレネルが光の波動説を唱えてからちょうど200年にあたり、国際光年でもあります。この国際光年の協賛事業である第20回のMICROOPTICS CONFERENCE(MOC’15)も、来年の10月25日(日)から28日(水)までの四日間、福岡国際会議場で開催されます。
 
 開会の挨拶を行なった微小光学研究グループ実行委員長の早稲田大学・中島啓幾氏と閉会挨拶を行なった同研究グループ代表の東京工業大学・伊賀健一氏も述べられていたように、今回のテーマ、自動車を進化させる微小光学でしたが、同時に微小光学を進化させる自動車という捉え方もできるくらい、自動車産業の持つインパクトは強いと言えるでしょう。まさに、時代はカーエレクトロニクスからカーフォトニクスへと進んでいます。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | 時代はカーフォトニクスへ はコメントを受け付けていません

赤﨑先生、天野先生、中村先生、ノーベル物理学賞、おめでとうございます

赤﨑勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授がノーベル物理学賞を受賞しました。ついに青色LEDの研究開発が評価されたのです。
先生方には、これまでに何回も原稿を執筆していただいたり、インタビューを受けていただいたりと、大変お世話になってきました。本当におめでとうございます。そして、一緒にお仕事ができたことを誇りに思います。有難うございました。
振り返れば、青色発光材料の本命はZnSeだと言われた時期がありました。当時、GaNの研究をしている方は、圧倒的少数派だったと記憶しています。
そんな状況の中で、研究を進めていた先生方は、さぞや孤独であったろうと思います。そんな環境においても、孤独を恐れず自分を信じて前に進んで行った、その勇気に敬服します。イノベーションとはそこから生まれて来るのでしょう。


話は変わりますが「イノベーション・ジャパン2014~大学見本市&ビジネスマッチング~」が東京ビッグサイトで開催されました。このイベントは、我が国の大学や公的研究機関などから創出された研究成果を社会に還元するとともに、技術移転の促進と実用化に向けた産学連携マッチング支援の実施を目的に開かれたもの。主催は科学技術振興機構(JST)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)です。今回で11回目を迎えました。
今年のテーマは「知の融合~広がる未来」です。500を超える大学とベンチャー企業などが参加して、その研究成果や開発技術を展示、プレゼンテーション等を行ないました。

ということで、すべてを紹介することはできないのですが、今回はNEDO支援先企業展示ブースの中の「エネルギー・環境分野」、「ナノ・マテリアル分野」、「医療・ライフサイエンス分野」で目についた光関連の開発技術を紹介します。

ナイトライド・セミコンダクター

ナイトライド・セミコンダクター

「UV-LEDの高出力化、大面積UV-LEDの高効率面発光技術の低コスト量産実用化技術開発」を手掛けたのはナイトライド・セミコンダクター
UVランプの性能を上回る高出力・高効率を実現しました。樹脂砲弾型は高効率・低コストが特長で、表面実装(SMD)型は1.05mmの上下電極の大面積チップを搭載することで高出力・高効率(365nmで600mW、発光効率35.3%、385nmで850mW、発光効率52.7%)を実現。LEDチップを基板上に直接実装したチップ・オン・ボード(COB)型では、1.05mmのチップを高密度実装することで世界最高出力(365nmで25W、385nmで49.78W)を達成しました。

インターエナジー

インターエナジー

「家庭における省エネルギー通信システム実現に向けて:待機電力ゼロの小規模光ネットワークの開発」を手掛けたのはインターエナジー
新開発の熱レンズ素子は、石英ガラス製のセルに高純度精製された色素溶液を封入、ここにレーザを照射すると光吸収→温度上昇→熱膨張→密度低下→屈折率低下が順に起こって、信号光の進行方向を最大15度変えることができます。
この熱レンズ素子に、信号光1本と周辺制御光6本を束ねた特殊ファイバ、コリメートレンズ(2枚)、受光レンズ、六角錐台プリズム、集光レンズ、信号光ファイバを7本束ねた特殊ファイバを加えて構成した1×7の光制御型スイッチを実現しました。
これによって、常時通電の現行FTTH用光LANシステムに対し、機器が動作する時だけ通電すれば良い、省エネ型の高速光LANを構築できるとのことです。

シーアンドアイ

シーアンドアイ

「光導波モードによるモバイル型バイオセンサ」を開発したのはシーアンドアイ
モノリシックな光源とコリメータレンズ、透過型グレーティング+グリズム、高性能レンズ+2次元CMOSイメージセンサで構成され、かつファイバレスという特徴を持つ光学エンジンの開発によって、産総研開発の超高感度バイオセンサ(導波モードセンサ)の大幅な小型化に成功しました。
モバイルサイズながら4チャンネル同時測定が可能で、複数項目の一括診断も可能。センサチップは使い捨てなのでコンタミネーションの心配がなく、臨床現場でも安心して使えます。
4チャンネルの分光スペクトルメータとしても使用できるので、簡易血液検査やウィルス感染の診断などを行なう医療機関を始め、保健所や工業排水管理など、様々な用途や場所で使用できるとのことです。

ユニタック

ユニタック

「高ピーク&ナノ秒パルス半導体レーザ治療器の開発」を行なったのはユニタック
リウマチ、筋肉痛、急性肉離れ、関節の慢性非感染性炎症などの疼痛緩和用半導体レーザ治療器です。低出力レーザ治療は血流改善や神経伝導の抑制などの作用があり、治療中に痛みや熱さがなく、低侵襲で高い疼痛緩和効果を発揮する治療法。水やヘモグロビン、メラニンに対する吸収が少なく、生体透過性に優れた波長の一つである830nm半導体レーザを使用して、最大出力10Wのパルスレーザで、より深い患部まで光を到達させることができます。帯状疱疹痛など、皮膚科での使用も可能で、980、1470、1940nmの半導体レーザを使用して軟組織の切開、焼灼、止血にも適用できるそうです。

相馬光学

相馬光学

「太陽電池評価用分光感度測定装置および分光放射計」を開発したのは相馬光学
従来の単色光照射装置では50mm角の単色光ビームが限界でしたが、同社では300~2000nmの広い波長範囲において、150mm角のサイズで、±2.5%以内の高均一度照射を実現しました(IEC規格準拠)。
これだけの照明には、従来なら1kWまたはそれ以上の水冷装置が必要でしたが、それを500Wの空冷キセノンショートアークランプで実現。大面積太陽電池の分光感度測定はもちろん、強力な単色光を照射できるので、植物やその他の生体物質等への光の影響の研究にも最適としています。

エルシード

エルシード

「低コスト高効率LED用モスアイ加工サファイア基板」を開発したのはエルシード
これまでの加工サファイア基板(PSS)が数ミクロンの凹凸構造を持つのに対し、同社のモスアイ加工サファイア基板(MPSS)はサブミクロンの微小な周期構造を有しているため、光の回折効果によって正面の輝度が増加します。さらに表面の平坦化に必要なGaN下地層の厚さもPSSの半分で済むため、エピコストの低減とウエハ反り軽減に伴う素子特性の歩留まりも向上。
ナノインプリント技術とドライエッチング技術によるモスアイ加工は、サファイア、GaN、AlGaInP、SiC、ITOなど、様々な材料基板に適用が可能で、LED以外への応用も期待できるとのことです。

最後に、今回レポートした3分野においても紹介できなかった幾つかの光関連開発技術があったことと、「情報通信・装置デバイス分野」や「ロボット・モノづくり・福祉分野」でも、同様に開発技術が展示されていましたが、時間の関係で取材できなかったことをお断りしておきます。

下記の「イノベーション・ジャパン2014」のアドレスをクリックした後に、さらに左の「NEDO支援企業・研究者」をクリックすると(光関連を含めたすべての開発技術の)一覧が出てきますので、参考にしてください。

https://www.ij2014.com/inv2014/jp/search_zone.php

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | 赤﨑先生、天野先生、中村先生、ノーベル物理学賞、おめでとうございます はコメントを受け付けていません

FT-IR分光計に注目

 赤外分光法は、物質に赤外光を照射した時、透過あるいは反射した光を測定することによって、調べたい試料の構造を解析したり、定量分析を行なうものです。
 赤外分光法で得られる赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)は、物質固有のパターンを示しており、赤外分光が古くから活用されてきたこともあり、すでに数十万というデータが存在しています。近年ではコンピュータの発達によって、試料のIRスペクトルとの照らし合わせも格段にスピードアップし、赤外分光法は薬学、農学、生物学などの広範囲な分野で用いられています。
 赤外分光計には分散型とフーリエ変換(FT-IR)型の2種類がありますが、分散型は回折格子を用いて試料を透過した後の光を分散、各波長を順次検出器で検出します。一方のFT-IR型は干渉計を用いていて、分散させずに全部の波長を同時に検出できます。コンピュータでフーリエ変換を行ない、各波長の成分を計算します。
 FT-IR型は分散型に比べ、多波長を同時検出できるので各波長での時間的なズレがなく高速測定も可能です。またスループットが高く、高い波数分解能を有し、測定波数域の拡張が可能といった特長を持っています。歴史は分散型のほうが古いのですが、最近ではFT-IR型が主流になっています。

 9月の初め、幕張メッセで行なわれた「JASIS 2014」で、各社が注力するFT-IR分光計を探ってみました。

日本分光の「FTIR-6000FV」

日本分光の「FTIR-6000FV」

 日本分光の「FT/IR-6000FVシリーズ」は、干渉計および試料室を含めたすべての光路を真空にでき、大気中の水蒸気や炭酸ガスによる妨害ピークを除去することで高感度の測定を可能にしました。
 自動BS交換ユニットと自動窓切換ユニット、もしくは自動ゲートバルブユニットを組み合わせることで、真空状態を保ったまま広い波数範囲の測定を自動で連続して行なう事ができます。
 全反射(ATR)、高感度反射、拡散反射測定用などの付属品を取り揃えています。
 
 

島津製作所の「IRTracer-100」

島津製作所の「IRTracer-100」

 島津製作所の「IRTracer-100」は、SN比が60,000:1、最高分解能0.25cm-1、20回/秒の高速度測定が可能です。固体高分子電解質膜を利用し、干渉計内の水分を電気分解して除去する除湿器を採用。アドバンストダイナミックアライメント機構を搭載することで、従来装置より滑らかで高精度に移動する移動鏡を実現、わずかなウォーミングアップ時間で干渉計の状態を最適かつ安定化させることに成功しました。自己診断、モニタリング技術によって装置の管理も素早く簡単にできるとのことです。1回反射型ならびに水平型ATR、拡散反射、10度正反射、70度または75度高感度反射測定装置など、オプションも豊富。

アジレント・テクノロジーの「Cary 630 FTIR」

アジレント・テクノロジーの「Cary 630 FTIR」

 アジレント・テクノロジーの「Cary 630 FTIR」は最小B5サイズ、重量はわずか3.8kgの超コンパクトFT-IR分光計。豊富なアタッチメントにより透過、各種ATR、拡散反射、10度ならびに45度正反射などの幅広い測定法に対応でき、アライメントフリーのAgilent Flextrue干渉計を採用、専用に開発されたMicro Labソフトウェアによって、すべての操作は画面に表示されるナビゲーションにしたがってボタンをクリックするだけ、誰でも簡単に使用できるとのことです。ハイエンドモデル「Agilent Cary600シリーズFTIR」も出展していました。

サーモフィッシャーサイエンティフィックの「Nicolet iS50R FT-IR」

サーモフィッシャーサイエンティフィックの「Nicolet iS50R FT-IR」

 サーモフィッシャーサイエンティフィックの「Nicolet iS50R FT-IR」は同社リサーチグレードの最高峰モデル。SN比55,000:1、最高波数分解能0.09cm-1、Vectra-Plusステップスキャン干渉計の搭載により130スペクトル/秒の高速スキャン性能を実現。この他、マルチチャンネル並列信号入力対応、位相変調測定やナノ秒時間分解測定が可能なステップスキャン機能を標準搭載しており、さらに4ポジション光源ミラーや3ポジション検出器ミラーなどの拡張機能も標準搭載、拡散反射や1回反射ATRを始め「Nicolet iS50シリーズ」のすべてのアクセサリに対応します。同社はこの他にも、スタンダードタイプやコンパクトタイプも取り揃えています。

ブルカー・オプティクスの「ALPHA」

ブルカー・オプティクスの「ALPHA」

 
 ブルカー・オプティクスのFT-IR分光計「ALPHA」はA4用紙1枚分というコンパクトサイズなので、必要な時に必要な場所に運んで、すぐに分析を行なうことが可能。測定前の煩雑な光学調整等も不要とのこと。モジュール構造を採用したオプションのサンプリングアクセサリを用いれば、透過、ATR、拡散反射、外部反射、1回反射水平型などの幅広い測定法に対応できます。同社は「TANGO」や「MPA」といった近赤外を用いたFT-NIR分光計も取り扱っていて、どちらも干渉計には特許技術であるRockSolid干渉計が採用されています。
 
 
 高機能化や小型化も進み、さらに使いやすくなっているFT-IR分光計。今後の動向に注目です。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | FT-IR分光計に注目 はコメントを受け付けていません

交流の場(下)

 前回ブログで取り上げた「第4回先端フォトニクスシンポジウム」のレポートを続けます。

 荒川泰彦・東京大学教授と河田聡・大阪大学特別教授による挨拶、末松安晴・東京工業大学栄誉教授と藤嶋昭・東京理科大学学長による特別講演、そしてポスター発表の後はいよいよ午後の講演。美濃島薫・電気通信大学教授が「超高精度の光のものさし:光コム」、藤田克昌・大阪大学准教授が「超解像顕微鏡~光学系の限界を超える~」、それぞれの最新研究が紹介されました。

 続いては若手講演です。石井順久・東京大学助教による「軟X線アト秒パルス発生とその分光応用へ向けて」、東京工業大学の顧暁冬・学振特別研究員の「Bragg反射鏡導波路を用いた超高解像光ビーム掃引」、丸山美帆子・大阪大学特任助教の「光で創る結晶、光を創る結晶」、マーク・ホームズ・東京大学特任研究員の「室温動作GaN量子ドット単一光子源~量子情報処理集積回路の室温動作実現への道筋~」、NTTの野崎謙悟・研究員の「フォトニック結晶とナノ加工技術が可能にする極低パワー光制御素子」と、5本連続で研究成果の報告が行なわれました。

 休憩を挟んで最後の特別講演は、総合科学技術イノベーション会議の久間和生議員による「日本の科学技術イノベーション政策~先端フォトニクスへの期待~」でした。
 総合科学技術会議は、この5月から「イノベーション」という言葉が加わり、総合科学技術イノベーション会議(CSTI:システィ)という名称になりました。従来の科学技術振興に加え、イノベーションを起こすことが求められた結果の名称変更です。

 産業界からの研究発表が減っていることを危惧していると述べた久間議員、内閣府で先ず感じたのは「日本は産業競争力強化のための国家戦略が弱い」ということと「大学や国研を中心に新技術はあるが、製品に結びついていない」ことだったそうです。
 この問題を解決するためには、イノベーションによって強い産業をより強くするとともに、新しい産業を作るべきだとして、それには研究開発力とものづくりの強化に加え、欧米並みのビジネスモデルを作って連動させることが必要で、持続的イノベーションと破壊的イノベーションに加え、基礎基盤も疎かにしてはいけないと指摘。
 イノベーション人材の育成については、全てをこなせるスーパーマンを期待するのではなく、様々な技術分野や知財等において精通した、それぞれのプロフェッショナルを育成して行くべきだと述べていました。

 講演では、省庁縦割りの弊害を脱却するために作られた科学技術イノベーション予算戦略会議、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の仕組みとこれまでの取り組みも紹介されました。今後は分野横断技術としてICT、ナノテクノロジー、環境技術を強化するとともに、2020年のオリンピック・パラリンピックに向けたイノベーション加速案件を年内にも決めるとのことでした。

 また、イノベーションを日本全体で起こす環境作りのためには、研究開発法人を中核としたイノベーションハブを強化していくべきだとも訴え、成功例としてドイツのフラウンフォーファー研究機構とマックスプランク研究所の取り組みが紹介されました。

 人材の流動化も重要で、二つの組織に所属して双方で業務を行なえるクロス・アポイントメント制度を積極的に推進するとともに、若手、女性、ベンチャー企業、中小企業が挑戦できる環境作りを進めて行くとのことです。

 講演の最後に、久間議員はフォトニクス分野への期待として、視野を広く出口を明確に考えながら技術を育てて行って欲しいと述べていました。また、「博士」とは、一つの分野を極めたら他分野に行っても勉強すれば通用する人を言うと述べ、学者になるだけが人生ではないので、産業界にどんどん入ってきて欲しいと、講演を締めくくりました。

 シンポジウム閉会の挨拶では、日本学術会議連携会員、総合工学委員会ICO分科会副委員長の五神真・東京大学教授(大学院理学系研究科長、理学部長)が、日本学術会議において若手が参加する場をつくるという試みは10年後、20年後に花開き、学術分野において重要なものになって行くだろうと述べ、またフォトニクス分野では新しい力を生み出すパイロット的研究がこれだけ多く出せるのだから、世の中を変えていくために、実例を示しながら進んで行こうと述べていました。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | 交流の場(下) はコメントを受け付けていません

交流の場(上)

シンポジウム会場 8月8日、東京・乃木坂の日本学術会議講堂において「第4回先端フォトニクスシンポジウム」が開催されました。主催は日本学術会議総合工学委員会ICO分科会で、共催は応用物理学会。

 このシンポジウムは、光科学技術の歴史と現状を俯瞰するとともに最先端の話題を紹介する講演会を開催して、この分野が生み出したインパクトや今後のイノベーションを国内にアピールし、さらに様々な分野における黎明期世代から現役若手研究者までを発表者とすることで、学会間の交流、世代間の交流、次代の若手育成、新産業やコミュニティーの創成の推進を目的に開催されたものです。
 約300名が参加した今回のシンポジウム、少し長くなりますので、2回に分けてレポートします。

 シンポジウムは先ず、主催者を代表して日本学術会議会員第三部部長、総合工学委員会ICO分科会委員長の荒川泰彦・東京大学教授が開会の挨拶を行ない、日本学術会議やICO分科会の活動などが紹介されました。
 日本学術会議は、1949年に設立された我が国の84万人の科学者を代表する機関。会員は210名、連携会員は2,000名に及びます。第1部の人文・社会科学、第2部の生命科学、第3部の理学・工学の三つの部に分かれていて、ICO分科会は30の分野別委員会の一つである総合工学委員会の下部に属します。
 ICOはInternational Commission for Opticsの略で、日本語名称は国際光学委員会。ICO分科会は、我が国における領域委員会として光科学技術分野での連携を推進しており、来年の国際光年においても積極的に活動を担うとのことです。ICOは世界の54の国と地域が参画しており、この8月末に荒川教授は会長に選出されました。2017年9月には総会が横浜で開催されます。
 荒川教授は、今回のシンポジウムを研究者相互の交流の場として積極的に活用してもらって意義あるものにしたいと述べるとともに、日本学術会議に親しみを持ってもらう機会になればと述べていました。

 続いて応用物理学会会長であり、日本学術会議連携会員の河田聡・大阪大学特別教授が登壇、応用物理学会で進められている変革への取り組みを紹介しました。半導体産業を含め、日本の産業界を取り巻く状況は変化しており、世界における日本の科学技術のプレゼンスの位置も変わりつつある中、応用物理学会は現在変革を推進中とのことです。
 新しい試みとしては、これまで分かれていた17大分類を、9月に北海道で開かれる秋季学術講演会から再編、フォトニクス分野では、従来の光3、量子エレクトロニクス4、光エレクトロニクス5の大分類を光・フォトニクスに統合します。
 分科会も刷新して、新たにフォトニクス分科会(仮称)を設立して、来年4月から活動をスタートさせる計画です。一方、これまでの日本光学会は、新たに一般社団法人として活動して行くとのこと。河田会長は、学問体系が大きく変革していく中、縦割りになることなく新しい分野を取り込んで行くのが応用物理学会の役割で、そのための改革を今後も進めて行くと述べていました。

 この後に行なわれた特別講演では、末松安晴・東京工業大学栄誉教授が「光ファイバ通信システム指向の半導体レーザ研究~本格的な光ファイバ通信の曙~」と題し、半導体レーザの研究・開発の歴史を俯瞰。
 将来の姿がよく見えない新しいシステムを実現させるには、そこに隠れているあるべき姿を覆うベールを引き剥がして浮かび上がらせるとともに、現実のものにするための中核技術を搾り出し実際に作って、その新しい技術を定着させる。末松栄誉教授は、これからの研究者にその継続を期待したいと述べました。特に、商用化を引き寄せるには、提案者自身が新しい技術を具現化すべきだとの言葉が印象的でした。

 2本目の特別講演は、藤嶋昭・東京理科大学学長による「光触媒の現状と今後の発展の方向」。光触媒の研究の歴史と殺菌や超親水応用などの事例の他、同大学・光触媒国際研究センターでの、植物工場で使用する溶液への応用、軽量のポリカーボネイトを自動車の窓に使った際の汚れ防止と曇り止め、鳥インフルエンザウィルス対策、CO2還元などの研究が紹介されました。
 光ファイバの中が水を主成分とする液体で満たされている光導管の研究も行なっていて、すでに20mのものまで完成しているそうです。太陽光を部屋の中まで導いたり、地下室に太陽電池を置いて発電・蓄電を行なうといった用途の他、透明度の低い海底に太陽光を照射して海草の育成を促進させるため、実際に若狭湾で実験を行なっているとのこと。この他、ボロンをドープしたダイヤモンド成膜の研究も紹介されました。

ポスター発表会場

 この後、隣接するラウンジとホワイエでは、70テーマに及ぶポスター発表と28社の賛助団体展示が行なわれました。それぞれが興味を持つテーマのポスター前では、発表者との間で活発な議論が交わされていました。(続く)
 
  
 

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | 交流の場(上) はコメントを受け付けていません

情報流出

 7月の初めに明らかになり、世間を驚かせたベネッセホールディングスの顧客情報流出事件。流出件数は2,000万件にも及ぶと言われています。
 事件は、顧客情報に関するデータベース運用や保守管理を任されていたグループ会社が、業務をさらに複数の外部業者に再委託していた中でおこったもの。その内の1社に派遣されていたシステムエンジニアが、自分のIDで情報を記録媒体にダウンロードして不正入手、それを名簿業者に売りさばき、情報はさらに複数の名簿業者に拡散して行き、その転売先は数百社にも上ると見られています。ベネッセホールディングスでは、利用者への補償として200億円を準備すると発表しました。

 情報流出が一旦おこれば、これまで築き上げてきた信用を失うのはもちろん、苦労して集めてきた貴重な情報が、一瞬にして競争相手に渡ってしまいます。巨額の補償費用が必要になる場合もあります。場合によっては訴訟をおこされるということも覚悟しなければなりません。まさに情報流出は、企業の存続そのものを危うくすると言っても過言ではありません。

 このような状況の中、オフィスの入退管理におけるセキュリティ強化が求められています。生体認証システムに対する期待も高まっています。東京ビッグサイトでの「オフィス セキュリティ EXPO」で、各社が注力する製品を探ってみました。

NECプラットフォームズの入退管理ソリューション「SecureFrontia X」

NECプラットフォームズの入退管理ソリューション「SecureFrontia X」

 NECプラットフォームズの入退管理ソリューション「SecureFrontia X」は、1枚のICカードで様々な社内システムとの連携が可能で、指静脈認証装置をオプションで付け足すこともできます。PCログインにおいては、入室記録のない人のネットワークアクセスを阻止でき、入室権限を持つPC管理者が退室すると自動的にネットワークから切断される仕組みになっています。入退管理においては、扉ごとの入室者のアクセス制限が可能で、コピーやプリントを出力する複合機利用をICカードで管理して情報漏えいを防止することもできます。
 NECの顔認証技術は、米国・国立標準技術研究所(NIST)が実施した顔認証技術ベンチマークテストの「静止画像からの顔照合部門」における「1対N照合」で、第1位の評価を3年連続で獲得しました。「1対N照合」とは、データベースに登録されている大量の顔画像の中から任意の顔画像を検索して同一人物であるかを判定する照合方法。16万人の顔画像データベースを検索した際の検索精度は、高解像度画像において照合率96.9%、ウェブカメラなどの低解像度画像で92.1%を実現し、1秒当たり302万件の高速画像検索も実現しました。
 同社の顔認証システム「顔跡/KAOATO」は、この技術をもとにした顔認証エンジン「NeoFace」を使って監視カメラの映像からあらゆる顔を自動的に検出、事前登録した特定人物の顔画像と照合することでリアルタイムの警告を実現しています。

アメリカンエンジニアコーポレイションの3次元顔認証システム

アメリカンエンジニアコーポレイションの3次元顔認証システム

 アメリカンエンジニアコーポレイションが取り扱う3次元顔認証システムは、右側のカメラが赤外線センサになっていて顔画像を識別、左側のカメラが人体センサになっていて人の認識と認証に必要な距離を識別する仕組みになっています。
 他人受入率は0.0001%未満で、本人拒否率は1%未満という認証精度を持っていて、認証スピードは0.7秒以下、赤外線センサを用いているので、限りなく0ルクスに近い暗い場所でも認識が可能としています。
 

 

菱洋エレクトロの三菱電機製各種認証端末

菱洋エレクトロの三菱電機製各種認証端末

 菱洋エレクトロは、三菱電機製の各種認証端末を取り扱っていますが、このうちの指透過認証装置は、透過光によって指内部の真皮指紋を撮像して照合する独自の生体認証方式を採用。
 指内部の真皮指紋を利用することで、指表面の乾燥やふやけ、かすれなどの影響を大幅に減らすことができます。
 斜め上に配置した左右二つの光源からの光を爪の上から照射した時に、指紋の凸部分は光の透過率が低いために暗く写り、凹部分は光の透過率が高いために明るく写るという仕組みを利用しています。

 

システムイオの赤外線3D顔認証システム

システムイオの赤外線3D顔認証システム

 システムイオの赤外線3D顔認証システムは、顔の形状を約20万のポイントで識別するので、顔写真などの2Dイメージを使った「なりすまし」を排除できます。
 他人受入率は0.0001%、本人拒否率は0.1%という認証精度を持っています。認証時間は1秒以下なのでウォークスルー認証ができ、登録も3秒以下と、煩わしさを感じさせません。
 赤外線を用いているので、暗がりや顔が目視できない状況でも確実に顔形状を測定できるとのことです。
 

 
 セキュリティ分野以外ですが、オムロンのリアルタイム笑顔度センサ「スマイルスキャン」は、ちょっと変わった用途向け。営業や接客業はもちろん、病院・介護施設でも相手に好印象を与える笑顔はとても大切ですが、このセンサは自分の笑顔をトレーニングするためのものです。顔画像から様々な情報を読み取る同社独自技術「OKAO Vision」によって、表情によって変化する目や口の形、顔のしわなどの情報を正確に測定して、笑顔の度合いを0~100%までの数値で表わします。500社以上の採用実績があるとのことです。

 一般的にセキュリティ対策は直接利益に結びつかず、逆にコストとして見られがちなため、その対策が遅れているのが現状です。情報流出を防ぐには、これまでの性善説から一歩踏み出した認識が求められています。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | 情報流出 はコメントを受け付けていません