・ポジショニング応用技術セミナー

2019年04月24日(水) 09:30-12:25
【PE-1 レンズ・ミラーや望遠鏡における超精密位置決め技術

企画協力:公益社団法人 精密工学会 超精密位置決め専門委員会

レンズ/ミラー駆動用高応答・多自由度アクチュエータの開発

東京工業大学 進士 忠彦
レーザ加工機や光学系の振動補償のため、ミラーやレンズを、多自由度方向かつ高応答に駆動するアクチュエータが求められている。既存の1自由度高応答アクチュエータを複数組み合わせるだけでは、上記の実現は困難である。本研究室では、多自由度方向の高応答駆動に適した、無摩擦かつ無摩耗な弾性案内、静圧空気案内、磁気案内をそれぞれ提案・試作し、レンズやミラーの高応答駆動を実現している。セミナーでは、その概要に関して紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

手首関節モジュールi-WRISTの外観検査自動化への適用(仮題)

NTN(株) 数野 恵介
製造現場の生産性向上を目的とした自動化・省人化のニーズにより、産業用ロボットが急速に普及している。例えば、垂直多関節ロボットは、重量物ハンドリングのような過酷作業や溶接・塗装ラインなどの過酷環境下の現場を中心に広く導入されている。水平多関節ロボットやパラレルリンクロボットも、高速ハンドリングが要求される工業製品や食品などの搬送・位置決め作業などで活用されている。
その一方で、特に日本では、少子高齢化による労働力不足が課題となっており、製造業において技能を必要とされる人材の不足が深刻化している。その対策として、各企業はこれまで人手で行っていた繊細で人の判断を必要とする作業についてもロボット化に取り組み始めている。
本講演では、これまで人手作業に頼ってきた自動車部品や電気電子部品の外観検査の自動化に焦点を当て、手首関節モジュールi-WRISTの機能と特長を中心に、一般的な産業用ロボットである垂直多関節ロボットとの比較を交えてわかりやすく述べたい。
1.外観検査の市場動向
2.手首関節モジュールi-WRISTの機能と特長
3.産業用ロボットの比較
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

日本初の分割望遠鏡技術 ー大型軸外し非球面鏡の保持、位置合わせ技術ー

京都大学 栗田 光樹夫
本講演では大きな外乱環境下におけるメートルサイズ・100kg規模の光学素子のナノレベルの位置決めと保持技術について事例紹介する。
せいめい望遠鏡は国内初、世界でも2例目となる分割式の鏡を有する望遠鏡である。大きさ1mで80㎏ほどの薄型の大型非球面鏡を18枚有し、全体で口径3.8mを実現した東アジアで最大の望遠鏡である。
鏡の加工には精密研削盤を用いた。加工機に直鏡を接保持させると堅牢ではあるものの、保持による変形が10μm程度になる。これに対し鏡を3点で過拘束することなく保持・位置決めし、加工による変形を予測することで1μmの加工精度を実現した。
望遠鏡は光学性能を達成するために鏡同士の段差を50nmの精度で常に保持する必要がある。一方、鏡の整列を乱す要素として、熱変形、重力変形、風圧、望遠鏡本体や建物からの微振動があり、外乱は要求精度の1万倍程度の大きさとなる。これら外乱に対し、各鏡の背面には3つのアクチュエータが取り付けられ、鏡面に対して傾斜2軸と上下1軸の駆動を行う。この制御システムは鏡間の段差を検出するエッジセンサ、その出力から適切な段差補正量を算出する演算部、補正量に従って鏡を駆動するアクチュエータと鏡の支持機構からなる。
鏡は重力変形に対して大変柔らかい。鏡の支持機構は鏡面の重力変形を抑え、アクチュエータ駆動に対しては自由であり、残りの3自由度に対しては機械的に拘束する必要がある。支持機構と駆動機構はすべて無関節の弾性機構から成り、すべてが一体となった遊びやヒステレシスの無い弾性体とみなせる構造となっている。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2019年04月24日(水) 13:10-16:05
【PE-2 フォトニクスを支える機械システム・要素技術

企画協力:公益社団法人 精密工学会 超精密位置決め専門委員会

多相空気流や超音波浮揚による薄板の非接触搬送

豊田工業大学 古谷 克司
ガラス基板や半導体ウエハは清浄な状態を保ちつつ搬送されることが望ましい。また、傷がつくことも避ける必要がある。そのため、非接触で搬送されることが望ましい。しかし、ベルトやローラなど、物理的接触を伴う搬送が一般的である。非接触搬送法は電磁力や静電気力を用いるものが従来から提案されているが、被搬送物の材質に制限がある。一方、空気による浮上は材質に依存しないという利点がある。
本講演では、超音波浮揚を用いた2次元搬送法と多相空気流を用いた薄板の1次元搬送法の原理およびプロトタイプの構成とそれを用いた駆動特性を紹介する。
超音波浮揚を用いる方法では、振動板に4個の振動子により超音波振動を加えてスクイーズ効果により浮揚させるとともに音響粘性流による進行波を発生する。振動子の組み合わせを変えることで進行方向を切り替えることができる。また、スクイーズ効果により振動板から被搬送物が逸脱することがないという利点もある。
多相空気流を用いる方法では、各相で正負圧空気流を切り替えることで薄板をわずかに傾けることで推力を発生する。またこの空気流のパターンを反転することで、双方向に駆動することも可能である。
プロトタイプにおける浮上量と加速度は両方とも0.1mmと20mm/s2程度である。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

特定の特性改善のために設計された新しいアクチュエータとそのアクチュエータの高性能制御システム

豊橋技術科学大学 佐藤 海二
位置制御系の性能は、その構成要素の総合力で決まり、しばしばアクチュエータを含む機構特性によって制約される。そのため機構特性の改善は重要であるが、位置制御系に対する要求性能は多岐にわたる。要求性能に関連する機構特性は、しばしばトレードオフの関係にあり、すべての項目に関し機構特性を向上させるのは難しい。一方、構成要素が各要求性能に与える影響度合いはそれぞれ異なり、機構特性が支配的な特性もあれば、コントローラの影響が大きい特性もある。したがって、まず機構設計において、他の特性の劣化を許容し、機構特性が支配的な特性を特に高め、その後生じた問題をコントローラで補償できれば、優れた特性、従来にない特性を持った高性能位置制御系を実現できる可能性がある。
 そこで本講演では、機構の中心的な存在であるアクチュエータを取り上げ、従来にない特徴を持たせる設計を行い、その過程で生じた性能劣化要因を補償するコントローラと組み合わせて、これまでにない特徴をもつ精密位置制御系を実現した結果を紹介する。具体的には、超高加速・高速性能に特化したリニアモータ、全体が薄く省スペースで、交換容易・使い捨て可能なフィルム可動子を含むリニアスイッチトリラクタンスモータ、感温磁性体を用いた省エネルギーアクチュエータを取り上げ、それらの位置精度劣化要因を補償できるコントローラとその効果を紹介する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

超精密加工機における位置決め技術

東芝機械(株) 福田 将彦
超精密加工機は、高画質カメラレンズ用金型をはじめとして、高品質加工を要求されており、加工点におけるサブナノオーダの位置決め技術を確立し、50nmPV以下の形状精度と、0.5nmRa以下の面粗さを達成している。一方、自動車部品金型のような複雑形状を含む自由曲面に対しては、直線軸だけでなく、回転軸を含む高度な多軸同期位置決め制御が求められている。一見対極的にある市場要求だが、位置決めに必要な共通の機械技術を向上させることにより、両者を達成している。
そこで、このような幅広い位置決め性能への要求に必要な機械技術を解説し、これらを生かした加工事例を紹介する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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個人もしくは学校からのお支払いで、30歳未満の方が対象となります。

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進士 忠彦

東京工業大学

科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授

1992年3月 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 精密機械システム専攻 修士課程修了,2000年3月 博士(工学)(東京工業大学),
1992年4月~1995年3月 日立製作所 機械研究所,1995年4月から,東京工業大学 精密工学研究所 助手,助教授,准教授,教授を経て,現在 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授

[現在の主なご研究フィールド]
超精密位置決め機構,磁気軸受を用いた補助人工心臓,磁気MEMSなどの研究

数野 恵介

NTN株式会社

産業機械事業本部 R1プロジェクト プロジェクトリーダー

1992年 静岡大学 工学部 電気工学科 卒
1992年 NTN株式会社 入社、精密機器技術部 配属
(省略)
2000年 自動車製品技術部 転属 ボールねじ製品開発・設計担当
(省略)
2015年 産業機械技術本部 CMS技術部 転属 センサ・直動担当
(省略)
2018年 現職

栗田 光樹夫

京都大学

大学院理学研究科 准教授

名古屋大学が南アフリカ天文台サザーランド観測所に建設した1.4m望遠鏡の開発にたずさわって以降、望遠鏡を中心に観測装置の開発を行ってきた。2005年名古屋大学で博士(理学)を取得後、同大学助手を経て、せいめい望遠鏡計画に参画し、2012年から京大理准教授。装置開発に関する学術論文と特許多数。

古谷 克司

豊田工業大学

工学部先端工学基礎学科 教授

1991年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1994年 博士(工学)
1991年 東京工業大学精密工学研究所・助手
1992年 豊田工業大学・助手,講師,助教授を経て2007年 同教授(現在に至る)
1995年 カリフォルニア工科大学・客員研究員(兼任)
2004~2006年 JAXA宇宙科学研究本部・客員助教授(兼任)

佐藤 海二

豊橋技術科学大学

大学院工学研究科 機械工学系 ロボティクス・メカトロニクス研究室

2007年東京工業大学大学院総合理工学研究科 准教授
2016年東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所 准教授
2017年豊橋技術科学大学大学院工学研究科 機械工学系ロボティクス・メカトロニクス研究室 教授
現在に至る.

精密メカトロニクス,精密運動制御,アクチュエータの研究に従事.
精密工学会,日本機械学会,電気学会,ASPE,IEEEの会員

福田 将彦

東芝機械株式会社

ナノ加工システム事業部 ナノ加工開発センター

1998年に東芝機械に入社.
超精密加工機用多孔質絞り軸受の開発に従事,実機搭載にともない,精密機器事業部(現:ナノ加工システム事業部)へ移籍,超精密加工機の製造から加工開発などを担当.