-レーザー応用セミナー

2018年11月13日(火) 09:30-12:25
【-1 注目を集める、最先端レーザー加工と要素技術(光渦、パワー伝送、クリーニング)

光渦の基礎とレーザー加工への展開

千葉大学 尾松 孝茂
角運動量を持つ光(光渦)が空間多重光通信や超解像バイオイメージングなどの分野で注目を集めています。本講演では光の角運動量と光渦の発生方法について基礎的な内容を分かりやすく紹介します。
また、光渦の特徴である角運動量を有効に活用した応用例としてレーザー加工を取り上げます。光渦レーザー加工は従来のレーザー加工とは異なる付加価値を与えます。例えば、レーザー光を照射するだけで物質表面が螺旋構造や針状構造に変化するためメタマサーフェースはもちろん撥水・親水をはじめとする表面加工なども可能にします。

フォトニック結晶ファイバによるレーザー加工用ハイパワー伝送

日本電信電話(株) 松井 隆
レーザ加工技術は今日の社会インフラ産業に欠かせない要素技術であり、最近では単一モードレーザを活用した高精度、高効率なレーザ加工が高い関心を集めている。さらに単一モードの高出力レーザ光を高品質なまま遠隔まで届ける事が出来れば、レーザ加工の適用領域を飛躍的に拡大することができる。
ここでは光ファイバ内に複数の空孔を有するフォトニック結晶ファイバ技術を用いて、単一モード伝送とハイパワ伝送性能の拡張性を有する新たな光ファイバについて検討した。光通信システム向けの設計および試作結果を示すとともに、kW級の超ハイパワ伝送への拡張性について紹介する。特に試作結果より、7 kWの単一モードレーザ光を単一モード級のビーム品質(M2 = 1.7)で30 m伝送することに成功したので、その実験結果を紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

レーザークリーニングの実用化の可能性

タマリ工業(株) 三瓶 和久
レーザークリーニングはレーザー光を用いた非接触の処理技術であり、航空機の塗装剥離の環境改善を主目的として開発された。それまで有機溶剤で行われてきた塗装の剥離をレーザーによる処理に置き換えることで、環境に優れた手法として注目を集めた。欧州では自動車をはじめとする工業製品の洗浄への適用が進んでおり、アウディTTのアルミニウムボデーのレーザー溶接前の洗浄にレーザークリーニングが適用され話題となった。有機溶剤やサンドブラスト等で排出される二次廃棄物処理の課題を解決することができる手法としても、レーザークリーニング技術が期待されている。
クリーニング用レーザーの高出力化が進んでおり、高出力、高効率で優れた集光特性を持つファイバーレーザーも熱源として採用されてきている。また、レーザークリーニングにはパルスレーザが使用されてきたが、より高い加工効率を実現するためにCWレーザーを高速走査するレーザークリーニング装置も製品化されている。レーザークリーニング装置の能力向上に対応して、より厚膜、より大面積の加工が可能になり、航空機の大型の成形型のクリーニング処理や、自動車のホットプレス用アルミメッキ高張力鋼板の溶接前処理、橋梁のメンテナンスのための錆、塗膜の除去、原子力発電設備の除染処理等の新しい用途開発が進んでおり、レーザークリーニングの適用拡大の可能性が広がっている。レーザークリーニング技術とその適用例および今後の実用化の可能性について紹介する。
難易度:一般的(高校程度、一般論)

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2018年11月13日(火) 13:00-15:55
【-2 バイオセンシングの高感度化を実現するプラズモニクスの基礎

プラズモニクスの基礎とバイオ分野への応用

東京工業大学 梶川 浩太郎
表面プラズモンは金属中の電子の波であり、表面の境界条件により光と相互作用をする。特にナノフォトニクス分野において様々な応用が考えられるため、多くの研究が進められてきた。表面プラズモンを用いた分子間相互作用を計測するセンサーはすでに実用化されており、生化学分野では欠くことのできないツールとなっている。一方で、表面プラズモンを用いた吸収体メタマテリアルや発光素子、表面増強ラマン散乱、微少な距離を測定するルーラー、など新しい応用分野も開拓されている。講演では、表面プラズモンの基礎から応用までを紹介して、今後のこの分野の展開を考える。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

金属ナノ構造体によるバイオセンシング・イメージング

大阪大学 井上 康志
金属ナノ構造体に光を照射すると、金属内の自由電子が光と共鳴的に結合することで表面プラズモンが生起され、光がナノ領域に閉じこめられるとともに、ナノ構造体近傍の光電場強度が増強される。本講演では、これら特長を活用した、バイオセンシングおよびバイオイメージングの実例を紹介していきたい。はじめに、光の電場増強効果によりナノ構造体から明るい散乱光が得られることを利用し、金属ナノ構造体をタンパク分子などの標識に用いることで、従来の蛍光プローブと比較して、高SN比でそのカイネティクスの長時間観察を可能とする手法について述べる。次に、生体細胞内に取り込ませることで、金属ナノ構造体近傍に存在する分子からのラマン散乱光を増強し、検出する分光センシング法について紹介する。一方、2つの金ナノ粒子をDNAにより結合させて構成したダイマー構造に対して、DNA内の特定の塩基配列にタンパク質(転写制御因子)が結合することで、DNAの立体構造が変化し、2つの金ナノ粒子間距離が変わる。粒子間距離が変わることで表面プラズモンの共鳴波長が変化するので、あらかじめ金ナノ粒子間距離とプラズモン共鳴波長を実測しておくことで、転写制御時のDNA立体構造変化をサブナノスケールで観察する計測技術について示す。金属ナノ構造を微小化し、数個から10数個程度の原子で構成される金属ナノクラスターは、量子サイズ効果により、蛍光性を獲得する。講演ではこの蛍光性金属ナノクラスターを利用したバイオイメージングについても紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

深紫外プラズモニクスと高感度バイオイメージング

静岡大学 川田 善正
本講演では、紫外領域における表面プラズモンの励起について紹介するとともに、バイオイメージングに応用した結果を示す。表面プラズモンは、電場の増強効果や局在化などの特性をもち、様々な応用分野おける応用が提案されている。それらの多くは、可視域から赤外領域で使用されており、紫外領域においてはこれまであまり研究されてこなかった。一般的に表面プラズモンの励起に利用される銀や金などが紫外領域では使用できないためである。
本講演では、紫外領域において表面プラズモンを励起するために必要な条件と金属の特性について述べ、アルミニウムを用いて励起条件の最適化を行った結果を示す。金属の膜厚、表面酸化による励起条件の変化、入射角などを最適化した結果を紹介する。シミュレーション結果と基礎実験結果の比較検討を行った結果を示す。
紫外領域で表面プラズモンが励起できると、光子エネルギーの高い波長領域での電場増強を実現できるため、様々な新しい応用分野への展開が期待できる。本講演では、電場増強効果を利用して、バイオイメージングおよび金属からの光電子放出を高感度に実現した結果を紹介する。バイオイメージングでは、多重染色した細胞を一つの励起光で観察可能なマルチカラーイメージングの結果と非染色細胞の自家蛍光を励起した結果を紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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[ 特定商取引法に基づく表記 ]

尾松 孝茂

千葉大学

大学院融合科学研究科 教授

現職 千葉大学大学院工学研究院・教授 分子キラリティー研究センター・センター長
1983年 東京大学工学部物理工学科卒業
1992年 東京大学大学院工学研究科物理工学専攻修了 博士(工学)
2006年 千葉大学大学院融合科学研究科・教授
2017年 現職
応用物理学会フェロー、The Optical Society Fellow、Editor-in-Chief OSA Continuum

松井 隆

日本電信電話(株)

アクセスサービスシステム研究所 主任研究員

2003年 北海道大学大学院 工学研究科を修了
同年  日本電信電話株式会社 アクセスサービスシステム研究所に配属
2008年 北海道大学大学院で博士(工学)を取得
2009年 技術士(電気電子部門)に登録
通信用光ファイバの設計・評価技術および周辺技術に関する研究開発に従事
ファイバオプティクスに関する国際標準化活動(IEC TC86に従事)

三瓶 和久

タマリ工業(株)

レーザ事業部 理事

梶川 浩太郎

東京工業大学

工学院 電気電子系 教授

1989年東京工業大学大学院修士課程修了。東京工業大学助手、理化学研究所基礎科学特別研究員、名古屋大学助手、東京工業大学助教授などを経て2008年東京工業大学教授、現在に至る。博士(工学)

井上 康志

大阪大学

生命機能研究科 教授

1987年大阪大学工学部応用物理学科卒業、1989年大阪大学大学院工学研究科博士前期課程応用物理学専攻修了後、日本電信電話(株)入社。1995年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程応用物理学専攻修了、博士(工学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、IBMチューリッヒ研究所客員研究員を経て、1997年大阪大学工学研究科助手、2002年大阪大学大学院生命機能研究科助教授、2006年より大阪大学大学院生命機能研究科教授。2015年から2017年まで大阪大学フォトニクスセンター長。

川田 善正

静岡大学

工学部機械工学科 川田研究室 教授

1992年大阪大学大学院博士課程応用物理学専攻修了. 工学博士. 1992年大阪大学工学部応用物理学科助手,1995年米国 Bell研究所客員研究員,1997年静岡大学工学部機械工学科助教授を経て,2005年より静岡大学工学部機械工学科教授,現在に至る. レーザー顕微鏡,3次元結像光学,フォトリフラクティブ光学,3次元光メモ リ,非線形光学などの研究に従事. 1996年応用物理学会 日本光学会光学論文賞,2007年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門),2013年 Optical Society ofAmerica(OSA) Fellow 受賞, 2016年~静岡大学研究フェロー 2017年~工学部学部長.