-分光セミナー

2018年11月13日(火) 09:30-12:25
【-1 ハイパースペクトルイメージングの基礎と応用

ハイパースペクトルイメージング技術の現在と未来~様々な産業応用例と新技術のご紹介~

エバ・ジャパン(株) 高良 洋平
ハイパースペクトルイメージング技術は、物体固有のスペクトルを捉えることで、その物体の種類や状態を特定することが可能であるため、新規の研究開発や製品の不良検査等に活用できることが、近年、様々な業界(農業・食品、工業、医療、美容分野等)において認知され始めている。
本講演では、まずはこのハイパースペクトルイメージング技術の基礎的原理などを簡単にご紹介し、また本技術を保有する国内メーカー、かつリーディングカンパニーとして、本技術の今後の市場動向とその具体的な産業応用例を、過去の実際の計測実績の中から抜粋し、ご紹介する。

また、従来技術においては大量のスペクトル情報の取得に時間がかかり、かつ装置も大型であるため、移動物体の計測や瞬間的に状態が変化する物体の計測、あるいはドローン等への搭載といった空間・重量に制限がある環境下においては、使用が困難である、という課題があったが、当社ではスペクトルの中から物体の評価に最適な波長を発見し、アルゴリズム化する技術を確立したことで、世界で初めて小型・高速・安価でのスペクトルイメージング計測を実現した「ターゲットスペクトルカメラ」を開発した。
本講演の後半では、この「ターゲットスペクトルカメラ」とその具体的な展開例である「脈拍カメラ」のご案内を通して、スペクトルイメージング技術の“これから”をご紹介する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

躍進する非線形光学・非線形分光イメージング

筑波大学 加納 英明
近年、非線形光学効果を有効に活用した新しいタイプの顕微イメージング手法が、(1)超解像、(2)生体深部観察、そして(3)ラベルフリー(非標識)、というユニークな特徴を兼ね備えた新しいイメージング装置として、生命科学・医学分野などで活躍しつつある。これらの顕微イメージング手法は、透明な生細胞や生体組織の分子情報・構造情報を非染色、非標識、非破壊、低侵襲の条件で取得できるというユニークな特徴を併せ持っている。これらの非線形光学効果を複数の波長成分を持つレーザー光源で発生させられると,例えばコヒーレント・ラマン散乱を用いた分光イメージング等も可能である。本講演では、非線形光学イメージング全般の概説と、フォトニック結晶ファイバーを用いて発生させたコヒーレント白色光(スーパーコンティニューム光)を用いて我々が開発した、マルチモーダル・非線形光学イメージング手法の原理及び実際の装置について紹介し、それを用いた生細胞・生体組織のラベルフリー・マルチカラー・イメージングの結果について解説する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

ハイパースペクトルデータの多変量解析

早稲田大学 安藤 正浩
近年ハイパースペクトルイメージングが注目を浴びてきているが、それはスペクトルを通じて物理化学現象を深く理解できることが大きな要因である。そこでは、スペクトルを「読む」ことが重要であり、スペクトルパターンの一致から分子帰属を行ったり、ピーク位置の変化から、分子構造の変化を読み解くことになる。特に多数の物質の混合系試料の場合、ハイパースペクトルイメージングは有用であり、スペクトルとしてデータを取得することで、微細なスペクトルパターンやピーク位置の違いも検出しやすくなる。そこで重要なのが多変量解析であり、多数の物質由来のスペクトルが重なった複雑なデータから、それぞれの純物質に由来するスペクトル情報を抽出することで初めて、各々の構成物質の分布イメージングが可能となる。
本講演では、ハイパースペクトルデータを読み解くのに重要な、様々な多変量解析手法について解説する。実際に取得されるデータでは、上述のような試料由来のスペクトルの重ね合わせによる複雑化の他、計測機器などに起因するノイズも問題となる。ノイズやバックグラウンドを除去し、かつ対象とする物質・分子に関する定性・定量情報を抽出し、各々に対応する明瞭なイメージを構築するための手法として、様々な多変量解析手法の特徴や原理を解説する。最新の研究動向も踏まえ、目的とする計測手法・対象に適した解析手法をいかに選択し、的確に活用すればよいのか、概説する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

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2018年11月13日(火) 13:00-15:55
【-2 近赤外分光・分光イメージングを切り開く先端装置開発

近赤外・中赤外分光イメージングの基礎と適用展開

香川大学 石丸 伊知郎
我々は、分光吸光度から化学的な成分を同定して濃度の定量も可能である赤外領域の超小型分光イメージング装置を開発した。近赤外領域(波長:1µm~2.5µm)、中赤外領域(波長:3~20µm)それぞれにおいて、親指大ワンショットライン分光イメージング装置、手のひらサイズの2次元分光イメージング装置を開発し、現在、その有用性を実証評価している。具体的には、健康医療、環境・防災危機管理、工業・工芸品などの多様な分野への適用を目指している。例えば健康医療分野では、尿中グルコースやアルブミン濃度を定量計測するスマートトイレや非侵襲血糖値センサーである。これらでは、提案する超音波アシスト中赤外分光イメージングについても詳細に説明する。特に家庭に導入するセンサーとしては10万円を切る低価格での提供が重要である。新たに考案した豆粒大ポイントワンショット中赤外分光器は、低画素数カメラ(80×80画素程度、2万円程度)と1個のプリズムだけで高い波長分解を維持した中赤外分光が可能である。また環境分野では、中赤外2次元分光イメージング装置による窒素やリンの分布、プランクトンの広域分布の可視化技術について述べる。更に、工業・工芸品では、プラスチックの分類などについて紹介する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

現場対応専用近赤外分光装置の技術と開発手法

(株)相馬光学 大倉 力
近赤外波長領域(700~2500nm)で物質の波長毎の反射率または透過率スペクトルを測定し、その波形から物質の成分量・特徴を推定できる。これは1970年代に米国で開発された技術であり、近年、食品の品質・味の評価、農業分野での応用に広く利用されている。この手法は1980年代より、日常生活に関連する製品の品質評価、成分定量のツールとして広く利用され、応用分野は年々拡大している。近赤外分光装置はこのように日常生活で広く利用されているが、目的からは現場で特定の対象物を限定的に測定する装置が必要とされる場合が多い。
近赤外スペクトルとその測定については、1900年代初頭から知られていた。しかし、ここで説明する近赤外スペクトルによる試料の定量・定性が可能となったのは、コンピュータ技術が発達し信号処理、複雑な統計計算が容易に可能となった1970年代以降である。
これは、近赤外スペクトルから情報を取り出すためには波形をチャート紙上で、目視で観測する程度では難しく、スペクトル波形のほんのわずかな違い(数十µabs)から情報を取り出す必要があるためである。このように、近赤外分光装置では高いSN比が必要とされるが、目的とする対象物によりその程度は大きく異なる。
現場で特定目的に利用される専用装置の設計に際しては、このことを事前によく検討しなければならない。本講演では、現場対応専用近赤外分光装置において必要な技術要素と開発方法について説明する。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)
*レベル高いのですが、高卒程度でもわかるように説明するつもりです

近赤外FT分光分析計およびレーザガス分析計の原理とアプリケーション開発

横河電機(株) 大原 寿樹
近赤外光領域を測定に用いるプロセス分析計について、その原理とアプリケーションについて紹介いたします。
ひとつは、液体の測定を主とする近赤外(NIR)分光分析計、もう一方は、光源に波長可変型レーザダイオードを用いたTDLSガス分析計です。
近赤外分光分析計は、フィールドへの設置を念頭に置いたフーリエ変換型分光器を搭載し、長期間にわたっての連続・多成分の組成分析を実現してきました。そのハードウエアの概要とアプリケーションについて紹介いたします。
TDLSガス分析計は、近年こなれてきた技術ではありますが、TDLをプロセス分析計として仕立て上げるための工夫や、そのアプリケーション開発について紹介いたします。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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[ 特定商取引法に基づく表記 ]

高良 洋平

エバ・ジャパン(株)

シニアフェロー

2005年3月 東京大学医学部医学科卒業
2005年4月~ 東京大学医学部付属病院腎臓・内分泌内科 医員
2010年3月 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了
分光イメージング手法を用いて腎臓病態におけるCa2+シグナルの動態の研究を行い、また、ハイパースペクトルイメージングを用いて、蛍光発現大腸菌の増殖過程の可視化に成功。以後、東京大学医学部付属病院 22 世紀医療センターにおいて、産学連携・医工連携を通じハイパースペクトル技術を用いた診断技術の研究開発を施行。
2011年~現在 エバ・ジャパン
研究主幹として、分野横断的なハイパースペクトル技術の応用研究および、産業還元に従事。千葉大学リモートセンシング研究センター(ハイパースペクトルを用いた大気汚染物質の定量的イメージング)、東京工業大学総合理工学研究科(ハイパースペクトル画像による空間・波長融合パーセプション)との共同研究など。

加納 英明

筑波大学

数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻 准教授

1996年 東京大学理学部物理学科卒業
1996年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻入学
2001年 同博士課程修了 博士(理学)
2001年 東京大学大学院理学系研究科化学専攻助手
2007年 東京大学大学院理学系研究科化学専攻准教授
2012年 筑波大学 数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻 准教授

安藤 正浩

早稲田大学

ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員

東京大学大学院理学系研究科修了、博士(理学)。
早稲田大学先端科学・健康医療融合健康機構研究院助教(2012)
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構研究院講師(2016)
を経て現在、早稲田大学招聘研究員・JSTさきがけ研究員。

石丸 伊知郎

香川大学

創造工学部 機械システムコース 教授

1987年大阪大学工学部産業機械工学科卒業後、(株)日立製作所 生産技術研究所において各種の自動化設備と半導体集積回路の光学検査装置の研究開発に従事した。1999年に機械学習による熟練技能の自動化技術の研究に関して東京大学より博士(工学)授与された。
2000 年に、生まれ故郷に創設された香川大学工学部に赴任した。以降、半導体業界で培った世界最先端の光学技術を基盤にして、医学部や農学部と連携して医療や環境分野での新たな計測技術を創出してきた。本発表の基幹技術は、特にJST研究成果展開事業【先端計測分析技術・機器開発プログラム】の助成を受けた研究成果であり、地元企業のアオイ電子(株)から昨年6月に市販されるに至っている。

大倉 力

(株)相馬光学

技術部 技師長

1970名古屋大学大学院修士課程修了(電子工学)
1970 日本分光入社
1970レーザラマン分光装置の開発
1989世界初の果実近赤外装置を開発
1998 マキ製作所入社
2004~2014 宇宙用太陽電池委員会 委員長
2004 相馬光学入社
2009牛肉測定装置開発にて畜産大賞受賞
2010 東京都ベンチャー大賞特別賞 小型分光放射計の開発
2011牛肉測定装置開発にて農林水産研究開発功績者
2015 博士(工学)学位取得「回折格子による分光計測」
2017 NIR ADVANCE AWARD受賞

大原 寿樹

横河電機(株)

IAプロダクト&サービス事業本部 科学営業2部2課 課長

1988年 慶應義塾大学大学院 分析化学専攻 修士課程卒業
同年 横河電機株式会社 入社、科学機器事業部技術部にて産業プロセス用分析計の開発に従事。
2003年より現在まで、同社にて分析計の販売推進を担当。